≫≫≫ ☆ もくじ ☆ ≪≪≪
「もくじ」がちょっと新しくなったよ

2017年7月29日土曜日

天文学者と地質学者

昔々とある村に、天文学者と地質学者が住んでいました。

天文学者は日が落ちたあと、漆黒の闇の中でキラキラと
光を放つ星空を見ながら生活していました。

地質学者は日が昇ったあと、お日様の光に照らされた
地面を見ながら生活していました。

「おや、地質学者さん」

「あ、あなたは天文学者さん」

昼と夜が交差する、たそがれ時。

空も地面もオレンジ色に包まれた昼でも夜でもない時間に、
普段は殆ど顔を合わさない二人は水飲み場で出合いました。

「これから、観測ですか?」

地質学者が天文学者に聞きました。

「えぇ、これからです」

と答えてから天文学者は

「今日も暑かったですか?」

「えぇ、とても暑かったです」

地質学者は首にまいた布で頬のあたりを拭いてから

「もう、喉がカラカラで」

と、湧水が流れているところに水筒をあてて水を注ぎ、
それを口に運びゴクゴクを飲みました。

天文学者も腰から水筒を取り、水を注ぎました。

そして水筒の蓋をしめながら言いました。

「ところで地質学者さん、あなたはいつも地面ばかり見ていて、
 退屈では無いのですか?」

不意におかしなことを聞かれた地質学者は、

「はて、退屈だと思ったことはありませんよ」

と答えました。

「そうなんですか、いやぁ~、実にもったいない」

と、天文学者は両手を広げて、暗くなり始めた空を見ながら言いました。

「上を見ればこんなに素晴らしい景色があるというのに、
 下ばかり見ているのなんて、実に、もったいない」

地質学者も顔を上に向け、空を眺めました。

うす暗くなった空に、点々と星が瞬いていて、とてもキレイでした。

「確かに、キレイですね」

と、感動する地質学者に、

「そうでしょう、キレイでしょう!
 こんな景色を見ないで地面ばかり見ている生活なんて、
 あなた、人生、半分くらい損していますよ」

と、天文学者は言ってから

「あ、ちょっと言いすぎましたね。では失礼」

と、そそくさと去って行きました。

地質学者は天文学者を見送りながら、もう一度、空を眺めました。

「確かに、キレイだなぁ……、
 たまには星空を眺めるのもいいかも知れないな~」

と、近くにあったベンチに座り、しばらく星空を眺めていました。


そして何日かが過ぎたある日のこと。

ギラギラした太陽に照らされ、うだるような暑さの中、
地質学者は地面を見ながら歩いていました。

連日の日照り続きでで、水が少なくなり、
あちこちで井戸が枯れてしまう被害も出ていました。

「この辺も、だいぶ干からびてるなぁ」

地面は渇き、時折風が吹くと、
白い砂が舞い上がり風に乗って去っていきました。

「おや?」

人影もない渇いた大地で地質学者の目に何かとまりました。

「あれは井戸かな?」

と、首をかしげてから思い出したようにつぶやきました。

「街の中に湧水が出るようになってから使わなくなった井戸だ」

使われなくなったとは言え、今は貴重な存在です。
地質学者は井戸の中に水があるか、確かめるために近づきました。

井戸の側でしゃがみ、中を覗き込むと、

「おや?」

井戸の中には奇跡的に水がありました。

しかし、驚いたことに、井戸の中には水以外のものも入っていました。

「もし、そこにいるのは誰ですか?」

地質学者の問いかけに、井戸の中にいる人はすぐに上を向きました。

「あ、地質学者さん」

と、井戸の中から声がしました。

「そういうあなたは、天文学者さん!」

井戸の中にいたのは天文学者さんでした。

「どうして、そんなところにいるんです? 井戸の点検ですか?」

「いえいえ、そんな訳ないじゃないですか地質学者さんも人が悪い」

と、天文学者は苦笑いをしながら、

「昨晩に、夜空を眺めて歩いていたら、急に地面が無くなり、
 気付いたらこうなってしまったんですよ」

「あ、そうだったんですか」

「あの、地質学者さん、良かったらお話はあとにして、
 助けてはいただけないでしょうか?」

確かに、井戸の中にいるのも苦痛だろうと思い、
地質学者は近くにあった紐を井戸の中へ投げ入れ
天文学者を助けてあげました。

「いぁ、助かりました」

天文学者が言うと、地質学者は答えました。

「いいえ、助かったのは井戸に水があったおかげですよ。
 水がクッションになって落ちた衝撃を和らげ、
 喉の渇きも潤してくれたおかげです。
 ラッキーでしたね天文学者さん」

