※童話の更新は週1回(だいたい土曜日の夜)です(^0^)/

≫≫≫ ☆ もくじ ☆ ≪≪≪

2018年7月21日土曜日

トラ吉さんはお金持ち

むかしむかし、動物の国に住むトラ吉さんは、
とてもとてもお金を持っていました。

あまりにもお金がありすぎて、
家に入り切れないほどでした。

「どうしたものかなぁ」

と、トラ吉さんが困っているところに、
ロバさんが訪ねて来ました。

「そんなにお金があるんなら、お金に困っている動物に
 貸してあげればいいじゃないか」

「あぁ、それは名案だね」

トラ吉さんは早速、困っている動物に
お金を貸すことにしました。

最初にお金を貸したのは、言い出しっぺの
ロバさんでした。

「ありがたく借りていくよ、そしてお金に困ってる
 みんなに、トラ吉さんのところへ来るように、
 会う人会う人に言うよ」

「あぁ、そうしてくれ、たくさんの動物に
 お金を貸してあげたいからね」

ロバさんの宣伝がうまかったのか、
トラ吉さんの家には「ロバさんから聞いたよ」
という動物がたくさん来ました。

どんどん動物たちが来るので、トラ吉さんは
毎日、朝から晩まで、ご飯も食べられないくらい
大忙しです。

でも、どんどんお金が減っていくので、
忙しくてもへっちゃらでした。

そんな日々が過ぎて行き、トラ吉さんの家には、
ほんの少しのお金があるだけになりました。

トラ吉さんは、山のように置いてあった
お金が少なくなり、広くなった自分の家の中を見て、

「ふぅ、これでやっとゆっくり暮らせる」

と、喜びました。

お金が無くなったので、もう貸すこともできません。

“もう、貸すお金はありません”

という看板を作り、家の前に出そうとしました。

すると、ロバさんがやって来ました。

「いぁ、お金を貸してくれて助かったよ」

と言って、お金を差しだしながら、

「これ、借りた分のお金、
 お礼に少し増やしてあるから」

お金を見て、トラ吉さんは困った表情で言いました。

「返すのなんて、いつでもいいのにぃ」

「そうはいかないよ、借りたものは返さないと、
 はい、受け取って」

と、無理やり渡すので、トラ吉さんは仕方なく
お金をうけとりました。

その日からです。

ロバさんと同じように、「助かった」「ありがとう」と
言いながら、お金を借りていった動物たちが
お金を返しにやってきました。

お礼を言われるのはとても嬉しかったのですが、
お金を返しにくる動物が多すぎて多すぎて、
朝から晩まで何日もご飯も食べられないくらいの状態に、
トラ吉さんは、てんてこ舞い。

しかも、今度はお金がどんどん返ってきて、
さらには、みんな、

「助かったから、少し多めに返すね」

と、貸したお金より多くのお金を返してくれるので、
家の中は、あっというまにお金で溢れかえって
しまいました。

忙しい上に、お金が貯まっていくだなんて、
耐えられない! とトラ吉さんは困り果てました。

すると、今度はキツネさんが来て、
こんなことを言いました。

「じゃぁ、さぁ、貸したお金は返さなくてもいいです、
 って言えばいいじゃない」

「あぁ、それは名案だね」

と、トラ吉さんはすぐに看板を作って家の前に立てました。

“貸したお金は返さなくてけっこうです。
 まだお金が必要なかたは、お金を差し上げますので
 取りに来てください”

真っ先にお金をもらいに来たのは言いだしっぺの、
キツネさんでした。

キツネさん、借りたお金を返しもせずに、
またお金をもっていきました。

それでもトラ吉さんは、お金が減るので喜びました。

看板を出したことで、お金を返しにくる動物は大幅に減り、
かわりに、お金をもらいにくる動物はたくさんきましたが、
あっという間にお金が無くなったので、
トラ吉さんは大喜びでいました。

ところがです。

お金持ちのトラ吉さん家には、
先祖代々から引き継がれてきた、
立派なツボや美術品がありました。

今度は、それを売ってくれ、という動物が現れました。

1人現れると、うわさを聞きつけて、私も欲しいという
動物がやってきました。

トラ吉さんは、ツボや美術品に興味はなかったので、
売ってもいいのですが、そうなるとせっかく無くなった
お金がまた増えてしまいます。

「もう、まったく、なんだってこうも
 お金がやってくるんだ!」

トラ吉さんは、今度は誰からも言われてないのに、
看板を出しました。

“家にある物、なんでも持っていってください
 お金は、いりません”

