※童話の更新は週1回(だいたい土曜日の夜)です(^0^)/

≫≫≫ ☆ もくじ ☆ ≪≪≪

2017年7月29日土曜日

天文学者と地質学者

昔々とある村に、天文学者と地質学者が住んでいました。

天文学者は日が落ちたあと、漆黒の闇の中でキラキラと
光を放つ星空を見ながら生活していました。

地質学者は日が昇ったあと、お日様の光に照らされた
地面を見ながら生活していました。

「おや、地質学者さん」

「あ、あなたは天文学者さん」

昼と夜が交差する、たそがれ時。

空も地面もオレンジ色に包まれた昼でも夜でもない時間に、
普段は殆ど顔を合わさない二人は水飲み場で出合いました。

「これから、観測ですか?」

地質学者が天文学者に聞きました。

「えぇ、これからです」

と答えてから天文学者は

「今日も暑かったですか?」

「えぇ、とても暑かったです」

地質学者は首にまいた布で頬のあたりを拭いてから

「もう、喉がカラカラで」

と、湧水が流れているところに水筒をあてて水を注ぎ、
それを口に運びゴクゴクを飲みました。

天文学者も腰から水筒を取り、水を注ぎました。

そして水筒の蓋をしめながら言いました。

「ところで地質学者さん、あなたはいつも地面ばかり見ていて、
 退屈では無いのですか?」

不意におかしなことを聞かれた地質学者は、

「はて、退屈だと思ったことはありませんよ」

と答えました。

「そうなんですか、いやぁ~、実にもったいない」

と、天文学者は両手を広げて、暗くなり始めた空を見ながら言いました。

「上を見ればこんなに素晴らしい景色があるというのに、
 下ばかり見ているのなんて、実に、もったいない」

地質学者も顔を上に向け、空を眺めました。

うす暗くなった空に、点々と星が瞬いていて、とてもキレイでした。

「確かに、キレイですね」

と、感動する地質学者に、

「そうでしょう、キレイでしょう!
 こんな景色を見ないで地面ばかり見ている生活なんて、
 あなた、人生、半分くらい損していますよ」

と、天文学者は言ってから

「あ、ちょっと言いすぎましたね。では失礼」

と、そそくさと去って行きました。

地質学者は天文学者を見送りながら、もう一度、空を眺めました。

「確かに、キレイだなぁ……、
 たまには星空を眺めるのもいいかも知れないな~」

と、近くにあったベンチに座り、しばらく星空を眺めていました。


そして何日かが過ぎたある日のこと。

ギラギラした太陽に照らされ、うだるような暑さの中、
地質学者は地面を見ながら歩いていました。

連日の日照り続きでで、水が少なくなり、
あちこちで井戸が枯れてしまう被害も出ていました。

「この辺も、だいぶ干からびてるなぁ」

地面は渇き、時折風が吹くと、
白い砂が舞い上がり風に乗って去っていきました。

「おや?」

人影もない渇いた大地で地質学者の目に何かとまりました。

「あれは井戸かな?」

と、首をかしげてから思い出したようにつぶやきました。

「街の中に湧水が出るようになってから使わなくなった井戸だ」

使われなくなったとは言え、今は貴重な存在です。
地質学者は井戸の中に水があるか、確かめるために近づきました。

井戸の側でしゃがみ、中を覗き込むと、

「おや?」

井戸の中には奇跡的に水がありました。

しかし、驚いたことに、井戸の中には水以外のものも入っていました。

「もし、そこにいるのは誰ですか?」

地質学者の問いかけに、井戸の中にいる人はすぐに上を向きました。

「あ、地質学者さん」

と、井戸の中から声がしました。

「そういうあなたは、天文学者さん!」

井戸の中にいたのは天文学者さんでした。

「どうして、そんなところにいるんです? 井戸の点検ですか?」

「いえいえ、そんな訳ないじゃないですか地質学者さんも人が悪い」

と、天文学者は苦笑いをしながら、

「昨晩に、夜空を眺めて歩いていたら、急に地面が無くなり、
 気付いたらこうなってしまったんですよ」

「あ、そうだったんですか」

「あの、地質学者さん、良かったらお話はあとにして、
 助けてはいただけないでしょうか?」

確かに、井戸の中にいるのも苦痛だろうと思い、
地質学者は近くにあった紐を井戸の中へ投げ入れ
天文学者を助けてあげました。

「いぁ、助かりました」

天文学者が言うと、地質学者は答えました。

「いいえ、助かったのは井戸に水があったおかげですよ。
 水がクッションになって落ちた衝撃を和らげ、
 喉の渇きも潤してくれたおかげです。
 ラッキーでしたね天文学者さん」

そう言われた天文学者は、

「ハイ、ラッキーでした! 水があったこともそうですが、
 それだけじゃない、地質学者さん、あなたのおかげです」

と、言ってから続けました。

「落ちたあとからずっと助けを求める声を上げていたのです。
 でも、誰も気づいてくれませんでした。
 日が昇り明るくなってからも叫んだのですが、誰も来てくれず、
 井戸から見えるのは青い空だけ、もうだめかと思っていました」

天文学者は両手を広げ

「そんな絶望的になっていた時に、あなたの声が聞こえ、
 見上げたら、日の光を浴びて逆光でしたがあなたの顔が
 うっすらと見えました、逆光が後光のように見え
 それはそれは眩い光景でした」

「はぁ~、いあ~」

と、褒められて地質学者は背中がむず痒く感じました。

天文学者は改めて言いました。

「私は、上ばかり見ていましたが、
 これからは地面も良く見ながら歩くことにします。
 井戸の中から空を見上げるのはもうこりごりですからね」

それを聞いて地質学者は

「そうですね、それはいいですね」

と言ってから

「私も、あなたに言われてから、
 毎日、夜空を眺めるようになりましたよ」

と続けました。

そして、二人はお互いの顔を見てぎこちなく笑ってから、
再開を約束してから、それぞれの道を歩き出しました。



おしまい。



今回のもとのお話はコチラ

福娘童話集『 天文学者 』
http://hukumusume.com/douwa/pc/aesop/06/16.htm



━━━ お話はここまで ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



☆ちょこっとHappy♪☆


あなたは、何を見て生活していますか?

「上を向いて歩きましょう!」

と、偉人たちの多くはそう言います。

上を向くと空が広がり、その広さに自分がちっぽけな存在に思え、
悩みもスッと消えていく感覚を味わうこともあるでしょう。

しかし、上ばかり見ていて足元を確認ないと、
この物語の天文学者のように井戸に落ちてしまうかも知れません。

一方だけではなく、その時々の周りの状況を良く見ながら
生活するのが理想のような気がします。

また、この物語の地質学者は天文学者に言われて
夜空の素晴らしさを知ることができました。

いろんな視点で物事を捕えると、世の中の見え方が変わります。

視点を変えずに生活するということは、
違う世界を見ることができないということ。

つまり、素晴らしいことを見逃している可能性がある!

そんな、もったいなくて窮屈な生き方、あなたはしていませんか?


今日のHappyポイント♪
『普段は見ようとしないものを、あえて見てみる!』


あなたの意見をお聞かせくださ~い(^-^)


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