※童話の更新は週1回(だいたい土曜日の夜)です(^0^)/

≫≫≫ ☆ もくじ ☆ ≪≪≪

2018年6月30日土曜日

じいさんの風車小屋[前編]

むかし、むかしのお話です。

一面が麦畑におおわれた村がありました。

麦畑で採れた麦は、村にたくさん建っている
大きな風車のついた小屋に運ばれます。

風車の中ではゴトンゴトンと、縦に伸びた棒が上下に動き、
麦が粉になるまでこすり合わせて、パンなどの原料を
作っていました。

この村で生まれたビベットは、一面の麦畑と、
大きな風車小屋がたくさん建ち並ぶ風景を見ながら
育ちました。

ビベットのおじいさんのコルニーユじいさんは、
風車小屋に1人で住んでいました。

ビベットは幼いころ、コルニーユじいさんの風車小屋に
よく来ていました。

「風車小屋に来たなら、遊んではいられないぞ」

そう言って、コルニーユじいさんは
ビベットに風車小屋の仕事をさせました。

それがビベットには、たまらなく楽しくて、
時間があると、コルニーユじいさんの風車小屋に来ては、
仕事の手伝いをしていました。

その頃の村では、あちこちで風車が回り、ゴトンゴトンと
粉をひく音に合わせて、みんな仲良く歌を歌いながら、
楽しく暮らしていました。

しかし、村に転機が起こりました。

村の近くに、機械を使って麦を粉にする工場が
建設されたのです。

工場では、あっという間に麦を粉にしてしまいます。

その速さは、風車小屋が10日かけて作る粉の量を、
半日で作ってしまうくらいでした。

あっという間に粉にしてもらえるとあって、村の人たちは、
自分の畑で採れた麦を工場に持っていくようになりました。

麦が工場へ行ってしまうので、風車小屋にはだんだんと、
麦が集まらなくなってしまいました。

麦が集まらなくては仕事になりません。
一軒、また一軒と、次々に風車小屋は閉鎖されました。

閉鎖されると、風車小屋は取り壊され、
その場所はすぐに麦畑になりました。

時が経ち、青年になったビベットが眺める村には、
建ち並んでいた風車小屋の姿はなく、ただ一面に
麦畑が広がるだけの景色になっていました。

すっかり様変わりした村の風景のなかに、ポツンと、
時が止まったかのように、一軒だけ風車小屋がありました。

コルニーユじいさんの風車小屋です。

それは、村で最後に残った風車小屋でした。

青年になったビベットは、家の麦畑を手伝いながら、
麦ひき工場で働いていました。

今では村人の大半はビベットと同じような
生活をしていました。

ビベットは工場で働くようになってから、
コルニーユじいさんの風車小屋へは行っていませんでした。

工場はコルニーユじいさんのような風車小屋で働く人の
仕事を奪った存在です。

そこで働くことへの後ろめたさから、
コルニーユじいさんの風車小屋に、
どうしても足を運ぶことができなかったのです。

しかし、毎朝のように、工場へ向かう途中の道で、
麦の粉を入れた袋を、たくさん背中に乗せたロバをつれて
となり町へ向かうコルニーユじいさんと会っていました。

「今日も、となり町まで行くの?」

ビベットが訪ねると、コルニーユじいさんは、
目が無くなるほどに細め、満面の笑みを浮かべながら、

「あぁ、また、大量の麦を粉にしてくれと
 注文が入っているからなぁ」

「それは、大変だね」

と、ビベットが答えると、コルニーユじいさんは、

「風車小屋でひく粉で作ったパンが、一番おいしいからな」

と、ひとり言のようにつぶやき、嬉しそうな顔をして、
そのまま通り過ぎて行きました。

村では、そんなコルニーユじいさんのことが
噂になっていました。

工場ができて、他の風車小屋が無くなっているのに、
コルニーユじいさんのところだけが続けられる訳がない。
なにか、変なことでもしでかしていないといいが……。

ビベットも、その噂は気になっていました。

コルニーユじいさんは仕事があるようなことを
言っていますが、着ている服はボロボロで、
靴には穴が開いていました。

そのことをコルニーユじいさんに訪ねるのですが、

「大丈夫だ、心配ない」

との返事が、満面な笑顔とともに、
返って来るばかりでした。

そんな毎日が過ぎていたある日の朝のことです。

ビベットが工場に向かって歩いていると、
いつもコルニーユじいさんとすれ違うところに来ても、
コルニーユじいさんの姿が見えませんでした。

(おや、じいさん寝坊でもしたかな?)

と、最初は軽く考えていたビベットでしたが、
歩いても歩いても、コルニーユじいさんとすれ違うことは
ありませんでした。

そして、ついに、工場へ行く道と、コルニーユじいさんの
風車小屋へ行く道の分かれ道まで来てしまいました。


[後編]へつづく……


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