※童話の更新は週1回(だいたい土曜日の夜)です(^0^)/

≫≫≫ ☆ もくじ ☆ ≪≪≪

2017年8月23日水曜日

黒が危ない!

横町の隠居(いんきょ)と表町の隠居が囲碁を打っていました。

二人とも、将棋が大好きで、朝から晩までやっていたのですが、
ちょっと気分転換に、と囲碁を始めてみました。

やってみると結構おもしろく、二人で書物を見ながら、
探り探り楽しんでいました。

今日は、通りに面した表町の隠居の家の玄関前で、
長椅子を置いて囲碁を打っています。

二人が何回か対局している間に、何人もの人の往来がありました。

今も、何回目かの対局を行っています。

この対局は今までになく接戦で、二人ともじっくり考えながら
一手一手を慎重に打っていました。

その為、対局が始まってから、だいぶ時間が経過していました。

二人は、とても集中していました。

そんな静かに白熱した対局をしている二人のところへ、
通りがかりの男が近寄って来ました。

そして、碁盤を見て言いました。

「おっ、黒が危ねぇぞ」

対局に集中していた二人の隠居は同時に男の顔を見ました。

男の顔を二人とも見たことがありませんでした。

きっと囲碁が好きな男なんだろうと思い、
二人の隠居は碁盤に目を戻しました。

黒は横町の隠居の石でした。

今、まさに次の手を打とうと思ったところに『黒が危ない』と
横やりが入ったので、どこが危ないのかじっくり考えました。

横町の隠居は隅から隅まで見渡しましたが、
危ないと言われるほどの場所を見つけることができませんでした。

聴くのもしゃくなので、仕方なく、元々打とうと考えていたところに
石を置きました。

すると男は、

「お、今度は、白も危なくなった」

と、言いました。

横町の隠居は、

(すると、オレが打ったこの手は良かったってことか)

と思い、ほくそ笑みました。

白石は、表町の隠居の石でした。

自分ではさほど危ない展開ではないと思っていたので、
何か見落としているところはないかと、隅々まで確認しました。

(ははーん、ここだな~)

表町の隠居は危ないところを見つけ、パチン、っと白石を置きました。

「どうだ!」

「むむっ」

横町の隠居は痛い手を打たれたと思い、うなり声を上げました。

すると男が言いました。

「ほらほら、白が危ない」

良い手を打ったと思ったのに危ないと言われ、気の短い表町の隠居は、

「危ないことなんてない!」

と、男に言いました。

隅々まで確認して打った手ですから自信がありました。

「いや、危ない、白が危ない」

「そんなことは無い」

表町の隠居は負けずに言いました。

そんなやり取りの最中、横町の隠居は次の一手がひらめきました。

パチン!

と、黒石を打ち、これは会心の一手だと横町の隠居は思いました。

表町の隠居も目を大きく開いて、コレはマズイという顔をしました。

「フッ」

横町の隠居はニヤリと自信の笑みを浮かべました。

「おぉ、黒も危ないままだ」

と、男は言いました。

さすがに堪忍袋の緒が切れた二人の隠居は同時に男を見て、
厳しい口調で言いました。

『どこが危ないって言うんだ!!』

隠居二人に同時に言われて、男はちょっと驚きました。

でも、何食わぬ顔で

「そこです」

と碁盤の上を二か所、指でさしました。

「黒は右上隅の石が、白は右下隅の石が危ないです」

二人の隠居は同時に目を碁盤に向けました。

しかし二人とも指摘されたところを見ても、まったくピンときません。

二人の隠居は碁盤を挟んで、お互いの目を合わせて小首をかしげました。

横町の隠居は、きっと、自分たちでは分からないことがあるのだろう
と思い、男に言いました。

「実は、二人とも囲碁を始めたばかりで、
 どこが危ないのかさっぱり見当がつかん。
 具体的に言っていただけるか?」

すると男は言いました。

「おらも、囲碁のことなんて、皆目わからねぇなぁ~、
 でもよ、さっきっから、黒い石も白い石も、
 今にも落ちそうなんだよ」

男が指さした石は、碁盤の端すれすれに置かれていて、
今にも落ちそうな状態でゆらゆらしていました。

「なぁ~、危ねぇだろぅ」」

と、男は言いました。

隠居は、お互いの目を合わせました。

やっと「危ない」の意味が分かった気の短い表町の隠居は、

「はんっ!」

と、声を吐き、家の中へ入って行きました。

横町の隠居は「教えてくれてありがとう」と男に言ってから、
落ちそうな石を直して、碁盤をゆっくり両手で持ち上げて、
表町の隠居のあとを追って家の中に入りました。

残された男は「ありがとう」と言われたので、

「うん、良いことをした」

と、笑顔で帰って行きました。



おしまい。



今回のもとのお話はコチラ

福娘童話集『 黒があぶない 』
http://hukumusume.com/douwa/pc/kobanashi/11/18.htm



━━━ お話はここまで ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



☆ちょこっとHappy♪☆


中々、自分の気持ちって伝わりません。

それどころか、誤解して伝わっていたりするので厄介です。

言い訳のチャンスも無い場合なんて、どうしたらいいのか、
困ってしまうこともあります。

誤解されるのは、基本的に自分と相手が気持が違うことが
原因なんだと思います。

この物語の登場人物も気持ちが違っています。

隠居二人は、囲碁を打っています。
通りがかりの男は、ただ落ちそうな石を心配しています。

この状態で会話をすると、それぞれの視点で理解しようとするので、
すれ違いや誤解が発生してしまいます。

この場合、誤解を発生しないようにするには、
「これから話すのは“〇〇”の話ですよ」
ということを明確にすることが大切です。

そうすれば聞いているほうも、その気持で聞きますから、
誤解は減り、内容も伝わりやすくなると思うのです。

誤解されることが多い人。
言いたいことが上手く伝わらない人。

まずは「“〇〇”の話です」と伝え、気持ちを合わせることを
意識すると、いいかもしれません。


今日のHappy♪ポイント

『 相手との「気持ち」を合わせよう 』


ご意見ご感想、お待ちしています(^0^)/


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