≫≫≫ ☆ もくじ ☆ ≪≪≪
「もくじ」がちょっと新しくなったよ

2018年1月27日土曜日

小鳥たちの小枝端会議

「おや、これはこれはツグミさん、こんにちは」

「あ、そういうあなたはツバメさん、こんにちは」

ツバメとツグミは、どちらも渡り鳥です。

ツバメは暖かくなると現れ、ツグミは寒くなると現れます。

なのでお互い、ほとんど出会うことがありませんでした。

そんなツバメとツグミが、たまたま同じ木の枝にとまり、
久しぶりに顔を合わせました。

ツバメとツグミは何気ない話を始めましたが、
やがて、お互いの行動範囲の話になりました。

「ツグミさんはいつも北の方へ行きますけど、
 絶対、南の方がイイところですよ」

と、ツバメが言うとツグミは答えました。

「そんなことないよ、北の方が絶対いいよ、
 南には絶対行きたくないね」

ツバメは、

「南の良さが分からないなんて、可愛そうに、花はキレイだし、
 暖かいし、いいことばかりじゃないですか」

ツグミは答えます。

「いいへ、北の方は空気が澄んでいて、いくら飛んでも涼しい風が
 ここち良くて気持ちいところだよ」

と、お互いの良いところを言い合っていました。

そこへ、たまたま通りかかったスズメがとなりの枝にとまり、
なんとなく二羽の話に耳を傾けました。

「なにを言っているの、北の方なんて、凍えそうに寒いし、
 景色は白っぽいし、まるでいいところなんてないじゃないですか」

「いいや、南の方こそ、暑くて暑くてかなわないし、
 花の色とかもう、目がチカチカして落ち着かないったらないよ」

「まったく、そんなこと言って、
 南の方の良さが分からないんだから」

「あんたも、北の良さを全然分かってない!」

「絶対に南の方がイイです」

「いや、絶対に北だ!」

そう言って、ツバメとツグミはにらみ合いました。

スズメはキョロキョロを二羽の顔を眺めていました。

二羽はにらみ合った状態ままで、
ツバメが目をツグミから離さずに言いました。

「そうだ、スズメさんがちょうどそこにいる、
 聞いてみれば分かります」

自分の名前が出て来て、スズメは“ドキッ”としました。

ツグミも目をそのままに、

「そうだね、スズメさんに聞いてみよう」

と、二羽は同時にスズメの方へ目を向けました。

何気なく会話を聞いていただけなのに、
いきなり二羽に目を向けられたスズメは目を丸くしました。

ツバメとツグミは言います、

「スズメさんは、南の方が好きですよねぇ」

「スズメさんが好きなのは北だよね」

「南は暖かいですよ」

「北はね、とっても快適だよ」

「北なんて行ったって凍えるだけですよ」

「南なんて、暑くてバテるだけだ」

「ただ単に、あなたは暑いのに耐えられない
 “ひ弱”なだけでしょう」

「そっちだって、寒いのが苦手な弱虫だろ」

「なんですって!」

「なんだよ!」

と、ツバメとツグミはまたにらみ合ってしまいました。

スズメはどうしたものかと、困りました。

「さぁ、スズメさん、どっちがイイと思います?」

二羽は同時にスズメの方を向きました。

スズメはツバメとツグミの顔を交互に見ました。

(なんで、私?)

スズメは慌てながら、

「えーと……、」

と、一回はぐらかしてから、
とっさに思いついた言葉を言いました。

「どっちも、どっち……、かなぁ」

「なんですって!」
「なんだって!」

二羽の目つきは一層厳しくなり、スズメに向けられました。

(こ、怖すぎる~)

と、ひるみながらもスズメは早口で答えました。

「いや、あのね、私はここにずっといてね、
 夏は暑すぎるとイヤだし、冬は寒すぎるとイヤなの」

夏がイヤと言ったらツグミが頷き、
冬がイヤと言ったらツバメが頷きました。

スズメは二羽の顔色を伺いながら、

「でも、夏は水浴びなんかすると、スカッとして気持ちいいし、
 冬は日向ぼっこなんてポカポカで眠くなっちゃうくらい最高なの。
 そんな風にね、楽しいことを見つけてね、辛くてもなんとか
 やり過ごしてここで住んでるの」

話を聞いているうちに、鋭い目で睨んでいたツバメとツグミの目が
少し変わったのをスズメは感じました。

スズメは、段々と気持が落ち着いてきて、
口調も自然な感じになって続けました。

「だって、私は、この場所が好きだから、北にも行かないし、
 南にも行かない。この場所から離れない。好きだから、いる。
 ただ、それだけ」

「あ、」

素晴しいと言いながらも、アチコチ移動しているツバメとツグミは、
何か言いたそうな顔をしましたが、なにも言わず、
気まずそうにお互いの顔を見ました。

でも、すぐにお互いそっぽを向きました。

顔を合わせない二羽をスズメは交互に目を向けてから話かけました。

「ねぇ、話を聞かせてよ」

二羽はスズメに顔を向けました。

スズメは続けます。

「私は、ずっとここにいるから、北のことも南のことも知らないの。
 だから、どんなところか、どんなに素晴らしいところか、
 あなたたちの話を聞きたいの」

キラキラと目を輝かせてスズメがいうと、ツバメとツグミは
お互いの顔を見て、お先にどうぞ、と譲り合う仕草を見せてから、
じゃっ、とツバメが話を始めました。

「南の方は、とにかく花がキレイなんですよ……」

と、ツバメが南のイイところを話し、
次にツグミが北の素晴しい話を交互に話し始めました。

スズメは、聞くこと聞くことが珍しいことばかりだったので、
「へぇー」とか「そんなところなんだー」と感心しながら
聞いたので、ツバメもツグミも饒舌になり、
お互いの場所のイイところを話ました。

