※童話の更新は週1回(だいたい土曜日の夜)です(^0^)/

≫≫≫ ☆ もくじ ☆ ≪≪≪

2018年7月21日土曜日

トラ吉さんはお金持ち

むかしむかし、動物の国に住むトラ吉さんは、
とてもとてもお金を持っていました。

あまりにもお金がありすぎて、
家に入り切れないほどでした。

「どうしたものかなぁ」

と、トラ吉さんが困っているところに、
ロバさんが訪ねて来ました。

「そんなにお金があるんなら、お金に困っている動物に
 貸してあげればいいじゃないか」

「あぁ、それは名案だね」

トラ吉さんは早速、困っている動物に
お金を貸すことにしました。

最初にお金を貸したのは、言い出しっぺの
ロバさんでした。

「ありがたく借りていくよ、そしてお金に困ってる
 みんなに、トラ吉さんのところへ来るように、
 会う人会う人に言うよ」

「あぁ、そうしてくれ、たくさんの動物に
 お金を貸してあげたいからね」

ロバさんの宣伝がうまかったのか、
トラ吉さんの家には「ロバさんから聞いたよ」
という動物がたくさん来ました。

どんどん動物たちが来るので、トラ吉さんは
毎日、朝から晩まで、ご飯も食べられないくらい
大忙しです。

でも、どんどんお金が減っていくので、
忙しくてもへっちゃらでした。

そんな日々が過ぎて行き、トラ吉さんの家には、
ほんの少しのお金があるだけになりました。

トラ吉さんは、山のように置いてあった
お金が少なくなり、広くなった自分の家の中を見て、

「ふぅ、これでやっとゆっくり暮らせる」

と、喜びました。

お金が無くなったので、もう貸すこともできません。

“もう、貸すお金はありません”

という看板を作り、家の前に出そうとしました。

すると、ロバさんがやって来ました。

「いぁ、お金を貸してくれて助かったよ」

と言って、お金を差しだしながら、

「これ、借りた分のお金、
 お礼に少し増やしてあるから」

お金を見て、トラ吉さんは困った表情で言いました。

「返すのなんて、いつでもいいのにぃ」

「そうはいかないよ、借りたものは返さないと、
 はい、受け取って」

と、無理やり渡すので、トラ吉さんは仕方なく
お金をうけとりました。

その日からです。

ロバさんと同じように、「助かった」「ありがとう」と
言いながら、お金を借りていった動物たちが
お金を返しにやってきました。

お礼を言われるのはとても嬉しかったのですが、
お金を返しにくる動物が多すぎて多すぎて、
朝から晩まで何日もご飯も食べられないくらいの状態に、
トラ吉さんは、てんてこ舞い。

しかも、今度はお金がどんどん返ってきて、
さらには、みんな、

「助かったから、少し多めに返すね」

と、貸したお金より多くのお金を返してくれるので、
家の中は、あっというまにお金で溢れかえって
しまいました。

忙しい上に、お金が貯まっていくだなんて、
耐えられない! とトラ吉さんは困り果てました。

すると、今度はキツネさんが来て、
こんなことを言いました。

「じゃぁ、さぁ、貸したお金は返さなくてもいいです、
 って言えばいいじゃない」

「あぁ、それは名案だね」

と、トラ吉さんはすぐに看板を作って家の前に立てました。

“貸したお金は返さなくてけっこうです。
 まだお金が必要なかたは、お金を差し上げますので
 取りに来てください”

真っ先にお金をもらいに来たのは言いだしっぺの、
キツネさんでした。

キツネさん、借りたお金を返しもせずに、
またお金をもっていきました。

それでもトラ吉さんは、お金が減るので喜びました。

看板を出したことで、お金を返しにくる動物は大幅に減り、
かわりに、お金をもらいにくる動物はたくさんきましたが、
あっという間にお金が無くなったので、
トラ吉さんは大喜びでいました。

