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「もくじ」がちょっと新しくなったよ

2018年1月24日水曜日

かさ地蔵っこ

むかしむかし、あるところに、
おじいさんとおばあさんが住んでいました。

おじいさんとおばあさんは、二人が生活できるくらいの野菜を
育てて生活していました。

しかし、その年は天候が悪く、
秋になっても野菜があまり収穫できませんでした。

少ない食べ物で細々とした生活を送っていましたが、
お正月も近いし、たまにはなにか美味しいものを食べようか、
と思いました。

とは言え、なにか売ってお金に変えようとしても、
売るものがありません。

どうしたもんか、と考えていたとき、おばあさんが子どものころに
両親が、頭に乗せるカサを作っていたことを思い出しました。

それではカサを作って、街で売って、食べ物を買おう!

ということになり、おばあさんの遠い記憶を頼りに、
二人はカサを作りはじめました。

何日かかけて、なんとか売り物になりそうなカサが出来上がりました。

次の日、おじいさんとおばあさんは、
同じ数のカサを二人で背負い街まで売りに行きました。

街へは家で採れた野菜を売りに、しょっちゅう行き来していたので、
二人とも慣れていました。

街までの道中には、ところどころにお地蔵さんが立っていました。

道しるべのように立っているお地蔵さんの前を通るとき、
おじいさんとおばあさんはいつも、

「今日もご苦労様です」

と、手を合わせ、必ず、お供えをしていました。

今年は収穫量が少なく、細々と食べていくのがやっとでしたが、
家で採れたイモを、お地蔵さまの前に置きました。

街に着くまで、七体のお地蔵さんの前を通ります。

おばあさんはちゃんと七個のイモを持って来ていて、
お地蔵さんを見つけると、イモを置いて手を合わせました。

やがて二人は街につきました。

道の端っこに、二人は荷物を置きました。

いつも野菜などを売っている場所です。

おじいさんがゴザをひいて、その上に、二人でカサを並べました。

そして、おじいさんは声をあげました。

「カサだよ~、カサはいらんけ~」

おばあさんはゴザの上に腰をおろし、カサを一個一個、
布で拭いてキレイにしました。

二人はしばらくカサを売り続けました。


だいぶ時が経ち、日も傾いてきました。

二人はお昼も食べずに、代わる代わるに呼び込みをしましたが、
カサは全然売れませんでした。

「やっぱり、野菜じゃないと、売れないのですかねぇ」

と、おばあさんが言いうと、

「おばあさんのカサは、立派なんだけどなぁ」

と、おじいさんはカサをなでながらこたえました。

二人は、そろそろ疲れたから、店じまいして帰ろうか、
と話をしていると、

「冷たい」

空から、静かにゆっくりと雪が降って来て、
おじいさんの頭に乗りました。

「おや、雪だ」

「はい、雪ですねぇ~」

おじいさんは、持っていた手ぬぐいを頭に巻いてから
二人は、なにも言わずに、なんとなく、雪を眺めていました。

「すみませ~ん」

という声が聞こえました。

二人は声のした方を見ると、何人かの子どもが立っていました。

「おや、どうしました?」

おばあさんが声をかけると、

「カサ売ってください」

と、子どもがお金を差し出しながら言いました。

「おや、ありがとねぇ」

おばあさんは笑顔で言って、

「もう、店じまいしようとしてたから、差し上げますよ」

と、おじいさんに目を向けると、おじいさんは

「雪も降って来たし、持っていくといいぞ」

と、目を細めて言いました。

おじいさんとおばあさんはお金を受け取らず、
子ども一人一人にカサを渡しました。

カサを渡し終ると、持ってきたカサが
全部なくなってしまいました。

子どもたちはカサを嬉しそうに持ち上げたり
かぶたったりしていました。

すると、うしろからきた子どもが言いました。

「ありがとう、でも、悪いから、お金は置いてくね」

子どもはゴザの上にお金を置くとすぐに走り出し、
その子を追いかけるように、他の子も走りだしました。

「おやおや」

慌てておじいさんはお金をひろい、
子どもたちを追いかけようとしましたが、
子どもたちは、カサを両手で持ち上げながら遠くに行ってしまい、
楽しそうに小道を曲がって、あっという間に姿が
見えなくなってしまいました。

