※童話の更新は週1回(だいたい土曜日の夜)です(^0^)/

≫≫≫ ☆ もくじ ☆ ≪≪≪

2017年8月5日土曜日

井戸に落ちたキツネ

とても暑い日、キツネはうだうだと歩いていました。

ふと、井戸が目に入りました。

ちょうど喉が渇いていたので水を飲もうと井戸に近づきました。

そして井戸を覗きこもうとしたとき、うっかり足を滑らせてしまい、
井戸の中に落ちてしましました。

“バシャーン!!”

派手に水しぶきを上げたキツネは大慌て、
水の中で足をバタつかせました。

足をバタバタさせると、井戸は案外浅く、
すぐに立ち上がることができました。

「フーッ、ビックリした~」

とりあえず落ち着いたのはいいのですが、周りを見ると石の壁。

見上げると、井戸の丸い縁があり、
そこから、うだるような真っ青な空が見えました。

井戸の入口は、飛び上れば届くか届かないかくらいの高さでした。

試しに、何度か飛び上ってみましたが、
あとちょっとのところで前足が届きませんでした。

全身に水を浴びて、少し涼しくなったのはいいのですが、
井戸から出れないのは困りました。

「どうしよ……」

キツネは水を一口飲み、途方にくれました。

しばらくすると、キツネの上の方から声が聞こえてきました。

「キツネさん、井戸の水は美味しいですか?」

キツネが見上げると、シカが覗きこんでいました。

シカの顔を見たとたん、キツネはいいアイディアを思いつきました。

そして、

「冷たくてとても美味しいよ、シカさんも降りて飲むといいよ」

キツネにそう言われ、シカは井戸の中に飛び込んできました。

“バシャーン”

「冷たーい! 気持ちいい!」

シカは喜んで、水を一口飲みました。

「美味しい!」

と、笑顔でキツネの顔を見てから、ゴクゴクを水を飲み、

「教えてくれてありがとう」

と言いました。

そしてバシャバシャと、しばらく水の冷たさを楽しんだシカは
キツネに尋ねました。

「ところでキツネさん、ここからどうやって出ましょうか?」

その声を聞いて、キツネの目は“キラーン”と怪しく光りました。

「そんなのは簡単だよ。キミが前足を高く上げ井戸の壁にかけて、
 梯子のようにしてくれれば、ボクが井戸の外に出れるから、
 そしたらキミを引っ張り上げるよ」

「こうぉ?」

早速、シカは言われた通りに壁に前足をかけました。

「うまい、うまい」

と、キツネは言いながら、シカの背中をスルスルっと通り、
井戸の外に出ました。

「フーっ、やっと出れた」

キツネはひと息つきました。

「キツネさーん、引っ張り上げてくださーい」

井戸の中から、シカの声がします。

キツネは井戸の中を、今度は落ちないように
慎重に覗きこみながら言いました。

「ボク一人で、キミを引っ張り上げるなんて無理だよ」

「えーっ、じゃぁ、私はどうやってここから出ればいいんですか!」

「そんなのは知らないよ、飛び込む前に考えなかったキミが悪い」

「そんなーっ」

シカはシュンとなりました。

「ま、そんな訳だから、じゃぁね」

と、キツネは捨て台詞を吐いてその場を立ち去りました。

(やれやれ大変な目に合った)

と、井戸から離れて、しばらく歩いたキツネでしたが、
この暑さで井戸に閉じ込められているのは
さすがに可哀想だと思いました。

シカが来る前まで自分が味わっていたのですから辛さが分かります。

(仕方ない)

キツネは人間に助けを求めようと街に向かいました。

街に入り、近くの人間に声をかけました。

すると、

「あ、キツネめ、しっ、しっ、こっちくんな」

と、追い払われてしまいました。

違う人に声をかけると、

「コラッ、キツネ! 今度いたずらしたら、こいつで殴るよ!」

と、ホウキを高く上げられました。

キツネは普段から悪さばかりしているので、
人間たちにとても嫌われていました。

「ぶたないで!!」

と、キツネは叫んでから、

「ボクはただ、井戸に落ちてる者がいるから知らせにきたんだ!」

「またウソついて! 誰が井戸に落ちてるっていうんだい!!」

「シカさんだよ!!!!!」

キツネは叫びました。

「なんだって! シカだって!!!」

人間が驚きました。

すると「シカがどうした」と、言いながら、
あちこちから人間が集まって来ました。

「シカが井戸に落ちてるって、キツネが言うんだよ」

「何? キツネが? まぁいい、
 ウソでもそれは行って確かめてみないと」

「そうだそうだ、どうせキツネのウソだとしても、
 万が一、本当だったらシカが心配だ」

と、人間たちは口々に言いながら、井戸に向かいました。

キツネは、とっても複雑な思いになりながら、
人間たちについて行きました。

人間たちは井戸に着くと、協力しあってすぐさまシカを助けました。

キツネはそれを遠くから眺めていました。

助け出されたシカは、キョロキョロと辺りを眺めると、
遠くで見ているキツネに気づいたようで、走り寄ってきました。

キツネは怒られると思って身をかがめました。

「キツネさん!」

「はっ、ハイ」

「ありがとうございます!」

「ハヒィ~?」

怒られると思っていたキツネは驚いて、変な声を出してしまいました。

シカは続けます、

「キツネさんが人間たちに知らせてくれたんですね。
 おかげで、助かりました!!」

シカは何度も何度もキツネに感謝の言葉をかけました。

「いや、あ、あ、ど、ども~……」

何度も感謝されたキツネは、恥ずかしいやら、
シカを騙して後ろめたいやら、愛想笑いを浮かべ、
ただただ時が過ぎ去るのを待っていました。

「ハヒィ」


おしまい。



今回のもとのお話はコチラ

福娘童話集『 キツネとヤギ 』
http://hukumusume.com/douwa/pc/aesop/08/25.htm



━━━ お話はここまで ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



☆ちょこっとHappy♪☆


もとお話の教訓は

「何かをする前には、まず後の事を考えないといけない」

です。

確かに、何も考えずに飛び込んだシカは注意が足りませんでした。
でも、キツネのことを全く疑わず行動するシカは、
なんとなく魅力的な印象を受けてしまいます。

物語の後半は、キツネのことは嫌っている人間が、
シカのことになると皆が心配して助けに行きます。

キツネの話は信用しないのに、シカは心配だ、
と思わせてしまうほど、シカは人から好かれていたのでしょう。

世知辛い世の中、ついつい人を疑ってしまいますが、
シカのように時には『素直になる』ということも
大切なのかもしれませんね。


今日のHappyポイント♪

『無邪気は人を和ませる』


あなたの意見をお聞かせくださ~い(^-^)


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