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「もくじ」がちょっと新しくなったよ

2018年4月28日土曜日

けちんぼうなイヌ

昔々、ある日、散歩をしていた野良イヌが、

(あ! アレは!)

と、道端に転がる白くて細長い棒のような物を
見つけました。

近づいて見てみると、それは、
今まで見たこともないくらい『立派な骨』でした。

イヌは大喜びでかぶりつきました。

すると、今まで味わったことのない
歯ごたえがありました。

それは、いつまでも(むしゃぶりついていたい!)
と思うほどの心地いい感触でした。

(立派な骨を見つけちゃった!)

イヌは大喜びしました。

いつまでも骨をしゃぶっていたかったのですが、
ここは道端です。誰がやってくるか分かりません。

イヌは骨が落ちないようにくわえなおして、
歩き出しました。

(こんな立派な骨、家に持って帰ったら仲間に見つかって、
 絶対に横取りされちゃう!)

イヌは群れで暮らす生き物です。
家に帰れば何匹もの仲間がいます。

(どこかに隠さなきゃ!)

イヌはキョロキョロと辺りを伺いながら、
骨を隠すいい場所はないかと探しました。

しばらく歩くと、雑木林がありました。

(よし、ここなら誰も来ないだろう。
 隠した場所が分からなくならないように、
 目印があるところに埋めよう)

イヌが隠し場所を探していると、
少し太めの目立つ木が目に入りました。

(この木なら特徴あるから忘れないな)

イヌはくわえていた骨を地面に置くと、
木の根元付近の土を掘り始めました。

少し掘ったところで(こんなものか)と思いましたが、
浅いとすぐに見つかってしまうかもしれなと思い直し、
さらに深く掘りました。

やがて自分の体の半分がすっぽり隠れるくらいまで掘り、
骨を穴の中に入れ、土をかけて埋めました。

(よし、これなら誰にも見つからないぞ!)

イヌは満足して家に帰りました。

その日の夜、

(あー、ステキな骨だったなぁ)

イヌは立派な骨を噛んだときの感触を思い出して、
幸せな気分になっていました。

(今までにない感触だったぁ、もう、手放せないなぁ~
 今頃、どうしてるかなぁ、ちゃんとあそこにあるかなぁ)

立派な骨を埋めた雑木林を思い出しました。

(雑木林だなんて、分かりやすい場所に埋めちゃったかなぁ
 もっと目立たないところにすればよかったかなぁ)

なんだか思いは別の方向へ進んでいます。

(あー、今頃、誰かが見つけてるかもしれない!
 ちゃんと骨は隠れているかなぁ)

段々、不安な気持ちが襲って来ました。

(深く掘ったつもりだけど、思ったより浅かったかもしれない!
 そんなことより、土をちゃんとかけてきたかなぁ)

不安な気持ちはどんどん膨れ上がっていきます。

イヌは、不安な気持ちが浮かぶたびに、
首を上げたり、傾げたり、振り向いたり、
立ったり座ったり、落ち着きなく体を動かしました。

すると、仲間のイヌから、

「どうした?」

と、声をかけられてしまい、

「うわぁー!」

ビックリして飛び上ってしまいました。

「い、いや、なんでもないよ」

なんとか、とぼけて見せてから、

(こんな状態で、雑木林に出かけて行ったら、
 バレちゃうよなぁ)

と思いました。

(あーでも、確かめに行きたい! 
 でもでも、明るくなってからがいいかなぁ~)

イヌは悩みました。

しかし、居ても立っても居られなくなって、
とうとう暗闇の中へ走り出してしまいました。

イヌは夜行性の動物なので、
夜でも辺りを見ることができます。

しばらく走って雑木林にやってくると、
すぐに目印の木に向かっていき根元を掘り返しました。

土の底には、ちゃんと骨がありました。

ホッとしたイヌは、骨がしっかり隠れるように
今度は念入りに土をかけました。

そして、立ち去る前にもう一度、木の根元を見て、
骨が見えないことを確認してから家に帰りました。

家に帰るとすぐに仲間のイヌから、

「どこへ行ってた?」

と聞かれ、ドキッとしましたが、
うまく誤魔化し、わざとらしく大きなあくびをして、
すぐに丸くなって寝たふりをしました。

しかし、寝たふりをしたのはいいですが、
骨のことが気になり、なかなか寝付けません。

(本当に、見つからないかなぁ、
 ちゃんと、隠れてるかなぁ~)

と、長い時間いろいろと考えていましたが、
いつの間にか寝ていたのでしょう、
目覚めると、すでに辺りは明るくなっていました。

すぐに雑木林に向かおう立ち上がりましたが、
雑木林に向かうのを仲間に見られたら、
追いかけられるかもしれません。

辺りを見回すと、
家には仲間のイヌは誰もいませんでした。

(よし、行くならいまだ!)

イヌは雑木林に向かって走り出しました。

走りながら立派な骨のことを想像しました。

(あの感触、しゃぶりつくのが楽しみだ!)

走る足に力を込め、全力で雑木林に向かいました。

そして雑木林につき目印の木が見えるところまでいくと、
とんでもない光景が飛びこんできました。

目印の木の付近に仲間のイヌが集まっていました。

アチコチ地面は掘りおこされ、仲間たちの前には、
立派な骨が転がっていました。

悪夢のような光景に、イヌは愕然として、
その場に座り込んでしまいました。

仲間のイヌが一匹だけ近づいてきて言いました。

「夜中に抜け出したおまえの後をついて行ったら、
 雑木林に入ったのが見えてなぁ、
 その時は分からなかったが、朝になって調べてみたら、
 あんな立派な骨があるじゃないか」

それを聞いて、イヌはガッカリとしました。

(やっぱり、朝まで待つんだった)

と、後悔するイヌに、仲間が言いました。

「さぁ、お前もあっちに行って、
 一緒に、骨をかじろうじゃないか」

───え?

イヌはポカーンとしました。

仲間が言います。

「おまえが見つけた骨だ、
 おまえが一番にかじるのは当然だろ?」

(ん?)

混乱しているイヌに仲間は、

「だって、皆のために隠しておいてくれたんだろ、
 違うのか?」

(あ~ぁ、そういうことか!)

イヌはなるべく明るい声で、

「そ、そう、そうだよ、あんな立派な骨、
 隠しておかなかったら、オオカミに持ってかれちゃうからね」

と、言いましたが心の中では

(ふふふ、骨を横取りされないのならそれでいいや)

と、喜んでいます。

(では、さっそく)

仲間の横を通り、骨に向かって歩き出そうとしました。

その時です。
耳元で小さな声が聞こえました。

「まぁ、今回はそういうことにしておいてやる」

それは、他の仲間には聞こえないくらい、
小さなささやきでした。

「あ───、」

(もしかして、バレてる?)

言葉を失って立ち止まっていると、

「さぁ、かじって来い!」

と、大きな声で言われたので、仕方なく、
トボトボと骨に向かって歩いて行きました。


おしまい。



今回のもとのお話はコチラ

福娘童話集『 けちんぼう 』
http://hukumusume.com/douwa/pc/aesop/05/13.htm



━━━ お話はここまで ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



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