すると、たくさんの動物が集まって来て、
立派なツボだの、変な顔の絵だの、
クマの彫刻だの、タヌキの焼きものだの、
また、茶碗やコップ、テーブルなどの家具も、
トラ吉さんの家の中のものをなんでもかんでも
持ち出してしまいました。

庭に生えている木をもらってもいいか、
と、サルさんに訪ねられたトラ吉さんは、
二つ返事で、いいよと言いました。

やがて、トラ吉さんの家にはなにもかも無くなりました。

お金も、家具も美術品も無くなり、広くなった家の中で、
トラ吉さんは、どてーん! と寝そべりました。

「はぁ、やっとすっきりした、これで静かに暮らせる」

お金のないとは、なんと清々しいことか、
と、トラ吉さんは、なんにもない家の中で、
天井を見ながら味わいました。

ごろん、と寝そべっていたトラ吉さんは、
何気なく寝返りをうちました。

見える景色は変わりましたが、何もない殺風景な
家のカベがあるだけでした。

絵が飾ってあった場所に絵のあとが残っています。

何十年も同じところに絵が飾ってあったので、
なにもなかったカベの色と、変わってしまい、
絵が無くなっても、そこに絵があったことを示していました。

トラ吉さんは絵の場所を、じーっと眺めました。

そして、ふと、思い出しました。

「そういえば、あの絵は死んだじいさんが大切にしてた
 絵だったなぁ」

絵の下には、棚が置いてあったあとが残っていました。

「あの絵の下の棚に乗っかっていたツボは、おやじが
 買ってきたんだっけな……」

そんなことを思っていたら、トラ吉さんは、
急に淋しくなってきました。

お金が無くなったら、幸せだろうな、と思っていましたが、
なにもかも失ってしまうと、淋しいもんだんだなぁ、
と、トラ吉さんは思うのでした。

しかし、もう、お金に追われてる以前の生活には
戻りたくありません。

「まぁ、徐々に慣れていくしか、無いだろうなぁ」

と、トラ吉さんは思い直しました。

「さて、当面の問題は、生活費が無いということだ」

すっからかんになってしまったトラ吉さんには、
今日の夕飯を食べるお金も残っていませんでした。

「さて、どうしたものかなぁ」

と、何気なく庭先に出てみました。

サルさんたちが喜んで木を持っていったので、
庭にはあちこち穴が開いていました。

トラ吉さんは、ふと、その穴になにかがあるのを
見つけました。

なんだろう、と思い近づいてみると、穴の中に、
なにかが、うまっていることに気づきました。

少し、イヤな予感がしましたが、トラ吉さんは
うまっているものを掘り出してみようとしました。

しかし、うまっているのは大きなツボで、しかも
重いので持ち上げられそうにもありません。

トラ吉さんは仕方なく、ふたの周りの土をはらいました。

そして、ふたを開けてみて、ビックリです。

中には、きらびやかに光るたくさんの
宝石が入っていました。

宝石の上にはなにか手紙のようなものがありました。

開いて読んでみると、

「わが子孫(しそん)、お金に困ったときのために、
 これを残す。自由に使え」

読み終えると、トラ吉さんは手紙を持っている手を
だらーん、と下げてうなだれました。

「どこまでいっても、私は、お金と縁があるのだなぁ」

しかし、今晩の夕飯のお金もないのも事実です。

トラ吉さんはとりあえず、このご先祖さまが残してくれた
宝石を売りながら、細々と生活していこう、
と考えて、宝石を1つだけ取って、ご先祖様に
感謝の言葉を言ってからツボのふたを閉めました。


