※童話の更新は週1回(だいたい土曜日の夜)です(^0^)/

≫≫≫ ☆ もくじ ☆ ≪≪≪

2018年1月20日土曜日

泥棒になる最終試験

「今日はおまえが泥棒になれるかの最終試験日だ、
 がんばってやってこい」

師匠に言われて、少年は今にも泣きそうな表情で、

「う、うん、分かったよ、父ちゃん」

と、震えた声を上げました。

むかしむかしのお話です。

先祖代々、泥棒を家業としている一族がありました。

その一族では、子どもが10才になると泥棒の修業が開始され、
14歳までに、泥棒として家業を継ぐことができる人間かどうか
判断されます。

少年は今年で14歳になりました。

今日はいよいよ最終試験の日です。

少年には、同じ時期に修業を始めた、いとこが一人いましたが、
すでに最終試験に合格して家業を継ぐことが決まっていました。

少年はいとこよりも覚えが悪く、最終試験を受けるまでに
時間がかかってしまいました。

「コラ! そんなに震えておってどうする」

ブルブルと体を震わしていた少年に師匠でもある父が
厳しい口調で声をかけました。

「と、父ちゃん」

「師匠と呼べ」

「し、師匠、おいら、やっぱり泥棒は苦手だよう……」

そう言う息子に、父はあきれた表情で首を振りながら言いました。

「ここまできて泣き言を言うな! 大丈夫だ、おまえにも先祖代々
 泥棒の血が流れている。きっとうまくできる」

「そっ、そうかなぁ……」

と、グズグズ言っている息子に、

「グズグズ言ってないで、とっと、行って来い!!」

師匠は大きな声を上げました。

びっくりして、ちょっと飛び上った少年は、
そのまま勢いよく出かけていきました。

さて、少年は怖がりながらも、忍び込む屋敷までやってきました。

夜はだいぶ更けて、月に照らされ、辺りはぼんやりした暗闇です。

恐怖と緊張で手が震えていましたが、がんばって屋敷に忍び込もうと、
おっかなびっくり塀をのぼりました。

「よいしょっと」

塀を越える修業を、さんざんやったので、
体が覚えていたらしく、暗闇でも簡単に越えることできました。

しかし、体の震えが収まることはありませんでした。

震える手で、今度は屋敷の戸を開けてました。

「ごめんくださーい」

少年は意識せずに、小声でそう言いました。

緊張しながら屋敷の中をうかがうと、
シーン、と物音一つ聞えません。

少年は、ゆっくりと屋敷の中に入りました。

「誰かいませんかー」

小声で言いながら、なん歩か歩いたところで気づきました。

この家には、なにも置かれていません。

箪笥も座卓も囲炉裏もなにもなかったのです。

「ここは空き家だ」

少年は呟いて、ホーッ、と大きな息を吐きました。

そして笑顔で、

「空き家なら、泥棒はできないね」

と明るい声で言いました。

しかし次の瞬間、顔を曇らし、肩を落として溜息を付きました。

「でも、最終試験は、もう一軒、あるんだよなぁ」

少年はトボトボと外に出て、

「お邪魔しましたぁ」

と、小声で言って戸を閉めました。

次の家は、先ほどよりも少し広い屋敷でした。

ここは屋根裏から様子をうかがってから、泥棒に入るようにと、
師匠である父に言われていました。

少年は、塀を越えて、壁をシャシャッ、っとのぼり、
屋根裏に侵入しました。

「おじゃましまーす」

二軒目なので、体の震えもだいぶ収まっていました。

屋根裏に入ると、ミシ、ミシ、っと音を立てながら歩きました。

音を立てて歩くこの姿を、師匠が見ていたら大目玉を
喰らうことでしょう。

「えーっと、どこへ行けばいいんだっけ」

と、小声でひとり言を言いながら辺りをうかがっていると、
下から声が聞こえてきました。

どうやら、おじいさんとおばあさんが会話しているようです。

少年は静かに近づいていき、耳を澄ませました。

「寝つきが悪いばあさんに、いいまじないを教えてやろう」

「なんですか、そのまじないは?」

「土間に、鍋があるじゃろ、その中に持ち物を全部入れるのじゃ」

「持っているもん全部ですか」

「そうじゃ、それで鍋の上に、そのとき着ている着物を被せるのじゃ」

「着ている着物ですか、それは寒そうですね」

「そうじゃな、だから今夜はやらん方がいいな。
 でも、これをやれば、その家に住む者は、
 朝までぐっすりと眠れるということじゃ」

「へぇ、おじいさんはものしりですねぇ~」

「そうじゃ、でも、これを泥棒に聞かれたら大変なことになる、
 誰にも言っちゃいけないよ」

「ハイハイ、分かっておりますよ」

「では、今日は寝るとするかのぉ」

「ハイ、おやすみなさい」

話し声が途絶えてからしばらくすると、
二人の寝息が聞こえてきました。

少年はイイことを聞いた! と思いました。

朝までぐっすり寝ててくれるなら、泥棒がしやすい!

