≫≫≫ ☆ もくじ ☆ ≪≪≪
「もくじ」がちょっと新しくなったよ

2018年1月3日水曜日

ロバに化けた泥棒

むかしむかし、人を疑うことを知らない、
真面目で大人しい性格のおじいさんがいました。

おじいさんは会う人、会う人に優しい笑顔で挨拶しているので、
村ではとても有名でした。

ある日、おじいさんは飼っているロバを連れて、
市場にやって来ました。

市場に来て、村人と話をしながら買い物をすることが、
おじいさんの毎日の楽しみでした。

そんなおじいさんの姿を遠巻きに見ている若い男がいました。

「おい、見てみろよ、あれが真面目じいさんぜ」

すると隣にいた男が、

「人を疑うことを知らず、ウソをつかれても気づかないっていう、
 バカ真面目なじいさんだな」

「あぁ、とても優しくて大人しいじいさんだそうだ」

男たちは怪しい目つきをおじいさんに向けながら、

「良いロバを引き連れてるな」

「あぁ、あのロバをだまし盗ってやろうぜ」

二人は不敵な笑みを浮かべました。

この二人組は泥棒(どろぼう)です。

人を疑うことを知らないおじいさんがいると聞いて
村の市場に来れば会えるだろうと思い、朝から待っていました。

泥棒たちは、おじいさんはだまされたことにも気づかないほど
人を疑わないと聞いていたので、おじいさんを上手くだまして、
なにか盗んでやろうと考えていたのです。

二人組の泥棒はヒソヒソと言葉を交わし、
おじいさんをだましてロバを盗み出す手筈を整えました。

そしてお互いの顔を見てうなずくと、
ロバを引いて歩いているおじいさんに忍び寄って行きました。

おじいさんはロバの前を歩いているので、
泥棒が近づいてきたことに気づきません。

泥棒たちは静かに、ロバに近づくと、
首に巻かれているロープを静かにほどきました。

そして、一人はロバの首に新しいロープを巻き付け、
もう一人は、ロバの首に巻かれていたロープを
そーっと自分の首に巻きました。

一人はロバを引っ張り物蔭に連れて行き、もう一人は、
おじいさんがロバがいなくなったことに気付かないように、
ロバと同じような歩調で歩きました。

泥棒は自分の首におじいさんの持っているロープを巻いたまま、
しばらくおじいさんの後をついて歩いていましたが、
もう一人の泥棒が、ロバが物蔭に隠して見えなくなったのを
確認すると、おもむろに立ち止まりました。

泥棒が立ち止まったので、ロープがピーンと伸びました。

おじいさんは正面を向いたまま、ロープを軽く引っ張りました。

首に巻いたロープを引っ張られてちょっと痛みが走りましたが、
泥棒は黙って止まったまま動きませんでした。

「はて、どうしたもんかのう」

と、おじいさんはぼやきながらふり返りました。

泥棒と目が合ったおじいさんは、

「あれ?」

と驚きの声を上げました。

ロバに繋がっていると思っていたロープの先に、
人間がいたというなんとも不思議な光景を見て、
おじいさんはさぞかし驚いているようで、言葉もなく、
口をあんぐりと開けていました。

(しめしめ、驚いてやがる)

と、心の中でほくそ笑んだ泥棒は、神妙な顔をしながら、
話し始めました。

「おじいさん、どうかビックリなさらないでください。
 わたしはあなたのロバです」

と、泥棒は甲高い声で言いました。

おじいさんは相変わらず無言のままだったので、
泥棒は続けました。

「人間だったわたしは、悪いことをしてしまい、
 神さまから罰として、ロバの姿にされていました。
 しかし、あなたの仕事を手伝うことで、今、突然に罪が解かれ、
 こうして元の姿に戻ることができました」

おじいさんは目をパッ、と見開きましたがなにも言いません。

泥棒は続けました。

「人間になったわたしのお願いをどうか聞いてくだい。
 何十年かぶりに私を故郷へ返してはくれないでしょうか?
 人間に戻った姿を年老いた両親に見せてやりたいのです」

と、泥棒は手を組み涙を流しました。

(これで、優しいじいさんは、感動して、
 オレを逃がしてくれるだろう)

泥棒は、心の中で笑いました。

口を開けて驚いていたおじいさんは、一つ頷き、
口を閉じ、唾を飲み込んでからロープを握り直しました。

おじいさんのゆっくりとした行動を見ながら、

(はやく、オレの首からロープを取ってくれ)

と泥棒は思いました。

その時です。

泥棒の首に、突然、衝撃が走りました。

それと同時に、おじいさんの怒鳴り声が聞こえてきました。

「たわけーっ!!」

怒鳴り声が聞こえた瞬間、首に繋がっていたロープが
勢いよく引っ張られ、泥棒は、前のめりに倒れ込みました。

(苦しい!)

