※童話の更新は週1回(だいたい土曜日の夜)です(^0^)/

≫≫≫ ☆ もくじ ☆ ≪≪≪

2018年9月23日日曜日

お父さんが選んだもの

むかしむかし、ある村に仲のいい夫婦がいました。

「ねぇ、お父さん」

「なんだい、母さん」

それはある日の朝のことでした。

「今日は、街の市場がオープンする日ですよ」

「おう、そうだった、そうだった」

「うちにいるウマは、立派だから、
 きっと欲しがる人がいるはずです」

「あぁ、せっかく立派なウマなのに、わたしたちは、
 小屋につないでいるだけだもんな」

「ホント、あのウマがかわいそうだわ、もっと役立つ
 ところへ行って活躍して欲しいわね」

「そうだな、じゃぁ、ウマを連れて、
 ちょっくら市場へ行ってくるよ」

と、お父さんは早速、出かける準備を始めました。

お母さんはお気に入りのネクタイを持って来て、
お父さんの首にかけてあげました。

「ありがとう」

お父さんはそう言ったあと、こう続けました。

「ところで、ウマは、なにと取り替えてくればいい?」

「そうね……」

と、お母さんは、お父さんのカバンを持ちあげ、

「お父さんにまかせるわ、だって、お父さんのすることに、
 間違えはないから」

と、言いながら、カバンをお父さんに渡しました。

お父さんは、受け取ったカバンを肩から斜めにかけ、

「そうか、それなら私の判断で替えてこよう」

「えぇ、ステキなものと替えて来てね」

「分った、楽しみに待っていてくれ」

お父さんはウマをひきながら、腕を大きく振り、
出かけていきました。

「気をつけて」

お母さんは笑顔で見送りました。


そして時は過ぎ、その日の夕方、

「ただいま!」

帰って来たお父さんの顔はにこにこ笑顔でした。

お父さんはカバンをテーブルに置くと、
すぐに今日あったことを話し始めました。

「聞いてくれよ、ウマを連れて街までの道を歩いてたらな、
 なんと、途中でウシをひいている人に出会ってな、
 聞けば連れてるウシはメウシでこれから市場に行く
 って言うんだ!」

「あら、メウシならたくさん牛乳がとれて
 ありがたいわね」

「だろう、母さんが喜ぶと思って、ウマと取り替えよう、
 って言ったらなぁ
 『ちょうどウマが欲しかったところだ』
 と言ってな
 『こんなに立派なウマならありがたい、大切にするよ』
 と、メウシを置いて、嬉しそうにウマに乗って走って
 いったよ」

