※童話の更新は週1回(だいたい土曜日の夜)です(^0^)/

≫≫≫ ☆ もくじ ☆ ≪≪≪

2017年9月14日木曜日

あわれな悪魔

「全知全能の神さま、お願いがあります」

「なんなりと、聞きましょう」

「わたしは悪魔です」

そう言った悪魔は背中についた、まっ黒で不気味に光る羽を
キレイにたたみ、片膝をついて神さまに頭を下げました。

「わたしは、悪魔でいることが、いやでいやでたまりません」

「ほう」

真っ白なまばゆい光を背にした神さまは、
優しい声で「続けて」と悪魔にうながしました。

悪魔は、立ち上がり、両手を広げて話し始めました。

「人間たちは、良いことが起きると神さま、あなたに感謝します。
 そして、悪いことが起きると、わたしたち悪魔のせいにします」

「ふむ」

「確かに、悪い悪魔は大勢います。
 だから仕方のないことなのかもしれません。
 しかし、わたしは違います。
 わたしはいつも人間の役立つことをします」

「ほーぅ、役立つことじゃと、例えば」

「この間も、飼っている牛の足が沼にハマってしまい、
 困っている人間がいました。
 『また悪魔のしわざか!』と人間が言うものですから、
 わたしは牛を、陸に一瞬にして移動させ、助けてあげました。
 するとどうでしょう、その人間は、
 『神様、キセキをありがとうございます』
 と、あなたに感謝したのです。助けたのはわたしなのにです」

「なるほど、なるほど」

「別に、牛が沼にハマったのは悪魔のせいでもなく
 たまたまそうなっただけです。
 なのに他の行いの悪い悪魔のせいで、悪いことは
 なんでもかんでも悪魔のせいにされてしまう。
 良いことをしても感謝されない。
 わたしは、もうたくさんです。今すぐ悪魔を辞めたいのです」

「なほど、良く分かった」

話を全て聞いた神さまは、何を話そうか、
言葉を選んでいるかのように少し間をおいてから、
静かに話し始めました。

「おまえは、生まれつき悪魔だったな」

「はい」

「すると、おまえは本来、他の悪魔と同じように、
 悪いことをすることが役割のはずじゃが、
 なぜ悪いことをしないのだ?」

「はい、わたしは人間が、なげき、悲しむ姿を見たくはないのです」

「ほう、なんだか優しい心を持っているのだなぁ」

と、神さまは少し微笑みました。
そして、微笑んだままこう言いました。

「おまえは、なにか勘違いをしておるな」

「勘違い? ですと」

悪魔は意外なことを言われて、キョトンとしました。


「そうじゃ、勘違いだ。
 いいか、おまえは先ほど、牛を助けてやったと話したな」

「はい、それがなにか?」

「牛が沼にハマって困るのは、
 沼にハマった牛とそれを所有している人間だ」

「はい、ですからわたしは助けてあげたのです」

「そうじゃな。しかし、果たしてそれは助けになっているのかな?」

「助けに、って、おかしなことをお聞きなさる、
 げんに人間はあなたに感謝している。
 それが助けになった証拠です」

「果たしてそうかな?」

悪魔は何も言わず、ただ小首をかしげました。

神さまは話を続けます。

「人間が、たいがい神に感謝するときは、願いが叶ったときじゃ。
 しかし、殆どの場合、人間の願いが叶ったときというのは、
 わしの力などまったく及ばないことがきっかけで叶うのじゃ」