おしまい。



今回のもとのお話はコチラ

福娘童話集『 貧乏になりたいお金持ち 』
http://hukumusume.com/douwa/pc/minwa/06/03.htm



━━━ お話はここまで ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



ご意見ご感想、お待ちしています(^0^)/


2018年7月14日土曜日

クマさんからの贈り物

むかし、むかしの動物の国。

今のようにお米で作ったご飯が
気軽に食べられなかったころのお話です。

ある村に、農民のクマが、
心優しい奥さんと二人で住んでいました。

クマの夫婦には子どもがいませんせしたが、
クマは子どもが大好きで、仕事が終わった後は、
毎日のように近所の子どもの遊び相手をしていました。

村の子どもたちにとって大人は、怒ってばかりいて、
顔を見ると、手伝いばかり言いつける煙たい存在でした。

しかしクマは、一緒に遊んでくれるので、
人気があり、子どもたちはとてもなついていました。

ある日のことです。
クマはいつものように子どもたちと遊んでいましたが、
いつも来ているヒツジの子どもがいないことに
気づきました。

クマが他の子どもに、ヒツジの子はどうして
来てないんだ? と訪ねると、

「なんだか、体の調子が悪いんだって」

と、イヌの子が言いました。

その口調が、軽い感じだったので、クマも
(かぜでもひいたのかなぁ)
と軽い気持ちでいました。

ところが、その日から、ヒツジの子はずっと顔を
見せなくなりました。

他の子どもたちに聞いても「知らない~」という返事が
返ってくるばかりでした。

確かに、あまり目立つ子ではなく、みんなと遊んでいても、
1人でいるようなタイプだったので、他の子があまり
興味が無いのも分かります。

クマは、ヒツジの子のことが気になり、
家を訪ねることにしました。

「おじゃましま~す」

平和な村なので、村の動物なら、
一声かけたくらいで、家の中に入れました。

ヒツジの子は、部屋のはしの方で布団をかぶり
こちらを向いて寝ていました。

クマの顔を見ると、起き上がろうとしていたので、
クマは手で、そのまま寝てろ、
と合図をしてから言いました。

「体の具合どうだい?」

ヒツジは体を横にしながら、

「お見舞いに来てくれたの? ありがとう。
 もうだいぶ元気になったんだよ」

そう答えるヒツジの子の声が、あまりにも力がないので、
クマは、とても心配になりました。

「あんまり、無理しないで、ゆっくりと休みな」

「うん、そうする、ありがとう」

と、ヒツジの子は言って、静かに目を閉じ、
寝息をたてたので、クマも音を立てないように、
静かに家を出ました。

クマはそのまま自分の家には帰らず、
ヒツジの子の親の畑に向かいました。

仕事をしているヒツジに挨拶してから、

「いまなぁ、家に行って子どもに会ってきたんだが、
 だいぶ体調が悪いのか?」

するとヒツジは、悲しい表情で静かに言いました。

「そうなんだぁ、お医者さんも原因がよく分からなくて、
 どうにもできない、って言ってた」

「そうかぁ…、それは辛いなぁ……」

クマがそう言いと、

「あの子は、クマさんのことが大好きだから、
 時間があるとき、訪ねてやってくれないかい?」

と、言うので、クマは二つ返事で、

「お安いごようだい」

と、少し元気な声を出しました。

ヒツジの畑をあとにしたクマは、自分の家に帰って、
ヒツジの子の話を奥さんにしました。

「そう、それはかわいそうねぇ、
 なるべく、顔をだしておやりよ」

クマの奥さんはそう言いました。

その後、畑の仕事が忙しくて、クマは、
ヒツジの子の見舞いになかなかいけませんでした。

ヒツジの子の見舞いにいけたのは、3日後でした。

「よう、具合はどうだい?」

「あ、クマさん……」

と、ヒツジの子は、起き上がるのも辛いのか、
横たわったまま、小さくささやくようにに答えました。

病状が悪化しているのが、医者じゃないクマから見ても
分かりました。

クマは、わざと元気な声で言いました。

「今日はな、おまえの願いごとを聞いてやろうと思って
 来たぞ!」

「え? 願いごと?」

「そうだ、今、一番したいことは、なんだ?」

「一番、したいことか……」

ヒツジの子は少し考えました。

でも、考えた時間は、ほんのちょっとで、
