※童話の更新は週1回(だいたい土曜日の夜)です(^0^)/

≫≫≫ ☆ もくじ ☆ ≪≪≪

2017年12月27日水曜日

きのこと言えば椎茸

昔々の日本では「きのこ」と言ったら
「椎茸(しいたけ)」と皆が思うほど、
椎茸が盛んに栽培され、食べられていました。

「するとなんだ、きのこを献上しろと、
 城の役人が言っているのじゃな」

とある村のお寺の和尚が村人たちの話を聞いて言いました。

「そうなんです。急に一軒の家につき千個と。
 ───それで、困っているんですよ」

村人が今にも泣きそうな顔でそう言いました。

「フム」

と、和尚は頷いてから

「しかし今年は大量に採れたのだろ?」

「確かに大量に採れましたが、あれを売ってわしらは生活しています。
 それを取られたら、食うこともできなくなります。
 しかも、もう、今年採れた分は、ほとんど残ってないんです」

村人たちは肩をすくめました。

和尚が詳しく聞くと、村人たちは大量に採れた椎茸を街で売りさばき、
儲けたお金で、お正月を過ごす為の仕度を買って来たことを話しました



「で、街から村へ帰って来たところ、
 こんなおふれ(命令)が届いたんです」

村人は和尚におふれの紙を差し出しました。

「今まで、こんなおふれもらったことなかったから、
 どうしたらいいもんか、わしらじゃ考えつかないんで
 和尚さまに相談しよう、となった次第です」

和尚はおふれを受け取り、

「そりゃ、困ったのぉ~」

と言いながら、坊主頭を手でこすって難しい顔をしました。

そして、しばらく俯いた状態で何も話さなくなりました。

村人たちは、無言で何か考えているような和尚の姿を見守りました。

和尚はおふれの書かれた紙に少し目をやりました。

「よし!」

と叫んで、パン、と足のももの辺りを叩いた和尚は
おふれを村人たちに見せながら話しました。

「見よ、ここには“きのこ”を献上しろ、と書いてある」

村人が頷くと和尚は、

「わしにいい考えがある。お前たちはスマンが、山に生えている、
 木でも草でもなんでいいから苗を大量に摘んで来てくれ」

「苗ですか?」

キョトンとする村人に和尚は、

「さようじゃ、木の苗は“木の子”じゃ、ここには
 “きのこ”としか書いておらん、だから木の子を献上するのだ」

というなんとも危うい和尚の言いぐさを聞いた村人たちは
驚きながら、

「そんなことをして、和尚さま、大丈夫ですか?」

「案ずるな、策がある」

と、言って和尚が自信ありそうな顔を見せたので、
村人たちは不安を抱きながらも、和尚の指示に従いました。

そして三日と間を空けず、木の苗ならぬ“木の子”が
大量にお寺に持ち込まれました。

和尚はそれを弟子たちに持たせ、早速、お城へ向かいました。

お城に入り、献上の品の“きのこ”だと荷物を差し出すと、
役人がやって来て荷物を確認しました。

役人は荷物を確認するやいなや、顔をゆがめて和尚に聞きました。

「これはなんだ?」

和尚は何食わぬ顔で「“きのこ”でございます」

「きのこ?」

役人は頭を捻りながら、

「どう見ても、苗にしか見えんが、これのどこが“きのこ”なのだ?」

「ハイ、木の苗、すなわち“木の子”でございます」

和尚は涼しい顔をしながらそう言い、頭を下げました。

それを聞いたお役人の顔はみるみる赤くなっていきました。

「バカモン!! 木の苗がきのこのハズがあるまい!」

「おや、それではお役人さま、
 きのことはいったい何のことでしょう?」

和尚はすました声でたずねました。

「きのこと言えば、椎茸のことに決まっておろう!」

怒鳴り声をあげたお役人はさらに続けました。

「それを苗を持って来て、木の子などと屁理屈を言いおって!!」

お役人はエライ剣幕でまくしたてています。

和尚はちょっと目を見開いて、驚いたという表情を
わざとらしく見せてから言いました。

「これはこれは申し訳ありません。とんだ勘違いをしました。
 “きのこ”を献上しろとのお達しだったので、
 わたくし共はそのとうり従ったまでで、椎茸なら
 そう言ってくだされば献上しに参ったのですが、困りました、
 もう、今年採れた分は街へ行って売り払ってしまいました」

そうひょうひょうと和尚が話すので、役人は渋い顔になりました。

そして、しかたなさそうな口調で言いました。

「あなたが和尚じゃなかったら、この場で切っているところだが、
 確かに、椎茸とは言わず“きのこ”とおふれを出したわしらも悪い、
 今回は、これで免じる。但しだ」

と言ったあと、役人は声を低くしてから続けて言いました。

「来年は椎茸を今年の分も合わせて倍の量、献上するように」

そう言われた和尚は、顔色一つ変えずに、

「これはこれは、ご寛大なご采配。誠にありがとうございます」

と、深々と頭を下げ、そして、声を変えずに続けました。

「お役人さま、確認いたしますが」

「なんだ」

「“きのこ”と言ったら椎茸のことで、
 椎茸と言ったら“きのこ”のこと、間違いありませんね」

「クドイ、きのこは椎茸! 椎茸はきのこだ! 間違えぬように」

「分かりました、しっかりここに書いておきます」

と言って、紙と筆を出して書き、役人に見せました。

それを見て役人が頷いたので、和尚は頭を下げて立ち去りました。

村に帰ってから、この話を村人にすると、

「和尚さま、来年は倍だなんて、そりゃあんまりだぁ、
 ワシら今年の収穫量でも生活がやっとなのに、
 もう生きていけなくなります」

村人の悲痛な叫びに、和尚は不敵な笑みを浮かべながら、

「案ずるなと言っておろう、わしに任せろ」

と言ったので、村人たちは半信半疑でしたが、
和尚を信じることにしました。

そして次の年、お城からおふれが来ました。

今年は、去年の失敗からかちゃんと

“椎茸を一軒につき二千個献上するように”

