※童話の更新は週1回(だいたい土曜日の夜)です(^0^)/

≫≫≫ ☆ もくじ ☆ ≪≪≪

2018年4月7日土曜日

あまのじゃくな戦い

「どうだい? 俺と勝負しないかい」

「おもしろい、やろうじゃないか」

昔々、ある村に住んでいる金蔵と富吉という名の
二人の男が勝負をすることになりました。

二人とも村で1、2位を争う「あまのじゃく」と言われていました。

「あまのじゃく」とは、晴れている日に「いい天気ですねぇ」などと
話しかけられると「乾燥しているから、雨の日の方がいい天気だ」
と、わざと反対のことを答えるような人のことを言います。

そんな「あまのじゃく」な二人が、1位を争うべく、
勝負をするというのです。

「やり方はこうだ」

金蔵が富吉に言いました。

「明日からお互い、なにを言われても、
 『うん』と返事をしないで「あまのじゃく」のことを言うんだ」

「なるほど、それはいい、ま、勝つのは俺だな」

と富吉はニヤリと笑いながら言うので、

「フン、吠え面かくなよ」

と金蔵も言い返しました。

二人は、しばらくにらみ合ってから、くるり背を向けて離れ、
あまのじゃく1位の座をかけた、
『あまのじゃくな戦い』の幕が開きました。

───翌日。

富吉は朝から、川で魚釣りをしていました。

(今日の晩御飯は豪勢な魚が食べられるな)

カゴの中身を見て富吉はご機嫌な笑顔を浮かべました。

日も傾いて来たので、そろそろ帰ろうと仕度をしていると、

「コレはコレは富吉さん」

不意に、声をかけられました。

富吉はイヤな気分になりましたが、平静を装った顔で返事をしました。

「ヤーヤー、金蔵さん、こんばんは」

金蔵の目は、魚がたくさん入っているカゴに
向けられていました。

「富吉さん、今日は大量の魚が釣れて良かったですねぇ」

『うん、良かった』などと答えてしまっては勝負に負けてしまいます。
富吉はすぐに言いました。

「ふん、今日は魚を食べる気分じゃないから、
 この魚は全部捨てるさ」

そして持っていた魚がたくさん入ったカゴを
“ポイッ”と投げ捨ててしまいました。

「おやおやそうですか」

金蔵は笑いながら、

「捨てるなんてもったいない、どーれ私がもらっていきましょう」

と、富吉が捨てたカゴを拾うと、素早い足取りで、
あっという間に走り去っていきました。

「金蔵め! してやられた!」

富吉は走り去る金蔵を背中を見ながら、

「キー!!!!!」

と悔しがり、釣竿を地面に叩きつけました。

悔しくて、たまらない富吉はなんとか仕返してやろうと、
考えを巡らせました。

そして何日かたった後。

富吉は馬を連れて金蔵の田んぼへ向かいました。

金蔵は田植えをしている途中で、その付近には、
まだ植えられていない苗が山積みなっていました。

(しめしめ)

と思った富吉は、金蔵に声をかけました。

「コレはコレは金蔵さん、田植えですか」

富吉の顔を見た金蔵は、明らかに
“しまった!”という表情をしました。

「ヤーヤー、富吉さん、私は田植えなんてしてませんよ。
 今日は、苗を捨ててるんだよ」

金蔵がそう言うので、富吉は(しめた!)とばかりに
得意げな表情で言いました。

「おやおやそうですか、捨てるなんてもったいない、
 この苗は私がもらいましょう」

と、すばやく大量の苗を連れて来た馬に乗せ、
一目散に走り去りました。

そして、自分の田んぼに行くと、サッサ、サッサ、と
ものすごい速さで、苗を植えてしまいました。

これで金蔵が苗を返せと言っても返せません。
苗が植えてある田んぼを眺め、悔しがる金蔵の顔を
思い浮かべながら満足そうに笑いました。

その後、金蔵は苗を返せと言って来ることもなく、
それどころか、なぜか二人は顔を合わすことすらなく、
季節は変わり、夏が過ぎ、秋になってしまいました。

夏の間中、一生懸命に育てた苗は、こうべを垂れ、
黄金色の立派な稲に成長しました。

富吉は満足そうに眺めると、せっせと稲刈りを始めました。

大半の稲を刈り終わったころです。

「コレはコレは、富吉さん」

と、それは久しぶりに聞くイヤな声でした。

声のする方を向くと荷車をひいた馬の横に、
満面な笑顔を浮かべた金蔵が立っています。

富吉は季節が過ぎるのと一緒に忘れていましたが、
金蔵の声を聞いて『勝負』のことを思い出しました。

(金蔵、忘れてるといいがなぁ)

などと淡い思いを込めながら、

「ヤーヤー、金蔵さん、なにか御用ですか?」

と、返事をしました。

「富吉さん、今日は稲刈りですか?」

(やっぱりそう来たか!)