話が進むにつれ、ツバメとツグミもそれぞれの場所の
イイところに興味を持ち始めたらしく、二羽の間から
ギスギスしたものが、徐々に解消されていきました。

そして、ある程度話したところで、

「ところでスズメさん」

と、ツグミがスズメに問いかけました。

突然聞かれて、スズメがキョトンとしていると、

「スズメさんは、暑い夏も、寒い冬も過ごせるみたいだけど、
 なんでそんな丈夫な体を持っているの?」

「あ、それ聞きたいです」

ツバメも興味深々と言った感じで前のめりになりました。

スズメは二羽の顔を交互に見てから、

「なんでだろう……」

と、小首を傾げてから、

「自分でもよく分からない」

と、神妙な顔をしました。

そんなスズメの姿を見て、
ツバメとツグミは楽しそうに笑いました。

なぜ笑われたか分からないケド、二羽が笑っている顔を見て、
スズメも楽しそうに笑いました。

「ねぇ、今度はスズメさんの話も教えてよ、
 離れたくないほど、ステキなここのことを」

「いっぱいあるから話すと長くなるよ」

「うん、いいよ」

「えーっと、それじゃねぇ───」

枝の上での小鳥のたちのお話は、
この後も、しばらく続きましたとさ。


おしまい。



今回のもとのお話はコチラ

福娘童話集『 器量良しを自慢し合うツバメとカラス 』
http://hukumusume.com/douwa/pc/aesop/04/02.htm



━━━ お話はここまで ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



☆ちょこっとHappy♪☆


もとの話とだいぶ違う内容になりました。

ツバメやツグミのように、アチコチ渡り歩く(飛ぶ?)鳥もいれば
スズメやカラスのように一つのところにずっといる鳥もいます。

どちらがイイとは言い切れないでしょう。

ツバメやツグミは体力があるから遠くまで移動できるし、
逆に、スズメやカラスは、気温が変わっても、生きていけるから
わざわざ遠くに移動する必要がない、というだけ。

さらに、ツバメは日本から南に渡り、ツグミは北に渡ります。
それぞれにイイことがあるからそうするだけで、
どちらがイイということは言えません。

このように、自分はイイと思っていることも、
他の人にはイイかどうかは分かりません。

もしかすると、他の人にとってもイイことなのかもしれないので、
せっかくなので伝えた方がイイかもしれませんが、
それを相手が聞き入れなかったとしても、

「あ、そうですか」

くらいで済ませるとイイと思います。

熱く議論をすることも時には大事ですが、
「自分の意見だけが正しいから従え」なんていう態度は
とっと捨てちゃった方が良さそうです。


今日のHappy♪ポイント

『 みんなちがって、みんないい 』
           金子みすゞ「私と小鳥と鈴と」



ご意見ご感想、お待ちしています(^0^)/


2018年1月24日水曜日

かさ地蔵っこ

むかしむかし、あるところに、
おじいさんとおばあさんが住んでいました。

おじいさんとおばあさんは、二人が生活できるくらいの野菜を
育てて生活していました。

しかし、その年は天候が悪く、
秋になっても野菜があまり収穫できませんでした。

少ない食べ物で細々とした生活を送っていましたが、
お正月も近いし、たまにはなにか美味しいものを食べようか、
と思いました。

とは言え、なにか売ってお金に変えようとしても、
売るものがありません。

どうしたもんか、と考えていたとき、おばあさんが子どものころに
両親が、頭に乗せるカサを作っていたことを思い出しました。

それではカサを作って、街で売って、食べ物を買おう!

ということになり、おばあさんの遠い記憶を頼りに、
二人はカサを作りはじめました。

何日かかけて、なんとか売り物になりそうなカサが出来上がりました。

次の日、おじいさんとおばあさんは、
同じ数のカサを二人で背負い街まで売りに行きました。

街へは家で採れた野菜を売りに、しょっちゅう行き来していたので、
二人とも慣れていました。

街までの道中には、ところどころにお地蔵さんが立っていました。

道しるべのように立っているお地蔵さんの前を通るとき、
おじいさんとおばあさんはいつも、

「今日もご苦労様です」

と、手を合わせ、必ず、お供えをしていました。

今年は収穫量が少なく、細々と食べていくのがやっとでしたが、
家で採れたイモを、お地蔵さまの前に置きました。

街に着くまで、七体のお地蔵さんの前を通ります。

おばあさんはちゃんと七個のイモを持って来ていて、
お地蔵さんを見つけると、イモを置いて手を合わせました。

やがて二人は街につきました。

道の端っこに、二人は荷物を置きました。

いつも野菜などを売っている場所です。

おじいさんがゴザをひいて、その上に、二人でカサを並べました。

そして、おじいさんは声をあげました。

「カサだよ~、カサはいらんけ~」

おばあさんはゴザの上に腰をおろし、カサを一個一個、
布で拭いてキレイにしました。

二人はしばらくカサを売り続けました。


だいぶ時が経ち、日も傾いてきました。

二人はお昼も食べずに、代わる代わるに呼び込みをしましたが、
カサは全然売れませんでした。

「やっぱり、野菜じゃないと、売れないのですかねぇ」

と、おばあさんが言いうと、

「おばあさんのカサは、立派なんだけどなぁ」

と、おじいさんはカサをなでながらこたえました。

二人は、そろそろ疲れたから、店じまいして帰ろうか、
と話をしていると、

「冷たい」

空から、静かにゆっくりと雪が降って来て、
おじいさんの頭に乗りました。

「おや、雪だ」

「はい、雪ですねぇ~」

おじいさんは、持っていた手ぬぐいを頭に巻いてから
二人は、なにも言わずに、なんとなく、雪を眺めていました。

「すみませ~ん」

という声が聞こえました。

二人は声のした方を見ると、何人かの子どもが立っていました。

「おや、どうしました?」

おばあさんが声をかけると、

「カサ売ってください」

と、子どもがお金を差し出しながら言いました。

「おや、ありがとねぇ」

おばあさんは笑顔で言って、

「もう、店じまいしようとしてたから、差し上げますよ」

と、おじいさんに目を向けると、おじいさんは

「雪も降って来たし、持っていくといいぞ」

と、目を細めて言いました。

おじいさんとおばあさんはお金を受け取らず、
子ども一人一人にカサを渡しました。

カサを渡し終ると、持ってきたカサが
全部なくなってしまいました。

子どもたちはカサを嬉しそうに持ち上げたり
かぶたったりしていました。

すると、うしろからきた子どもが言いました。

「ありがとう、でも、悪いから、お金は置いてくね」

子どもはゴザの上にお金を置くとすぐに走り出し、
その子を追いかけるように、他の子も走りだしました。

「おやおや」

慌てておじいさんはお金をひろい、
子どもたちを追いかけようとしましたが、
子どもたちは、カサを両手で持ち上げながら遠くに行ってしまい、
楽しそうに小道を曲がって、あっという間に姿が
見えなくなってしまいました。