そう言われた天文学者は、

「ハイ、ラッキーでした! 水があったこともそうですが、
 それだけじゃない、地質学者さん、あなたのおかげです」

と、言ってから続けました。

「落ちたあとからずっと助けを求める声を上げていたのです。
 でも、誰も気づいてくれませんでした。
 日が昇り明るくなってからも叫んだのですが、誰も来てくれず、
 井戸から見えるのは青い空だけ、もうだめかと思っていました」

天文学者は両手を広げ

「そんな絶望的になっていた時に、あなたの声が聞こえ、
 見上げたら、日の光を浴びて逆光でしたがあなたの顔が
 うっすらと見えました、逆光が後光のように見え
 それはそれは眩い光景でした」

「はぁ~、いあ~」

と、褒められて地質学者は背中がむず痒く感じました。

天文学者は改めて言いました。

「私は、上ばかり見ていましたが、
 これからは地面も良く見ながら歩くことにします。
 井戸の中から空を見上げるのはもうこりごりですからね」

それを聞いて地質学者は

「そうですね、それはいいですね」

と言ってから

「私も、あなたに言われてから、
 毎日、夜空を眺めるようになりましたよ」

と続けました。

そして、二人はお互いの顔を見てぎこちなく笑ってから、
再開を約束してから、それぞれの道を歩き出しました。



おしまい。



今回のもとのお話はコチラ

福娘童話集『 天文学者 』
http://hukumusume.com/douwa/pc/aesop/06/16.htm



━━━ お話はここまで ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



☆ちょこっとHappy♪☆


あなたは、何を見て生活していますか?

「上を向いて歩きましょう!」

と、偉人たちの多くはそう言います。

上を向くと空が広がり、その広さに自分がちっぽけな存在に思え、
悩みもスッと消えていく感覚を味わうこともあるでしょう。

しかし、上ばかり見ていて足元を確認ないと、
この物語の天文学者のように井戸に落ちてしまうかも知れません。

一方だけではなく、その時々の周りの状況を良く見ながら
生活するのが理想のような気がします。

また、この物語の地質学者は天文学者に言われて
夜空の素晴らしさを知ることができました。

いろんな視点で物事を捕えると、世の中の見え方が変わります。

視点を変えずに生活するということは、
違う世界を見ることができないということ。

つまり、素晴らしいことを見逃している可能性がある!

そんな、もったいなくて窮屈な生き方、あなたはしていませんか?


今日のHappyポイント♪
『普段は見ようとしないものを、あえて見てみる!』


あなたの意見をお聞かせくださ~い(^-^)


2017年7月26日水曜日

新人の女神さま

青くて広い空のどこか、一点の曇りもない真っ白な世界に、
神さまが住んでいました。

その中に、今年、神となった新人の女神さまがいました。

人間の道しるべになるべく、日々、清らかな心で暮らしていました。

しかし、女神になってから少し歳月が過ぎたころ、
とても悩でしまいました。

人間の願いを叶えようと、力を尽くしているのですが、
厳しい口調で文句を言って来る人間が大勢いたからです。

新人の自分には、人間の願いを全て叶える程の力はありません。

それでも人間は容赦なく

「女神なんだからなんとかしてくれ!!」

「助けてくれと頼んでいるのに、なぜ助けてくれない!!」

と怒りをぶつけてくることが多くありました。

人間の汚い言葉をたくさん聞きました。

心優しい新人の女神さまは、頼りない自分、
そして女神でいることに疲れ、次第に悩むようになりました。

───そんなある日、

女神が上空から下界を眺めていると、
1人の青年がフラフラと道を歩いていました。

青年は旅人のようでした。

(疲れているのかしら)

女神はそう思い、青年の姿を追いました。

青年は深い井戸の前で足を止めました。

長い紐の付いた桶を井戸に入れ、水を汲み上げると、
桶にそのまま口をつけ、ゴクゴクとおいしそうに飲みました。

口を拭き桶を置くと井戸の縁に、ドカッ、と腰を下しました。

よっぽど疲れていたのでしょう、青年はそのまま井戸の縁に寄りかかり、
眠ってしまいました。

一部始終を見ていた女神さまは、

(あのままでは、井戸に落ちてしまう!)

