※童話の更新は週1回(だいたい土曜日の夜)です(^0^)/

≫≫≫ ☆ もくじ ☆ ≪≪≪

2017年7月26日水曜日

新人の女神さま

青くて広い空のどこか、一点の曇りもない真っ白な世界に、
神さまが住んでいました。

その中に、今年、神となった新人の女神さまがいました。

人間の道しるべになるべく、日々、清らかな心で暮らしていました。

しかし、女神になってから少し歳月が過ぎたころ、
とても悩でしまいました。

人間の願いを叶えようと、力を尽くしているのですが、
厳しい口調で文句を言って来る人間が大勢いたからです。

新人の自分には、人間の願いを全て叶える程の力はありません。

それでも人間は容赦なく

「女神なんだからなんとかしてくれ!!」

「助けてくれと頼んでいるのに、なぜ助けてくれない!!」

と怒りをぶつけてくることが多くありました。

人間の汚い言葉をたくさん聞きました。

心優しい新人の女神さまは、頼りない自分、
そして女神でいることに疲れ、次第に悩むようになりました。

───そんなある日、

女神が上空から下界を眺めていると、
1人の青年がフラフラと道を歩いていました。

青年は旅人のようでした。

(疲れているのかしら)

女神はそう思い、青年の姿を追いました。

青年は深い井戸の前で足を止めました。

長い紐の付いた桶を井戸に入れ、水を汲み上げると、
桶にそのまま口をつけ、ゴクゴクとおいしそうに飲みました。

口を拭き桶を置くと井戸の縁に、ドカッ、と腰を下しました。

よっぽど疲れていたのでしょう、青年はそのまま井戸の縁に寄りかかり、
眠ってしまいました。

一部始終を見ていた女神さまは、

(あのままでは、井戸に落ちてしまう!)

と、慌てて青年のところまで降りて行きました。

そして、青年の肩を揺すりながら言いました。

「もし、旅人さん、こんなところで寝てしまっては、
 井戸に落ちてしまいますよ」

寝入ったばかりだった青年は、ビックリしてすぐに起きました。

驚いて起きた拍子に、ズズズ、っとスベって、
頭の方から上半身が井戸の中に入ってしまいました。

女神は慌てて青年の衣服を掴み、力を込めて引っ張り上げました。

助けあげられた青年は、目を丸くしていました。

「め、女神さま?」

目覚めた瞬間に深い井戸の中に落ちそうになり、
引っ張り上げられたと思うと、今度は目の前に、
真っ白なまばゆい光を放つローブに包まれた女神がいたのです。

そりゃぁ、驚いて目も丸くなるでしょう。

青年は目を丸くしたまま、

「女神さまが、私を助けて下さったのですか!」

と言いました。

女神は静かに頷きました。

そして、「本当はいけないことなのですけどね!」

と、毅然とした口調で言ってから、一息ついて、
極力感情を抑えて諭すように続けました。

「一言、言いたくて。あなたたち人間は、いつもそうやって、
 自分の不注意で災いを招いているのに、
 いざ井戸に落ちたりすると『ツイてない』だの
 『落ちるような井戸を作った奴が悪い』だのと散々言った挙句、
 最後は『何で助けてくれなかったのか!』と私たちのせいにする。
 そんな人間の身勝手さに、私は、ほとほと困っているのです」

女神が普段抱えている鬱憤を吐き出すようにまくしたてていると、
青年は女神の話が終わるか終わらないかのうちに女神の手を取り、

「ありがとうございました!」

と、ぎゅっと握りしめて、

「こんなところで死んでしまう訳にはいかないので、
 本当に助かりました!」

と言いました。

突然のことで女神は驚きました。

青年は続けて言いました。

「私は遠くの街で仕事をしていました。そこで風の便りで、
 妻に子どもが生まれたことを知ったのです」

「はぁ」

呆気にとられ、生返事をする女神を気にも留めず青年は続けました。

「早く会いたくて、三日三晩、ひたすら歩き続けてここまで来ました。
 妻と子が待つ街までは後ちょっとです。
 ここまで来て井戸に落ちて死ぬなんて、死ぬに死に切れません」

「はぁ」

「本当に、本当に、ありがとうございました!」

と、青年は何度も何度も頭を下げました。

やがて、青年は落ち着くと、立ち上がり
大切な家族が待つ街に向かって去って行きました。

青年を見送った女神は、不思議な感覚に包まれていました。

こんなに真っすぐな気持で感謝されたのは
初めての経験だったからです。

女神は、何度も何度も頭を下げていた青年を姿を思い出しました。

「クスッ」

と、微笑を浮かべ、青年が向かっていった方角へ
一度目を向けてから、上空へ戻って行きました。

自分が女神だということを、少しだけ誇りに思いながら。



おしまい。



今回のもとのお話はコチラ

福娘童話集『旅人と運命の女神』
http://hukumusume.com/douwa/pc/aesop/05/14.htm



━━━ お話はここまで ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



☆ちょこっとHappy♪☆


自分がしている仕事が、誰かの役に立っているのか?

そんなことで悩んでいる人は大勢いるのではないでしょうか?

この物語の女神さまも、人間と同じように悩んでいました。
(実際、悩んでいるようなかたが神さまになれるのかはオイトイテ)

でも、女神さまは青年を助けたことで不思議な感覚に包まれました。
感謝され嬉しいという気持ちがあったことでしょう。

それと同時に、自分の役割が実感でき、
悩みが少しだけ解消した感覚もあったのだと思います。

仕事は大変で辛いことも多いです。

でも、あなたのおかげで誰かが助かっています。

上司や先輩や後輩や取引先、家族も。

あなたは必ず誰かのためになっています。

少しでも「あ、今、役に立てた! 貢献できた!」と思ったら、
その気持ちを大切に貯金してください。

何気なく「ありがとう!」「サンキュー!」などと
言われたことありませんか?

それが、役に立ててる、貢献できてる、サインです。

ちょっとでも言われたら、せっせと貯金しちゃいましょう!

ちょっとずつ、貯金が貯まるにつれ、
誰かの役に立っていると実感でき、
悩みは次第になくなっていくことでしょう。


今日のHappy♪ポイント

『あなたがいることで、助かっている人が必ずいます』


あなたの意見をお聞かせくださ~い(^-^)


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