※童話の更新は週1回(だいたい土曜日の夜)です(^0^)/

≫≫≫ ☆ もくじ ☆ ≪≪≪

2018年7月29日日曜日

のどが渇いた2頭の子ウシ

オスとメスの2頭の子ウシが
のどかな道を、のっそのっそと歩いていました。

「のどが渇いたね」

「うん渇いた」

それぞれの親ウシとはぐれてしまった2頭は、
親たちをさがしながらも、自分たちの住む場所を、
ずっと歩いてさがしていました。

「あ、あそこに人がいるよ」

農作業をしている人間がいました。

「頼んでみたら、水をくれるかなぁ」

「うまくいけば、働かせてくれるかもしれないね」

「そうだね、農作業にはボクたちがいると、
 なにかと役にたつもんね」

2頭は人間に近づいて行きました。

しばらく進むと、人間がこちらの方を向きました。

そして、一目散に走って来ました。

「コラ! どこのウシだか知らんが、
 オラの畑を踏み荒らすな!」

ものすごい大きな声で怒鳴っています。

子ウシたちは、なにも知らずに畑の中に入ってしまって
植えてある農作物を荒らしてしまっていました。

追いかけてくるに人間から、逃げるように2頭は走り、
畑を出ました。

畑を出ると人間は追ってきませんでした。

「はぁ、びっくりしたね」

「びっくりした」

「畑の中に入っちゃいけなかったんだね」

「うん、すごく怒ってた」

「あれじゃぁ、水、もらえないね」

「うん、他で探そう」

2頭はまたのどかな道を、のっそのっそと歩き出しました。

しばらくすると、また農作業をしている
人間の姿を見つけました。

今度は、畑に入らないように気をつけながら近づきました。

「すみません、喉が渇いてしまったんで
 水をくださいませんか」

オウシが言いました。

話かけられた人間は、けむたそうな顔をしながら、

「あげられるほどの水は持っていないね」

と、冷たい口調で言いました。

「お水をくれたなら、畑を耕すお手伝いをします」

そういうメウシに、人間は面倒くさそうに、

「働くウシは、うちにもいるからな、他へいってくれ」

と、冷たくあしらわれてしまいました。

2頭はガッカリしながら、道をのっそのっそと歩きました。

「のど渇いたね」

「うん、のどが渇いた」

しばらく、歩くと、また農作業をしている人間に
あいました。

2頭は畑に入らないように気をつけながら、
人間に近づいていきました。

今度はメウシが先に声をかけました。

「あの、お水をいただけないでしょうか、
 のどが渇いてしまって困っているんです」

すると人間がこう言いました。

「水に困ってるのは、こっちも同じだ、
 あげられる水なんてないね」

そう言われて、メウシはガッカリしました。

しかし、人間は続けて言いました。

「おまえは、メウシだろ、どうだい、ウチで
 乳牛として働くんなら、置いてやってもいいぜ」

「えー、そしたら、水を飲ませてくれますか!」

「あぁ、水どころか、食べ物もたんまりやるさ」

メウシは目をキラキラさせて喜び、オウシを見ました。
オウシは嬉しそうに笑って、人間に向かって、

「よろしくお願いします」

と、言うと、人間は渋い顔になり、

「おまえはダメだ、ウチにはオウシは
 たくさんいるからな」

「えー!」

2頭の子ウシは同時に声をあげました。

そして顔を見合わせてから、メウシが人間に
言いました。

「わたし1頭だけでは、お世話になるつもりは
 ありません」

それを聞いた人間は、冷たい感じの声で、

「そうかい、別にオレは困りやしない、
 決めるのはあんたらだ、かってにしな」

と言うので、2頭は人間のそばを離れ、
また道を、のっそのっそと歩き出しました。

歩いている途中で、オウシが言いました。

「きみだけでも、やとってもらえば良かったのに」

「わたしは、アナタと一緒じゃなきゃ、いやよ」

と、メウシが言いました。

「そう言われると嬉しいけど、でも、2頭で
 やとってもらうなんて、なかなか難しいことだよ」

「それでも、わたしはアナタと一緒がいい」

と、メウシは言うのでした。

そうして、2頭が道を、のっそのっそと歩いていると、
また農作業している人間を見つけました。

2頭は畑を踏まないように歩いて、人間に近づきました。

今度はオウシが人間に話しかけました。

「ボクは力仕事ができます。あの子はミルクが出せます。
 なんでもしますから、お水をいただけませんか?」

