※童話の更新は週1回(だいたい土曜日の夜)です(^0^)/

≫≫≫ ☆ もくじ ☆ ≪≪≪

2018年9月23日日曜日

お父さんが選んだもの

むかしむかし、ある村に仲のいい夫婦がいました。

「ねぇ、お父さん」

「なんだい、母さん」

それはある日の朝のことでした。

「今日は、街の市場がオープンする日ですよ」

「おう、そうだった、そうだった」

「うちにいるウマは、立派だから、
 きっと欲しがる人がいるはずです」

「あぁ、せっかく立派なウマなのに、わたしたちは、
 小屋につないでいるだけだもんな」

「ホント、あのウマがかわいそうだわ、もっと役立つ
 ところへ行って活躍して欲しいわね」

「そうだな、じゃぁ、ウマを連れて、
 ちょっくら市場へ行ってくるよ」

と、お父さんは早速、出かける準備を始めました。

お母さんはお気に入りのネクタイを持って来て、
お父さんの首にかけてあげました。

「ありがとう」

お父さんはそう言ったあと、こう続けました。

「ところで、ウマは、なにと取り替えてくればいい?」

「そうね……」

と、お母さんは、お父さんのカバンを持ちあげ、

「お父さんにまかせるわ、だって、お父さんのすることに、
 間違えはないから」

と、言いながら、カバンをお父さんに渡しました。

お父さんは、受け取ったカバンを肩から斜めにかけ、

「そうか、それなら私の判断で替えてこよう」

「えぇ、ステキなものと替えて来てね」

「分った、楽しみに待っていてくれ」

お父さんはウマをひきながら、腕を大きく振り、
出かけていきました。

「気をつけて」

お母さんは笑顔で見送りました。


そして時は過ぎ、その日の夕方、

「ただいま!」

帰って来たお父さんの顔はにこにこ笑顔でした。

お父さんはカバンをテーブルに置くと、
すぐに今日あったことを話し始めました。

「聞いてくれよ、ウマを連れて街までの道を歩いてたらな、
 なんと、途中でウシをひいている人に出会ってな、
 聞けば連れてるウシはメウシでこれから市場に行く
 って言うんだ!」

「あら、メウシならたくさん牛乳がとれて
 ありがたいわね」

「だろう、母さんが喜ぶと思って、ウマと取り替えよう、
 って言ったらなぁ
 『ちょうどウマが欲しかったところだ』
 と言ってな
 『こんなに立派なウマならありがたい、大切にするよ』
 と、メウシを置いて、嬉しそうにウマに乗って走って
 いったよ」