と、慌てて青年のところまで降りて行きました。

そして、青年の肩を揺すりながら言いました。

「もし、旅人さん、こんなところで寝てしまっては、
 井戸に落ちてしまいますよ」

寝入ったばかりだった青年は、ビックリしてすぐに起きました。

驚いて起きた拍子に、ズズズ、っとスベって、
頭の方から上半身が井戸の中に入ってしまいました。

女神は慌てて青年の衣服を掴み、力を込めて引っ張り上げました。

助けあげられた青年は、目を丸くしていました。

「め、女神さま?」

目覚めた瞬間に深い井戸の中に落ちそうになり、
引っ張り上げられたと思うと、今度は目の前に、
真っ白なまばゆい光を放つローブに包まれた女神がいたのです。

そりゃぁ、驚いて目も丸くなるでしょう。

青年は目を丸くしたまま、

「女神さまが、私を助けて下さったのですか!」

と言いました。

女神は静かに頷きました。

そして、「本当はいけないことなのですけどね!」

と、毅然とした口調で言ってから、一息ついて、
極力感情を抑えて諭すように続けました。

「一言、言いたくて。あなたたち人間は、いつもそうやって、
 自分の不注意で災いを招いているのに、
 いざ井戸に落ちたりすると『ツイてない』だの
 『落ちるような井戸を作った奴が悪い』だのと散々言った挙句、
 最後は『何で助けてくれなかったのか!』と私たちのせいにする。
 そんな人間の身勝手さに、私は、ほとほと困っているのです」

女神が普段抱えている鬱憤を吐き出すようにまくしたてていると、
青年は女神の話が終わるか終わらないかのうちに女神の手を取り、

「ありがとうございました!」

と、ぎゅっと握りしめて、

「こんなところで死んでしまう訳にはいかないので、
 本当に助かりました!」

と言いました。

突然のことで女神は驚きました。

青年は続けて言いました。

「私は遠くの街で仕事をしていました。そこで風の便りで、
 妻に子どもが生まれたことを知ったのです」

「はぁ」

呆気にとられ、生返事をする女神を気にも留めず青年は続けました。

「早く会いたくて、三日三晩、ひたすら歩き続けてここまで来ました。
 妻と子が待つ街までは後ちょっとです。
 ここまで来て井戸に落ちて死ぬなんて、死ぬに死に切れません」

「はぁ」

「本当に、本当に、ありがとうございました!」

と、青年は何度も何度も頭を下げました。

やがて、青年は落ち着くと、立ち上がり
大切な家族が待つ街に向かって去って行きました。

青年を見送った女神は、不思議な感覚に包まれていました。

こんなに真っすぐな気持で感謝されたのは
初めての経験だったからです。

女神は、何度も何度も頭を下げていた青年を姿を思い出しました。

「クスッ」

と、微笑を浮かべ、青年が向かっていった方角へ
一度目を向けてから、上空へ戻って行きました。

自分が女神だということを、少しだけ誇りに思いながら。



おしまい。



今回のもとのお話はコチラ

福娘童話集『旅人と運命の女神』
http://hukumusume.com/douwa/pc/aesop/05/14.htm



━━━ お話はここまで ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



☆ちょこっとHappy♪☆


自分がしている仕事が、誰かの役に立っているのか?

そんなことで悩んでいる人は大勢いるのではないでしょうか?

この物語の女神さまも、人間と同じように悩んでいました。
(実際、悩んでいるようなかたが神さまになれるのかはオイトイテ)

でも、女神さまは青年を助けたことで不思議な感覚に包まれました。
感謝され嬉しいという気持ちがあったことでしょう。

それと同時に、自分の役割が実感でき、
悩みが少しだけ解消した感覚もあったのだと思います。

仕事は大変で辛いことも多いです。

でも、あなたのおかげで誰かが助かっています。

上司や先輩や後輩や取引先、家族も。

あなたは必ず誰かのためになっています。

少しでも「あ、今、役に立てた! 貢献できた!」と思ったら、
その気持ちを大切に貯金してください。

何気なく「ありがとう!」「サンキュー!」などと
言われたことありませんか?

それが、役に立ててる、貢献できてる、サインです。

ちょっとでも言われたら、せっせと貯金しちゃいましょう!

