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「もくじ」がちょっと新しくなったよ

2017年11月12日日曜日

イルカと白ウサギ[中編]

[前編]はこちらからどうぞ


「どうしよう、帰れないよ~」

まだ子どもの白ウサギは、何匹ものサメが泳いでいる海を眺めて
ぶるぶると震えていました。

サメはときおり水から顔を出して、白ウサギを眺めて、

「いつ飛び込んでもいいんだぜ」

と、不敵な笑みを浮かべています。

白ウサギは怖くてぶるぶる震えながら落ち着きなく、
海を泳いでいるサメを見たり、元々いた島を見たりしました。

しかし、どうにもならなそうです。

しかたなく白ウサギは振り向きました。

島には緑に覆われた少し小高い丘がありました。

白ウサギは、もう一度サメのいる海を眺めてから、きびすを返すと、
サメのいる海から離れ、丘に向かって歩き出しました。

丘に生えている草木の背は低いので、
震えて足取りのおぼつかない白ウサギでも歩くことができました。

そしてなんとか丘の頂上までやってきました。

すると、目の前に一面の青い色が飛び込んできました。

「うわぁー」

丘を緩やかに下っていった先の海岸から、真っ青な海がずーっと、先、
どこまでもどこまでも続いていき、やがて空とくっついています。

「こんな海、見たことないや~」

今まで白ウサギの見ていた海は、すぐ向う側に島がある、
とても狭い景色でした。

その狭い海をサメの背中に乗って渡り島にたどり着き、
丘を登り目にしたものは、果てしなく広がる海の景色でした。

白ウサギは、海の広さに圧倒され、ゆっくりと首を左から右、
右から左へと動かし、ボーっと眺めていました。

「あっ、のんびりしている場合じゃなかった! なんとかしなきゃ」

白ウサギはとりあえず丘を下りて海岸に近づきました。

そして、どこまでも続く青い海をゆっくりと眺めながら、
この島から出るいい方法は無いかとを考えました。

しかし、なにもいい方法が浮かびませんでした。

途方にくれながら、ぼんやりと海を眺めていると、
海面になにかが見えたような気がしました。

白ウサギは目をこらすと、海面でなにかが動いています。

背びれです。

「あ、サメだ!」

白ウサギはドキリとなり、寒気が全身を覆いました。

しかし、次の瞬間、背びれは上に上がってきて、
同時に丸っこいものが上って来たと思うと、

プシュー、

っと、水を吐き出して、また、海の中へ入っていきました。

「ん?」

白ウサギは首をかしげました。

(サメ、ってあんな感じだっけ?)