泥棒の首をロープが締め付けます。

おじいさんの怒鳴り声が泥棒に叩きつけられました。

「そんな戯言に騙されるほど、老いぼれておらぬわ!!」

泥棒は、ロープに締め付けられないように、
首とロープの間に指を入れてなんとか首を守りました。

「わしのロバをどこへやった! 早く返せ!!」

おじいさんの怒鳴り声は大きく、市場にいた村人たちが、
何事かと、集まって来ました。

泥棒は、なんとか首からロープを外そうともがきましたが、
その度におじいさんが力を入れて引っ張るので、
うまく外せませんでした。

その時です、

「ヒヒヒヒヒヒーーーン!!!」

人だかりの後ろの方から音がしました。

“パカラッ、パカラッ、パカラッ、”

蹄の音を立てて、ロバが走って来たのです。

ロバは必死に止めようとしているもう一人を泥棒を
引きずりながら近づいて来ます。

集まっていた村人たちは、慌てて道を空けると、
ロバは一目散におじいさんのところに駆け寄りました。

「おお、無事だったか、よく帰ってきたなぁ」

おじいさんはロバの首を擦ると優しく頬擦りをしました。

ロバも落ち着いた表情をして、おじいさんに寄り添いました。

おじいさんがロバに気を取られたので、ロープがゆるみ、
首を絞めつけられていた泥棒はすぐにロープを首から離しました。

「大丈夫か!」

と、ロバに引きずられてきた泥棒が声をかけると、

「ダメだ、失敗だ、じいさんはだまされなかった」

「コッチもだ、あのロバ、じいさんのところへ戻ろうと、
 ぜんぜん言うこと聞かないで走りだしやがった」

「とにかく、ずらかるぞ」

「おう」

泥棒たちはその場から離れようと、走り出しました。

するとどうでしょう。

あっちに逃げても、こっちに逃げても、
市場にいた村人たちに囲まれて、どこにも逃げられません。

そして誰かに押され、泥棒たちは倒され、
尻もちをつきました。

地面に座っている泥棒たちを囲んでいる村人たちは、
ジリジリと詰め寄って来てました。

泥棒たちはそのままの姿勢で村人たちを
おびえながら眺めることしかできませんでした。

村人の中の一人が言いました。

「あのおじいさんに迷惑かけて、
 ここから逃げられると思うなよ!」

他の人たちが怖い顔でうなずきました。

その表情を見て、泥棒たちは観念したように
ションボリとうなだれました。

やがて、人垣をかき分けて警察が来て、
泥棒たちをひもで縛り、立たせました。

警察署へ連れて行かれる途中で、泥棒はおじいさんに言いました。

「じいさんは、人を疑うことを知らないって聞いたけど、
 あれは嘘なのかい?」

おじいさんは小首を傾けて落ち着いた表情で言いました。

「はてなぁ、そんなこと誰から聞いたか知らんが、
 わしはここの村人としか付き合わんし、ここの村人は、
 みんないい人だから、疑わんでいいのぉ」

おじいさんののんびりとした言葉を聞いて、
ハァー、と溜息をついた泥棒たちは、
警察官に連れて行かれました。

おじいさんは村人一人一人に感謝しました。

そしてそのまま市場で買い物をしてから、ロバを引いて
なにもなかったように帰っていきました。


おしまい。



今回のもとのお話はコチラ

福娘童話集『 ロバとおじいさん 』
http://hukumusume.com/douwa/pc/world/03/14.htm



━━━ お話はここまで ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



☆ちょこっとHappy♪☆


人を疑いがちな人。

私も、どちらかというと疑いがちですが、
結局のところ、人は信じる方が“得”なんだろうなぁ、
と思います。

この物語のおじいさんは、村人のことは疑いません。
なぜなら、おじいさんは村人たちがいい人だということを
信じているからです。

逆に、このおじいさんが村人を常に疑いながら生活していたら
どうでしょう。
挨拶ひとつ交わしただけで、

「気軽に挨拶なんてしやがって、
 あいつ、わしをだまそうとしているかもしれん、
 気をつけねば」

と、きっと窮屈な生活をおくることになるでしょう。

何気ない暮らしの中で、おじいさんを窮地に陥れよう
なんて思う間抜けな泥棒の数なんて、たかが知れています。

大半の人は、いい人か、ごく普通の害の無い人です。

なんでもかんでも人を信じるというのは問題ですが、
とりあえず、まずは人を信じてみる。

その方が、無駄な力を使わなくてすむ分、効率がいいし、
窮屈な生活を送らなくていい分、気持も楽になるように思います。


今日のHappy♪ポイント

『 疑うことより信じる方が遥かに得 』


ご意見ご感想、お待ちしています(^0^)/


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