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「もくじ」がちょっと新しくなったよ

2018年9月16日日曜日

あなたは可愛い孫[後編]

[前編]はこちらからどうぞ



「お爺さん! お婆さん! 只今、帰りました!」

と、孫は元気よく言って家の中へ入って来ました。

「お土産を持って来ました。お魚です!」

山育ちの、お爺さんとお婆さんには、
見たことも無いほど立派な魚でした。

驚いているお爺さんとお婆さんに孫が言いました。

「そんなに驚かれなくても大丈夫ですよ。
 盗んで来た訳でもない、お世話になっているご主人が
 お爺さんとお婆さんに食わせてやれと、
 言ってくださった、ありがたいお魚です」

「お、おう、そうかぁ」

お爺さんはそう言うと、お婆さんに顔を向けました。

お婆さんも困惑した顔でお爺さんを見ていました。

「あれ、二人ともそんな顔をしてどうしたの?
 せっかくお暇をもらって久しぶりに帰ってきたんだから、
 もっと喜んでよ」

「久しぶりって……」

お婆さんは静かにつぶやきました。

「さぁ、さっそくお魚を食べましょう!」

孫はお婆さんのつぶやきには気づかず、

「僕はお昼を食べたらすぐにご主人の家に帰らなければ
 なりませんから」

孫に促され、お爺さんとお婆さんは床に座りました。

料理の得意な孫が、手際よく魚をさばき焼いてくれたので、
三人で美味しく食べました。

食事中、孫は、ずっと仕事の話をしていました。

とてもいい主人に巡り合い、仕事はキツイが、
充実した日々を過ごしている、とのことだったので、
お爺さんとお婆さんは安心しました。

食事が終わると、孫はすぐに立ち上がりました。

「おなごりおしゅうございますが、お昼の間だけ
 お暇をいただいたので、これで失礼します」

と、一礼をして出入口に向かいました。

草鞋を履いてこちらを向く孫に、お爺さんは、

「達者でな」

お婆さんは、

「身体には十分気をつけて」

と、声をかけました。

「はい、お二人も、お元気で!」

そして、背を向けると、歩いて行きました。

孫の背中をしばらく見送っていた
お爺さんとお婆さんは、お互いの顔を見合わせ、
首をかしげました。

「なんか、違ったのぉ」

「はい、でも、あれはまぎれもない、家の孫でした」

「そうじゃのうぉ……」

お爺さんとお婆さんは、頭をひねって少し考えました。

「もしかすると……」

お爺さんがお婆さんの顔を見ながら言うと、

「はい……」

と、お婆さんは頷きました。

そして、その日の夕方です。

「お爺ちゃん、お婆ちゃん、また帰ったよ!」

孫が元気に現れました。

「おー、よく来たなぁ~」

「待ってたよ、さぁ、さぁ」

お爺さんもお婆さんも笑顔で孫を迎え入れました。

そして、いつものように楽しく夕飯を食べ、川の字で寝て、
次の日の朝がきて、孫は帰って行きました。

こうした日々の生活が一カ月くらい続きました。

あの日以来、孫がお昼頃現れることはありませんでした。

しかし、夕方になると、一日置きに孫は現れました。

その日も、夕方に孫が来ました。

お爺さんとお婆さんは、いつものように笑顔で
迎え入れましたが、孫のようすが少し変です。

「どうしました?」

と、お婆さんが聴くと、孫は突然、地面に両膝をついて、
頭を下げました。

「ごめんなさい!!」

と、叫ぶ孫に、お爺さんとお婆さんが困惑していると、
孫は急に立ち上がり、後ろに向かって一回転するように
飛びました。

“ボーン!”と音とともに、煙が上がりました。

そして、煙の中から現れたのは、小さなタヌキでした。

「だまして、ごめんなさい」

と、タヌキはすまなそうな表情のまま続けました。

「最初は、軽い気持ちで、お孫さんに化けたんだ。
 でも、そのうち二人といるのが楽しくなっちゃって」

お爺さんとお婆さんは、笑みを浮かべながら、
黙って聴いていました。

「いつか謝らなきゃと思いながら、つい今まで……」

言葉を詰まらせてうつむいたタヌキに、お爺さんが、
優しい口調で言いました。

「わしらは、だまされてなんかいないよ」

「───え?」

顔を上げたタヌキに、今度は、お婆さんが言いました。

「あなたは、どんな格好をしていても、
 可愛い孫ですよ」

タヌキは、驚いた表情をしていましたが、
その目には段々と涙が溜まってきて、
今にも流れおちそうでした。

やがてタヌキは腕で涙を拭きました。

そしてまた後ろに向かって飛び上り、一回転しました。

“ボン!”

と、音とともに今度は、孫と少し違った男の子の姿が
現れました。

お爺さんとお婆さんは、その姿を見て、

「お帰り、さぁ、夕飯を食べよう」

「わたしたちの、もう一人の可愛い孫のことを、
 あなたにも話したいしね」

と、家に招き入れて、いつもと同じように、
楽しい夜を過ごしました。

その後、お爺さんとお婆さんは本当の孫にタヌキのことを
紹介しました。

本当の孫は、「お爺さんとお婆さんのことが心配だったから、
心優しいタヌキが来てくれて、これで安心だ」と言って
働きに行きました。

その後、タヌキは昼間も現れるようになって、
お爺さんとお婆さんの仕事を手伝いました。

タヌキが毎日来てくれることで、お爺さんとお婆さんは、
寂しい気分にならず、楽しく暮らすことができました。

そして、本当の孫がたまに帰ってくると、
その晩は、小さな家に収まり切れないほど、
それはそれは、賑やかな声が広がり、
穏やかに空気に包み込まれました。


おしまい。



今回のもとのお話はコチラ

福娘童話集『 ふたりになった孫 』
http://hukumusume.com/douwa/pc/jap/06/12.htm



━━━ お話はここまで ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


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