金蔵が勝負を仕掛けているのは分かっているので、
富吉は仕方なく答えました。

「いいや、稲を捨ててるんだよ」

金蔵は笑みを浮かべながら、

「おやおや、それはもったいない、
 捨てるなら、その稲は私がもらっていきましょう」

と、富吉が刈った稲を荷車に積み込みました。

せっかく育てた稲でしたが、元をたどれば金蔵の苗です。

富吉は悔しい気持もありましたが、
(悔しいが仕方ないか)と諦めの思いも持っていました。

稲を積み終えて、馬車に乗って「では」と言う金蔵が
“ニタ~”とした笑顔を浮かべました。

それを目にした途端、富吉の頭に、ある思いが浮かびました。

(金蔵は“わざと”苗を盗ませて、
 俺に稲を育てさせたのではないのか?)

それなら、苗を返せと言ってこなかったことにも頷けます。

金蔵のあの笑顔の裏には、そんなたくらみが隠されているようで、
富吉は、悔しくて悔しくてたまらなくなりました。

そして思わず、金蔵の馬車の後を追うように歩き出しました。

(なんとか金蔵に、一泡ふかすことはできないか)

歩きながら頭を巡らしました。

そうこうしているうちに、馬車は進み、
やがて金蔵の家の蔵の前でとまりました。

金蔵は馬車から降りると、すぐに稲を降ろし始めました。

「コレはコレは、金蔵さん」

と富吉が声をかけると、富吉がついてきていることに
気づいていなかった金蔵はビックリしました。

「ヤーヤー、富吉さん」

稲を両手に抱えながら金蔵が答えると、

すぐに富吉が、

「金蔵さん、稲を自分の蔵に入れるのですか?」

「えっ、いや、これはー」

少しうろたえた金蔵でしたが、

「そんな訳はない、こ、この稲は、そのー、
 お前の蔵に入れてやろうとしてるのだ」

と、金蔵は厳しい表情で言いました。

そのまま金蔵が悔しそうに俯いてしまったのを見て、
富吉は笑いながら言いました。

「終わりに、しないか」

「え?」

不思議そうな顔をしている金蔵に富吉は、

「こんな不毛な勝負は終わりにしようではないか。
 ついでに、あまのじゃくでいることも面倒くさい。
 俺はそれも終わりにしようと思ってる」

聞いていた金蔵の顔が少し明るくなりました。

富吉は続けます。

「俺は苗をお前から取り上げたが、こうして立派な稲に育てた。
 どうだ、勝負は引き分けということで、半分ずつ分けないか?」

「あー、まぁ、そう言うことなら……」

と、金蔵は微笑み、少し油断して、

「うん、そうしよう」

と言ったとたん富吉は、

「やった! 『うん』って言った! 俺の勝ちだ!」

と大喜びしました。

「かーぁっ!!!!!」

金蔵の顔は一気に赤くなりました。

富吉は笑いながら、

「冗談だ、冗談、終わり、終わり」

と言いながら、金蔵の肩をバンバンと叩きました。

金蔵は半信半疑ながらも、赤かった顔が徐々に引いていきました。

そして二人は大笑いし、稲を半分ずつそれぞれの蔵に入れました。

こうして、しょうもない、あまのじゃくな戦いは、
引き分けで幕を閉じました。

そして、二人は「あまのじゃく」であることも
捨てたのでした。


おしまい。



今回のもとのお話はコチラ

福娘童話集『 あまのじゃく比べ 』
http://hukumusume.com/douwa/pc/jap/05/10.htm



━━━ お話はここまで ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



☆ちょこっとHappy♪☆


今回のお話の二人まで行かないまでも、
どうしても「あまのじゃく」なことを言ってしまうこと、って、
ありますよね。

特に反抗期の年頃だったころなんて、なぜか言われたことに
素直に「そうだよ」って言えませんでした。

「プライド」だとか「見栄」だとかが、
素直になることを邪魔しているんでしょね。

「どうにかならないものでしょうか?」

と思うところですが、逆に考えてみるとどうでしょう。

素直になれないことは、自分が持っている
「プライド」や「見栄」だということです。

余計な「プライド」や「見栄」なんて捨ててしまえ!

なんていう人もいますが、それはあくまでも“余計な”もののことで、
本来、人間にとって「プライド」や「見栄」は大切なもの
だと思うのです。

それが無くなったら、生きていけないと思います。

ですから「なんか素直になれないなぁ」
「あまのじゃくになっちゃったなぁ」と思うことがあったら、
その時の言われたことや、言ったことの中に隠れている
自分の「プライド」や「見栄」に注目してみましょう。

それが“余計な”ものなら捨てちゃいましょう。
大切なものなら、しっかりと持って生きて行きましょう。



今日のHappy♪ポイント

『 「プライド」や「見栄」は大事! 』


ご意見ご感想、お待ちしています(^0^)/


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