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「もくじ」がちょっと新しくなったよ

2018年8月26日日曜日

お手伝いさん家のお化け[前編]

昔々のお話です。

ユタカさんとサチコさんという、とても仲のいい
夫婦がいました。

2人は、お金持ちのお屋敷でお手伝いさんとして
働いていました。

朝早くから、ユタカさんは庭の手入れ。

サチコさんは朝ごはんの仕度。

お屋敷の家族がでかけると、今度は、ユタカさんは
広いお屋敷を隅から隅までチリ1つ残らないほど
キレイにお掃除。

サチコさんは、お屋敷の家族5人分の衣服を
洗濯しました。

お昼を食べる以外、2人はずっと働いて、家族5人が、
全員寝室に入ると、やっと仕事が終わりになり、
お家に帰ることができました。

2人の家は、お屋敷から少し離れたところにあります。

なにもない田舎道を歩いて着く家は、
お屋敷の一部屋分もない狭くて古い家でした。

毎日、狭くて古い家から、豪華なお屋敷に出かけ、
一日中働いて、またこの家に帰って来る。

ユタカさんとサチコさんは、この生活にとても満足し、
誇りを持って真面目に仕事を続けました。

ある日のこと、2人はいつものように働いていると、
突然、お屋敷の主人に、話があるから部屋に来るようにと
呼び出されました。

こんなことは初めてだったので、2人はビックリしました。

「なんだろう、話って」

と、ユタカさんが言うと、

「なんだろうねぇ、急に改まって」

サチコさんは心配そうに答えました。

「まさか、仕事がなくなるなんて、ないよなぁ」

「まさか、突然、それはないでしょう」

2人で、そんなことを話しながら、
おそるおそる主人の部屋に行きました。

「失礼します」

ユタカさんがノックして主人の部屋の扉を開けると、
部屋の中には、主人の他に、奥様、そして、
学校へ行っているはずの、3人の子どもたちがいました。

おそるおそるやって来た2人とは対照的に、
主人たちはみんなニコニコ笑顔で立っていました。

主人は2人に向けて両手を広げて言いました。

「さぁ、今日の主人公が来たぞ!」

キョトンとしている2人に、子どもたちが駆け寄って来て、
コッチにきてと、手を引き、背中を押しました。

そして、2人が主人と奥様の近くに立つと、
子どもたちは離れ、主人と奥様の隣に並びました。

なにが始まるのか、不安そうに2人が立っていると、
主人が改まった口調で言いました。

「おまえたち、今日まで、よく働いてくれました」

「はぁ、」

ユタカさんが、静かに声をだしました。

「今日までの仕事ぶりに、とても感謝します」

「あ、ありがとうございます」

サチコさんも静かにこたえます。

2人は、まだなにを言われるのか、ドキドキしながら、
話を聞いていました。

そんな2人のドキドキなど構わずに、
主人は明るい声で言いました。

「ところで、今日はなんの日かご存知かな?」

「え?」

2人は不思議そうな顔をして、お互いを見ました。

奥様は、「フフフ」と笑いました。

主人は奥様の顔を、一瞬見てから、
2人に向かって言いました。

「おまえたちが、我が屋敷に来てから、
 今日で、ちょうど10年だ!」

おめでとーう!!! と奥様と子どもたちが、
盛大な拍手をしました。

「おや」

「まぁ」

2人は驚いた表情を浮かべました。

主人は奥様に顔を向けました。

それを受けるように、奥様は2人に向かって言いました。

「私たちはとても感謝しています。
そこで、お礼の気持ちとして、プレゼントをしようと
思ってるの」

「え?」

2人はさらに驚いた表情になって、

「いやいやいや、お気持ちだけで」

ユタカさんは両手を振りながら言いました。

サチコさんも大きく何度もうなずきました。

「いや、心配するな」

と主人が話を続けます。

「そんなにいいもんじゃないのだ。
おまえたちに家をやろうと思ってな」

「い、家ですか!」

と驚く2人に奥様が、

「そんなに良い家じゃないのよ。
ほら、通ってもらうのも大変だから、
同じ敷地に、住んでもらおうと」

「いやでも」

と慌てる2人に、今度は主人が、

「いや、本当にそんなにいいもんじゃないんだ。
 元々はお手伝いさん用の家だったんだが、
 使わなくなってから、だいぶ立ってるから、
 汚れているし、それに……」

主人が少し言葉を濁したので、2人は身構えました。

少し間を置いて、主人は話ます。

「ちょっと、お化けが出るとのうわさがあるんだ」

「お化け!!」

と、2人は驚きました。

驚いている2人の表情を見て奥様が慌てて、

「うわさよ、うわさ、家じたいは、2人で暮らすには
 十分な広さでしょうし、同じ敷地と言っても、
 この屋敷からは少し離れているから、プライバシーは
 守られるわよ」

「今の家より、だいぶ近くなるし、快適に暮らせるはずだ」

「そうですかぁ……」

2人は不安ながらも、お世話になっているご主人が
せっかくプレゼントしてくれるのだからと、
家をもらう事にしました。

そして、案内された家は確かにそれ程、
立派なものでは、ありませんでした。

しかし、今住んでいる家よりも、設備は整っていて、
今よりも快適に過ごせそうです。

こうやって、気軽に歩いて移動できる距離ですから、
通うことを考えても大変便利になりそうでした。

2人は大いに喜び、引っ越しをする前に、
仕事の合間の時間に家に行って掃除をしました。

そんなに立派には見えなくても、使っている素材は
さぞ高級な物なのでしょう。
掃除をすればするほど、家は見違えるように、
どんどんキレイになっていきました。

2人は、あっという間に家をキレイにして、
3日もたたずに、お手伝い用の家に越して来ました。

そして、その夜に、早速、不思議なことが起きました。



───[中編]へつづく、


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