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2018年6月30日土曜日

じいさんの風車小屋[後編]

【前編はコチラから】

このまま工場へ向かうと、今日はコルニーユじいさんに
会うことはできません。

少し考えてから、ビベットは長年足を運んでいなかった
コルニーユじいさんの風車小屋へ繋がる道を進みました。

久しぶりに通る道の周りには、黄金色になった収穫前の
麦畑が辺り一面に広がり、その先には、村で最後の一軒に
なったコルニーユじいさんの風車小屋が立っていました。

風車こそ回ってはいませんでしたが、幼きころよく見た
景色は、懐かしくもあり、しばらく来ていなかったことで、
少し心が引ける思いも感じました。

風車小屋の扉の前に立つと、ビベットは、
幼いころの記憶との違和感を覚えました。

風車小屋がとても小さく感じたのですが、
それは自分が成長したからだと分かります。

幼いころは大きく見えていても、大人になると、
そう感じなくなることは良くあります。

しかし、この小さいという感覚は
少し違うような気がしました。

年月が過ぎ去った建物は古くさび付いています。

それ以上に、存在感が小さく、風貌がこじんまりしていて、
ビベットが覚えている、楽しかった日々の、
輝きのようなものがないように感じました。

風車が回り、ゴトンゴトンと粉をひく音に合わせて
村人たちが歌っていたあの頃のキラキラとしたものが、
この風車小屋からは伝わってきません。

ビベットは違和感を覚えながらも、
何年かぶりに、その扉を開けました。

「じいさん、いるかい……、コルニーユじいさん」

何度か呼びかけてみましたが、返事はありませんでした。

ビベットは風車小屋に一歩足を踏み入れ、
もう一度呼びかけようかとしたとき、
床に倒れているコロニーユじいさんの姿が
目に飛びこんできました。

「じぃさん!!」

ビベットはすぐにコロニーユじいさんに近寄り、
上体を起こしました。

気を失っているようですが、息はしています。

「待っていろ、すぐに医者に連れてってやるからな」

ビベットはコロニーユじいさんを担ぎ上げると、
ロバがいる小屋へ向かおうとしました。

その時、近くにあったものにつまずき、
コロニーユじいさんを担いだまだ、
危うく転ぶところでした。

つまずいたものは、袋のようで、つまずいた拍子に
中のものを床にぶちまいてしまいました。

その袋には見覚えがありました。

毎朝、コロニーユじいさんとすれ違う時に
ロバに乗せている袋です。

となり町に粉を運び、帰りには小麦を入れてくる袋です。
普通は、麦か粉のどちらかが入っているはずです。

しかし、床にぶちまかれていたもの。

それは、黄金色の麦でも、白い粉でもなく、
ただの土でした。

「なぜ、この袋に土が……」

ビベットは不思議に思い、周りを見渡しました。

幼いころ、さんざん手伝ったので、風車小屋の中の状況は
すぐに把握できました。

ここには、最近、麦をひいたというあとが
まるで残っていませんでした。

家具なども、昔より減っています。

「まさか、じいさん。麦を仕入れてるなんて、
 ウソだったのか!」

そう叫んだビベットは、コロニーユじいさんを担ぎ直すと、
ロバのところへ走っていき、コロニーユじいさんを乗せ、
いちもくさんに、医者の所に向かいました。


───数日後。

幸い、ビベットの発見が早かったので、
コロニーユじいさんは命をとりとめました。

数週間、医者のところへ泊まって治療を受けましたが、
風車小屋へ戻れることになりました。

やっと我が家に戻れると、喜んで歩いていている
コロニーユじいさん。

風車小屋に近づくと、大勢の人が集まっていることに
気づき、驚きました。

(なんじゃ、わしが帰ってきたことを
 祝ってでも、くれるのか?)

などと思いながら近づいて行くと、

「お、コロニーユじいさん、お帰り」

と、村人たちから声をかけられました。

「やぁ、やぁ、ありがとう」

コロニーユじいさんは、首を傾げ、奇妙だなぁ、
と思いながらも、村人たちに笑顔で声をかけました。

風車小屋の入口に近づくと、ビベットが
満面の笑みを浮かべて立っていました。

「お帰り、コロニーユじいさん」

「やぁ、ビベット、今回はありがとう、
 おかげで元気になったぞ!」

二人は抱き合って喜びました。

「ところでビベット、この騒ぎはいったいなんじゃ?」

コロニーユじいさんが苦笑いしながら言うと、
ビベットは満面の笑みを浮かべながら言いました。

「コロニーユじいさん、彼らは病気から戻って来た
 じいさんを、励ましに来たわけじゃないんだよ」

「え、じゃぁ、なんでわしの家の前にいるのじゃ?」

不思議そうなコロニーユじいさんにビベットは
いたずらっぽい表情で言いました。

「彼らは、コロニーユじいさんに、
 仕事をさせるために来たんだよ」

「なんじゃって!」

驚くコロニーユじいさんに、ビベットは、

「ほら、みんなをよく見てみな」

コロニーユじいさんは、
集まっている村人たちを見ました。

村人たちは、皆かたわらに袋を持っていました。

開いて見せてくれると、中には黄金色をした
麦がたくさん詰まっていました。

村人の1人が言いました。

「やっぱり、風車でひく粉で作ったパンが、
 一番、おいしいからな」

他の村人はこう言いました。

「これからは、工場だけじゃなく、
 こっちにも持ってくるからね」

袋を掲げる村人たちの顔は笑顔に包まれていました。

コロニーユじいさんは驚いて、
村人やビベットの顔を何度も繰り返し見ました。

実は、コロニーユじいさんが入院している最中に、
ビベットが村人たちに、仕事が無いコロニーユじいさんの
現状を話し、助けを求めたのでした。

村人たちも、コロニーユじいさんが困っているのなら、
喜んで助けよう、と、こうやって収穫したばかりの
麦を持って集まってくれたのです。

「まったく、病み上がりの老人をこき使うなよ~」

コロニーユじいさんは、そのことを知りませんが、
とにかく、昔のように粉をひけることが嬉しくて
たまりませんでした。

「よーし、じゃ、早速! 順番に粉をひくぞ!!」

「オー!」

風車小屋の前で歓声が上がりました。

やがて、村に1つだけあるコロニーユじいさんの風車小屋の、
風車が回り出し、ゴトンゴトンという風車小屋が奏でる
粉ひきの音に合わせて、村人たちが歌を歌いました。

その歌声が、長い年月を経て、
久しぶりに村に響き渡りました。


おしまい。



今回のもとのお話はコチラ

福娘童話集『 コルニーユじいさんの秘密 』
http://hukumusume.com/douwa/pc/world/06/01.htm



━━━ お話はここまで ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


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