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「もくじ」がちょっと新しくなったよ

2018年6月17日日曜日

八五郎さんの小判[前編]

この物語は、私がある人から聞いた話です。
とても面白いので、アナタにもお話いたしますね。

それは、昔々の話なのです。

ある海沿いの村に、八五郎さんという男の人がいました。

八五郎さんはある日、近所に住んでいらっしゃる
正直じいさんと呼ばれて名高い老人から、
海で釣りをしてたら、大量の小判を釣り上げたという、
なんともうらやましいお話を聞いたんです。

(あの正直じいさんが言うんだからホントのことだべ)

と、八五郎さんは素直に信じて、
早速、釣竿を持って出かけました。

船を持っていない八五郎さんは海につくと、
近くにいた漁師さんから、手こぎの船を借りて、
いざ出発! と、沖を目指して船を進めました。

(どのくらいの小判が釣れるかなぁ)

と思いながら八五郎さんは、波が穏やかな海を、
にこにこと楽しそうに船をこぎました。

八五郎さんは船の扱いになれていないので、
帰れなくなるといけない、と思い、
陸がまだはっきりと見えるあたりで船を停めました。

「よし、この辺でいいかな」

八五郎さんは持ってきた釣竿を手に取り、
糸を海にたらしました。

「小判が釣れたらなにつかおうかぁ~、
 ウナギのかば焼きをたらふく食べようかな~
 いや、うな重の特上かな~
 それとも寿司をお腹いっぱい食べようかなぁ~、
 それでも余るようなら、殿さまみたいな着物を
 しつらえちゃおうっかなぁ~」

釣り糸をたらした八五郎さんの頭の中は、
楽しいことばかりで、とても上機嫌でした。

「おっ!」

その時、八五郎さんの釣竿が、ツンツン、と引っ張られ
ました。

「小判が当たったな!」

八五郎さんは一気に釣竿を持ち上げました。

するとどうでしょう。
釣竿には、キレイな赤い色をした魚がついていました。

それを見て八五郎さんは、

「な~んだ、タイかぁ~」

と、魚を見てガッカリしてしまいました。

タイは高級な魚です。八号郎さんは生まれてこのかた
食べたことはありませんでしたが、
高級な魚だということはご存知でした。

しかし、小判を釣ろうと思っていたので、

「お前じゃないんだよなぁ」

と、タイを釣竿からはなして、海へ投げ入れて
しまったのです。
なんともったいないことをしたのでしょう。

「さぁ、気を取り直して、小判を釣るゾ!」

小判を釣ろうとしている八五郎さんにとっては、
もったいないなんて気持ちは微塵もなさそうです。

すぐに釣り糸を海にたらしました。

その後も、何度か当たりがありました。

シマアジだのヒラメだの、白いタイだの、
それは目が眩むほどの高級な魚たちでしたが、

「お前じゃない」

と、八五郎さんは逃がしてしまうのです。

おかけで、なんの収穫もないまま、
時間だけが過ぎていきました。

やがて日が暮れてきました。

今日はこの辺にして、もう、帰ろうかな、と思ったとき、
八五郎さんの釣竿が引っ張られました。

今度は今までにない感触です。

「これは! ついにきたか!」

八五郎さんは糸が切れないように慎重になりながらも、
手に力を込めて、釣竿を引っ張り上げました。

すると、海の中からツボが姿を現しました。

八五郎さんは船から身を乗り出して、ツボを掴むと、
ヨッコラショ、っと、船に引きずり上げました。

ツボは、穴がフタのようなものでふさがれていて
中が見えませんでした。

八五郎さんは力いっぱいフタをめくり中を見ました。

中には、ビックリするくらいの大判、小判が、
ザックザックと入っていました。

「やったー!! これでオラはお金持ちじゃ!!」

八五郎さんは両手を上げて喜びの声を上げました。

こうなったら早く帰ろうと、ツボを倒れないように
紐でしっかりと船にくくり付けました。

そして陸に向かって船をこぎだそうと、
辺りを見渡しました。

するとどうでしょう。

船を出した陸が見えません。

「あ、アレ……」

右を見ても、左を見ても、周りは海だけで、
陸はどこにも見当たらないのです。

どうやら八五郎さんは釣りに夢中で、波に流されて
陸から遠くまで来てしまったことに気づいてなかった
ようなのです。

「どうしよう~」

八五郎さんは大変困りました。

とりあえず、日が沈む方へ進めば、
陸があると聞いたような気がするので、
夕日に向かって船を進めることにしました。

すると、八五郎さんの頬に水滴があたりました。

「あー、こんな時に雨かぁ」

八五郎さんは船をこぐ手に力を込めました。

雨はだんだん勢いを増していきています。

必死に船をこいでいましたが、無情にも雨雲が広がり、
目標としていた夕日も、うっすらとしか見えなくなって
しまいました。

雨の激しさとともに、波も高くなってきて、
船を、上下左右に激しく揺らしました。

八五郎さんも力を込めて船をこいでいましたが、
さすがに耐えきれなくなって、

「いやだー! せっかく小判を手に入れたのに、
 こんなところで、死ねるかー!」

と、叫んでしまいました。

八五郎さんは、力を込めて握っていた棒を手放し、
小判が入っているツボに、自分が蓋になるように
おおいかぶさると、船に括り付けていた紐を外し、
ツボと自分の体をグルグル巻きにして、
強く結びつけました。

“ゴロゴロゴロー!!!!!”

暗くなった空に、眩しい光と共に雷鳴がとどろきました。

八五郎さんは、海なのか雨なのか分からない水を
大量に浴びながら、上下左右、前へ後ろへ、
ハチャメチャに揺れる船にしっかりとしがみつきました。

「ヤダー! 死にたくない、死にたくない!!」

八五郎さんの必死の叫び声は、荒れくれる波の音と、
大雨の音と雷鳴に打ち消されてしました。

“ゴロゴロゴロー!!!!!”

やがて八五郎さんの船に大きな波が打ち寄せました。

船が大きく傾いて、とうとう八五郎さんは
海へ放りだされてしまいました。

一生懸命、立ち泳ぎをして八五郎さんはなんとか顔を
水から出そうとしましたが、体には小判の入ったツボが
巻き付いています。

うまく水から顔が出せるはずがありません。

ましてや、海の波は荒くれて、大雨が降っています。

八五郎さんは、大量に水を飲んでしまいました。

さぞ、苦しかったことでしょう。

しかし、荒れくれる波に揺さぶられていると、
段々と意識が遠のいて苦しさも感じなくなったそうです。

(───あぁ、オラはここで死ぬのだなぁ……)

“ゴロゴロゴロー!!!!!”

激しい雷鳴が、八五郎さんには遠くでなっているように
感じられて、やがてまったく意識がなくなって
しまったそうです。

八五郎さんはどうなってしまうのか、
続きが知りたい方は、後編へお越しくださいませ。



[後編]へつづく……


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