「あのウマも良さそうな人にもらわれて良かったね」

「あぁ、元気よく走っていたぞ」

お父さんは話しながら椅子に座りました。

お母さんはお父さんの前のテーブルに紅茶を置き、
自分も近くの椅子に座りました。

「それでな」

お父さんの話は続きます。

「そのままメウシをつれて帰って来ても
 良かったんだけどな、せっかくだからと思って、
 市場に向かったんだ」

「フフフ、お父さんらしいわね」

「市場は広かったぞー、いろんな人がいろんな物を
 持ち寄って、いろんなもんを売ってる、って感じだ」

「楽しそうね!」

お母さんは笑顔でお父さんの話を聴きました。

「でな、市場に行ったらなぁ、これまた、
 いいヒツジがいたんだよ」

「まぁ、ヒツジなら、暖かい毛がいっぱいとれて
 ありがたいわね」

「そうだろう、母さんが喜ぶだろうと思ってなぁ、
 メウシと取り替えたんだ。メウシの方が値段が高いから、
 あっさりと取引は成立したぞ」

「そうでしょうね、良かったわね」

笑顔のお母さんの表情を見て、お父さんは満足そうに
紅茶を飲んでから、また話を始めました。

「それでな、ヒツジをつれてのんびりと市場を
 歩いていたら、今度は大きなメンドリがいてな」

「あら! メンドリなら卵をいっぱい生んでくれるから、
 ありがたいわ」

「そうだろう、母さんが喜ぶと思って、ヒツジと
 交換したんだ。ヒツジの方が値段が高いから、
 大喜びで取り替えてくれたよ」

「それは、良かったわね~」

お父さんは、紅茶を一口飲んでから続けました。

「でな、メンドリと市場を歩いていたらな、
 すごくいいものを見つけたんだよ」

「あら、なにかしら?」

「フフフ───これだよ」

お父さんはテーブルの上のカバンの中から、
キレイな魚の絵が描かれたお皿を出しました。

「まぁ、なんてキレイなの~」

お母さんはお皿をいとおしそうに持ち上げ眺めました。

今にも泳ぎ出しそうに描かれている魚は、体は白く、
ところどころに、オレンジや黒の模様がついていて、
傾きを変えると、ウロコがキラキラと輝きました。

「とってもお金に困っている人がいて、
 先祖代々伝わるお皿だと言ってこれを見せてくれたんだ。
 一目見ただけで、母さんが喜ぶと思ってな、
 メンドリと取り替えようと言ったら、
 喜んで取り替えてくれたよ」

「そう、良かったわねぇ」

お母さんは、上から見たり、裏返したり、アチコチ傾けて、
お皿を見つめていました。

「どうだ、キレイだろう」

と、お父さんが言うと、お母さんは満面な笑みを浮かべ、
目を潤ませながら、

「ありがとう、一生大切にするわ」

と、お父さんに抱き付いてキスをしました。

そして、

「ねぇ、せっかくキレイなお魚が描かれているのだから、
 お水を入れてあげましょうよ」

「いいね、そうしよう、魚も喜びそうだ」

お母さんは、さっそくコップに水を入れて、
お皿に流し込みました。

水が入り、ゆらゆら揺れ始めると、水を通して見える魚も
一緒に揺らぎました。

水の揺れに合わせて、魚は、まばゆい輝きを放ちました。

「なんてキレイなんでしょう……」

「そうだなぁ、気持ちよく泳いでいるみたいだ……」

二人はうっとりと水の中でキラキラと泳ぐ、
お皿に描かれている魚を眺めていました。

すると、突然、

“バシャーン!!”

お皿の水がはじけ飛びました。

ビックリした二人の目の前を、なにかが天井に向かって、
星屑のようなキラキラとした水しぶきを上げながら、
真っすぐ上に飛んで行きました。

それはまさしく、皿に描かれた魚でした。

魚は、星屑の水しぶきをまとい、幻想的な
輝きを散りばめながら飛んでいました。

その幻想的な光景を、ボ~~ッ、と、眺める二人でしたが、
魚はこう描いて、やがて落ちてきました。

“ドタン! バタバタバタ”

テーブルの上に落ちた魚は暴れました。

「バケツ、バケツ!」

我に返った二人。

お母さんはバケツを取にいき、お父さんは、
暴れる魚を抱え、流し台にもっていきました。

お母さんは持ってきたバケツに水を入れ、
その中に、お父さんが魚を入れてあげました。

魚は、バケツの中でゆうゆうと泳ぎ出しました。

「なんてこと! 本物の魚が出てきちゃった」

「しかも、なんてキレイな魚なんだ……」

二人は、バケツの中で、キラキラしたウロコを
輝かせながら泳ぐ魚を見つめました。

その後、試しにもう一度お皿に水を入れると、
また魚が出てきました。

何度、水を入れても魚が出てくるので、二人は、
家の庭に大きな池を掘り、たくさんの魚をそこで
飼うことにしました。

大きな池には、キレイな魚がたくさん泳いで、
毎日、キラキラと輝いていました。

近所の人は通りがかりに、キラキラしている池を眺めて、

「こんな魚は見たことない」

「なんてキレイな魚なんだ」

と、驚きと感動の声を上げ、何度も訪れました。

そして、しばらくすると、まったく知らない人が
二人の家に訪ねてきました。

「あのぉ、お庭にある魚、とてもキレイなので、
 譲ってもらえないでしょうか」

二人は、どうぞどうぞ、とタダでゆずってあげました。

お皿に水を入れただけで出てきた魚でしたから、
とても売る気にはなれませんでした。

それが評判になり、二人のもとへは、お魚を求めて
多くの人が来ました。

中には「こんな立派な魚を、タダでもらうなんて」
という人も現れて、大量のお金を置いて行くので、
二人の生活は、どんどん豊かになっていきました。

「やっぱり、お父さんのすることに間違いはないわね」

と、お母さんが言うと、

「母さんが喜ぶと思ったからな」

と、お父さんは言いました。


おしまい。



今回のもとのお話はコチラ

福娘童話集『 くさったリンゴ 』
http://hukumusume.com/douwa/pc/world/06/16.htm
福娘童話集『 宝のどんぶり 』
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━━━ お話はここまで ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



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