ちょっとずつ、貯金が貯まるにつれ、
誰かの役に立っていると実感でき、
悩みは次第になくなっていくことでしょう。


今日のHappy♪ポイント

『あなたがいることで、助かっている人が必ずいます』


あなたの意見をお聞かせくださ~い(^-^)


2017年7月22日土曜日

カメがウサギに勝つ方法

「だから止めときなって言ったのにぃ」

山の頂上でウサギはカメに言いました。

「足の速いボクに、お世辞にも速いとは言えない君の足で、
 競争して勝てる訳がないじゃないか」

のそのそと歩いてるカメの横で、歩調を合わせるように、
ウサギが歩きながら話しかけてきました。

カメは勝ち誇った顔をしているウサギをチラっと見て、

「ウサギさん、競争はまだ終わっていませんよ」

と、足を止めずに続けました、

「約束しましたよね、往復して速く着いた方の勝ち、って」

山のふもとからスタートして山を登り、
頂上にある木を回ってスタート地点に戻る、
という競争を二人はしていたのでした。

「あぁ、そうだねぇ、確かに競争は終わってない」

ウサギはあきれた表情を受けべて続けました。

「でもねカメくん、ボクは折り返し地点の頂上で、
 キミがくるまで一時間も待ってたんだよ、
 途中で昼寝しても、まだ来ないんだもの退屈しちゃったよ」

ウサギは肩を大げさにすぼめました。

どう考えても勝負にならなそうな競争ですが、
そもそも、なんで、こんな競争が始まったのでしょう。


まず、ウサギがカメの足の遅さをバカにしたことが始まりでした。

怒ったカメに、だったら勝負しようと、ウサギが言いました。

カメは勝負を受けました。
ただし、ルールは自分が決めると言いました。

どうしたって勝つのは決まっている、と思ったウサギは
カメのルールに従い、競争が始まったのでした。

カメは無言で、のそのそと歩いて、木を回り折り返しました。

ウサギは、その頑固なカメの姿を見て、軽く息を吐きました。

「カメくん、キミって奴は素直じゃないねぇ……、
 まぁ、いいでしょう。先に行って、ふもとで待ってるよ」

と、ウサギは軽快な足取りで木を回り

「一時間後に、また会おう!」

と、カメを追い抜いていきました。

カメは、ウサギの後ろ姿を眺めながら、のそのそと歩きました。

やがて下り坂に差し掛かりました。

するとカメは、段々と小さくなって行くウサギの後ろ姿に向かって、
ニヤリ、と笑みを浮かべました。

(ボクはこの時を待っていたんですよウサギさん)

カメはウサギの後ろ姿から目線を外し、
進行方向に対して体を横向きにしました。

(あなたが頂上付近でわざわざ待っていて、
 ボクをバカにすることは分かっていました)

横を向いたカメ。

(すべては計画通り)

左が頂上側、右がふもと側、道は下り坂です。

(このルールを、あなたがのんだ時点で、ボクの勝ちなのです)

右側の足を二本、甲羅の中に静かにしまいました。

(カメに、頭で勝とうなんて、100万年早いですね)

頂上側にある左の足二本に力を入れました。

「せ~の、よっ」

体が、右の方、つまり、下り坂の低い方に傾き始めました。

そして、くるりと一回転。

「もう一回、せ~の、よっ」

足を使って一回転、
テンポよく足を使ってもう一回転、
リズムに乗ってもう一回転、

だんだんと下り坂で加速がついて、とうとう足を使わなくても
回転し続けるようになり、全部の足を甲羅の中にしまいました。

その頃、ウサギは全く力を出さずに、
のんきに歩いて平然と山を下っていました。

この速さでも勝利は約束されていました。

退屈で、眠くなりそうです。

───コロコロ

何やら後ろから音がします。

コロコロコロ

(石でも転がって来たのかな?)

と、ウサギが振り向こうとした瞬間、

コロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロ!!!

体の横を、物凄い勢いで何かが転がって行きました。

「───── へ?」

ウサギは呆気にとられました。
が、次の瞬間、転がって行ったのがカメだと気付きました。

「ちょっと、カメくん」

ウサギは慌てて全力で走りました。

コロコロコロコロコロコロ!

「ちょっと、ちょっと、ちょっと、ちょっと」

全力で走っても、カメとの距離は縮まりません。

コロコロコロコロコロコロコロコロコロコロ!

「ちょっと、ちょっと、ちょっと、カメくん」

ウサギは、力を振り絞って速く走りました。

コロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロ!