「あー、ただでよかったのに、りちぎな子たちじゃのう」

「ホントですね~、ありがたい子たちですこと」

と、おばあさんは子どもたちが走っていった方に手を合わせました。

「じゃ、おばあさんや、このお金をこの街で全部使ってやろうな」

「そうですね、きっと、あの子たちも街の子ですから、
 ここで全部使ってあげたほうが、良いでしょうなぁ」

と、二人は片づけをして、お店に入ると、
買えるだけの、たくさんのおもちを買いました。

「さぁ、雪が強くならないうちに帰ろう」

おじいさんとおばあさんは、おもちを食べるのを楽しみしながら、
来た道を戻っていきました。

二人は、帰り道もお地蔵さんに出会うと、
手を合わせて挨拶をします。

最初のお地蔵さんの前にきたところで、二人は驚きました。

「おやおや、誰かがお地蔵さんにカサをかぶせてくれたのかのぉ」

「そうですねぇ、雪が降っているから、
 優しい人が、かぶせてくれたのでしょうねぇ」

と、言いながらおばあさんは、街で買ったおもちを一つ、
お地蔵さんの前に置き、手を合わせました。

二人は帰り道をのんびり歩いて、やがて、
次のお地蔵さんのところにやって来ました。

「おやおや、このお地蔵さんも、カサをかぶっとるのぉ」

「ほんと、優しい人がいるのですねぇ」

おばあさんはおもちを置き、二人はお地蔵さんに手を合わせました。

そして、次のお地蔵さんのところへ行くと、
またまたカサをかぶっていました。

「おやおや、本当に、優しい人がおるのぉ」

「ホントですねぇ~」

おばあさんはおもちを置いて、二人で手を合わせました。

その後も、出合うお地蔵さんは、
みんな頭にカサをかぶっていました。

優しい人がおるのじゃのぉ、と二人は言いながら手を合わせ、
そして、家のそばにある、最後のお地蔵さんのところまで
やって来ました。

「おやおや」

そのお地蔵さんを見ておじいさんが少し驚いたような声を上げました。

「カサをかぶっとらんのぉ」

「ほんとですねぇ~、雪が積もって可愛そうに……」

「カサが、足りなかったのかのぉ……どれ」

と、言っておじいさんはかぶっていた手ぬぐいを外し、

「わしなんかの手ぬぐいでスマンが、かんべんしておくれな」

と、お地蔵さんの頭の雪を払ってから被せました。

「おじいさん、それはいいことをしましたね」

おばあさんは笑顔で言うと、おもちをお地蔵さんの前に置きました。

そして二人は手を合わせました。

手ぬぐいを外し、あらわになったおじいさんの頭に、
ふわっとした雪が降りかかりました。

「冷たい」

と、おじいさんは言ってから、
「おや?」と何かに気付きました。

「どうしました?」

不思議そうにたずねるおばあさんに、
おじいさんは遠い記憶を探るように静かな口調で言いました。

「カサは何個作ったんだっけのぉ……」

「えーっと、確か、三つずつ背負って街にいきましたから、
 六個ですかねぇ」

「お地蔵さんは、七体いらっしゃったのぉ……」

と、呟くおじいさんに、

「おや?」

おばあさんも何かに気付きました。

「子どもたちは、何人じゃったかのぉ」

「はて、数えてませんが、カサが全部なくなりましたねぇ」

おじいさんとおばあさんは、顔を合わせました。

「おや」

「まぁ」

おじいさんとおばあさんは、同時にあることに気づきました。

「お金を置いていったあの子には、カサを渡したかのぉ」

「覚えてませんね……」

そして、二人は、目の前のお地蔵さんを見ました。

おじいさんとおばあさんは、お互いの顔を見合わせると、
おじいさんの手ぬぐいをかぶったお地蔵さんに
手を合わせて、深々とお辞儀をしました。


おしまい。


今回のもとのお話はコチラ

福娘童話集『 かさじぞう 』
http://hukumusume.com/douwa/pc/jap/12/31.htm



━━━ お話はここまで ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


2018年1月20日土曜日

泥棒になる最終試験

「今日はおまえが泥棒になれるかの最終試験日だ、
 がんばってやってこい」

師匠に言われて、少年は今にも泣きそうな表情で、

「う、うん、分かったよ、父ちゃん」

と、震えた声を上げました。

むかしむかしのお話です。

先祖代々、泥棒を家業としている一族がありました。

その一族では、子どもが10才になると泥棒の修業が開始され、
14歳までに、泥棒として家業を継ぐことができる人間かどうか
判断されます。

少年は今年で14歳になりました。

今日はいよいよ最終試験の日です。

少年には、同じ時期に修業を始めた、いとこが一人いましたが、
すでに最終試験に合格して家業を継ぐことが決まっていました。

少年はいとこよりも覚えが悪く、最終試験を受けるまでに
時間がかかってしまいました。

「コラ! そんなに震えておってどうする」

ブルブルと体を震わしていた少年に師匠でもある父が
厳しい口調で声をかけました。

「と、父ちゃん」

「師匠と呼べ」

「し、師匠、おいら、やっぱり泥棒は苦手だよう……」

そう言う息子に、父はあきれた表情で首を振りながら言いました。

「ここまできて泣き言を言うな! 大丈夫だ、おまえにも先祖代々
 泥棒の血が流れている。きっとうまくできる」

「そっ、そうかなぁ……」

と、グズグズ言っている息子に、

「グズグズ言ってないで、とっと、行って来い!!」

師匠は大きな声を上げました。

びっくりして、ちょっと飛び上った少年は、
そのまま勢いよく出かけていきました。

さて、少年は怖がりながらも、忍び込む屋敷までやってきました。

夜はだいぶ更けて、月に照らされ、辺りはぼんやりした暗闇です。

恐怖と緊張で手が震えていましたが、がんばって屋敷に忍び込もうと、
おっかなびっくり塀をのぼりました。

「よいしょっと」

塀を越える修業を、さんざんやったので、
体が覚えていたらしく、暗闇でも簡単に越えることできました。

しかし、体の震えが収まることはありませんでした。

震える手で、今度は屋敷の戸を開けてました。

「ごめんくださーい」

少年は意識せずに、小声でそう言いました。

緊張しながら屋敷の中をうかがうと、
シーン、と物音一つ聞えません。

少年は、ゆっくりと屋敷の中に入りました。

「誰かいませんかー」

小声で言いながら、なん歩か歩いたところで気づきました。

この家には、なにも置かれていません。

箪笥も座卓も囲炉裏もなにもなかったのです。

「ここは空き家だ」

少年は呟いて、ホーッ、と大きな息を吐きました。

そして笑顔で、

「空き家なら、泥棒はできないね」

と明るい声で言いました。

しかし次の瞬間、顔を曇らし、肩を落として溜息を付きました。

「でも、最終試験は、もう一軒、あるんだよなぁ」

少年はトボトボと外に出て、

「お邪魔しましたぁ」

と、小声で言って戸を閉めました。

次の家は、先ほどよりも少し広い屋敷でした。

ここは屋根裏から様子をうかがってから、泥棒に入るようにと、
師匠である父に言われていました。

少年は、塀を越えて、壁をシャシャッ、っとのぼり、
屋根裏に侵入しました。

「おじゃましまーす」

二軒目なので、体の震えもだいぶ収まっていました。

屋根裏に入ると、ミシ、ミシ、っと音を立てながら歩きました。

音を立てて歩くこの姿を、師匠が見ていたら大目玉を
喰らうことでしょう。

「えーっと、どこへ行けばいいんだっけ」

と、小声でひとり言を言いながら辺りをうかがっていると、
下から声が聞こえてきました。

どうやら、おじいさんとおばあさんが会話しているようです。

少年は静かに近づいていき、耳を澄ませました。

「寝つきが悪いばあさんに、いいまじないを教えてやろう」

「なんですか、そのまじないは?」

「土間に、鍋があるじゃろ、その中に持ち物を全部入れるのじゃ」

「持っているもん全部ですか」

「そうじゃ、それで鍋の上に、そのとき着ている着物を被せるのじゃ」

「着ている着物ですか、それは寒そうですね」

「そうじゃな、だから今夜はやらん方がいいな。
 でも、これをやれば、その家に住む者は、
 朝までぐっすりと眠れるということじゃ」

「へぇ、おじいさんはものしりですねぇ~」

「そうじゃ、でも、これを泥棒に聞かれたら大変なことになる、
 誰にも言っちゃいけないよ」

「ハイハイ、分かっておりますよ」

「では、今日は寝るとするかのぉ」

「ハイ、おやすみなさい」

話し声が途絶えてからしばらくすると、
二人の寝息が聞こえてきました。

少年はイイことを聞いた! と思いました。

朝までぐっすり寝ててくれるなら、泥棒がしやすい!

そう思い、屋根裏からいったん外へ出て、
入口から忍び込み直して土間に行きました。

土間には大きな鍋が置いてありました。

「えっと、ここに持っているものを全部入れるんだな」

少年は懐から、短剣やロープ、金属のかぎづめなど、
持ってきた泥棒道具を鍋の中に入れました。

「よし、持っているものは全部入れたぞ、
 で、着物を脱いで、鍋に被せるんだったな」

少年は帯を解いて、着物を脱ぎました。

ふんどしだけの姿になってから、ふと思いました。

「ふんどしのことは、なにも言ってなかったけど、
 付けててもいいんだよなぁ?」

さすがに、これは付けてても良しとしよう、
と、少年は思い、脱いだ着物を鍋に被せました。

「よし、これで、おじいさんもおばあさんも朝まで起きないぞ」

と、満足そうに声を上げました。

その時です。

「どろぼーーーーっ!!!!!」

という、叫び声が聞こえました!