そう思い、屋根裏からいったん外へ出て、
入口から忍び込み直して土間に行きました。

土間には大きな鍋が置いてありました。

「えっと、ここに持っているものを全部入れるんだな」

少年は懐から、短剣やロープ、金属のかぎづめなど、
持ってきた泥棒道具を鍋の中に入れました。

「よし、持っているものは全部入れたぞ、
 で、着物を脱いで、鍋に被せるんだったな」

少年は帯を解いて、着物を脱ぎました。

ふんどしだけの姿になってから、ふと思いました。

「ふんどしのことは、なにも言ってなかったけど、
 付けててもいいんだよなぁ?」

さすがに、これは付けてても良しとしよう、
と、少年は思い、脱いだ着物を鍋に被せました。

「よし、これで、おじいさんもおばあさんも朝まで起きないぞ」

と、満足そうに声を上げました。

その時です。

「どろぼーーーーっ!!!!!」

という、叫び声が聞こえました!

少年はびっくりして飛び上りました。

「どろぼー!! どろぼー!!!」

大声で叫ぶ声が聞こえてきます。

その声は、ぐっすり寝ているはずの、
この家のおじいさんとおばあさんの声です。

「どろぼー!! どろぼー!!!」

外に向かって大声で叫んでいます。

「なんで、なんで~ぇ」

少年は困惑しましたが、とにかく逃げなきゃ、と、
土間を走り、入って来た戸を力いっぱい開けて、
一目散に逃げだしました。

そして、後ろを振り向かず、全力で自宅まで走り続けました。

「なんで、なんで」

自宅につくと、師匠である父が外に出て待っていました。

息を荒げて、ふんどしいっちょうの姿で帰って来た息子を見て、
父は溜息を吐いて、

「泥棒に行って、裸になって帰って来るとは……」

と、呆れたように言いました。

少年は父の顔を見ながら、

「裸ではありません。ふんどしはちゃんと付けています」

「たわけーっ!!!!!」

少年は怒鳴られてしまいました。

師匠である父は言いました。

「おまえには、家業を継ぐのは無理だな」

そして、続けて言います、

「まぁ、とっくに気付いてはいたがなぁ、おまえは素直過ぎる。
 今日だって、素直にだまされて来たのであろう、仕方ない奴だ」

そう話す表情は、師匠ではなく父親のものになっていました。

少年は、最終試験不合格の父の言葉を聞いて、

「ありがとう、ございました」

深々と頭を下げました。

顔には安堵の笑みが浮かんでいました、とさ。


おしまい。


今回のもとのお話はコチラ

福娘童話集『 なりたての泥棒・だまされた泥棒 』
http://hukumusume.com/douwa/pc/kobanashi/03/24.htm
http://hukumusume.com/douwa/pc/jap/03/24.htm

二つのお話を一つにまとめてみました。

━━━ お話はここまで ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



☆ちょこっとHappy♪☆


人には向き不向きがある。
適材適所があってできないことはできません。

それなのに、無理なこと言われて困った、
という経験をしたことがある人は多いと思います。

今回のお話の師匠でもある父も息子に対して、
無理なことを言っています。

無理なことを言ってしまう人って、
どうして無理なことを言ってしまうのでしょう?

師匠でもある父は、無理だと分かっていても
あえて無理なことを言っていました。

そういうケースもあると思いますが、大半は

「無理だということに気づかずに言ってしまう」

のだと思います。

相手が部下や後輩の場合など、逆らえない状態の相手なら、
無理なことは負担にしかなりません。

無理をすれば体を壊してしまいます。

相手の体を壊すことが目的ではないのなら、
なるべく相手に無理なことは言いたくないものです。

無理なことを言わないですむ良い方法はないのでしょうか?

根本的な解決は思いつきませんが、
少し、軽減できる方法ならあります。

無理なら無理です。と相手が言えるような環境を
普段から整えておく、というものです。

なんでも言えるような環境、
コミュニケーションをとりやすい環境です。

これなら、言われた部下や後輩は断ることができますし、
仕事量を減らすなどして負担を軽減することもできます。

加えて、コミュニケ―ションを頻繁にとっていれば、
相手のことをより理解できるようになり、言うまえに、
これは無理だなと判断できるようになると思うのです。

コミュニケーションをとって、相手を知り、
なるべく無理なことを言わないように心がけたいものです。


今日のHappy♪ポイント

『 相手をよく知ってから、言ってみよう! 』


ご意見ご感想、お待ちしています(^0^)/


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