ところがです。

お金持ちのトラ吉さん家には、
先祖代々から引き継がれてきた、
立派なツボや美術品がありました。

今度は、それを売ってくれ、という動物が現れました。

1人現れると、うわさを聞きつけて、私も欲しいという
動物がやってきました。

トラ吉さんは、ツボや美術品に興味はなかったので、
売ってもいいのですが、そうなるとせっかく無くなった
お金がまた増えてしまいます。

「もう、まったく、なんだってこうも
 お金がやってくるんだ!」

トラ吉さんは、今度は誰からも言われてないのに、
看板を出しました。

“家にある物、なんでも持っていってください
 お金は、いりません”

すると、たくさんの動物が集まって来て、
立派なツボだの、変な顔の絵だの、
クマの彫刻だの、タヌキの焼きものだの、
また、茶碗やコップ、テーブルなどの家具も、
トラ吉さんの家の中のものをなんでもかんでも
持ち出してしまいました。

庭に生えている木をもらってもいいか、
と、サルさんに訪ねられたトラ吉さんは、
二つ返事で、いいよと言いました。

やがて、トラ吉さんの家にはなにもかも無くなりました。

お金も、家具も美術品も無くなり、広くなった家の中で、
トラ吉さんは、どてーん! と寝そべりました。

「はぁ、やっとすっきりした、これで静かに暮らせる」

お金のないとは、なんと清々しいことか、
と、トラ吉さんは、なんにもない家の中で、
天井を見ながら味わいました。

ごろん、と寝そべっていたトラ吉さんは、
何気なく寝返りをうちました。

見える景色は変わりましたが、何もない殺風景な
家のカベがあるだけでした。

絵が飾ってあった場所に絵のあとが残っています。

何十年も同じところに絵が飾ってあったので、
なにもなかったカベの色と、変わってしまい、
絵が無くなっても、そこに絵があったことを示していました。

トラ吉さんは絵の場所を、じーっと眺めました。

そして、ふと、思い出しました。

「そういえば、あの絵は死んだじいさんが大切にしてた
 絵だったなぁ」

絵の下には、棚が置いてあったあとが残っていました。

「あの絵の下の棚に乗っかっていたツボは、おやじが
 買ってきたんだっけな……」

そんなことを思っていたら、トラ吉さんは、
急に淋しくなってきました。

お金が無くなったら、幸せだろうな、と思っていましたが、
なにもかも失ってしまうと、淋しいもんだんだなぁ、
と、トラ吉さんは思うのでした。

しかし、もう、お金に追われてる以前の生活には
戻りたくありません。

「まぁ、徐々に慣れていくしか、無いだろうなぁ」

と、トラ吉さんは思い直しました。

「さて、当面の問題は、生活費が無いということだ」

すっからかんになってしまったトラ吉さんには、
今日の夕飯を食べるお金も残っていませんでした。

「さて、どうしたものかなぁ」

と、何気なく庭先に出てみました。

サルさんたちが喜んで木を持っていったので、
庭にはあちこち穴が開いていました。

トラ吉さんは、ふと、その穴になにかがあるのを
見つけました。

なんだろう、と思い近づいてみると、穴の中に、
なにかが、うまっていることに気づきました。

少し、イヤな予感がしましたが、トラ吉さんは
うまっているものを掘り出してみようとしました。

しかし、うまっているのは大きなツボで、しかも
重いので持ち上げられそうにもありません。

トラ吉さんは仕方なく、ふたの周りの土をはらいました。

そして、ふたを開けてみて、ビックリです。

中には、きらびやかに光るたくさんの
宝石が入っていました。

宝石の上にはなにか手紙のようなものがありました。

開いて読んでみると、

「わが子孫(しそん)、お金に困ったときのために、
 これを残す。自由に使え」

読み終えると、トラ吉さんは手紙を持っている手を
だらーん、と下げてうなだれました。

「どこまでいっても、私は、お金と縁があるのだなぁ」

しかし、今晩の夕飯のお金もないのも事実です。

トラ吉さんはとりあえず、このご先祖さまが残してくれた
宝石を売りながら、細々と生活していこう、
と考えて、宝石を1つだけ取って、ご先祖様に
感謝の言葉を言ってからツボのふたを閉めました。


おしまい。



今回のもとのお話はコチラ

福娘童話集『 貧乏になりたいお金持ち 』
http://hukumusume.com/douwa/pc/minwa/06/03.htm



━━━ お話はここまで ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



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