すぐに答えをだしました。

「あのね……」

「うん、なんだ?」

「───おにぎり…、おにぎりが食べたい」

「おにぎり?」

「うん、白いお米だけのおにぎり」

「あ、お米だけのおにぎりかぁ」

「うん、まだ一度だけしか食べたことがないけど、
 すごくおいしかったから、もう一度食べたいなぁ、
 って思った」

「そうか、おにぎりだなぁ、分かった、
 今度来るとき、必ずもってくる」

「わーい!」

と、ヒツジの子は笑顔だけど静かな声を上げて
喜びましたが、

「でも、クマさん、無理しないでイイよ」

と、付け加えました。

この時代、白いお米はとても貴重なもので、
農民でも特別な行事でもなければ食べられませんでした。

それも、他のものと混ぜた、いわゆる雑穀米で、
白いお米だけのおにぎりなど、そうは食べられるものでは
ありませんでした。

しかし、クマは言いました。

「なに言ってんだ、俺に任せとけ!」

ヒツジの子は寝たままの姿勢で、満面な笑みを浮かべて、
クマを見つめていました。

「じゃぁ、楽しみに待ってろよ!」

と言って、ヒツジの家を出たあとで、
クマは困りました。

言ってはみたものの、白いお米だけで作ったおにぎりなど、
気軽には持ってはいけません。

農民であるクマの家にもお米はありますが、
国の偉い人に授けるものが殆どで、自分たちの分なんて
ありませんでした。

「なんとか、ならんかなぁ……」

クマは一所懸命考えました。

考えて考えて、家に向かう道をわざわざ変えて、
遠回りしながら考えて、

「やぁ、クマさん!」

と、声を掛けられても気づかないほど考えましたが、
いいアイディアが浮かばないまま、
とうとう家についてしましました。

「おかえり」

と言う奥さんに、クマはこう言いました。

「あ、あのな、明日、えーとー、村でな、
 道に穴が開いてな、それを直すことになったんだと」

村の行事などがあると、奥さんは、
いつもより少し豪華なお弁当を作ってくれます。

「あら、まぁ、それは大変ね、一日がかりなの?」

「そうなんだ、午前中から夕方まで、一日がかりなんだよ」

「そう、じゃぁ、お弁当が必要ね」

「そう、そうなんだお弁当が必要なんだ!」

思わず、声が大きくなってしまったクマに、
奥さんから疑いの視線が飛んできました。

クマは、なにもなかったようにしらばっくれると、
奥さんが、

「道を直すって、どこの道?
 どこにも穴なんて開いてる道ないじゃない」

「えっ、えーとー」

クマは、平静をよそおいつつ、慌てて考えて、

「と、となり町、殿さまいるお城の道だよ」

「まぁ、お城の前の道を直すの?」

「そ、そうだ、殿の前だ、すごいだろう」

「そうねぇ、お城の前の道を直すだなんて、
 すごいじゃないかい」

「あぁ、すごいだろう」

「いろんなところから、いろんな動物が来るのかい?」

「あぁ、あっちこっちから動物がくるだろうな」

「それじゃぁ、いつものアワなんかの弁当じゃ
 恥ずかしいわねぇ」

「そうだ、殿にも失礼だ」

「じゃぁ、白米で作るしかないわね」

「そうだ! 白米だ! おにぎりにしてくれ!」

と、またクマは大きな声を上げてしまいました。

クマが気づいたときには、奥さんが、
疑いの目でクマを、ジーーーっと、眺めました。

ジーーーーーーーーーーーーーーーッと、
ジーーーーーーーーーーーーーーーッと、

あまりにも、疑いの目で見られるので、
耐えきれなくなったクマは言いました。

「スマン! おまえには隠し事はできないな、
 実は……」

と、ヒツジの子が、白いお米のおにぎりを食べたい
と言っていたことを正直に話しました。

「もう、それならそう正直に言ってくれればいいのに」

「え、いいのか? 白いお米のおにぎりだぞ」

「当たり前じゃないの、むしろ、そんなときのために
 とっておいたお米じゃないかい」

と、奥さんは優しい表情で言いました。

「なーんだ、白いお米のおにぎりなんて、
 城の道直しでもしなければ、作ってくれないと思ってた」

「そりゃ、あなたのお弁当ならそうかもしれないけど、
 今度のはもっと特別じゃない」

「そっか、そうだよな」

「1つくらいしか作れないけど、食べさせてあげて」

と、言いうので「うん」クマはうなずいてから、
大声で、

「俺は、いい奥さんを持った!!」

と叫びました。

「もう、ご近所に聞こえちゃうでしょう」