少年はびっくりして飛び上りました。

「どろぼー!! どろぼー!!!」

大声で叫ぶ声が聞こえてきます。

その声は、ぐっすり寝ているはずの、
この家のおじいさんとおばあさんの声です。

「どろぼー!! どろぼー!!!」

外に向かって大声で叫んでいます。

「なんで、なんで~ぇ」

少年は困惑しましたが、とにかく逃げなきゃ、と、
土間を走り、入って来た戸を力いっぱい開けて、
一目散に逃げだしました。

そして、後ろを振り向かず、全力で自宅まで走り続けました。

「なんで、なんで」

自宅につくと、師匠である父が外に出て待っていました。

息を荒げて、ふんどしいっちょうの姿で帰って来た息子を見て、
父は溜息を吐いて、

「泥棒に行って、裸になって帰って来るとは……」

と、呆れたように言いました。

少年は父の顔を見ながら、

「裸ではありません。ふんどしはちゃんと付けています」

「たわけーっ!!!!!」

少年は怒鳴られてしまいました。

師匠である父は言いました。

「おまえには、家業を継ぐのは無理だな」

そして、続けて言います、

「まぁ、とっくに気付いてはいたがなぁ、おまえは素直過ぎる。
 今日だって、素直にだまされて来たのであろう、仕方ない奴だ」

そう話す表情は、師匠ではなく父親のものになっていました。

少年は、最終試験不合格の父の言葉を聞いて、

「ありがとう、ございました」

深々と頭を下げました。

顔には安堵の笑みが浮かんでいました、とさ。


おしまい。


今回のもとのお話はコチラ

福娘童話集『 なりたての泥棒・だまされた泥棒 』
http://hukumusume.com/douwa/pc/kobanashi/03/24.htm
http://hukumusume.com/douwa/pc/jap/03/24.htm

二つのお話を一つにまとめてみました。

━━━ お話はここまで ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



☆ちょこっとHappy♪☆


人には向き不向きがある。
適材適所があってできないことはできません。

それなのに、無理なこと言われて困った、
という経験をしたことがある人は多いと思います。

今回のお話の師匠でもある父も息子に対して、
無理なことを言っています。

無理なことを言ってしまう人って、
どうして無理なことを言ってしまうのでしょう?

師匠でもある父は、無理だと分かっていても
あえて無理なことを言っていました。

そういうケースもあると思いますが、大半は

「無理だということに気づかずに言ってしまう」

のだと思います。

相手が部下や後輩の場合など、逆らえない状態の相手なら、
無理なことは負担にしかなりません。

無理をすれば体を壊してしまいます。

相手の体を壊すことが目的ではないのなら、
なるべく相手に無理なことは言いたくないものです。

無理なことを言わないですむ良い方法はないのでしょうか?

根本的な解決は思いつきませんが、
少し、軽減できる方法ならあります。

無理なら無理です。と相手が言えるような環境を
普段から整えておく、というものです。

なんでも言えるような環境、
コミュニケーションをとりやすい環境です。

これなら、言われた部下や後輩は断ることができますし、
仕事量を減らすなどして負担を軽減することもできます。

加えて、コミュニケ―ションを頻繁にとっていれば、
相手のことをより理解できるようになり、言うまえに、
これは無理だなと判断できるようになると思うのです。

コミュニケーションをとって、相手を知り、
なるべく無理なことを言わないように心がけたいものです。


今日のHappy♪ポイント

『 相手をよく知ってから、言ってみよう! 』


ご意見ご感想、お待ちしています(^0^)/


2018年1月17日水曜日

雪には雪のなりたい白さがある

『 雪には雪のなりたい白さがある 』 瀬那和彰 作


春、夏、秋、冬、季節も場所も違う公園で、人々がおりなす、
ちょっぴり切ない、ちょっぴり暖かい恋愛短編集。


久々の感想文です。

しかも、一般書!

いつもは児童書の感想文を書いているのに、
あえて一般書を選んだ、ってことは、

そうです!

なんだか、おもしろさが“ガツン”と来た本があったので、
ここに記しておきます。


※この先、ちょっとネタバレ注意です!


4編からなる短編集で全て一人称でつづられます。
大くくりすると恋愛ものですが、
順風満帆なカップルの話はありません。

それなのに、ラストはいつもハッピーエンド。

でも、ちょっと切ないんです。

でも、すごく勇気をもらえるんです。

そして、心が暖かくなるんです。

そんな、不思議な力をもったお話たちです。

子どもからお年寄りまで幅広い人物が登場し、
様々な視点から物語が語られます。

語られているものは、恋愛感情では無く、

人間の“心”です。

人の気持ちって、分かっているようで分からない。

自分が思っている自分と、他人が思っている自分には、
違いがある。

すれ違いもあれば勘違いもある。

揺れ動く心の奥底を、作者が繊細な心理描写で、
丁寧に紡ぎ出してくれます。

そして、心の奥底に到達したときに気づきます。

この物語は “生き方” を教えてくれているんだ、と。

それぞれの思いが交差する舞台となるのが、
4つの実在する公園です。

訪れたことは無いかもしれないケド、
一度は耳にしたことがあるような公園。

季節の違う公園はそれぞれの登場人物の心にシンクロ
するかのように、いろんな顔を見せてくれます。

物語の内容も素敵なのですが、この作者が創造した
この空気感が、読み手の感情を何倍にも高ぶらせてくれます。

私は読み終ったあと、すぐに読み返して、
またこの世界に飛び込みたい! という衝動に駆られました。

そんな空気感がこの本にはあります。

こんな素敵な文章が書けたらなぁ~と、
憧れます!

イヤ、

嫉妬します(^^;

ちょっとHappyな気持ちになりたいとき、
とてもオススメな本です。

PS.
そしてあなたは、ムーミンを読みたくなり、
“メタセコイア”という単語をググることになるでしょう(^0^)


※文庫版には5つ目の物語があるそうです。

雪には雪のなりたい白さがある (創元推理文庫)