「あのウマも良さそうな人にもらわれて良かったね」

「あぁ、元気よく走っていたぞ」

お父さんは話しながら椅子に座りました。

お母さんはお父さんの前のテーブルに紅茶を置き、
自分も近くの椅子に座りました。

「それでな」

お父さんの話は続きます。

「そのままメウシをつれて帰って来ても
 良かったんだけどな、せっかくだからと思って、
 市場に向かったんだ」

「フフフ、お父さんらしいわね」

「市場は広かったぞー、いろんな人がいろんな物を
 持ち寄って、いろんなもんを売ってる、って感じだ」

「楽しそうね!」

お母さんは笑顔でお父さんの話を聴きました。

「でな、市場に行ったらなぁ、これまた、
 いいヒツジがいたんだよ」

「まぁ、ヒツジなら、暖かい毛がいっぱいとれて
 ありがたいわね」

「そうだろう、母さんが喜ぶだろうと思ってなぁ、
 メウシと取り替えたんだ。メウシの方が値段が高いから、
 あっさりと取引は成立したぞ」

「そうでしょうね、良かったわね」

笑顔のお母さんの表情を見て、お父さんは満足そうに
紅茶を飲んでから、また話を始めました。

「それでな、ヒツジをつれてのんびりと市場を
 歩いていたら、今度は大きなメンドリがいてな」

「あら! メンドリなら卵をいっぱい生んでくれるから、
 ありがたいわ」

「そうだろう、母さんが喜ぶと思って、ヒツジと
 交換したんだ。ヒツジの方が値段が高いから、
 大喜びで取り替えてくれたよ」

「それは、良かったわね~」

お父さんは、紅茶を一口飲んでから続けました。

「でな、メンドリと市場を歩いていたらな、
 すごくいいものを見つけたんだよ」

「あら、なにかしら?」

「フフフ───これだよ」

お父さんはテーブルの上のカバンの中から、
キレイな魚の絵が描かれたお皿を出しました。

「まぁ、なんてキレイなの~」

お母さんはお皿をいとおしそうに持ち上げ眺めました。

今にも泳ぎ出しそうに描かれている魚は、体は白く、
ところどころに、オレンジや黒の模様がついていて、
傾きを変えると、ウロコがキラキラと輝きました。

「とってもお金に困っている人がいて、
 先祖代々伝わるお皿だと言ってこれを見せてくれたんだ。
 一目見ただけで、母さんが喜ぶと思ってな、
 メンドリと取り替えようと言ったら、
 喜んで取り替えてくれたよ」

「そう、良かったわねぇ」

お母さんは、上から見たり、裏返したり、アチコチ傾けて、
お皿を見つめていました。

「どうだ、キレイだろう」

と、お父さんが言うと、お母さんは満面な笑みを浮かべ、
目を潤ませながら、

「ありがとう、一生大切にするわ」

と、お父さんに抱き付いてキスをしました。

そして、

「ねぇ、せっかくキレイなお魚が描かれているのだから、
 お水を入れてあげましょうよ」

「いいね、そうしよう、魚も喜びそうだ」

お母さんは、さっそくコップに水を入れて、
お皿に流し込みました。

水が入り、ゆらゆら揺れ始めると、水を通して見える魚も
一緒に揺らぎました。

水の揺れに合わせて、魚は、まばゆい輝きを放ちました。

「なんてキレイなんでしょう……」

「そうだなぁ、気持ちよく泳いでいるみたいだ……」

二人はうっとりと水の中でキラキラと泳ぐ、
お皿に描かれている魚を眺めていました。

すると、突然、

“バシャーン!!”

お皿の水がはじけ飛びました。

ビックリした二人の目の前を、なにかが天井に向かって、
星屑のようなキラキラとした水しぶきを上げながら、
真っすぐ上に飛んで行きました。

それはまさしく、皿に描かれた魚でした。

魚は、星屑の水しぶきをまとい、幻想的な
輝きを散りばめながら飛んでいました。

その幻想的な光景を、ボ~~ッ、と、眺める二人でしたが、
魚はこう描いて、やがて落ちてきました。

“ドタン! バタバタバタ”

テーブルの上に落ちた魚は暴れました。

「バケツ、バケツ!」

我に返った二人。

お母さんはバケツを取にいき、お父さんは、
暴れる魚を抱え、流し台にもっていきました。

お母さんは持ってきたバケツに水を入れ、
その中に、お父さんが魚を入れてあげました。

魚は、バケツの中でゆうゆうと泳ぎ出しました。

「なんてこと! 本物の魚が出てきちゃった」

「しかも、なんてキレイな魚なんだ……」

二人は、バケツの中で、キラキラしたウロコを
輝かせながら泳ぐ魚を見つめました。

その後、試しにもう一度お皿に水を入れると、
また魚が出てきました。

何度、水を入れても魚が出てくるので、二人は、
家の庭に大きな池を掘り、たくさんの魚をそこで
飼うことにしました。

大きな池には、キレイな魚がたくさん泳いで、
毎日、キラキラと輝いていました。

近所の人は通りがかりに、キラキラしている池を眺めて、

「こんな魚は見たことない」

「なんてキレイな魚なんだ」

と、驚きと感動の声を上げ、何度も訪れました。

そして、しばらくすると、まったく知らない人が
二人の家に訪ねてきました。

「あのぉ、お庭にある魚、とてもキレイなので、
 譲ってもらえないでしょうか」

二人は、どうぞどうぞ、とタダでゆずってあげました。

お皿に水を入れただけで出てきた魚でしたから、
とても売る気にはなれませんでした。

それが評判になり、二人のもとへは、お魚を求めて
多くの人が来ました。

中には「こんな立派な魚を、タダでもらうなんて」
という人も現れて、大量のお金を置いて行くので、
二人の生活は、どんどん豊かになっていきました。

「やっぱり、お父さんのすることに間違いはないわね」

と、お母さんが言うと、

「母さんが喜ぶと思ったからな」

と、お父さんは言いました。


おしまい。



今回のもとのお話はコチラ

福娘童話集『 くさったリンゴ 』
http://hukumusume.com/douwa/pc/world/06/16.htm
福娘童話集『 宝のどんぶり 』
http://hukumusume.com/douwa/pc/minwa/06/14.htm