悪魔は小首をかしげながら、

「どういう意味ですか?」

「願いが叶うときに働くのは、人間の力じゃ」

「人間の力、ですか」

「そうじゃ、人間は自分たちの力、知恵や努力で、
 願いごとを叶えているのじゃ、わしの出る幕などありゃせんよ」

「人間は自分たちの力で、願いを叶えていると……」

「ふむ」

「だとすると、なぜ人間はあなたに感謝するのですか?」

「はてのう、きっと、なにもしないからじゃないのかのぉ」

「なにもしない?」

「そうじゃ、おまえが助けた牛じゃが、
 あのままにしていたらどうなっていたと思う」

「そうですね、人間は困って、
 どうしようと泣き叫ぶのではないでしょうか?」

「そうじゃな、泣き叫んだあと人間はどうすると思う?」

「あなたに、助けを求めるのでは?」

「そこじゃ、おまえが勘違いしているのは」

「───どこでございますか?」

「人間は、わしに助けを求めるよりも早く、或は同時に、
 どうやったら牛を助けられるか考えるのじゃ」

「考える?」

「そうじゃ、引っ張り上げられるか、とか、人を呼ぼうとかじゃ」

「はぁ……」

「そして、すぐに、なんらかの行動する。
 牛を助けられれば、それは良い経験としての成長になる。
 もし、牛を助けられなかったとしても、
 “牛なだけに”失った悲しみは、
 次は沼に牛を近づけるときは気をつけよう、
 といった知恵としての成長になるのじゃ」

「牛なだけに?」

「ダジャレじゃ、おもしろいか?」

悪魔は無言で、神さまを見つめました。

神さまは咳払いしてから続けました。

「つまり、おまえがキセキを起こして助けたことは、
 そんな人間の成長を邪魔してしまったことなのじゃ。
 それは人間にとっては、むしろ悪いことじゃ」

「え、悪いこと」

「そうじゃ、つまり、おまえたち悪魔がやっていることは
 悪いことなのじゃ」

「悪いこと……、するとわたしは、他の悪魔と同じと……」

「残念なことだが、そういうことじゃ」

「なんと……」

良いことをしていると思っていた悪魔はがっくりと肩を落としました。

神さま優しい口調で言いました。

「そう肩を落とすな、本当にいいことをしていれば、
 その内ひとりでにわしらと同じ神になれる」

「本当ですか?」

「あぁ、本当じゃ、それには本当に人間に役立つことはなにか、
 本当の助けとはなにかを、しっかりと学び経験することじゃ」

その言葉を聞いて悪魔の顔は笑いに包まれました。

「分かりました神さま、よく考えてみます。
 ありがとうございました」

「ふむ」

悪魔は黒い羽を羽ばたかせ、飛んでいきました。

悪魔が過ぎ去った後で、羽が一本、空中をゆらゆらしながら、
神さまの足元に落ちました。

その黒い羽には、ところどころ白い色がまじっていました。


おしまい。



今回のもとのお話はコチラ

福娘童話集『 あわれな悪魔 』
http://hukumusume.com/douwa/pc/world/12/17.htm



━━━ お話はここまで ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



☆ちょこっとHappy♪☆


人の役に立つと思ってやったことで、
むしろ相手には迷惑だった、ってこと、よくありますよね。

そういう時、って、「自分の中にあるイイこと」
をしてしまっていているんですよね。

「相手にとってイイこと」をしなければ、
迷惑になることもそりゃあります。

自分の中にあるイイことは、相手にとってイイこととは限りません。

ところで、あなたは「相手にとってイイこと」
について考えたことありますか?

こんなことをしたら、喜んでくれる!
と勝手に判断していませんか?

それでは、自分の中にあるイイことを、
他人に押し付けているだけです。

かってに良かれと思って行動しちゃうと、
かえって迷惑をかけてしまうことになってしまいます。

それじゃぁ、何もしてあげられないよ。
と、なってしまいそうです。

この物語の神さまくらい遠い存在なら、
なにもしないで知らんぷりもできるかもしれませんが、
近くにいるのに相手のために何もしてあげないというのは、
関係を壊してしまいかねません。

では、どうすればいいのか。

「相手とってイイこと」を相手に聞いてみましょう。

何して欲しい?

聞かないで、自分の判断で動くから、迷惑になってしまうのです。

些細なことでも、ちゃんと聞く。

聞いただけで「迷惑だ」と答える相手もいるかもしれません。
その時は「あ、失礼しました」と言って、何もしないで、
ただ眺めていましょう。

一度声をかけておけば、何かして欲しいと思ったとき、
必ず相手から声をかけて来るはずですから。


今日のHappy♪ポイント

『 相手の“イイ”を聞いてみる 』


ご意見ご感想、お待ちしています(^0^)/


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