奥さんは恥ずかしがりましたが、顔はニコニコでした。

翌朝、クマは奥さんが作ってくれた、
白いお米だけで作ったおにぎりを持って、
ヒツジの家に行きました。

ヒツジの子は、

「おいしい、はぁ~、おいしい」

と、涙を流しながら、一口、一口味わいながら食べました。

それを見て、クマはとても嬉しい気分になりました。

そして、その1週間後のことです。

クマが子どもたちと遊んでいるところに、
ヒツジの子どもが顔をだしました。

遠くのほうで、なにも言わずにこちらを見ている
ヒツジの子に、クマは、

「やぁ! こっちに来てみんなと遊ぼう!」

と、声をかけると、ヒツジの子の顔は、
ニコニコ笑顔になり、元気に走って、
近づいてきました。


おしまい。



今回のもとのお話はコチラ

福娘童話集『 米のご飯を腹一杯 』
http://hukumusume.com/douwa/pc/jap/06/03a.htm



━━━ お話はここまで ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



ご意見ご感想、お待ちしています(^0^)/


2018年7月7日土曜日

鬼に感謝祭

これからな、この村に伝わる祭りが
どうして始まったか話をするぞ。

ほら、海の向こうに島が見えるじゃろ、あの島にはな、
むかしむかし、鬼が住んでおったんじゃ。

鬼たちはな、海を渡ってきてまで人間を襲うことはせんが、
島に近づく人間には容赦なく襲ったんじゃ。

そなもんだから、人間たちは鬼が怖くて、
島に近づくことができなかったんだ。

だからな、詳しいことはよく分からんのじゃがな、
村にはこんな言い伝えがあるんじゃ。

島にはなぁ、赤と青の鬼がいっぱいいてな、
それぞれに鬼の親分がいて、百人くらいの子分と
一緒に暮らしていたんじゃ。

赤鬼と青鬼の親分たちは、仲が良くてな、
子分思いのイイ親分だったそうだ。

でも、ある日のことなんじゃが、
親分が二人してお酒を呑んでいたんだ。

二人ともだいぶ、お酒によってきた時にな、
赤鬼の親分が言ったんじゃ。

「俺の、子分たちは優秀で元気がいいんだ」

するとな、子分思いで負けず嫌いの青鬼の親分が
言い返したんじゃ。

「わしの、子分だって優秀で、それはそれは元気だぞ」

「なにを言うんじゃ、俺の子分の方が、元気に決まっとるわい」

「いいや、わしの子分が元気で負ける訳がない」

と、言い争いになってしまったんじゃ。

「じゃぁ、俺のとおまえの子分、
 どっちが元気か、比べようじゃないか」

と、赤鬼の親分が言うので、

「おう、おもしれぇ、わしの子分の元気のよさを
 見せつけてやる!」

と、青鬼の親分がこたえて、二人の親分は、
どちらの子分が元気がいいか、勝負をつけよう
ということになったんじゃ。

でな、なにで勝負しよう、ということになってな、
手っ取り早く、スモウで決着をつけようとなったんじゃ。

それでな、赤鬼対青鬼のスモウ大会が開かれることになってな、
それぞれ、元気自慢の鬼たちが、十人ずつ選ばれて、
対戦することになったんじゃ。

赤鬼、青鬼、それぞれの誇り(ホコリ)をかけての対決に、
全ての鬼が観戦に訪れて、スモウ会場は大盛り上がり
だったそうだ。

土俵の下では、東側に赤鬼の親分が座り、
西側には青鬼の親分が座り、それぞれの親分の後ろには、
スモウをとる選ばれし十人の鬼が、
気合いを入れた表情で座っていたそうじゃ。

スモウの勝敗を決める行司の役目は、
赤鬼と青鬼のそれぞれの副親分が担当して、
大勢の鬼が見守る中で、スモウ大会は始まったんじゃ。

最初は、赤の勝ちじゃ。次は青の勝ち。その次から三回連続で
赤が勝って、赤鬼たちが大はしゃぎだったけどな、
それから青が三回勝って、青鬼も大いに喜んで、
どっちもひかぬ大勝負に会場は盛り上がったんじゃ。

次の取り組みでは赤が勝って、そして最後の取り組みは、
青が勝ってな、五勝五敗で、勝負がつかないまま、
終わってしまったんじゃ。

このままじゃ、勝負がつかぬ、となった時にな、
赤鬼の親分が立ち上がってこう言ったんだ。

「こうなったら、俺が戦う!」

それに応えて青鬼の親分も立ち上がって、

「おう、わしが受けてやる!」

そう言って、二人の親分が土俵に上がったんじゃ。

会場は、それはそれは、その日一番の盛り上がりになったんじゃ。

ドスン! ドスン!