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2018年1月14日日曜日

【日記】心温まるtweetですね

15時間立ち往生のJR信越線、乗客から運転士に感謝のツイート
「泣きたかっただろうし、帰りたかっただろうなと思います」
(ねとらぼ) - Yahoo!ニュース


批判は多いようですが、現場は一所懸命だったようですね。

これに応えられる体制を会社は整えないといけないませんね。

それと、我々も、なんでも批判するクセも見直さないといけません……。

反省。

2018年1月13日土曜日

民衆の味方

昔々、盗みを繰り返していた大泥棒いました。

ある時、とても優秀な役人が現れ、
とうとう捕まってしまいました。

牢屋に入れられ、明日は処刑される日です。

大泥棒を捕まえた役人が、牢屋の前にやって来て、
大泥棒に話をしました。

「どうだ、調子は?」

大泥棒は牢屋の中で体を紐で縛られ、
身動き取れないような状態でしゃがんでいました。

役人の方に目だけを向けた大泥棒は、

「見てのとおりの状態です」

と、静かにと答えました。

役人は、大泥棒の静かな声の中に潜む刃物のような鋭さに
気付きましたが、動じず、話を続けました。

「最近、ちまたは、おまえの話題で持ち切りだ」

「ほう、それはおめでたいことで」

「おまえが盗みに入った所が大悪人のところばかりだったから、
 『よくぞ盗みに入ってくれた』と庶民は喜んで、
 逆に、おまえが英雄あつかいされてるよ」

「ほう」

大泥棒は口の端を上げて不敵な笑みを浮かべると、

「それは、笑える話ですね」

「あぁ、笑える話だ」

役人は表情を変えず、少し声を低くして、

「ところで、おまえは明日には死ぬ。
 死ぬ前に、なにかしておきたいことはないか?」

「そうですねぇ」

と、大泥棒は考えるそぶりを見せてから、

「やりたいことは、全部やりましたので……
 そうだ、辞世(じせい)の歌でもよみましょうか」

「辞世の歌? 随分と高尚な願いだな、まぁいい、
 しっかりと聞いてやろう、どんな歌だ?」

大泥棒は少し笑みを浮かべ
「うっ、うん」と咳ばらいをしてから言いました。

♪かかるとき~ さこそ命の、おしからめ~
 かねてなき身と~ 思いしらずば~

目を閉じて聞いていた役人は、
歌を味わうようにそのままの状態で、

「なるほど、前々から、自分の命はないものと覚悟していたから、
 死を前にしても、命を惜しいとは思わない、と、実に良い詩だ」

大泥棒はニヤリと笑い、

「おほめいただき、ありがとうございます」

と言いました。

役人は、小声で、くりかえし歌を口ずさみました。

「ん?」

何かに気付き、目を見開いて、大泥棒の方に向けました。

「おい、おまえ、今歌ったのはおまえの辞世の歌では無く、
 古い武将の歌ではないか!」

その言葉を聞いて、大泥棒は大声で笑いました。

そして、

「ハハハ、さすがは俺を捕まえた男だ、
 そうさ昔の武将のから盗んだ歌だ!
 どうだ、この歌が俺の最後の盗みだ!
 大泥棒の最後の盗みが歌だなんて、
 洒落てるだろう」

そう言って笑う大泥棒を、役人はあきれたように
鼻で笑いましたが、心の中では、

(おもしろい奴だ)

と思いながら、その場を離れました。



翌日。

大泥棒の処刑の日。

役人は牢屋の鍵を静かに開けました。

「出ろ」

体に巻き付いた紐を引きずりながら、
大泥棒が牢屋から出てきました。

待機していた二人の若い役人が大泥棒の腕を
左右からしっかりと掴み、役人を先頭に、
処刑場へ向かって歩き出しました。

大泥棒は見せしめとして、庶民に公開で処刑されることになっていて
処刑場は建物の外に作られていました。

暗い留置場の廊下を歩き、役人は処刑場へ通じる扉を開けました。

外の日差しが暗い廊下に差し込んで来て、
役人は目を細め手をかざしました。

と、それと同時に、大勢の人の声が
役人の耳に飛び込んできました。

役人は(なにごと?)と、うす目をあけて辺りを見渡しました。

処刑場の周りは、柵で囲まれており、
中に入って来れないようになっています。

その柵を囲むように、人だかりが幾重にもできていて、
全ての視線が、こちらに向けられていました。

役人は目を見開き、歩きながらその光景を眺めました。

その群衆がこちらの方を向いてなにか叫んでいます。

「そいつを解放してやれ!」

「その方は俺たちの味方だ!」

「お願い、ゆるしてあげてー!」

と、叫んでいます。

役人は、

(こいつは、こんなに庶民に慕われているのか)

と思い、鼓動が少し早くなる感じがしました。

大泥棒は処刑台に座らせられ、動けないように
縛り付けられました。

群衆からの叫び声は収まるどころか、
一段と大きく熱をおびたものになっていました。

役人は大泥棒の目の前に立ち、睨み付けました。

大泥棒も黙って役人を見上げています。

役人は言いました。

「どうだ、この声を聞いた感想は?」

大泥棒は表情を変えずに、

「特に、感想はないね」

「そうか」

役人はそう静かに言うと、二人の若い役人に目配りをしました。

若い役人は腰につけた刀を抜き、大泥棒に向けて構えました。

その瞬間、処刑場の周りからは、一段、いや、さらに二、三段、
大きな声が上がりました。

その声は、助けを求める声、許しを求める声、役人を罵倒する声。

様々な声が重なり合い、大音響で処刑台に押し迫って来ました。

役人は大勢の訴えを一身で浴びました。

人々のいろんな思いが集まったそれは、
憎悪の巨大な言霊のように、役人の体に突き刺さって来ます。

若い役人は刀を構え、合図があればいつでも斬りつける
体勢を整えています。

役人は合図を出すのに躊躇していました。

群衆の叫び声は、大泥棒を逮捕した優秀な役人をも惑わす
激しい力を持っていました。

役人の目が、処刑台に座っている大泥棒に向けられました。

その目はすぐに柵の向こうの群衆に向けられ、
次に二人の若い役人に向けられ、
そしてまた、大泥棒を捉えました。

役人が大泥棒を睨み付けていると、
ニヤリという笑みが返って来ました。

その表情を見て、役人は少したじろぎました。

こめかみの辺りから、
大粒の汗が頬伝って流れていきます。

その時です。

大泥棒は大声を張り上げした。

「あー、やかましい! やかましいぃぃぃぃぃぃっ!!!」

その大声は水の波紋が広がるように伝わり、
まず役人が驚き、二人の役人が驚き、
そして柵の外側の群衆が驚きました。

処刑場が一瞬の静寂に包まれました。

すぐに大泥棒は叫びました。

「おまえら! なに勘違いしてるんだ?
 俺は、おまえらのために盗んだんじゃねぇ!
 俺が、盗みたくて盗んだまでだ!」

静かに聞いている群衆に、少しの間を置いてから、
大泥棒は通る声で言いました。

「でもよう、命乞いしてくれてありがとうなぁ」

群衆の中に少し安堵の空気が流れました。

しかし、大泥棒の次の言葉で一転します。

「だがなぁ、勘違いすんなよ、
 生き残れたら、また好きなように泥棒してやる」

そして、その場にいる全員に聞こえるような大きな声で、

「今度は、おまえらの家々に盗みに入ってやる!
 おまえらの身ぐるみ全部盗んでやる!!!
 覚悟しておけぇぇぇぇぇ!!!!!」

その大泥棒の声を聞いて、役人の目に力が入りました。

柵の向こうの群衆は明らかに混乱しているのが、
役人にも伝わってきました。

二人の若い役人も刀を構えたままの姿勢で、こちらを見ています。

役人は大泥棒から目が離せなくなり、
見つめたままでいました。

すると、大泥棒はニヤっと笑い、

「さぁ、殺せ!」

と群衆にも聞こえるような声で言いました。

役人は大泥棒の目を見ながら考えました。

大泥棒が盗みに入ったのは悪人の家ばかり、
そして、民衆からも慕われている。

しかも、あのような古い歌まで読める頭の良いこいつが、
本当に、民衆に危害を及ぼす行動をとるのか?