すると人間は、口の端を上げた不敵な笑みを浮かべながら、

「おぉ、ちょうど力仕事ができるウシを
 飼おうとしていたところだ、ちょうどいい」

と言ったので、オウシは大喜びしながら、
メウシを見ました。

メウシも嬉しそうでした。

「でもだ」

と、人間は少しとがった声でいいました。

「メウシはいらねぇ、ウチはミルクやってねぇからな」

2頭の顔から、笑顔が消えました。

2頭はガッカリし、人間になにも告げずに畑を出て、
道にもどり、のっそのっそと歩き出しました。

歩いている途中、メウシが言いました。

「あなただけでも、やとってもらえばよかったに」

「そうはいかないよ、ボクだって、キミと別々じゃ
 いやなんだ」

「そんなこと言って、2頭一緒にやとってくれるなんて
 難しい、って言ったのは、あなたじゃない」

と言われ、オウシはなにも言えませんでした。

やがて、2頭はなにも言わずに、ただただ道を、
のっそのっそと歩きました。

のどが渇いている状態で、ずっと歩いていて、
さすがに疲れた2頭は、少し休むことにしました。

畑の真ん中くらいに、2頭が休むのにちょうどいい
木が立っていました。

2頭は畑をよけて歩くことはなれたもんで、
まったく畑を荒らさずに木の下まで歩き、
木陰で寝そべって休みました。

これからどうしたらいいんだろう……。

そんなことを考えながら休んでいると、
道の方から、人間がくるのが見えました。

2頭が道から木の下まで歩いて来たところと
同じところを歩いて人間は近づいて来ます。

2頭は木陰で立ち上がりました。

近づいて来た人間は話しかけてきました。

「おう、立派な子どものウシじゃないか」

優しそうなおじさんはニコニコ笑顔でした。

2頭が何も言わずに黙っていると、

「きみは、力仕事はできるかね」

オウシはすぐに「できます!」と答えてから、

「でも、このメウシとは離れたくありません」

と言いました。

人間のおじさんは、少し驚いた表情をしましたが、
すぐに笑顔になり言いました。

「メウシはミルクは出せるかな」

「えぇ」とメウシは答えてから、すぐに、

「でも、このオウシとは離れたくありません」

と言いました。

おじさんは「おやおや」と愉快そうに笑いました。

そして話を続けました。

「ところで、おぬしら、こんな狭い畑の間を、
 畑を踏まずに歩いて、よくこの木までたどり着けたな」

2頭は不思議そうにお互いの顔を見合わせてから、
オウシが、

「畑をよけて歩くのには慣れているのです」

ホウ、ホウ、ホウ、とおじさんは楽しそうに笑いました。

そして、とびっきりの笑顔をして言いました。

「今までいたのはケンカばかりしていて、困っていて、
 ちょうどな、仲の良いウシを探していたところだ」

2頭は、キョトンとして顔をして話を聞きました。

「しかも、力仕事ができるオウシと、
 ミルクが出せるメウシを同時に手に入れられるのなら、
 こんなにありがたいことは無い!」

2頭は話を聞きながら、だんだんと顔をほころばせました。

「さらに畑を荒らさないないで歩けるウシだなんて、
 信じられない!神さまの思し召しとしか思えない」

黙って聞いている2頭の子ウシに、おじさんは
笑顔のまま言いました。

「ウチに来てくれないかのぉ」

2頭は顔を見合わせてから、今度はメウシが言いました。

「2頭とも、やとってくれる、ということですか」

「もちろんじゃ、2頭そろってわしのウチで
 働いてはくれんかのぉ」

2頭は顔を見合わせてから、

「喜んで!!」

同時に叫ぶように声を上げ、満面な笑顔で喜びました。

「さぁ、さぁ、家はすぐそこじゃ、ついて来てくれ」

と、おじさんが言うので、オウシは言いました。

「その前に、ボクたちにお水をくださいませんか」

おじさんはうなずくと、こっちにこい、と合図をしました。

そして、家の途中にある池に案内してくれ、
2頭は思う存分、水を飲んだのでした。


おしまい。


今回のもとのお話はコチラ

福娘童話集『 ハチとシャコとお百姓 』
http://hukumusume.com/douwa/pc/aesop/06/04.htm



━━━ お話はここまで ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



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