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「もくじ」がちょっと新しくなったよ

2018年8月26日日曜日

お手伝いさん家のお化け[後編]

[中編]はこちらからどうぞ


「ここの屋敷に住んでいるお化けじゃ」

「おや、まぁ、あなたたちが」

と、サチコさんが驚いていると、
おじいさんが続けて言いました。

「住んでる、と言ったがそれも今日までだ」

「今日まで?」

「そうじゃ」

と、おじいさんが言ったあと、続いておばあさんが
話を始めました。

「あなたたち、私たちがいくら驚かそうとしても、
 全然、怖がらないんだもの、こっちがビックリよ」

「はぁ」

サチコさんの変な返事のあと、おばあさんは続けました。

「私たちはね、この家に住みついて、ここに住む人を
 怖がらせていたの」

「そうなのですかぁ」

と、サチコさんがこたえたあと、今まで黙っていた
ユタカさんが声を出しました。

「なんのために?」

今度はおじいさんがこたえました。

「わしらは、あなたたちが働いているお屋敷で、
 ずっと前に働いていた、あなたたちの先輩なんじゃ」

「先輩?」

「そうじゃ、この家に住み、お屋敷で手伝いの仕事を
 していた」

「でもね」

と、おばあさんが話を始めました。

「おじいさんが、先に亡くなってね、私1人になると、
 若者が新しいお手伝いとしてやってきてね、
 全然働かないの、口ばっかり達者でね、
 当時のご主人様をだまして、私を、この家から
 追い出してね、自分の家にしてしまったのよ。
 家を失ってすぐに私も病気になってね、
 生きる希望もなくして、死んでしまったわ」

おばあさんは悲しそうに顔を伏せました。

「それは、大変、お辛かったでしょうね」

「えぇ、もう」

と、おばあさんが言ったあと、今度はおじいさんが
話を始めました。

「あの世で、おばあさんと再会して、話を聞いて、
 腹が立ったんで、その若いお手伝いを懲らしめてやろう、
 と、2人で話して、お化けになってこの家に
 取り着いたんじゃ」

ユタカさんとサチコさんが黙って聞いていると、
今度はおばあさんが話を始めました。

「あなたたちにやったように、不思議なことを
 いろいろしたら、とても怖がって、あっという間に、
 家も捨ててお手伝いも辞めて逃げ出していったわ」

「いいきみね」とおばさんは、いたずらっぽい
笑みを浮かべました。

続いて、おじいさんが話し始めました。

「それでな、我々はこの家に取り着いて、新しく入った
 お手伝いを次々と怖がらせたんじゃ。
 お化けを怖がって逃げだすようなやつじゃ、
 お手伝いなんて、務まる訳がないからな」

「何人ものお手伝いが怖がって辞めていったわ」

とおばあさんが言うので、(お気の毒ね)と
サチコさんは思いましたが、口には出しませんでした。

「そのうち、この家には誰も住まなくなってね。
 本当に、しばらくぶりに、あなたたちがやってきたのよ」

「よし、久しぶりに大いに怖がらせようと、
 気合いを入れて怖がらせたのに」

「あなたたち、ぜんぜん怖がらないんだもの、
驚かせている、こっちがビックリよ」

おばあさんが楽しそうに言うので、サチコさんは、

「お恥ずかしいことで」

と、言ってから、こう続けました。

「夫と2人でいると、なにも怖いことなんてないもので」

ユタカさんも大きく頷きました。

おじいさんとおばあさんは、
優しい笑顔で何度もうなずきました。

そして、おじいさんが言いました。

「それなんでな、あなたたちなら、
 この家を任せても大丈夫じゃろうと思ってな。
 こうして、別れの挨拶を言いに出てきたのじゃよ」

「別れの挨拶ですか?」

ユタカさんが不思議そうに言うと、おばあさんが、

「えぇ、ここに住む人を驚かせるのも、
 もう十分やったから、ちょうどいいと思って」

「あなたたちに、この家とお屋敷のお世話を託して、
 我々は成仏するよ」

と、おじいさんは笑顔で言いました。

2人が、なにも言えずに黙っていると、
おじいさんが2人の前に、カギを差し出しました。

「実はな、この家には、秘密の地下倉庫があるんじゃ。
 私たちが初めてこの家に来たときに、
 先輩から託されたのが、このカギじゃ。
 あなたたちに、渡しておくよ」

サチコさんがカギを受け取りました。

それと同時に、サチコさんの意識が
もうろうとしてきました。

おじいさんとおばあさんの姿が、ぼんやりとしか、
見えません。

やがて、立っていられなくなり、
ベットに横たわって、そのまま眠ってしまいました。

ハッ、として、目覚めたときには、
もう朝になっていました。

明るくなる前に、お屋敷にいつも行っているのに、
家の中には薄明りが差し込んでいます。

「大変!」

と、飛び起きたサチコさんは、となりで寝ている
ユタカさんを揺すり起こしました。

ユタカさんも慌てて起きると、すぐに仕度を始めました。

サチコさんも急いで仕度をしようとすると、
自分が、なにかを握りしめていることに気づきました。

「あ、カギだ」

サチコさんがかざしたカギを見て、
ユタカさんが言いました。

「あ、夢じゃなかったのか」

2人はしばらくカギを眺めていましたが、
すぐに仕度を始めて、急いでお屋敷に向かいました。

いつもは分担して作業を進めている2人ですが、
今日は朝ごはんの準備を協力して行いました。

なんとか無事に朝ごはんを間に合わせて、
子どもたちを学校に送り出した後、
2人は主人のそばに行き、夜にあった出来事を
話しました。

話を聞いて驚いた主人は、奥様もつれて4人で、
お手伝いの家に行き、地下倉庫を探しました。

主人は、だいたいの位置が分かっていたようで、
家の裏口の方へ向かい、地面の土を足で何回か払うと、
土に埋もれた扉のようなものが現れました。

主人とユタカさんが力を込めて扉を開けると、
階段がありました。

4人でゆっくりと降りて行くと、
その先に、カギがかけられていて開かない扉がありました。

カギ穴にカギをはめるとピッタリはまり、
扉は開きました。

階段から入る外の光しかなく、うす暗い倉庫の中には
たくさんの箱が置いてあるのが見えました。

主人が1つの箱を明るい入口付近に持って来て
開けてみると、そこには、キラキラと光る宝石が
たくさん入っていました。

4人は手分けして全ての箱を開けて確認すると、
全ての箱に、宝石が入っていました。

主人は、全ての箱をもとに戻すように指示すると、
倉庫の外へ出て、カギを閉めました。

4人は階段を登り扉を閉めると、土をかぶせて、
元通りにしました。

そして主人はカギをサチコさんの前に差し出し、

「これは、ご先祖様が遺してくれた宝だ。
 大切に、守っていてくれ」

サチコさんはユタカさんに目配りをしました。

ユタカさんが大きくゆっくりと頷いたので、
サチコさんは大事そうに、主人からカギを受け取り、

「ハイ、大切にお守りします」

と、深々と頭を下げました。

主人はユタカさんの肩に手を乗せて、

「しっかり、頼んだぞ」

「ハイ、必ずお守りします」

と、深々と頭を下げました。

そして、4人は地下倉庫を離れ、お屋敷に戻り、
その後、その地下倉庫に近づくことは
ありませんでした。


おしまい。



今回のもとのお話はコチラ

福娘童話集『 宝を守る屋敷の幽霊 』
http://hukumusume.com/douwa/pc/kaidan/06/08.htm



━━━ お話はここまで ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



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