━━━ お話はここまで ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



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2018年9月16日日曜日

あなたは可愛い孫[前編]

むかしむかしある村に、お爺さんとお婆さんと
男の子の孫と三人で暮らしている家がありました。

孫のお父さんとお母さんは、早くに亡くなって
しまいました。

そのため親のかわりにお爺さんとお婆さんが、
孫と一緒に暮らしていたのです。

孫は、とても賢く優しい子でした。

しば刈りに出かけるお爺さんに付いて行き、
カマを持って一緒に芝刈りをし、
畑に来ては、耕すお婆さんの横で、
クワを持って一緒になって耕しました。

料理をするのも得意で、料理と呼べるものを作るほど、
家には食材はありませんでしたが、質素ながらも、
とても美味しい食事を、働いている二人のために
作っていました。

三人は仲良く暮らしていましたが、
とても貧しい生活をおくっていました。

ある時、孫が言いました。

「僕が、お金持ちの家に行って働いてくる、そうすれば、
 お爺さんもお婆さんも楽に暮らせるようになるから」

その時代、お金に困った家の子どもは、遠く離れた
お金持ちの家に住み込みで働きに行っていました。

お爺さんとお婆さんがとめるのも聴かず、孫は、
近所の人の紹介で、お金持ちの家へ住み込みで働きに
行ってしまいました。

お爺さんとお婆さんは、孫がいなくなって寂しくて
仕方ありませんでした。

生活が楽になるより、孫と一緒に生活しているほうが、
ずっと楽しかったからです。

お爺さんとお婆さんは寂しい思いをしましたが、
自分たちのために孫が一生懸命働いていると思い、
寂しい思いを押し込めて、自分たちも精一杯働きました。

そして、孫が働きに出て一週間くらいたった
ある日のことです。

会話もなく二人で夕飯を食べようとしていた時、

「お爺ちゃん、お婆ちゃん、お休みもらって帰って来たよ」

と、孫が帰ってきました。

お爺さんもお婆さんも予想していなかったので、
目が飛び出るくらい驚きました。

でも、孫の顔を見ると、目はあっという間に細くなって、
にこにこ笑顔で、孫を向かい入れました。

「よく帰って来たなぁ」

その晩は久しぶりに夕飯を三人で食べました。

とても質素なご飯でしたが、とても楽しいひと時でした。

「どうだい、仕事は順調かい」

お爺さんが訪ねると、

「あ、うん、とてもお金持ちの家で働いているよ」

「そうか、そうか」

お爺さんは笑顔で何度もうなずきました。

「身体はきつくないかい」

お婆さんが訪ねると、

「う、うん、大丈夫、とてもだいじにしてくれるよ」

「そうかい、それはよかったねぇ」

それから三人はたわいもない話をしました。

この家で、こんなに楽しそうな声がするのは、
久しぶりのことでした。

「ところで、お暇はいつまでなんだい」

お爺さんが聞くと、

「えーと、明日の朝には帰らないといけない」

「えーっ、そうかい、忙しいなぁ」

と、お爺さんは驚き、

「まぁ、そんなにお暇もいただける訳がないから、
 仕方がありませんねぇ」

お婆さんは悲しい顔をしました。

「ま、まぁ、またお休みをもらえたら、
 すぐに帰って来るから、そんな顔しないで」

と、孫が言うと、お婆さんはうっすらと笑みを
浮かべました。

三人はその晩、川の字に並んで寝ました。

そして、朝早く、孫はお金持ちの家に帰っていきました。

孫がいなくなり、お爺さんとお婆さんは、
また寂しい気分になりました。

「次は、いつ帰って来るのかのぉ」

「いつでしょうねぇ」

二人はそう声をかけたあと、それぞれの仕事を
淡々とこなしました。

こうして、次に孫に会えるのはだいぶ先だと思っていた
二人の前に、孫が現れました。

「お爺ちゃん! お婆ちゃん! 帰ったよ」

「おや」

「まぁ」

それは、孫がお金持ちの家に帰った次の日の夕方でした。

「また、お休みもらえたから、すぐに帰って来ただよ」

お爺さんとお婆さんは、少し不思議に思いましたが、
喜んで孫と三人で、楽しい夕飯を食べ、川の字になって
眠りました。

次の日の朝、孫はお金持ちの家に帰りました。

「次は、いつ帰って来るのかのぉ」

と、お爺さんが言うと、

「明日かも、しれませんねぇ」

と、お婆さんが言うので、二人は顔を見合わせて、
まさかね、と笑いました。

しかし、そのまさかが起きました。

次の日のお昼過ぎに、また孫が帰って来たからです。



[後編]へつづく……


あなたは可愛い孫[後編]