二人の親分が四股(シコ)を踏むたびに、
ドドドド、と地面が震えて、
荒々しい空気に会場は包まれてそうじゃ。

そして、いざ二人の鬼の親分がスモウをとろうとしたとき、
行司をしていた、赤鬼と青鬼の副親分が、
それぞれの親分に言いにいったんじゃ。

「親分、考え直してください。
 親分たちが戦って、もし勝負がついた場合、
 負けた方はきっと死んでしまうでしょう」

副親分たちは、実に冷静じゃ、鬼の親分の力は半端ない、
相手を死なせるほど戦わないと勝負はつかない。

しかし、こんなことで、どちらかが死んでしまっては、
意味がないと、親分に考えを変えるように言ったんじゃ。

そう言われて困ったのは、親分たちじゃ。

「しかしのう、勝負しようと言っちまったからなのう」

「ひくにひけんなぁ……」

というので、副親分たちは言いました。

「では、こういうのはどうでしょう。もともとはどちらの鬼が
 優秀で元気がいいかの対決だったはずです。
 どうでしょう、優秀で元気がないと出来ない仕事で、
 決めるというのは」

「優秀で元気がないと出来ない仕事?」

「そうです、例えば、人間の住む海の向こうまで、
 石橋をどちらが早く渡せるか、という対決はどうでしょう」

「石橋を渡す?」

「はい、石橋を早く作るのは優秀で元気がないと出来ません。
 海の向こう側まで石橋を渡して、どちらが早く
 人間を襲えるかを競うのです」

「おぉ、なるほど、それはいいかもしれんなぁ」

と、鬼の親分のスモウ対決は、なんと石橋を作って、
我々人間を襲う大会になってしまったんじゃよ。

そうと決まってからは、鬼たちは我先に海に橋をかけて
人間を襲うぞ! と必死に頑張ったんじゃ。

赤鬼、青鬼、それぞれが知恵を絞って、二本の橋を作り始めてな。
それはもう、お互い、凄まじい勢いで作っていったんじゃ。

でな、やがて立派な石橋が二本できてな、
それ我先に人間を襲うぞ!
と、鬼の親分を先頭に皆で橋を渡り始めたんじゃ。

もう、最後は徒競走のようなものじゃ。

どちらの鬼が早く橋を渡り、人間を襲えるか。
どの鬼も一目散で、こちら側に向かって走ったのじゃ。

そして、島にいる鬼たち全員が、橋の上に乗ったときだ、
とんでもないことが起きたのじゃ。

“ビューーーーーーッ!!!”

と、物凄い風がふいてな、鬼たちは全員、
海の中に落とされてしまったのじゃ。

あっという間の出来事で、鬼たちはなにもできずに
海の中で、バタバタともがいたのじゃ。

実はな、鬼たちは、人間を襲う力はあっても、
泳ぎが苦手だったそうだ。

しかも落ちたのは海じゃ、足もつかなければ、
波にあおられて泳ぐのは大変じゃ。

バタバタともがいていた鬼たちも、やがて力尽きてな、
全員、死んでしまったそうじゃ。

それでな、あの島からは鬼がいなくなったんじゃ。

その時できた二本の石橋のおかげで、我々人間は、
あの島に気軽に行き来できるようになったんじゃ。

人間を襲おうと作られたはしじゃが、
今では人間の役に立っている。

世の中は、なんとも因果なできごとが多いが、
わしら人間は橋をかけてくれた鬼たちに、感謝している。

それがこの村に伝わるお祭りじゃ。

鬼に感謝する祭りそれが「鬼に感謝祭」じゃ。

分かったかな。


おしまい。




今回のもとのお話はコチラ

福娘童話集『 一人になった鬼の親分 』
http://hukumusume.com/douwa/pc/jap/06/02.htm



━━━ お話はここまで ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



ご意見ご感想、お待ちしています(^0^)/