※童話の更新は週1回(だいたい土曜日の夜)です(^0^)/

≫≫≫ ☆ もくじ ☆ ≪≪≪

2018年7月14日土曜日

クマさんからの贈り物

むかし、むかしの動物の国。

今のようにお米で作ったご飯が
気軽に食べられなかったころのお話です。

ある村に、農民のクマが、
心優しい奥さんと二人で住んでいました。

クマの夫婦には子どもがいませんせしたが、
クマは子どもが大好きで、仕事が終わった後は、
毎日のように近所の子どもの遊び相手をしていました。

村の子どもたちにとって大人は、怒ってばかりいて、
顔を見ると、手伝いばかり言いつける煙たい存在でした。

しかしクマは、一緒に遊んでくれるので、
人気があり、子どもたちはとてもなついていました。

ある日のことです。
クマはいつものように子どもたちと遊んでいましたが、
いつも来ているヒツジの子どもがいないことに
気づきました。

クマが他の子どもに、ヒツジの子はどうして
来てないんだ? と訪ねると、

「なんだか、体の調子が悪いんだって」

と、イヌの子が言いました。

その口調が、軽い感じだったので、クマも
(かぜでもひいたのかなぁ)
と軽い気持ちでいました。

ところが、その日から、ヒツジの子はずっと顔を
見せなくなりました。

他の子どもたちに聞いても「知らない~」という返事が
返ってくるばかりでした。

確かに、あまり目立つ子ではなく、みんなと遊んでいても、
1人でいるようなタイプだったので、他の子があまり
興味が無いのも分かります。

クマは、ヒツジの子のことが気になり、
家を訪ねることにしました。

「おじゃましま~す」

平和な村なので、村の動物なら、
一声かけたくらいで、家の中に入れました。

ヒツジの子は、部屋のはしの方で布団をかぶり
こちらを向いて寝ていました。

クマの顔を見ると、起き上がろうとしていたので、
クマは手で、そのまま寝てろ、
と合図をしてから言いました。

「体の具合どうだい?」

ヒツジは体を横にしながら、

「お見舞いに来てくれたの? ありがとう。
 もうだいぶ元気になったんだよ」

そう答えるヒツジの子の声が、あまりにも力がないので、
クマは、とても心配になりました。

「あんまり、無理しないで、ゆっくりと休みな」

「うん、そうする、ありがとう」

と、ヒツジの子は言って、静かに目を閉じ、
寝息をたてたので、クマも音を立てないように、
静かに家を出ました。

クマはそのまま自分の家には帰らず、
ヒツジの子の親の畑に向かいました。

仕事をしているヒツジに挨拶してから、

「いまなぁ、家に行って子どもに会ってきたんだが、
 だいぶ体調が悪いのか?」

するとヒツジは、悲しい表情で静かに言いました。

「そうなんだぁ、お医者さんも原因がよく分からなくて、
 どうにもできない、って言ってた」

「そうかぁ…、それは辛いなぁ……」

クマがそう言いと、

「あの子は、クマさんのことが大好きだから、
 時間があるとき、訪ねてやってくれないかい?」

と、言うので、クマは二つ返事で、

「お安いごようだい」

と、少し元気な声を出しました。

ヒツジの畑をあとにしたクマは、自分の家に帰って、
ヒツジの子の話を奥さんにしました。

「そう、それはかわいそうねぇ、
 なるべく、顔をだしておやりよ」

クマの奥さんはそう言いました。

その後、畑の仕事が忙しくて、クマは、
ヒツジの子の見舞いになかなかいけませんでした。

ヒツジの子の見舞いにいけたのは、3日後でした。

「よう、具合はどうだい?」

「あ、クマさん……」

と、ヒツジの子は、起き上がるのも辛いのか、
横たわったまま、小さくささやくようにに答えました。

病状が悪化しているのが、医者じゃないクマから見ても
分かりました。

クマは、わざと元気な声で言いました。

「今日はな、おまえの願いごとを聞いてやろうと思って
 来たぞ!」

「え? 願いごと?」

「そうだ、今、一番したいことは、なんだ?」

「一番、したいことか……」

ヒツジの子は少し考えました。

でも、考えた時間は、ほんのちょっとで、
すぐに答えをだしました。

「あのね……」

「うん、なんだ?」

「───おにぎり…、おにぎりが食べたい」

「おにぎり?」

「うん、白いお米だけのおにぎり」

「あ、お米だけのおにぎりかぁ」

「うん、まだ一度だけしか食べたことがないけど、
 すごくおいしかったから、もう一度食べたいなぁ、
 って思った」

「そうか、おにぎりだなぁ、分かった、
 今度来るとき、必ずもってくる」

「わーい!」

と、ヒツジの子は笑顔だけど静かな声を上げて
喜びましたが、

「でも、クマさん、無理しないでイイよ」

と、付け加えました。

この時代、白いお米はとても貴重なもので、
農民でも特別な行事でもなければ食べられませんでした。

それも、他のものと混ぜた、いわゆる雑穀米で、