[前編]はこちらからどうぞ



「お爺さん! お婆さん! 只今、帰りました!」

と、孫は元気よく言って家の中へ入って来ました。

「お土産を持って来ました。お魚です!」

山育ちの、お爺さんとお婆さんには、
見たことも無いほど立派な魚でした。

驚いているお爺さんとお婆さんに孫が言いました。

「そんなに驚かれなくても大丈夫ですよ。
 盗んで来た訳でもない、お世話になっているご主人が
 お爺さんとお婆さんに食わせてやれと、
 言ってくださった、ありがたいお魚です」

「お、おう、そうかぁ」

お爺さんはそう言うと、お婆さんに顔を向けました。

お婆さんも困惑した顔でお爺さんを見ていました。

「あれ、二人ともそんな顔をしてどうしたの?
 せっかくお暇をもらって久しぶりに帰ってきたんだから、
 もっと喜んでよ」

「久しぶりって……」

お婆さんは静かにつぶやきました。

「さぁ、さっそくお魚を食べましょう!」

孫はお婆さんのつぶやきには気づかず、

「僕はお昼を食べたらすぐにご主人の家に帰らなければ
 なりませんから」

孫に促され、お爺さんとお婆さんは床に座りました。

料理の得意な孫が、手際よく魚をさばき焼いてくれたので、
三人で美味しく食べました。

食事中、孫は、ずっと仕事の話をしていました。

とてもいい主人に巡り合い、仕事はキツイが、
充実した日々を過ごしている、とのことだったので、
お爺さんとお婆さんは安心しました。

食事が終わると、孫はすぐに立ち上がりました。

「おなごりおしゅうございますが、お昼の間だけ
 お暇をいただいたので、これで失礼します」

と、一礼をして出入口に向かいました。

草鞋を履いてこちらを向く孫に、お爺さんは、

「達者でな」

お婆さんは、

「身体には十分気をつけて」

と、声をかけました。

「はい、お二人も、お元気で!」

そして、背を向けると、歩いて行きました。

孫の背中をしばらく見送っていた
お爺さんとお婆さんは、お互いの顔を見合わせ、
首をかしげました。

「なんか、違ったのぉ」

「はい、でも、あれはまぎれもない、家の孫でした」

「そうじゃのうぉ……」

お爺さんとお婆さんは、頭をひねって少し考えました。

「もしかすると……」

お爺さんがお婆さんの顔を見ながら言うと、

「はい……」

と、お婆さんは頷きました。

そして、その日の夕方です。

「お爺ちゃん、お婆ちゃん、また帰ったよ!」

孫が元気に現れました。

「おー、よく来たなぁ~」

「待ってたよ、さぁ、さぁ」

お爺さんもお婆さんも笑顔で孫を迎え入れました。

そして、いつものように楽しく夕飯を食べ、川の字で寝て、
次の日の朝がきて、孫は帰って行きました。

こうした日々の生活が一カ月くらい続きました。

あの日以来、孫がお昼頃現れることはありませんでした。

しかし、夕方になると、一日置きに孫は現れました。

その日も、夕方に孫が来ました。

お爺さんとお婆さんは、いつものように笑顔で
迎え入れましたが、孫のようすが少し変です。

「どうしました?」

と、お婆さんが聴くと、孫は突然、地面に両膝をついて、
頭を下げました。

「ごめんなさい!!」

と、叫ぶ孫に、お爺さんとお婆さんが困惑していると、
孫は急に立ち上がり、後ろに向かって一回転するように
飛びました。

“ボーン!”と音とともに、煙が上がりました。

そして、煙の中から現れたのは、小さなタヌキでした。

