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「もくじ」がちょっと新しくなったよ

2018年11月24日土曜日

あの世がご縁をくださった【後編】

【前編はコチラから】


そして、わしは。また三途の川の船着き場に戻って来た。

娘のすぐそばで、一緒に待った。

だいぶ待たされたあと、娘の番がやって来た。

娘がお地蔵さんに近づくとき、わしは一歩前に出て、
娘とお地蔵さんの間に入った。

「うわっ、ハチベエじゃないか、驚かすな!」

驚くお地蔵さんに声をかけた。

「この娘は、わしの婆さんを助けてくれた心優しい娘じゃ。
 わしなんて生き返ったところで大したことはできん。
 どうじゃろう、この娘をわしの変わりに、生き返らせては
 くれぬかのぉ」

「な、なんと、むむむむむ」

お地蔵さんは難しい顔をして、台帳をパラパラとめっている。

「困ったなぁ、まぁ、おまえの願いじゃ、悪いようにはせん。
 とりあえず話は分かった。
 ただ、おまえの寿命の延長は変えられん、早よこの場から
 去れ」

頼みましたよ、とわしはお地蔵さんに言って、
来た道を歩いて帰って来た───。


「と、いう訳なんじゃ」

「まぁ、そんなことがあるんですねぇ」

と、婆さんは驚いた表情で聞いていた。

でも、わしが生き返った時の婆さんの驚いた表情にはかなわない。

あれは本当に驚いた表情だった。長年連れ添っているが、
あんな表情は見たことがない。

まぁ、死んだと思ってたのが生き返ったんじゃ、無理もないか。

実にゆかいじゃった。

「それで、その娘は生き返ったのですかねぇ」

「そうじゃなぁ、あのお地蔵さん、悪い人じゃなさそうだから、
 願いは通じたと思うが……、でもなぁ、わしの願いは、
 わしの変わりにあの娘を生き返らせてくれ、だったから、
 どうしたもんかのぉ」

「そうですねぇ、あんたが生き返ったってことは、
 どうなったんでしょうねぇ……」

そんな風に、婆さんにあの世の話をして、
生き返ったわしは死ぬ前と変わらぬ生活を再開したのじゃ。

それから、何年かが経ったある日のこと。

もうすっかり2人とも年をとって、芝刈りも畑仕事もしんどく
なって困っていた時に、1人の男の子、そうじゃなぁ、
10歳くらいの子かなぁ、突然、家に訪ねて来たんじゃ。

「死んだ母上から、こちらで働くようにと言われました」

「死んだ母?」

驚いて婆さんと顔を合わせると、男の子が、

「はい、あの世で、こちらの旦那様にお世話になったから、
 恩返ししなければならない、とずっと言っておられました」

「なに、では、あの時の!」

生き返っておったのじゃな!

喜んで婆さんを見ると、笑顔で喜んでおった。

「母は雇われの身、自分の都合では外にも出られず、
 ずっと働かされていました。
 そして、1カ月前に死にました」

「なんと、それは御気の毒な」

わしは思った、生き返って良かったのか悪かったのか……。

「母からの手紙です」

男の子が差し出した手紙を受け取った。

広げていると、婆さんが覗きこんで来たので、2人で読んだ。

“あの世では大変お世話になりました。
 旦那様にお会いしたのは、この子を産んですぐでした。
 この子を置いて死んでしまい、悲しくて仕方ありませんでした。
 そんな時に、旦那様にお慈悲をいただき大変感謝しております。
 体が弱く、これを旦那様が読んでいるということは、
 私は再びあの世に行っていると思われます。
 でも、短い時間でも息子と過ごせたことは、この上ない喜びで
 幸せな日々でした。
 いくら感謝しても尽くしきれません。
 お礼のご挨拶もせぬご無礼をお詫びつつ、私にできることは、
 息子を自由に遣っていただくことでございます。
 一通りの家事や仕事はできます。
 仕事を息子に任せ、お身体をいたわり、どうぞ長生き
 してくださいませ。”

手紙を読み終え、わしは婆さんと顔を合わせてから、
そして男の子の顔を見た。

知らない人の家に訪ねて来て緊張しているのじゃろう、
体を小刻みに震わせながら、潤んだ目で、しかし、
しっかりと、こちらを見ている。

とても凛々しく賢そうな子じゃった。

「これも、なにかの縁じゃ、この家は豊かではないから、
 出て行きたくなったらいつでも出て行くがいい。
 それまでは、一緒に住もうじゃないか」

「ハイ、お世話になります」

男の子は元気に頭を下げた。

頭を上げても緊張した顔だったので、満面に笑みを向けてやると、
男の子は、ニッと、とても素直そうな笑顔を返してくれた。

おぉ、今気づいたが、鼻の横に小さなホクロがあるわい。

家族が増えたことは、いいことじゃ、と思い、婆さんを見ると、
目を細めて頷いておった。

2人とも良い顔じゃ、と、わしは思ったよ。


おしまい。



今回のもとのお話はコチラ

福娘童話集『 カメの恩返し 』
http://hukumusume.com/douwa/pc/minwa/06/23a.htm



━━━ お話はここまで ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


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