「あー、ただでよかったのに、りちぎな子たちじゃのう」

「ホントですね~、ありがたい子たちですこと」

と、おばあさんは子どもたちが走っていった方に手を合わせました。

「じゃ、おばあさんや、このお金をこの街で全部使ってやろうな」

「そうですね、きっと、あの子たちも街の子ですから、
 ここで全部使ってあげたほうが、良いでしょうなぁ」

と、二人は片づけをして、お店に入ると、
買えるだけの、たくさんのおもちを買いました。

「さぁ、雪が強くならないうちに帰ろう」

おじいさんとおばあさんは、おもちを食べるのを楽しみしながら、
来た道を戻っていきました。

二人は、帰り道もお地蔵さんに出会うと、
手を合わせて挨拶をします。

最初のお地蔵さんの前にきたところで、二人は驚きました。

「おやおや、誰かがお地蔵さんにカサをかぶせてくれたのかのぉ」

「そうですねぇ、雪が降っているから、
 優しい人が、かぶせてくれたのでしょうねぇ」

と、言いながらおばあさんは、街で買ったおもちを一つ、
お地蔵さんの前に置き、手を合わせました。

二人は帰り道をのんびり歩いて、やがて、
次のお地蔵さんのところにやって来ました。

「おやおや、このお地蔵さんも、カサをかぶっとるのぉ」

「ほんと、優しい人がいるのですねぇ」

おばあさんはおもちを置き、二人はお地蔵さんに手を合わせました。

そして、次のお地蔵さんのところへ行くと、
またまたカサをかぶっていました。

「おやおや、本当に、優しい人がおるのぉ」

「ホントですねぇ~」

おばあさんはおもちを置いて、二人で手を合わせました。

その後も、出合うお地蔵さんは、
みんな頭にカサをかぶっていました。

優しい人がおるのじゃのぉ、と二人は言いながら手を合わせ、
そして、家のそばにある、最後のお地蔵さんのところまで
やって来ました。

「おやおや」

そのお地蔵さんを見ておじいさんが少し驚いたような声を上げました。

「カサをかぶっとらんのぉ」

「ほんとですねぇ~、雪が積もって可愛そうに……」

「カサが、足りなかったのかのぉ……どれ」

と、言っておじいさんはかぶっていた手ぬぐいを外し、

「わしなんかの手ぬぐいでスマンが、かんべんしておくれな」

と、お地蔵さんの頭の雪を払ってから被せました。

「おじいさん、それはいいことをしましたね」

おばあさんは笑顔で言うと、おもちをお地蔵さんの前に置きました。

そして二人は手を合わせました。

手ぬぐいを外し、あらわになったおじいさんの頭に、
ふわっとした雪が降りかかりました。

「冷たい」

と、おじいさんは言ってから、
「おや?」と何かに気付きました。

「どうしました?」

不思議そうにたずねるおばあさんに、
おじいさんは遠い記憶を探るように静かな口調で言いました。

「カサは何個作ったんだっけのぉ……」

「えーっと、確か、三つずつ背負って街にいきましたから、
 六個ですかねぇ」

「お地蔵さんは、七体いらっしゃったのぉ……」

と、呟くおじいさんに、

「おや?」

おばあさんも何かに気付きました。

「子どもたちは、何人じゃったかのぉ」

「はて、数えてませんが、カサが全部なくなりましたねぇ」

おじいさんとおばあさんは、顔を合わせました。

「おや」

「まぁ」

おじいさんとおばあさんは、同時にあることに気づきました。

「お金を置いていったあの子には、カサを渡したかのぉ」

「覚えてませんね……」

そして、二人は、目の前のお地蔵さんを見ました。

おじいさんとおばあさんは、お互いの顔を見合わせると、
おじいさんの手ぬぐいをかぶったお地蔵さんに
手を合わせて、深々とお辞儀をしました。


おしまい。


今回のもとのお話はコチラ

福娘童話集『 かさじぞう 』
http://hukumusume.com/douwa/pc/jap/12/31.htm



━━━ お話はここまで ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


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