役人は迷いました。

大泥棒は相変わらず不敵な笑みを浮かべて
こちらを見ています。

役人は考えを纏めようと、目をつむり、
そして、しばらく考えました。

(いや、違う、逆だ、こいつは悪態をついて、
 この場を納めようとしているだけだ)

役人は、ゆっくりと目を開けると、
大泥棒の目をしっかりを見据えました。

大泥棒はしっかりとした目で、役人を見ていました。

(よし賭けてみよう)

と、心の中でつぶやくと、役人は、大きな声で言いました。

「みんな聞いてくれ!」

ざわついていた柵の向こうの群衆が、徐々に静かになり、
役人に耳を傾けました。

役人は群衆の方を向いて語りかけるように言いました。

「俺は、こいつに、別の罪を背負わそうと思う」

ざわつく群衆、困惑する二人の若い役人。

役人は続けます。

「コイツは大泥棒かもしれない。
 しかし、俺にはどうしても悪人には思えない。みんなだって、
 さっきまでそう思っていたんじゃないか?」

確かに、と何人かの群衆が頷きました。

「どうやらコイツの望みは、死ぬことのようだ」

役人は群衆を端の方からゆっくりと全体をなめるように、
目を配ってから、低い声で言いました。

「俺は、コイツの望みを叶えてやるのではなく、
 逆に、生かすことで罪を償ってもらおうと思うが
 みんなはどう思う?」

前代未聞の役人の発言に、群衆は驚いて、
それぞれがお互いの顔を見ました。

何事か話している群衆もいました。

混乱している群衆もいました。

役人はなにも言わず見渡していました。

群衆はざわざわと混乱しています。

刀を構えている、若い役人もお互いの顔を見たり、
そわそわとしています。

すると、ざわつく群衆のどこからか、

“パチ、パチ”

と、小さな拍手をする音が聞えてきました。

“パチ、パチ、パチ、パチ”

始めは小さな拍手の音でしたが、それは段々と大きくなり、
やがて、柵を囲む全ての方向からの大きな拍手になりました。

役人は笑顔で頷き、若い二人の役人を見ました。

若い役人は刀を鞘の中に収めました。

役人は群衆を見渡しました。

拍手をしているその顔は、
満面な笑みが浮かんでいました。

役人は群衆に向かって何度も頷いてから、
若い役人に目配りしました。

二人は大泥棒を処刑台から解いて立ち上がらせました。

大泥棒は驚いた表情をして役人を睨んでいましたが、
役人は少し目を合わせただけで、視線を外し、
前に立って、留置場の方へ歩いて行きました。

前代未聞の決断をした役人の背中を、大群衆の拍手が
後押しするかのように鳴り響いていました。


おしまい。



今回のもとのお話はコチラ

福娘童話集『 大泥棒の辞世 』
http://hukumusume.com/douwa/pc/kobanashi/03/19.htm



━━━ お話はここまで ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



☆ちょこっとHappy♪☆


今回のお話は、もはや童話じゃないですね(^^;;

無理難題を言ってくる人っていますよね。

先輩とか上司から言われると、本当に困ります。

そんなときは、今回のお話の役人みたいに、
よーく考えるといいと思います。

そして、自分が納得できる考えに従って行動してみるとイイ。

嫌だなぁ~、と思うことでも、納得して行動すると、
意外とストレスがたまらないものです。

ストレスは万病の元です。

嫌だけど、得するからな~、とイヤイヤ従うと、
ストレスがたまり、得がどこかへ飛んでいってしまいます。

「自分はこうした方が得! 絶対に得!」

と無理やりにでも納得してから行動すると、
ちょっぴり楽に行動できるはずです。

今回のお話の役人も最後は大泥棒に賭けてみることにしました。

それは群衆の願いでもあったし、自分の思いでもあると
納得して出した答えです。

無理難題に対しては「納得」という盾で受けて立つように
心掛けみてはいかがでしょう?


今日のHappy♪ポイント

『 納得できる考えに従って行動しちゃおう! 』


ご意見ご感想、お待ちしています(^0^)/


2018年1月6日土曜日

おにぎりコロリン

むかしむかしのお話です。

山のふもとに住んでいるおじいさんは、
山にのぼって芝刈りをしていました。

朝早くからまじめに芝刈りをしていると、

“グ~ゥ”

と、腹の虫が鳴きました。

「おやおや、もうお昼どきかのう」

おじいさんは芝を刈るのをやめて、家から持って来た
小袋を手に取ると、近くの切り株に腰かけて、
中から竹の皮でできた包みを取り出しました。

包みをひざの上に乗せて開くと、
中から、おにぎりが三つ出てきました。

「おばあさんのにぎる、おにぎりは、とってもおいしいからのう」

おばあさんが作ってくれたおにぎりを食べるのが、
おじいさんにとって、仕事中の一番の楽しみでした。

「いただきます」

おじいさんは手を合わせてから、両手でおにぎりを掴み、
頬ばろうとしました。

すると、ひざに乗っていた竹の皮からおにぎりが一つ
地面に落ちてしまいました。

「あんれまっ」

おにぎりはそのまま、山の斜面をコロコロと転がって行きます。

「待て!」

一日の楽しみのおにぎりを失うのはもったいない、
おじいさんは、手に持っているおにぎりを
素早く竹の皮で包みなおしてから、
転がっているおにぎりを追いかけました。

おにぎりは、コロコロコロコロ、転がっていきます。

「こら、待て~ぇ」

コロコロ、勢いよく転がっていくおにぎりは、
途中にあった石にぶつかり、ぴょーん、と、
飛び上りました。

そして、そのまま、ひゅん、っと、地面に落ちると、
コロコロと転がり、地面に開いていた穴に入ってしまいました。

「ありゃりゃ、おばあさんに作ってもらったおにぎりが~」

おじいさんは、慌てて穴を覗きこみました。

穴の中は暗くてなにも見えません。

おじいさんは、ガッカリと肩を落としうつむきました。

しゃがみ込んで、ため息交じりの息を吐いたおじいさん。

ふと、なにか歌声のようなものが聞こえたような気がして
顔を上げました。

「ん? 空耳かな?」

おじいさんは疑いながらも、耳を澄ませてみると、
やっぱり歌声が聞こえてきます。

「どこから、聞こえてくるのじゃ」

おじいさんはしばらく目を閉じて耳を澄ますと、
どうやら歌声は、穴の中から聞こえてくるようです。

「この穴から、歌声が?」

おじいさんは四つん這いになって、
穴に耳を近づけて目を閉じました。

すると、はっきりと歌声が聞こえてきました。

♪おにぎりコロリン すっとんとん
♪コロコロコロリン すっとんとん

ゆかいな音楽と可愛らしい歌声します。

おじいさんは楽しくなり、目を閉じたまま、
歌声に合わせて体を揺らしました。

♪おにぎりコロリン すっとんとん
♪コロコロコロリン すっとんとん

やがて歌声は聞こえなくなってしまいました。

おじいさんは満足そうな笑みを浮かべながら、

「この穴に、おにぎりを入れると、歌声が聞こえるのかのう」

とひとり言を言いました。

おにぎりはまだ二個残っています。

おじいさんは試しに一個、おにぎりを穴に入れてみました。

すると、また、歌声が聞こえてきます。

♪おにぎりコロリン すっとんとん
♪また来たおにぎり すっとんとん

おじいさんはシワクチャな笑顔になりながら、
体を揺らしました。

そして、竹の皮で包んだ、
もう一個のおにぎりを手にとると、

「最後のは、わしが食べよう」

歌を聞きながら、おばあさんの作ってくれた
おにぎりをおいしそうに食べました。

やがて仕事を終えて家に帰ったおじいさんは、
山であったことをおばあさんに話しました。

話を聞いたおばあさんは、

「それは楽しそうじゃのぉ~
 明日は、おにぎりをたくさん持っていくといいねぇ」

と、言ったので、おじいさんは笑顔でうなずきました。

そして、次の日、

おじいさんは朝から山で芝刈りをしていると、

“グ~ゥ”