「だまして、ごめんなさい」

と、タヌキはすまなそうな表情のまま続けました。

「最初は、軽い気持ちで、お孫さんに化けたんだ。
 でも、そのうち二人といるのが楽しくなっちゃって」

お爺さんとお婆さんは、笑みを浮かべながら、
黙って聴いていました。

「いつか謝らなきゃと思いながら、つい今まで……」

言葉を詰まらせてうつむいたタヌキに、お爺さんが、
優しい口調で言いました。

「わしらは、だまされてなんかいないよ」

「───え?」

顔を上げたタヌキに、今度は、お婆さんが言いました。

「あなたは、どんな格好をしていても、
 可愛い孫ですよ」

タヌキは、驚いた表情をしていましたが、
その目には段々と涙が溜まってきて、
今にも流れおちそうでした。

やがてタヌキは腕で涙を拭きました。

そしてまた後ろに向かって飛び上り、一回転しました。

“ボン!”

と、音とともに今度は、孫と少し違った男の子の姿が
現れました。

お爺さんとお婆さんは、その姿を見て、

「お帰り、さぁ、夕飯を食べよう」

「わたしたちの、もう一人の可愛い孫のことを、
 あなたにも話したいしね」

と、家に招き入れて、いつもと同じように、
楽しい夜を過ごしました。

その後、お爺さんとお婆さんは本当の孫にタヌキのことを
紹介しました。

本当の孫は、「お爺さんとお婆さんのことが心配だったから、
心優しいタヌキが来てくれて、これで安心だ」と言って
働きに行きました。

その後、タヌキは昼間も現れるようになって、
お爺さんとお婆さんの仕事を手伝いました。

タヌキが毎日来てくれることで、お爺さんとお婆さんは、
寂しい気分にならず、楽しく暮らすことができました。

そして、本当の孫がたまに帰ってくると、
その晩は、小さな家に収まり切れないほど、
それはそれは、賑やかな声が広がり、
穏やかに空気に包み込まれました。


おしまい。



今回のもとのお話はコチラ

福娘童話集『 ふたりになった孫 』
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2018年9月9日日曜日

神さまのその奥に

むかしむかし、ある村に、修行中の若いお坊さんが
いました。

若いお坊さんは山にこもり、事故や災害で
亡くなった人の魂を沈める修行をしていました。

事故で誰かが亡くなったとの報せが入ればお経を唱え、
災害が発生したと報せが入ればお経を唱えました。

その年は、痛ましい事故や大きな災害が多くあり、
若いお坊さんは、ずっとお経を唱え続けました。

報せが入れば、食事もとらず、睡眠もとりません。

そんな修行をしていたある日のこと、
若いお坊さんはお経を唱えながら、体がゆらゆらと
ひとりでに揺れている感覚に襲われました。

(いかん、いかん、集中せねば~)

お坊さんは、お経を唱えることに集中しました。

しかし、ほとんど食事も睡眠もとらず、お経を唱え続けて、
早や3日、お坊さんの体は限界にきていました。

(───あ、───力が……)

若いお坊さんはお経を唱えながら、

“バタン!”

と、前のめりに倒れ込んでしまいました。

しかし、倒れ込んだはずなのにお坊さんは、
痛くも痒くもありませんでした。

それどころか、なんだか体が軽くふわふわした
感触に包まれました。

とてもいい気分です。

そのまま、お坊さんはふわふわと空中に浮かぶような
感覚になりました。

(あぁ~、わたしは浮いている~)

