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「もくじ」がちょっと新しくなったよ

2018年3月10日土曜日

カメの長老には叶わない

この海には、長老と呼ばれるカメが住んでいました。

どの生物よりも長く生きているだけではなく、
とても良い性格なので、みんなから慕われていました。

ある時、カメの長老が悠々と泳いでいると、
なにやら海の底で魚たちが難しそうな顔をして
話しているのが見えました。

長老は近づいて行き

「やぁやぁ、ご機嫌うるわしゅう、なにかお困りかな」

と、声をかけました。

「あ、カメの長老、いいところに来てくださりました」

声を上げたのは、魚のアジでした。

「おや、なにか厄介ごとかい?」

「ハイ」と次に声を上げたのはイワシでした。

「私たちは困っているのです、長老」

「うんうん」と横で頷いたのはサバでした。

「どうしたのだい、このカメの長老が聞いてあげよう」

カメの長老は笑顔で言いました。

アジが話を始めました。

「実は、長老、上を見てください」

カメの長老は言われたとおり上を見ました。

「おやおや」

海の上の方で、大きな物体の集まりが二つに分かれて
向き合っているのが分かりました。

「あれは~、イルカとクジラかな~」

と、カメの長老が言うと、

「そうなんです!」

と、今度はイワシが、「私たちはアレに困り果てているのです」

「どうしたのじゃ?」

カメの長老が聞くと、イワシは続けて言いました。

「イルカとクジラが、なんの理由か分かりませんが、
 三日くらい前からケンカしてまして、
 今はまだ落ち着いていますが、一度、荒れだすと
 この辺りの水がグラングラン揺れだして、
 普通に生活できないのです」

イワシがそう言うと、隣でサバが「うんうん」と頷きました。

カメの長老は「おやおや、それは困りましたねぇ~」と言ってから、

「どなたか『やめてくれ』と頼まないのですか?」

今度はアジがそれに答えました。

「長老も人が悪い、私たちは魚で、彼らほ乳類とは言葉が通じません」

「おぉ、そうでしたねぇ~、面目ありません」

カメの長老は前足で頭をなでました。

アジは続けます。

「例え言葉が通じたとしても、我々のような小さな生き物の話なぞ、
 聞き耳を持ってくれるはずがありません」

そう話すと、アジはシュンと俯き、隣にいたサバもシュンとなりました。

それを見かねたカメの長老は、

「分かりました。では、このカメの長老が、一つ話をつけてこよう」

というので、アジもイワシもサバも
キラキラした目でカメの長老を見つめました。

イワシが言いました。

「長老は、ほ乳類とお話ができるのですか?」

「朝飯前です!」

魚の3匹は「オォォォ」と感嘆の声を上げました。

「では、少し待っていてくれたまえ」

と、カメの長老は体を返して海の上の方へのぼって行きました。

そこでは、イルカとクジラが今にもぶつかり合いそうなくらい
険悪な雰囲気で相対していました。

「ハイ、ごめんくださ~い」

という軽い口調で、カメの長老は2匹の間に入りました。

「これはこれはカメの長老」
「お久しぶりでございます」

イルカとクジラが同時に声を上げました。

カメの長老は2匹を交互に見ながら言いました。

「賢いお二方が、なにゆへ、そんなにもめているのです」

その言葉を聞いて、カメの長老が仲裁に来てくれたと思い、
すがるような口調で、クジラが言いました。

「聞いてくださいよ長老、コイツが俺のエサ場を横取りしようと、
 来やがったんだ」

するとすかさずイルカが、

「それは誤解です長老、
 ここはクジラさんだけのエサ場では無いはずです」

「いいや、ここは爺ちゃんのそのまた爺ちゃんの、
 そのまた爺ちゃんの時代から、俺のエサ場だったところだ」

「うそつけ!」

「うそじゃない!」

と、またヒートアップしそうだったので、

「まぁ、まぁ」

カメの長老は間に入り言いました。

「お互い、いい分はあるだろうが」

イルカとクジラはどんな仲裁案が出るのか、
カメの長老をジッと見つめました。

「どうだろう、お二方が揉めたいのであれば
 別の場所でお願いできないであろうか」

「え?」

仲裁案が出るかと思っていたイルカとクジラは
少しびっくりした顔をしました。

カメの長老は続けます。

「お二方が揉めるのは勝手だが、海の下の方では
 お二方が起こす水流で魚たちがたいそう困っている」

「そんなの関係ありません!」

と、イルカが言いい、クジラも

「そうだ! これは俺たちだけの問題だ!」

と、同意の表情と共に言いました。

カメの長老は少し強い口調で言いました。

「クジラさん、あなたは良く、自分たちは魚に比べて
 賢いと言っていますよね」

クジラは呆気にとられた表情をしていると、
イルカが「ざまーみろ」という表情をしましたが、

「イルカさん、あなたも同じです」

と、カメの長老に言われ、恥ずかしそうにうつむいてしまいました。

「本当に賢いものというのは、世の中のために活躍するものです。
 ましてや、他の生物が困るようなことは決してしないものです。
 お二方も、本当に賢いのですから、そこは当然お分かりですよね」

イルカもクジラも立場無さそうな顔をしました。

そして、カメの長老は続けます。

「わたしも、こんな話は賢い者にしか言いません。
 お二方だからこそ、お話するのです」

イルカもクジラも黙りこくってしまいました。

やがて、イルカが静かに言いました。

「カメの長老には叶わないな」

そして、静かにきびすを返すと、泳いで行ってしまいました。

クジラも別の方向へ泳いで行きました。

カメの長老はそれを見届けると、海の中を潜っていきました。

そして、帰りを待っていた魚たちに声をかけました。

「すべて、このカメの長老が解決したぞ」

「ありがとうございます!」

と、アジとイワシが声を上げ、サバは大きくシッポを振りました。

そしてカメの長老は足を翼のように広げ、
魚の上を円を描くように一周すると、
勢いよく泳いで行きました。


おしまい。



今回のもとのお話はコチラ

福娘童話集『 イルカとクジラとハゼ 』

http://hukumusume.com/douwa/pc/aesop/04/13.htm



━━━ お話はここまで ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



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