白ウサギがずっと見ていると、また背びれが現れました。

そして、また、プシュー、と水を吐き出して潜っていきました。

しばらくすると、また背びれが見えました。

今度は、プシュー、とはせずに、
だんだん白ウサギに近づいてきました。

白ウサギはちょっと怖い感じもしましたが、
ジッと前足を揃えてお座りをした姿勢で、
背びれの動きを目で追っていました。

すると、

バサーッ、

と、白ウサギの前でそいつは顔を出しました。

そして、白ウサギと目が合うと同時に、

「うわぁっ! ビックリした!!!」

と、驚きの声を上げました。

海から顔を突然出して、勝手に驚きの声を上げたあと、
そいつは矢継ぎ早に白ウサギに質問あびせてきました。

「誰だい、君は? なんでそんなところにいるんだい? 
 それより、なんでそんなに白いんだい?」

あっけに取られている白ウサギは、ぼそっと、

「ボクは白ウサギ、君は?」

「ボクはイルカだよ、知らないの?」

「うん、初めまして」

「海の人気者、イルカだよ!」

「知らなーい」

白ウサギは冷たく言うと、
イルカはシュンと力なく海に顔を沈めました。

それから、くるっと、海の中を泳いで、
もう一度、白ウサギの前に顔を出しました。

「君、見かけない顔だけど、こんなところでなにしてるの?」

と、質問好きなイルカに、白ウサギは
前足を揃えてお座りをした姿勢で言いました。

「あなた、イイ奴?」

「えっ」

イルカは目をまん丸にした表情で、

「イルカは、イイ奴に決まってるよ」

「そうなの?」

「そうなの、って、白ウサギさん、君はおもしろいね」

そう言ってイルカは、クケケケケケケ、と笑いました。

イルカが楽しそうに笑っている姿を見て、
白ウサギは少し安心しました。

そして、

「帰れなくなっちゃったの。話し聞いてくれる?」

と、肩を落としながら言いました。

「うん、きくきく」

イルカは何度もうなずきました。

白ウサギはどうしてこの場所にいるか訳を話しました。

話を聞き終えたイルカは軽い口調で言いました。

「そうか分かった、じゃぁボクが向うの島に連れてってあげるよ」

「えっ、でもサメいるよ」

「大丈夫だよ、ボクの泳ぎの速さに、サメなんてついて来れないよ」

と言ったあと、イルカは、見てて、と言って右へ泳ぎ、
すぐにターンして左へ行き、しばらくしてまたターンして、
白ウサギの前まで来ると、ピューン! とジャンプしました。

“バシャーン!!”

イルカが海に入ると、水しぶきが上ったので、
白ウサギは慌てて逃げました。

「どう、すごいでしょ!」

と、得意げに話すイルカに、
白ウサギは、スゴイのかどうか良く分からなかったのですが、

「うん、スゴイと思う」

と、返事をしました。

イルカは嬉しそうに、体の半分くらいを海から出して、

「クケケケケケケ」

高らかに笑い声を上げました。

あっけに取られている白ウサギにイルカは、

「じゃ、ボクの背中に乗って!」

と、体を海岸に対して横を向けて、白ウサギが乗りやすいように
背中を向けました。

白ウサギは、

(ほんとうに大丈夫かなぁ……)

と、ちょっと不安もありましたが、それよりも、
イルカの背中に乗ってみたら楽しそう、との思いが強く、

「じゃ、乗るよ」

ピョン、と軽やかにジャンプしてイルカの背中に乗りました。

「背びれにつかまって」

イルカがそう言うので、白ウサギは背びれにさわりました。

イルカの背びれは、ヌルっとした感触で、
すべりそうだったので、抱きしめることにました。

「じゃっ、しゅっぱーつ!!」

イルカは物凄い勢いで泳ぎ始めました。

白ウサギはバランスをとるので精一杯、振り落とされないように、
必死に背びれにしがみつきました。

「ヤッホー!」

イルカは激しくカーブを曲がります。

白ウサギは激しく上がった水しぶきをもろにあび、
しょっぱい海の水を飲み込んでしまいました。

イルカはそんなことにもお構いなしに、
スピードを上げて泳いでいます。

そのうち、白ウサギも段々イルカのスピードになれて来て、
周りを見る余裕が出てきました。

水しぶきを巻き上げながら、海の上をすべるように移動しています。

塩っ辛い水しぶきは全身に浴びせられていましたが、
同時に、気持ちのいい風を全身に浴び、白い毛も激しく揺れ、
とても爽快な気分になってきました。

「イルカさん、サイコー!」

「ヘヘヘーイ!」

イルカもおおはしゃぎです。

そうこうしていると、白ウサギが元々住んでいた島が
前方に見えてきました。

このまま行ったら、あっという間に島にたどり着きそうです。

(よかった、帰れる!)

そう、白ウサギは思いました。

と、その時です、

「コラーッ、どこ行くんだ!」

と、右かわから激しくサメがイルカめがけて突進してきました。

白ウサギは、ギョ、としましたが、

「おっと危ない!」

イルカは華麗に身を翻し、サメの突進をかわしました。

すると今度は左側から別のサメが襲い掛かって来ました。

「うわわ、」

イルカは間一髪かわすと、スピードを上げて泳ぎました。

かわされたサメたちは、イルカを追いかけてきますが、
イルカはどんどん差を広げていきます。

「スゴイよ、イルカさん!」

「でしょ!」

イルカは得意げに言ったその時、
目の前から二匹のサメが同時に襲ってきました。

慌てて、別の方向を向いてかわそうとしましたが、
向いた方向にはまたサメがいました。

イルカはさらに方向を変えましたが、そちらにもサメがいます。

気付くと、どちらも向いてもサメがいて、ゆうゆうと泳いでいました。

白ウサギを乗せたイルカは、いつの間にかに
サメたちにすっかり囲まれてしまいました。

イルカは、大きな声を上げました。

「ヒュルルルルルルルルル」

「どうしよう、イルカさん」

「ヒュルルルルルルルルル」

イルカの声が大きいので、白ウサギは大きな耳を手でおおいながら、
体を小さくして震えました。


───つづく

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