※童話の更新は週1回(だいたい土曜日の夜)です(^0^)/

≫≫≫ ☆ もくじ ☆ ≪≪≪

2018年7月7日土曜日

鬼に感謝祭

これからな、この村に伝わる祭りが
どうして始まったか話をするぞ。

ほら、海の向こうに島が見えるじゃろ、あの島にはな、
むかしむかし、鬼が住んでおったんじゃ。

鬼たちはな、海を渡ってきてまで人間を襲うことはせんが、
島に近づく人間には容赦なく襲ったんじゃ。

そなもんだから、人間たちは鬼が怖くて、
島に近づくことができなかったんだ。

だからな、詳しいことはよく分からんのじゃがな、
村にはこんな言い伝えがあるんじゃ。

島にはなぁ、赤と青の鬼がいっぱいいてな、
それぞれに鬼の親分がいて、百人くらいの子分と
一緒に暮らしていたんじゃ。

赤鬼と青鬼の親分たちは、仲が良くてな、
子分思いのイイ親分だったそうだ。

でも、ある日のことなんじゃが、
親分が二人してお酒を呑んでいたんだ。

二人ともだいぶ、お酒によってきた時にな、
赤鬼の親分が言ったんじゃ。

「俺の、子分たちは優秀で元気がいいんだ」

するとな、子分思いで負けず嫌いの青鬼の親分が
言い返したんじゃ。

「わしの、子分だって優秀で、それはそれは元気だぞ」

「なにを言うんじゃ、俺の子分の方が、元気に決まっとるわい」

「いいや、わしの子分が元気で負ける訳がない」

と、言い争いになってしまったんじゃ。

「じゃぁ、俺のとおまえの子分、
 どっちが元気か、比べようじゃないか」

と、赤鬼の親分が言うので、

「おう、おもしれぇ、わしの子分の元気のよさを
 見せつけてやる!」

と、青鬼の親分がこたえて、二人の親分は、
どちらの子分が元気がいいか、勝負をつけよう
ということになったんじゃ。

でな、なにで勝負しよう、ということになってな、
手っ取り早く、スモウで決着をつけようとなったんじゃ。

それでな、赤鬼対青鬼のスモウ大会が開かれることになってな、
それぞれ、元気自慢の鬼たちが、十人ずつ選ばれて、
対戦することになったんじゃ。

赤鬼、青鬼、それぞれの誇り(ホコリ)をかけての対決に、
全ての鬼が観戦に訪れて、スモウ会場は大盛り上がり
だったそうだ。

土俵の下では、東側に赤鬼の親分が座り、
西側には青鬼の親分が座り、それぞれの親分の後ろには、
スモウをとる選ばれし十人の鬼が、
気合いを入れた表情で座っていたそうじゃ。

スモウの勝敗を決める行司の役目は、
赤鬼と青鬼のそれぞれの副親分が担当して、
大勢の鬼が見守る中で、スモウ大会は始まったんじゃ。

最初は、赤の勝ちじゃ。次は青の勝ち。その次から三回連続で
赤が勝って、赤鬼たちが大はしゃぎだったけどな、
それから青が三回勝って、青鬼も大いに喜んで、
どっちもひかぬ大勝負に会場は盛り上がったんじゃ。

次の取り組みでは赤が勝って、そして最後の取り組みは、
青が勝ってな、五勝五敗で、勝負がつかないまま、
終わってしまったんじゃ。

このままじゃ、勝負がつかぬ、となった時にな、
赤鬼の親分が立ち上がってこう言ったんだ。

「こうなったら、俺が戦う!」

それに応えて青鬼の親分も立ち上がって、

「おう、わしが受けてやる!」

そう言って、二人の親分が土俵に上がったんじゃ。

会場は、それはそれは、その日一番の盛り上がりになったんじゃ。

ドスン! ドスン!

二人の親分が四股(シコ)を踏むたびに、
ドドドド、と地面が震えて、
荒々しい空気に会場は包まれてそうじゃ。

そして、いざ二人の鬼の親分がスモウをとろうとしたとき、
行司をしていた、赤鬼と青鬼の副親分が、
それぞれの親分に言いにいったんじゃ。

「親分、考え直してください。
 親分たちが戦って、もし勝負がついた場合、
 負けた方はきっと死んでしまうでしょう」

副親分たちは、実に冷静じゃ、鬼の親分の力は半端ない、
相手を死なせるほど戦わないと勝負はつかない。

しかし、こんなことで、どちらかが死んでしまっては、
意味がないと、親分に考えを変えるように言ったんじゃ。

そう言われて困ったのは、親分たちじゃ。

「しかしのう、勝負しようと言っちまったからなのう」

「ひくにひけんなぁ……」

というので、副親分たちは言いました。

「では、こういうのはどうでしょう。もともとはどちらの鬼が
 優秀で元気がいいかの対決だったはずです。
 どうでしょう、優秀で元気がないと出来ない仕事で、
 決めるというのは」

「優秀で元気がないと出来ない仕事?」

「そうです、例えば、人間の住む海の向こうまで、
 石橋をどちらが早く渡せるか、という対決はどうでしょう」

「石橋を渡す?」

「はい、石橋を早く作るのは優秀で元気がないと出来ません。
 海の向こう側まで石橋を渡して、どちらが早く
 人間を襲えるかを競うのです」

「おぉ、なるほど、それはいいかもしれんなぁ」

と、鬼の親分のスモウ対決は、なんと石橋を作って、
我々人間を襲う大会になってしまったんじゃよ。

そうと決まってからは、鬼たちは我先に海に橋をかけて
人間を襲うぞ! と必死に頑張ったんじゃ。

赤鬼、青鬼、それぞれが知恵を絞って、二本の橋を作り始めてな。
それはもう、お互い、凄まじい勢いで作っていったんじゃ。

でな、やがて立派な石橋が二本できてな、
それ我先に人間を襲うぞ!
と、鬼の親分を先頭に皆で橋を渡り始めたんじゃ。

もう、最後は徒競走のようなものじゃ。

どちらの鬼が早く橋を渡り、人間を襲えるか。
どの鬼も一目散で、こちら側に向かって走ったのじゃ。

そして、島にいる鬼たち全員が、橋の上に乗ったときだ、
とんでもないことが起きたのじゃ。

“ビューーーーーーッ!!!”

と、物凄い風がふいてな、鬼たちは全員、
海の中に落とされてしまったのじゃ。

あっという間の出来事で、鬼たちはなにもできずに
海の中で、バタバタともがいたのじゃ。

実はな、鬼たちは、人間を襲う力はあっても、
泳ぎが苦手だったそうだ。

しかも落ちたのは海じゃ、足もつかなければ、
波にあおられて泳ぐのは大変じゃ。

バタバタともがいていた鬼たちも、やがて力尽きてな、
全員、死んでしまったそうじゃ。

それでな、あの島からは鬼がいなくなったんじゃ。

その時できた二本の石橋のおかげで、我々人間は、
あの島に気軽に行き来できるようになったんじゃ。

人間を襲おうと作られたはしじゃが、
今では人間の役に立っている。

世の中は、なんとも因果なできごとが多いが、
わしら人間は橋をかけてくれた鬼たちに、感謝している。

それがこの村に伝わるお祭りじゃ。

鬼に感謝する祭りそれが「鬼に感謝祭」じゃ。

分かったかな。


おしまい。




今回のもとのお話はコチラ

福娘童話集『 一人になった鬼の親分 』
http://hukumusume.com/douwa/pc/jap/06/02.htm



━━━ お話はここまで ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



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