ふわふわとただよっていると、遠くの方に、
手を振っている人がいました。

若いお坊さんは、ふわふわとそちらに近づいていきました。

手を振っていたのは、白くて長い眉毛がとても似合う、
お坊さんの姿をした、おじいちゃんでした。

「よく来たなぁ」

と、おじいちゃんは、眉毛と同じくらい目尻を
下げた笑顔で言いました。

若者はこのおじいちゃんをどこかで見たことがありました。

でも、なんだか思い出せませんでした。

おじいちゃんは言います。

「ここは魂がたくさんおるところじゃ、
 案内するからついて来るがいい。
 でもその前に、神々にあいさつじゃ」

「神、さま?」

おじいちゃんは右手の手を胸の辺りの高さで、
手のひらを上に向けて、外に開き、

「こちらじゃ」

と促しました。

若いお坊さんがついて行くと、とてもキラキラした
世界が目の前に広がりました。

くねくねした道が通り、その両側には、
赤や緑や金色をした家のようなものが並んでいます。

家の屋根や柱には、細かい彫刻や絵などの装飾が施され、
それはそれは立派なものでした。

おじいちゃんについて道に足を踏み入れると、
家に見えたのは、立派な屋根の付いたイスで、
誰かがそこに座っていました。

「ここからは自然界の神じゃ」

「自然界の神?」

若いお坊さんが不思議そうな声を出すと、

「こちらが、空の神じゃ」

と、おじいちゃんが言うので、若いお坊さんは深々と
頭を下げました。

青い顔の空の神は、静かに目を閉じて頷きました。

「こちらは、風の神じゃ」

風の神の銀色の髪の毛は、風など吹いていないのに、
ゆらゆらと動いていました。

「こちらは山の神じゃ」

とんがった頭から、もくもくと煙が出ていました。

おじいちゃんは、神さまを1人ずつ紹介し、
若いお坊さんはその度に、深々とお辞儀をしました。

(たくさんの自然の神さまがいるんだなぁ……)

と、お坊さんはありがたい気持ちに包まれました。

自然界の神さまの次は、イヌやウシなどの、
生物の神さまがいて、その次には、
感情の神さまがいました。

「こちらは喜びの神さまじゃ」

喜びの神さまが、無くなるくらい目を細くして、
微笑みを向けてくれました。

「こちらは悲しみの神さまじゃ」

悲しみの神さまは、涙を流し、とても辛そうな
表情でしたが、口元にちょっとした笑みを浮かべ、
軽く頭を下げてくれました。

その後、怒りの神さま、嫉妬の神さまなど、
様々な感情の神さまを紹介された若いお坊さんは、

(こんなに、感情はあるのだなぁ……)

と、人の思いの強さをしみじみと感じました。

「さて、ここで神との挨拶はおしまいじゃ、
 この先には、魂たちがいる、
 しばらく会っていってやってくれぬか」

「かしこまりました」

若いお坊さんは、深々と頭を下げました。

「お坊さん」

と、突然、声を掛けられたので、若いお坊さんは
すぐに頭を上げました。

「わしは、くまの村のたぬ吉と申します」

と、若いお坊さんと同じくらいの年の男の人が
頭を下げました。

若いお坊さんも頭を下げた後で、たぬ吉が言いました。

「こっちで元気にやってるから、心配すんな、と
 家族に伝えてください」

たぬ吉は両ひざに両手をあてて深々とお辞儀をしました。

若いお坊さんも、手を合わせて深々とお辞儀をしました。

「わたくし、のだ村の、おつると申します」

今度は女性が現れました。

若いお坊さんが挨拶をすると、おつるは言いました。

「息子に、お母さんはあなたを愛していますよ、
 と伝えてください」

と、言いました。

「確かに伝えますよ」

と、若いお坊さんが言うと、
おつるは、涙を着物の袖でふいていました。

次に来たのは、

「あとま村のさきちと言います」

若いお坊さんより、少し年上のように感じる、
男の人がきて言いました。

「今年も、おいしいイモが採れたらお供えしてくれ、
 と伝えてください」

「かしこまりました」

若いお坊さんは手を合わせて、お辞儀をしました。

その後も、若いお坊さんの前には何人もの人が現れ、

「ずっと見守っているよ」
「俺の分まで、幸せになってくれよ」
「新米が採れたら、すぐに供えてちょうだい」
「水より、酒をかけてくれ」
「一緒に暮せて楽しかったよ」

