≫≫≫ ☆ もくじ ☆ ≪≪≪
「もくじ」がちょっと新しくなったよ

2017年8月9日水曜日

だって親子だもの

昔々の江戸の長屋に父、母、息子の三人家族が
平穏に暮らしていました。

ある日の出来事です。

「あら、お前さん、帰って来ていたのかい?」

夕飯の仕度をしていた奥さんは、
不意に旦那さんがいることに気づきました。

いつもは「今帰ったよ!」と威勢よく帰って来るのに、
なんだか様子が変です。

「どうしたんだい? なにか問題でもあったのかい?」

と、旦那さんに尋ねました。

「いやぁ、その、なんだなぁ」

旦那さんは肩をすぼめ、奥さんと目を合わせたり反らせたり、
そわそわしていました。

「なんなのよ、忙しいんだから、早く話しておくれよ」

奥さんがせかすと、旦那さんはボソボソ、
っと何かを呟きました。

「えっ、なに? 聞こえないわよ」

奥さんは、耳に手を当てて聞き返しました。

「いや、あの~ぉ、なんだ…、おかねぇ~……」

「はぁ?」

「お金を! 落とした……」

「なんだってぇ!」

奥さんは驚いて大きな声を出してしまいました。

「おいおい、そんなに大きな声を出すんじゃないよ、
 ご近所に聞こえちまうじゃないかよ」

旦那さんは困ったような表情をしながら、
両手をバタバタさせて奥さんをなだめるような仕草をしました。

奥さんのほうは、そんなことには構わず大きな声で、

「いったい、いくら落としたの!」

そう言われて、旦那さんはすまなそうに肩を落として
「小判」と言ってから、右手の人差し指を立てました。

それを見た奥さんは、

「小判、一枚かい、もーう、まったく、稼ぎも少ないのに
 小判を落とすなんて、どれだけ間抜けなんだろうね!」

旦那さんは、一回りも二回りも体をすぼめて
小さくしぼんでしまいました。

そこへ「ただいまー!」と息子が元気よく帰って来ました。

帰って来た早々、息子は母親に嬉しそうな顔で言いました。

「今ね、歩いていたら、小判を拾ったよ!!」

「なんだってぇーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!」

母親と、小さくしぼんでいた父親が、
驚いて息子の方に近寄って来ました。

「でかしたゾ、わが息子!!!」

父は大喜びです。

「へへへ」

息子も得意げな笑みを浮かべました。

「えらいね~ぇ」

と母も満面な笑みを浮かべながらが「どれ、見せてみな」

息子はとびっきりの笑顔で、元気いっぱいな声で言いました。

「拾ったんだけど、家に着くまでに、どこかに落として来ちゃった~」

「なんだってぇーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!」

母も父も、目を見開いて驚きの表情を息子に向けました。

両親の表情を見て、笑いに包まれていた息子の顔は、頬がヒクヒクし、
こめかみの辺りから一筋の汗が落ちて行きました。

父親は、ドサッ、とその場に座り込んで、頭を下げてうなだれました。

母親は

「まったく、そろいもそろって、なんて間の抜けた親子なんだろうねぇ、
 あー、情けない情けない」

と、途方にくれ

「もう、あんたたちのために夕飯なんて作ってられない、
 今日は夕飯ぬきだよ!」

「えーーーーーー!!!!!」

息子と父親は抗議の声を上げましたが、

「うるさーーーーーーーーーい!!!!!!!」

と、母親に鬼の形相で一喝されてしまい、二人とも
しょぼんとしてしまいました。

そこへ、

「あの~、お取込み中のところすみませんが……」

と、誰かの声がしました。

母親は鬼の形相のまま振り返りました。

そこには、良く知った顔がありました。
向う隣の奥さんです。

母親は急に柔らかい表情になり

「あ~ら奥様、どうなさいました~」

と、猫なで声を上げました。

向う隣の奥さんは、恐る恐る
手に持った小さな袋を差し出しました。

「あのぉ、道端でこれを拾ったのですが、
 奥さんがこれと同じ物を持っていたと記憶していたので、
 もしかしてと思いまして……」

差し出された小袋を見て、
母親は一瞬で自分のものだと分かりました。

父親も息子もすぐに分かりました。

それが母親の財布だということを。

母親は何食わぬ顔で

「あ~ら嫌だわ、あたしったら、そそっかしくて、
 届けて下さってありがとうございますね~」

と、小袋を受け取り、深々と頭を下げました。

向う隣の奥さんは、小袋を渡すと、
そそくさと去って行きました。

玄関に向かって頭を下げている母に、
父と息子は厳しい表情を向けました。

ふり返った母親は、二人の顔を見てから、

「良かったじゃない、こうやって戻って来たんですから」

と、言いました。

そんなことを言われたところで、
散々罵倒された父と息子が許すはずがありません。

抗議の表情を続けていると、根負けした母親は、

「分かりました、分かりましたよ、
 そんなに睨まないでおくれよ。悪かったよ、言いすぎたよ~」

と言ったあと、小袋と軽く持ち上げて、

「お詫びに、これで何か食べに行こうかっ」

「やったー!!!」

父親と息子は両手を上げて喜び、

「ボクうどんがイイ」

「オレはそばだな」

と、楽しげに話し出しました。

「あんまり、高い物はダメよ、
 そもそもあんたは小判を落としてんだから」

「それは言いっこなしよ、お互いに」

と皆で笑いながら、火の元、戸締りを確認して、
親子三人仲良く食事に出かけました。


おしまい。



今回のもとのお話はコチラ

福娘童話集『 バカ息子 』
http://hukumusume.com/douwa/pc/kobanashi/09/05.htm



━━━ お話はここまで ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



☆ちょこっとHappy♪☆


人は自分に甘く、他人には厳しいという傾向があるそうです。

自分の失敗などには、いろいろな理由づけや言い訳をして、
なんとか「しょうがない」という方向に持っていこうとします。

でも、他人の失敗に対しては、
必要以上に厳しく責めてしまったりするんですよね。

今回のお話のお母さんなんて、旦那さんと息子さんには
鬼の形相を向けていたのに、自分は笑ってごまかそうと
してましたもんね。

本来なら、自分の失敗に対して理由や言い訳があって
「しょうがない」で済ますことができるのなら、同じ理由で、
他人の失敗も「しょうがない」と済ませられるハズです。

でも、これがなかなかできないのが、人なんでしょうね。

「失敗とはそのやり方は正しくないという発見だ」

そんな感じの言葉を言ってるのが発明王エジソンです。

他人の失敗を咎めるよりも、起きてしまったことは
「しょうがない」として、対応策を考えたりして、
プラスに転じることに力を入れる方が、よっぽど建設的です。

今回のお話のお母さんのように、自分の否はすぐに認めて、
みんなで美味しい物を食べに行った方が楽しいですしね。

逆に、自分の失敗で人に迷惑をかけてしまったときなどは
「しょうがない」と言い訳を考える前に、対応策を考えた方がイイ。

上司に報告するのなら

「その失敗により、こういうことが起きる(起きた)から、
 こうしたいと思います」

と言えるぐらい考えてから行動できれば、レベルアップチャンスです!

まっ、理想ですけどね(^^;


今日のHappyポイント♪

『 失敗は成功のマザー by 長嶋茂雄 』
(↑彼が言ったと言われてますが、定かではありませんm(_ _)m)


ご意見ご感想、お待ちしています(^0^)/


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