お腹の虫が鳴きました。

「そっか、もうそんな時間か」

おじいさんは、芝刈りの手を止めると、
家に続く道の方を見ました。

ちょうどおばあさんが小袋を持って
山を登って来る姿が見えました。

おじいさんが朝、山に出かけようとすると、
おばあさんは、自分も歌声を聞きたいから、
お昼どきに、おにぎりを持って山に行くよ、
と言っていたのです。

「お待たせしました」

と言うおばあさんに、

「おぉ、ちょうどよかったよぉ」

おじいさんは笑顔で答えました。

「こっちじゃ」

おじいさんは歌声が聞こえる穴に向かって、
坂道を降りていきました。

やがて穴につくと、二人は穴のそばに座りました。

おばあさんは持って来た小袋から、
竹の皮に包まれたおにぎりを取り出しました。

「十個も作ってきましたよ」

「そうか、そうか、いっぱい歌が聞けそうじゃな」

おじいさんはおにぎりを一つ取ると、穴の中に入れました。

そして、おばあさんの方を向いて、人差し指を口の前で立てて、
静かに耳を澄ませました。

おばあさんは良く聞こえるように、
耳に手を当て穴の方に向けました。

すると、

♪おにぎりコロリン すっとんとん
♪コロコロコロリン すっとんとん

歌が聞こえて来て、おじいさんとおばあさんは、
お互いの顔を見てニッコリ。

二人は歌声に合わせて体を揺らしながら、
おにぎりを食べました。

しばらくすると、歌が止んだので、
今度は、おばあさんがおにぎりを穴に入れました。

♪おにぎりコロリン すっとんとん
♪また来たおにぎり すっとんとん

「ふふふ」

おばあさんは「成功!」と言わんばかりの笑顔を
おじいさんに向けました。

その後、おじいさんとおばあさんは、おにぎりが無くなるまで、
歌を聞きながらおにぎりを食べました。

やがて、おにぎりが無くなり、二人のお腹もいっぱいになりました。

「どうじゃ、楽しい歌じゃったろ」

と、おじいさんが言うと、

「えぇ、本当に楽しい歌でした」

おばあさんは笑顔で答えました。

「さて、仕事にもどるかのぉ」

おじいさんは立ち上がり、おばあさんは竹の皮の包みを
小袋の中に入れてから、立ち上がりました。

そして、おじいさんが穴のそばから離れようとしたとき、

「おやまぁ~」

と、おばあさんが声を上げたのでおじいさんは振り返りました。

すると穴の中から、ひょっこりと
ねずみが顔を出しているのに気付きました。

黙って見ていると、ねずみは小さな包みのようなものを
穴の縁に置き、すぐに穴の中へ入っていきました。

おばあさんはねずみが置いていった小さな包みを手に取ると、
それは木の葉っぱでできた包みでした。

おばあさんはおじいさんにも見えるようにして、
葉っぱの包みを開けました。

「まぁ~」

中には、美味しそうな木の実が何粒か入っていました。

「これは、もしかして、おにぎりのお礼かのぉ」

「そうかもしれませんねぇ」

おじいさんは早速、木の実をつまんで口に入れました。

おばあさんも一粒食べました。

「おいしぃ」

「おいしいのぉ」

二人はシワクチャな笑顔をお互いに向けました。

おばあさんは穴に向かって言いました。

「楽しい歌をありがとう」

「また来るでのぉ」

と、おじいさんは言って二人は坂をゆっくりと
のぼって行きました。

おじいさんとおばあさんは、その後、何度も何度も
おにぎりをたくさん作って、ねずみたちの歌を
聞きに来ましたとさ。


おしまい。



今回のもとのお話はコチラ

福娘童話集『 おむすびコロリン 』
http://hukumusume.com/douwa/pc/jap/03/15.htm

有名な昔話をほのぼのとしたアレンジしてみました。



━━━ お話はここまで ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



☆ちょこっとHappy♪☆


おじいさんは、毎日の楽しみにしていた、
おばあさんが作ったおにぎりを落としてしまいました。

こんな風に、うまくいかないことってよくある話です。

でも、おじいさんはおにぎりを落としたことで、
歌声が聞こえる穴、という小さな発見をしました。

それをおばあさんに伝えることで、
おばあさんも楽しい気分になることができました。

大事なおにぎりを地面に落としたことを悲しんでいただけでは、
おじいさんもおばあさんも、ある意味ねずみも
楽しい気分にはなれなかったことでしょう。

おじいさんのように、うまくいかなかったことに注目するのではなく
その先にある小さな良いことに注目できるような人になりたいなぁ、
と、私は思います。

そう言う人になれたなら、きっと、周りにいる人も、
幸せになるはずです。


今日のHappy♪ポイント

『 小さな良い発見は、あえて大注目してみる 』


ご意見ご感想、お待ちしています(^0^)/


2018年1月3日水曜日

ロバに化けた泥棒

むかしむかし、人を疑うことを知らない、
真面目で大人しい性格のおじいさんがいました。

おじいさんは会う人、会う人に優しい笑顔で挨拶しているので、
村ではとても有名でした。

ある日、おじいさんは飼っているロバを連れて、
市場にやって来ました。

市場に来て、村人と話をしながら買い物をすることが、
おじいさんの毎日の楽しみでした。

そんなおじいさんの姿を遠巻きに見ている若い男がいました。

「おい、見てみろよ、あれが真面目じいさんぜ」

すると隣にいた男が、

「人を疑うことを知らず、ウソをつかれても気づかないっていう、
 バカ真面目なじいさんだな」

「あぁ、とても優しくて大人しいじいさんだそうだ」

男たちは怪しい目つきをおじいさんに向けながら、

「良いロバを引き連れてるな」

「あぁ、あのロバをだまし盗ってやろうぜ」

二人は不敵な笑みを浮かべました。

この二人組は泥棒(どろぼう)です。

人を疑うことを知らないおじいさんがいると聞いて
村の市場に来れば会えるだろうと思い、朝から待っていました。

泥棒たちは、おじいさんはだまされたことにも気づかないほど
人を疑わないと聞いていたので、おじいさんを上手くだまして、
なにか盗んでやろうと考えていたのです。

二人組の泥棒はヒソヒソと言葉を交わし、
おじいさんをだましてロバを盗み出す手筈を整えました。

そしてお互いの顔を見てうなずくと、
ロバを引いて歩いているおじいさんに忍び寄って行きました。

おじいさんはロバの前を歩いているので、
泥棒が近づいてきたことに気づきません。

泥棒たちは静かに、ロバに近づくと、
首に巻かれているロープを静かにほどきました。

そして、一人はロバの首に新しいロープを巻き付け、
もう一人は、ロバの首に巻かれていたロープを
そーっと自分の首に巻きました。

一人はロバを引っ張り物蔭に連れて行き、もう一人は、
おじいさんがロバがいなくなったことに気付かないように、
ロバと同じような歩調で歩きました。

泥棒は自分の首におじいさんの持っているロープを巻いたまま、
しばらくおじいさんの後をついて歩いていましたが、
もう一人の泥棒が、ロバが物蔭に隠して見えなくなったのを
確認すると、おもむろに立ち止まりました。