と書いてありました。

しかし和尚の村では、去年とはうって変わって
少しの量しか椎茸が採れませんでした。

村人は困り果てました。

ただでさえ収穫が少ないのに、
去年の倍もお城に献上しなければなりません。

うなだれている村人たちを和尚はなんとか言い伏せて、
献上の品を持って、お城へ向かいました。

去年と同じ役人が和尚の前に現れました。

「来たな! 一年ぶりだな和尚」

役人は倍の量で大きく膨れ上がった荷物を見て、
嬉しそうな顔で、すぐさま中身を確認しました。

「なっ!!」

確認して、お役人はびっくり!

そこには去年の倍の量の、木の苗(木の子)があったのです。

お役人は烈火のごとく大声を出して、

「これはなんだ! 去年と同じではないか!
 和尚! どういうつもりだ!」

「はい、“きのこ”をお持ちしました」

と、和尚は何ら表情を変えずに淡々とした口調で答えました。

「なに! わしはちゃんと“椎茸”を献上しろと書いたぞ!!」

もうカンカンで頭から湯気が上りそうなお役人に対して、
和尚は表情をそのままに、さらりと言いました。

「はい、ですから、きのこをお持ちしたのです。
 去年、わたしはここでお役人さまに確認しました。
 きのこと言えば椎茸。椎茸と言えばきのこ。と」

「この通り」と言わんばかりに、和尚は
去年書いた紙を役人に見えるように差し出しました。

「はっ!」と思い出したような声を役人が上げました。

和尚は続けます。

「お役人さまは確かに、きのこは椎茸! 椎茸はきのこだ! 
 と、仰いました。そして今回のおふれには、この通り」

と、おふれを取り出し、

「“椎茸を一軒につき二千個献上するように”と書かれています。
 よって我々はそれに従ったしだいです」

「ムムムムムムムム」

お役人は苦虫を潰したような悔しそうな顔をしました。

そして、しばらく仁王立ちになっていましたが、
「ちょっと待っておれ」と言い残し、後ろに下がっていきました。

しばらくして、役人は戻ってくると、

「殿がお呼びだ、参れ!」

そう言われた和尚は、シメタ、と思いましたが、
それを悟られないように平然と頷き、役人について行きました。

案内された部屋に入ると、殿さまが笑顔で和尚を迎え入れました。

「お主が、おもしろいトンチを言う和尚か!」

殿さまは上機嫌でそう言いました。

和尚は「お会いいただきまして光栄です」と
深々と頭を下げてから話を始めました。

今年は椎茸が不作だったこと。
椎茸は村人が生活するのに大切な品物で、それが無いと
ささやな正月も過ごせないことなどを静かに訴えました。

話を聞いた殿さまは、大きく頷きました。

そして、

「おもしろいトンチのできる和尚に免じて、
 来年からの椎茸の献上を見直すことにしよう」

と笑顔で言って、来年からの椎茸の献上を
免除してくれることを約束してくれました。

実は、殿さまがトンチ好きなことを和尚は知っていて、
殿さまに直接会って話をする機会をうかがっていたのです。

こうして和尚が考えた、木の子の策は、キレイに実りました。

和尚が村に帰ってその話をすると、村人たちは、

「やっぱり、わしらの和尚さまはスゴイ!」

と言って、お祭り騒ぎのように踊って喜びました。


おしまい。



今回のもとのお話はコチラ

福娘童話集『 キノコ問答 吉四六(きっちょむ)さん 』
http://hukumusume.com/douwa/pc/jap/03/12a.htm



━━━ お話はここまで ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



☆ちょこっとHappy♪☆


無理なことを要求する人は必ずいます。

その度、イヤな思いをしたり、怒りを覚えてしまったりします。

このお話の和尚のように振る舞えれば、
とても気持ちがいいでしょうが、
現実は、なかなかそうはうまくいきません。

ただ、この和尚のように、知恵をしぼることは
大事だと思うのです。

要求されたことは本当に無理なのか、
他にやり方はないのか、或は、やらずに済む方法はないのか、
いろいろと、じっくりと考えて、知恵をひねり出してみる。

いい知恵が見つかればラッキー!
もし、見つからなくても、考えたことによって、
次につながるかもしれません。

無理だと思う局面に何度もぶつかり、その度に知恵を絞る為に考える。

そうして、考えるクセが付いたら、その能力は、
やがてあなたを救ってくれる知恵を生み出してくれるはずです。


今日のHappyポイント♪

『 考えるクセがついたら、それは強い武器となる 』


ご意見ご感想、お待ちしています(^0^)/


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