※童話の更新は週1回(だいたい土曜日の夜)です(^0^)/

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2017年9月21日木曜日

寒い夜を乗り切る方法

昔々の話です。

その日はとても寒い日でした。

空は一面、白い雲に覆われて、北風もピープゥーとふいています。

街には人影もなく閑散としている中、商売人が物売りをしていました。

「とうがらしはいらんけ~、とうがらしはいらんけ~」

唐辛子売りはかごいっぱいに、
燃えるように真っ赤な唐辛子を入れて歩いていました。

「かき~、かきだよ~、とれたてのかきはいらんかい~」

柿売りは、枝に付いたままの柿を何本も荷車につけて引いていました。

唐辛子売りと柿売りは道のまん中で出合い、挨拶を交わしました。

「どうですか、調子は?」

と唐辛子売りが言うと、柿売りが、

「この天気ですからね。お客さんは見つかりそうにないですね」

と、答えました。

やれやれ、といった表情で、お互い笑っていると、
二人の間に、空から白いものが落ちてきました。

「とうとう、降り出したか」

「そうですねぇ」

二人は悩ましそうに空を見上げてから、
やがて、道沿いにあった小屋に入りました。

小屋といっても扉もなく、
申し訳なさそうについている壁と屋根のおかげで、
雪と風は多少は防げる程度、といったところでした。

「よっこらしょ」

二人は腰を下しました。

「こりゃぁ、積もりそうですね」

と、唐辛子売りは空を眺めて言いました。

「そうですねぇ」

と言いながら柿売りも同じように空を眺めて、

「今晩は、ここに泊まるしかなさそうですねぇ」

雲に覆われて姿は見えないが、日はだいぶ傾いて、
うす暗くなってきています。

二人とも、遠くの村から物を売りに来ているので、
すぐに家に帰ることができませんでした。

「仕方ないですね」

仕方ないとはいっても、雪の降る寒い夜を、
こんな小さな小屋で越すのは、命がけのことです。

空を見ていた唐辛子売りは、不安な気持ちに包まれながら
「フーッ」と大きく息を吐きました。

柿売りも、どんどん強くなる雪に覆われていく街を、
心細くぼんやりと眺めました。


───少しの時間が過ぎました。

辺りは真っ暗です。

雪は降り続け、予想通りだいぶ積もってしまいました。

唐辛子売りが寒さで震えていると、柿売りが、
荷車から柿の実がついたままの枝を何本か外し、
柿の実をとって纏め、火打ち石を使って火をともしました。

「お、助かります」

唐辛子はそう言いながら、火に手をかざしました。

「暖はなんとかなりそうですが、困ったのは食べものですね」

と、柿売りが言うと、

「おや、柿売りさんには、柿があるじゃないですか。
 私なんぞ、唐辛子ですよ、辛いだけで腹の足しにもなりゃしない」

唐辛子売りが苦笑いをしました。

すると、柿売りは首を振りました。

「そうでもないんです。実は、柿は食べると
 体温を下げてしまうんですよ。今の状態では食べない方がいい」

「え、そうなんですかぁ、それは知らなかった……」

唐辛子売りは、お腹がすいたら柿をもらおうと思っていたので、
あてが外れてガッカリしました。

たき火はあるとはいえ、扉もなく時折風と雪が吹き込んでくる小屋で、
どうしたものかと、二人は寒さで身を縮ませながら悩みました。

「あ、」

唐辛子売りは何かをひらめいたのか、声を上げました。

「どうしました?」

柿売りが訪ねると、唐辛子売りは渋い表情で言いました。

「いや、どうか分かりませんがね、私の持っている唐辛子は、
 体を温かくすることが出来るんですよ」

「あぁ、確かに、唐辛子を食べると、体がカッカしてきますよね」

「でしょう! でも、あまり食べ過ぎると汗が出て来て逆に
 寒くなってくるから気をつけなきゃいけないんですが、
 私が言いたいのは、それじゃなくてですねぇ」

「はぁ、」

「いや、どんな味になるか分からねぇんだが、
 甘くて体を冷やす柿と、辛くて体を温める唐辛子を
 一緒に食べたら、ちょうどいいかなぁ、なんて……」

「おぉー」

柿売りは感心した声を上げましたが、同時に、不安も覚え、
柿と唐辛子を見比べて少し考えましたが、

「やってみましょうか」

と、明るい声で言いました。

「どんな味か分かりませんよ」

唐辛子売りが慌てて言うと、

「どうせ、お腹を空かせてもイイことありませんし」

そう言うと、柿売りは柿を掴み唐辛子売りに渡しました。

唐辛子売りは柿を手に取ると、変わりに唐辛子を一本、
柿売りに渡しました。

二人は、柿と唐辛子を両手に持ちました。

「それでは、いただきましょう」

「はい」

二人は同時に食べ始めました。

まずは柿の方から。

“カリッ”

「うん、甘くてうまい!」

唐辛子売りが一口食べて言うと、

「でしょう~」

と、柿売りが笑顔で答えました。

そして次に、二人とも唐辛子をかじりました。

“ポリッ”

「うわっ、辛い!」

柿売りが渋い顔で言うと、

「でしょう~」

と、唐辛子売りが笑顔で言いました。

それから二人とも唐辛子を食べたあと、すぐに柿を食べました。

“カリッ”

そして、すぐに唐辛子というふうに交互に食べました。

“ポリッ”

“カリッ”

“ポリッ”

“カリッ”

“ポリッ”

何度か食べていくうちに気付きました。

「あれ、これ、けっこういけませんか?」

と、唐辛子売りが言うと、

「はい、嫌いじゃない味です」

と、柿売りが言いました。

「まぁ、美味しいとまではいきませんが」

「はい、美味しいとまではいきませんが、でも、いけますよね」

「体も寒くなりませんしね」

「はい、ちょうどいいです」

と、二人は柿と唐辛子を交互に食べながら楽しそうに話しました。

やがて、食べ過ぎるのは良くないだろうからと、
どちらからともなく言い出し、お互い二個ずつ食べ、
お腹をみたしてから、たき火の番を決め、
交互に寝ることにしました。


──次の日の朝。

唐辛子売りは、太陽の照らす眩しい光で目覚めました。

雪はすっかりやみ街は一面の銀世界。

空は雲が見当たらないほど、一面、真っ青に広がっていました。

「なんとか、一晩、越せましたね」

たき火を消しながら柿売りが言いました。

「命拾いできましたね」

と、二人は安堵した表情で笑いました。

街には、ちらほらと人が出てきました。

二人は売り物を整えました。

一晩、命を繋いでくれた食べ物を持って、
二人は元気よく雪に覆われた街へと歩いて行きました。


おしまい。



今回のもとのお話はコチラ

福娘童話集『 唐辛子(とうがらし)売りと柿(かき)売り 』
http://hukumusume.com/douwa/pc/minwa/12/30a.htm



━━━ お話はここまで ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



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