白いお米だけのおにぎりなど、そうは食べられるものでは
ありませんでした。

しかし、クマは言いました。

「なに言ってんだ、俺に任せとけ!」

ヒツジの子は寝たままの姿勢で、満面な笑みを浮かべて、
クマを見つめていました。

「じゃぁ、楽しみに待ってろよ!」

と言って、ヒツジの家を出たあとで、
クマは困りました。

言ってはみたものの、白いお米だけで作ったおにぎりなど、
気軽には持ってはいけません。

農民であるクマの家にもお米はありますが、
国の偉い人に授けるものが殆どで、自分たちの分なんて
ありませんでした。

「なんとか、ならんかなぁ……」

クマは一所懸命考えました。

考えて考えて、家に向かう道をわざわざ変えて、
遠回りしながら考えて、

「やぁ、クマさん!」

と、声を掛けられても気づかないほど考えましたが、
いいアイディアが浮かばないまま、
とうとう家についてしましました。

「おかえり」

と言う奥さんに、クマはこう言いました。

「あ、あのな、明日、えーとー、村でな、
 道に穴が開いてな、それを直すことになったんだと」

村の行事などがあると、奥さんは、
いつもより少し豪華なお弁当を作ってくれます。

「あら、まぁ、それは大変ね、一日がかりなの?」

「そうなんだ、午前中から夕方まで、一日がかりなんだよ」

「そう、じゃぁ、お弁当が必要ね」

「そう、そうなんだお弁当が必要なんだ!」

思わず、声が大きくなってしまったクマに、
奥さんから疑いの視線が飛んできました。

クマは、なにもなかったようにしらばっくれると、
奥さんが、

「道を直すって、どこの道?
 どこにも穴なんて開いてる道ないじゃない」

「えっ、えーとー」

クマは、平静をよそおいつつ、慌てて考えて、

「と、となり町、殿さまいるお城の道だよ」

「まぁ、お城の前の道を直すの?」

「そ、そうだ、殿の前だ、すごいだろう」

「そうねぇ、お城の前の道を直すだなんて、
 すごいじゃないかい」

「あぁ、すごいだろう」

「いろんなところから、いろんな動物が来るのかい?」

「あぁ、あっちこっちから動物がくるだろうな」

「それじゃぁ、いつものアワなんかの弁当じゃ
 恥ずかしいわねぇ」

「そうだ、殿にも失礼だ」

「じゃぁ、白米で作るしかないわね」

「そうだ! 白米だ! おにぎりにしてくれ!」

と、またクマは大きな声を上げてしまいました。

クマが気づいたときには、奥さんが、
疑いの目でクマを、ジーーーっと、眺めました。

ジーーーーーーーーーーーーーーーッと、
ジーーーーーーーーーーーーーーーッと、

あまりにも、疑いの目で見られるので、
耐えきれなくなったクマは言いました。

「スマン! おまえには隠し事はできないな、
 実は……」

と、ヒツジの子が、白いお米のおにぎりを食べたい
と言っていたことを正直に話しました。

「もう、それならそう正直に言ってくれればいいのに」

「え、いいのか? 白いお米のおにぎりだぞ」

「当たり前じゃないの、むしろ、そんなときのために
 とっておいたお米じゃないかい」

と、奥さんは優しい表情で言いました。

「なーんだ、白いお米のおにぎりなんて、
 城の道直しでもしなければ、作ってくれないと思ってた」

「そりゃ、あなたのお弁当ならそうかもしれないけど、
 今度のはもっと特別じゃない」

「そっか、そうだよな」

「1つくらいしか作れないけど、食べさせてあげて」

と、言いうので「うん」クマはうなずいてから、
大声で、

「俺は、いい奥さんを持った!!」

と叫びました。

「もう、ご近所に聞こえちゃうでしょう」

奥さんは恥ずかしがりましたが、顔はニコニコでした。

翌朝、クマは奥さんが作ってくれた、
白いお米だけで作ったおにぎりを持って、
ヒツジの家に行きました。

ヒツジの子は、

「おいしい、はぁ~、おいしい」

と、涙を流しながら、一口、一口味わいながら食べました。

それを見て、クマはとても嬉しい気分になりました。

そして、その1週間後のことです。

クマが子どもたちと遊んでいるところに、
ヒツジの子どもが顔をだしました。

遠くのほうで、なにも言わずにこちらを見ている
ヒツジの子に、クマは、

「やぁ! こっちに来てみんなと遊ぼう!」

と、声をかけると、ヒツジの子の顔は、
ニコニコ笑顔になり、元気に走って、
近づいてきました。


おしまい。



今回のもとのお話はコチラ

福娘童話集『 米のご飯を腹一杯 』
http://hukumusume.com/douwa/pc/jap/06/03a.htm



━━━ お話はここまで ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



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