と、思い思いの言葉を口にしました。

若いお坊さんは、1人1人の話を丁寧に聴いて、
手を合わせて深々とお辞儀をしました。

いったい、何人と話をしたのでしょう。

何日も時間が経ったように感じましたが、不思議なことに、
若いお坊さんはまったく疲れませんでした。

そして、最後の1人の話を聴いて、深々と頭を下げると、
かたわらに、お坊さんの姿をしたおじいちゃんが立っていて、

「みんなの話を聴いてくれてありがとう」

と、ニコニコ笑顔で言いました。

「いいえ、わたしは当然のことをしたまでです」

若いお坊さんは手を合わせて言いました。

おじいちゃんはニコニコとした笑顔のままで、

「わしはここに残らにゃならん、おまえは、
 1人で帰れるな」

と言いました。

「かしこまりました、1人で帰れます」

と、若いお坊さんが言うと、体が
ふわふわと浮かび上がりました。

「さようなら」

と、手を振ると、おじいちゃんも優しい笑顔で、
手を振ってくれました。

体はどんどんふわふわと浮いて行き、
おじいちゃんの姿が遠くなって行きました。

やがて目の前は、真っ白な世界に包まれ、
その後暗くなりました。


───目を開けてぼんやりとしていました。

そこが、修行していたお寺の一室だと気づくのに、
だいぶ時間が掛かりました。

周りで、「目が覚めた」「よかった」「生き返った」との
声が聞こえました。

「はっ!」

若いお坊さんは目を見開いて飛び起きました。

「こうしちゃいられない」

と、慌ててどこかに行こうとしている若いお坊さんを、
周りにいたお坊さんが慌てて止めました。

「おいおい、13日間も気を失っていたと思ったら、
 今度は慌ててどこへ行くんだい」

心配するお坊さんたちに、若いお坊さんは、
気を失っていた間に魂の世界に行ったことを話しました。

周りのお坊さんたち半信半疑で聞いていましたが、
若いお坊さんは話をしながら、旅仕度をすませました。

そして、すぐに旅立ちました。
魂からの言葉を、この世に生きる者に伝えるために。


おしまい。


今回のもとのお話はコチラ

福娘童話集『 あの世で頼まれたことづけ 』
http://hukumusume.com/douwa/pc/kaidan/06/12.htm


━━━ お話はここまで ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

心の復興は、あなたのペースで、ゆっくりと。


2018年9月1日土曜日

鳥たちのくつろぎ温泉

山のおくのそのまたおくに、鳥がいっぱい住んでいる
鳥の国がありました。

鳥の国には山のおくにあるからか、
たくさんの温泉がありました。

鳥たちは、毎日、夜寝る前に温泉に入ります。

なので夕方になると、温泉に鳥たちが集まってきます。

最初にきたのは、長い足のフラミンゴです。

フラミンゴは、長い足を軽やかに上げて、
温泉の湯の中に入りました。

静かに温泉の中ほどまで歩くと、立ち止まり、
すらりと伸びた足の左側をすっと上げて、温泉から出し、
体に近づけて羽毛の中にしまいました。

「ふ~っ、気持ちいい」

フラミンゴは息を吐くように言って、のんびりと、
一本足だけを温泉につけて立っていました。

次に温泉に来た鳥は、スズメでした。

片足だけ温泉につけているフラミンゴの横で、
スズメは温泉に飛びこむように入りました。

「あつい!あつい!」

スズメは小さな体で、温泉の上を、
ちょこまか、ちょこまか、と泳ぎました。

「うぅぅ…もうダメだ!」

と、叫ぶと、スズメは小さな羽を小刻みに羽ばたかせ、
飛んでいってしまいました。

スズメのいなくなったあとフラミンゴは、なにごとも
なかったように、静かに左足を降ろして温泉につけ、
変わりに、右足を上げて、温泉から出しました。

「ふ~っ、気持ちいい」

スズメの次に来たのは、ツバメでした。

ツバメは、物凄いスピードを出して、温泉に向かって
飛んで来ました。

そして、高速スピードのまま、温泉にお腹だけをつけて、
端から端まで、

シューン!

と、温泉の上をすべるように進み、
そのまま飛び去っていきました。

ツバメが高速で温泉につかって飛んでいっても、
フラミンゴは、なにごともなかったかのように、
気持ちよさそうに片足を温泉につけていました。

「ふ~っ、気持ちいい」

次に来たのは、ハクチョウでした。

ハクチョウは、温泉に近づくと、まず、温泉のふちに
しゃがみ、羽をきようにつかって、温泉のお湯を
自分の体にかけました。

「フラミンゴさん、こんにちは」

ハクチョウはフラミンゴに挨拶してから温泉に入りました。

「ハクチョウさん、ごきげんうるわしゅう」

フラミンゴはそう言いながら、左側の足を降ろし、
温泉の中に入れ、変わりに右側の足を上げました。

ハクチョウは、フラミンゴと少し離れたところまで、
ゆったりと泳いでいどうしました。

そして、フラミンゴと距離ができると、おもむろに、

“バシャーン”

と、両羽を温泉に叩きつけました。

ハクチョウの周りに、湯気とともにお湯が舞い上がり、
そのままハクチョウの羽の上に落ちました。

すると、今度は片方の羽を叩きつけて、
やがて羽を交互に温泉に叩きつけました。

“バシャバシャ、バシャバシャ”

たくさんのお湯と、ハクチョウの体が見えなくなる
くらいの湯気が舞い上がりました。

ハクチョウの舞い上げたお湯は、
フラミンゴにもかかりました。

シャワーのように感じるので、フラミンゴは、
ハクチョウが舞い上げるお湯を浴びるが好きでした。

そのあと、ハクチョウは体を右に傾けました。

“ザバーン”

つづいて左に傾けます。

“ザバーン”

最後は、頭から飛び込むように、
温泉の中に体を入れました。

“バッサーン!!”