泥棒が立ち止まったので、ロープがピーンと伸びました。

おじいさんは正面を向いたまま、ロープを軽く引っ張りました。

首に巻いたロープを引っ張られてちょっと痛みが走りましたが、
泥棒は黙って止まったまま動きませんでした。

「はて、どうしたもんかのう」

と、おじいさんはぼやきながらふり返りました。

泥棒と目が合ったおじいさんは、

「あれ?」

と驚きの声を上げました。

ロバに繋がっていると思っていたロープの先に、
人間がいたというなんとも不思議な光景を見て、
おじいさんはさぞかし驚いているようで、言葉もなく、
口をあんぐりと開けていました。

(しめしめ、驚いてやがる)

と、心の中でほくそ笑んだ泥棒は、神妙な顔をしながら、
話し始めました。

「おじいさん、どうかビックリなさらないでください。
 わたしはあなたのロバです」

と、泥棒は甲高い声で言いました。

おじいさんは相変わらず無言のままだったので、
泥棒は続けました。

「人間だったわたしは、悪いことをしてしまい、
 神さまから罰として、ロバの姿にされていました。
 しかし、あなたの仕事を手伝うことで、今、突然に罪が解かれ、
 こうして元の姿に戻ることができました」

おじいさんは目をパッ、と見開きましたがなにも言いません。

泥棒は続けました。

「人間になったわたしのお願いをどうか聞いてくだい。
 何十年かぶりに私を故郷へ返してはくれないでしょうか?
 人間に戻った姿を年老いた両親に見せてやりたいのです」

と、泥棒は手を組み涙を流しました。

(これで、優しいじいさんは、感動して、
 オレを逃がしてくれるだろう)

泥棒は、心の中で笑いました。

口を開けて驚いていたおじいさんは、一つ頷き、
口を閉じ、唾を飲み込んでからロープを握り直しました。

おじいさんのゆっくりとした行動を見ながら、

(はやく、オレの首からロープを取ってくれ)

と泥棒は思いました。

その時です。

泥棒の首に、突然、衝撃が走りました。

それと同時に、おじいさんの怒鳴り声が聞こえてきました。

「たわけーっ!!」

怒鳴り声が聞こえた瞬間、首に繋がっていたロープが
勢いよく引っ張られ、泥棒は、前のめりに倒れ込みました。

(苦しい!)

泥棒の首をロープが締め付けます。

おじいさんの怒鳴り声が泥棒に叩きつけられました。

「そんな戯言に騙されるほど、老いぼれておらぬわ!!」

泥棒は、ロープに締め付けられないように、
首とロープの間に指を入れてなんとか首を守りました。

「わしのロバをどこへやった! 早く返せ!!」

おじいさんの怒鳴り声は大きく、市場にいた村人たちが、
何事かと、集まって来ました。

泥棒は、なんとか首からロープを外そうともがきましたが、
その度におじいさんが力を入れて引っ張るので、
うまく外せませんでした。

その時です、

「ヒヒヒヒヒヒーーーン!!!」

人だかりの後ろの方から音がしました。

“パカラッ、パカラッ、パカラッ、”

蹄の音を立てて、ロバが走って来たのです。

ロバは必死に止めようとしているもう一人を泥棒を
引きずりながら近づいて来ます。

集まっていた村人たちは、慌てて道を空けると、
ロバは一目散におじいさんのところに駆け寄りました。

「おお、無事だったか、よく帰ってきたなぁ」

おじいさんはロバの首を擦ると優しく頬擦りをしました。

ロバも落ち着いた表情をして、おじいさんに寄り添いました。

おじいさんがロバに気を取られたので、ロープがゆるみ、
首を絞めつけられていた泥棒はすぐにロープを首から離しました。

「大丈夫か!」

と、ロバに引きずられてきた泥棒が声をかけると、

「ダメだ、失敗だ、じいさんはだまされなかった」

「コッチもだ、あのロバ、じいさんのところへ戻ろうと、
 ぜんぜん言うこと聞かないで走りだしやがった」

「とにかく、ずらかるぞ」

「おう」

泥棒たちはその場から離れようと、走り出しました。

するとどうでしょう。

あっちに逃げても、こっちに逃げても、
市場にいた村人たちに囲まれて、どこにも逃げられません。

そして誰かに押され、泥棒たちは倒され、
尻もちをつきました。

地面に座っている泥棒たちを囲んでいる村人たちは、
ジリジリと詰め寄って来てました。

泥棒たちはそのままの姿勢で村人たちを
おびえながら眺めることしかできませんでした。

村人の中の一人が言いました。

「あのおじいさんに迷惑かけて、
 ここから逃げられると思うなよ!」

他の人たちが怖い顔でうなずきました。

その表情を見て、泥棒たちは観念したように
ションボリとうなだれました。

やがて、人垣をかき分けて警察が来て、
泥棒たちをひもで縛り、立たせました。

警察署へ連れて行かれる途中で、泥棒はおじいさんに言いました。

「じいさんは、人を疑うことを知らないって聞いたけど、
 あれは嘘なのかい?」

おじいさんは小首を傾けて落ち着いた表情で言いました。

「はてなぁ、そんなこと誰から聞いたか知らんが、
 わしはここの村人としか付き合わんし、ここの村人は、
 みんないい人だから、疑わんでいいのぉ」

おじいさんののんびりとした言葉を聞いて、
ハァー、と溜息をついた泥棒たちは、
警察官に連れて行かれました。

おじいさんは村人一人一人に感謝しました。

そしてそのまま市場で買い物をしてから、ロバを引いて
なにもなかったように帰っていきました。


おしまい。



今回のもとのお話はコチラ

福娘童話集『 ロバとおじいさん 』
http://hukumusume.com/douwa/pc/world/03/14.htm



━━━ お話はここまで ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



☆ちょこっとHappy♪☆


人を疑いがちな人。

私も、どちらかというと疑いがちですが、
結局のところ、人は信じる方が“得”なんだろうなぁ、
と思います。

この物語のおじいさんは、村人のことは疑いません。
なぜなら、おじいさんは村人たちがいい人だということを
信じているからです。

逆に、このおじいさんが村人を常に疑いながら生活していたら
どうでしょう。
挨拶ひとつ交わしただけで、

「気軽に挨拶なんてしやがって、
 あいつ、わしをだまそうとしているかもしれん、
 気をつけねば」

と、きっと窮屈な生活をおくることになるでしょう。

何気ない暮らしの中で、おじいさんを窮地に陥れよう
なんて思う間抜けな泥棒の数なんて、たかが知れています。

大半の人は、いい人か、ごく普通の害の無い人です。

なんでもかんでも人を信じるというのは問題ですが、
とりあえず、まずは人を信じてみる。

その方が、無駄な力を使わなくてすむ分、効率がいいし、
窮屈な生活を送らなくていい分、気持も楽になるように思います。


今日のHappy♪ポイント

『 疑うことより信じる方が遥かに得 』


ご意見ご感想、お待ちしています(^0^)/