派手にお湯が舞い上がり、
フラミンゴの体にも大量にかかりました。

ハクチョウは温泉の中から顔を出すと、
すました顔をして、温泉の端まで泳ぎ、
静かに温泉から出て、

“ブルブル、ブルル”

と、濡れた体を震わしました。

体が渇くと、振り返り、

「ごきげんよう」

と、フラミンゴに挨拶をして帰っていきました。

フラミンゴは立ち去るハクチョウを見送りながら、
ブルブル、と軽く体を震わせたあと、
右足を下げ、左足を上げました。

片足で温泉を楽しみながらフラミンゴは思いました。

「今日は、カラスさんはくるのかなぁ」

フラミンゴはその後、温泉につける足を変えながら、
しばらく温泉につかっていました。

やがて、お日様は沈み、辺りは暗くなってきました。

鳥の国に夜が訪れます。

「ふ~、心地よかった~……、
 さて、そろそろ帰るか~」

フラミンゴは両方の足を温泉の中に入れ、
両足で走り出し、羽をバッサバッサと羽ばたかせ、
飛び上り、そのまま飛んで帰っていきました。

辺りは暗くなり、この後で、
温泉にくる鳥はいませんでした。

こうやって鳥たちは、毎日、同じように
温泉に入っていました。

熱がりですぐに出てしまうスズメは茶色の体になりました。

高速でお腹だけを温泉につけて飛び去ったツバメは、
お腹だけが白くなりました。

温泉のなかで、羽をバシャバシャやっていたハクチョウは、
汚れがキレイに落ちて真っ白になりました。

片方の足をずっと温泉につけていたフラミンゴは、
ハクチョウの舞い上げるお湯を浴びたおかげで、
体はキレイになりましたが、長い時間
温泉に入っていたので、体がポッカポカになり、
ピンク色になりました。

そして、とうとう温泉に入りに来なかったカラスは、
真っ黒な体になったとのことでした。


おしまい。



今回のもとのお話はコチラ

福娘童話集『 大根が白いわけ 』
http://hukumusume.com/douwa/pc/kobanashi/06/09.htm



━━━ お話はここまで ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



☆ちょこっとHappy♪☆

今回の鳥たちは、自分の好きなように温泉に入り、
温泉の入り方で、自分たちの体の色が決まっていきました。

そんな生き方ができたら、自己嫌悪になんかならずに生きて
行けるような気がします。

自己嫌悪におちいってしまうかたの多くは、
自分への期待値が多いと言われています。

「こんなはずじゃない」
「なぜ、こうじゃないんだ」

という思いが自己嫌悪に繋がります。

その判断基準になっているのは、
他人との比較の場合が多いです。

「あの人はこうなのに、なんでわたしは~」

と、言った具合です。

そんなことを思う人に対して、

「他人と比べるなんて、意味がない!」

と、人は良く口にします。

しかし、自己嫌悪におちいっているときに、
そんなことを言われても、受けいれられるハズが
ありません。

そんなとき、どうぞ今回のお話を思い出してください。

鳥たちは、自分たちのペースで
好きなように温泉に入ります。

そして、鳥たちは自分の色に染まっていくのです。

自分が「気持ちいい」「心地いい」と思えることを、
たったひとつでもいいから、見つけてください。
感じてください。

そして、それだけは他人から何か言われても、、
変な目で見られても、変えないでください。

自分が「気持ちいい」「心地いい」と思えるものができれば、
そこだけは、あなたが、自己嫌悪にならずに済む場所
となります。

大切なことは、自分が「気持ちいい」「心地いい」
と思えるものに素直になることです。

素直に自分の気持ちを受け入れて、感じてみましょう。

そして、素直に自分の色に染まりましょう。

ただし、法律や規則には十分注意してくださいね。


今日のHappyポイント♪
『 気持ちいい、心地いいを、素直に大切に! 』


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