「ちょちょちょちょちょちょちょちょちょちょちょちょちょちょ!」

ウサギの足の速さも大したもので、
徐々に転がっているカメに近づいて行きました。

そうこうしているうちに、あっという間に、
ふもとのスタート地点が見えてきました。

ウサギは歯を食いしばって、出せる力を精一杯足に込め走りました。

あとちょっとで、転がっているカメに追いつきそうでした。

しかし、さすがに全力で走り続けるのには、限界がありました。

ついに、スタート地点の手前で失速してしまい、
カメに先を越されてしまいました。

コロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロ!

スタート地点に先に戻ったのはカメでした!

カメは、全力で走るウサギに勝つことができたのです!!

ウサギはスタート地点に倒れ込み、ゼーェ、ゼーェ、
と激しく息をしました。

そして、しばらくして、カメの姿を探しました。

しかし、ウサギが周りを見渡しても、カメの姿は見えませんでした。

「あれ~、カメくん?」

目を凝らして、よーく先の方を見ると、
まだまだ勢いよく転がっているカメの姿を見つけました。

「おーい、カメくーん、どこへ行くんだーい」

ウサギは、遠くの方で転がっているカメには聞こえないだろうと思い、
小さく呟きました。

「カメくん、あれじゃ海まで行っちゃうね」

転がっているカメの姿を眺めながら、

(誰か、止めてーーーーーーーーーーーーーーぇ!!!!!)

と叫んでいる、声が聞こえたような気がしました。

コロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロ!



おしまい。



今回のもとのお話はコチラ

福娘童話集(ウサギとカメ)
http://hukumusume.com/douwa/pc/aesop/01/07.htm



━━━ お話はここまで ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



☆ちょこっとHappy♪☆


銀座まるかんの創業者で、日本一税金を納めているツイてる人、
斎藤一人さんは自身の著書でこんなことを言っています。

“カメは水泳に持ち込むんだよ、
 そうすればカメが勝てるんだよ。
 カメは駆け足に持ち込まれた時点で負け。”

これを読んだとき、その通りだ、と思ったんですけど、
陸カメだったら、泳ぎでも負けそうだなぁ、と思って、
今回のようなお話を作ってみました。

カメは頭を使って自分の勝てる方法を考えました。
ウサギはまんまとはめられた訳です。

勝つためには、自分に有利になる方法を見つけるのがイイ。
これは、勝負に限りません。

例えば仕事。

自分の得意なことをやれば、大成功を収めるかもしれません。
苦手なことや辛いことを仕事にするより、その確率は断然上がります。

仕事だけじゃなく、人間関係でも、上手くいかないのは
もしかすると自分の得意分野で勝負していないのが原因かも
しれませんよ。


今日のHappyポイント♪

『あなたの得意なところで、勝負してみませんか?』



あなたの意見をお聞かせくださ~い(^-^)



2017年7月19日水曜日

ライオンと羊飼い

とある国に心優しい羊飼いがいました。

良く働き、親も大切にし、近所の人とも気さくに話す
とても気立てのいい青年でした。

そんな羊飼いを良く思わない嫉妬深い者により、全く身に覚えのない
罪を被せられ、罪人として捕まってしまいました。

そして裁判の結果、死刑の判決を受けました。

この国の死刑は、密室で、身動きがとれない状態でいるところに、
空腹のライオンを放つという野蛮なものでした。

羊飼いは無罪を訴えますが、裁判官は聞き入れてはくれません。

羊飼いの両親や友だち、何人もの知人も、

「彼はイイやつだからどうか助けてやってくれ!」 

と訴えますが、受け入れられず、刑は執行されることになりました。

処刑場で体を縛られた状態で羊飼いは、なおも無罪を訴えました。

しかし壁の向う側にいる裁判官は、全く聞き耳を持たず、
近くの役人に目配りをして、ライオンの入れてある檻の扉を
開けさせました。

両親や友人たちが見守る前で、

“ガッタン”

罪人の血で染まったような薄黒い色の扉が
不気味な音をたてて開きました。

少しの静寂の後で、檻の中からライオンが、
のっそ、のっそと出てきました。

ライオンはこの刑の為に、三日間、水だけしか与えられず、
狭い檻の中に閉じ込められていました。

機嫌が悪く、生気を失った目は、ただ獲物を逃さないとばかりに
鈍く光り、赤くて細い血管が白目を被っていました。

“ガルルルルル~”

羊飼いは、殺される! と思いギュッと目を閉じました。

“ガルルルルル~”

うなり声と共に、荒い息遣いも聞えてきます。

羊飼いは、死の恐怖におののきました。

鼓動も呼吸も早くなり、頭が恐怖で爆発しそうになりました。

そんな時、羊飼いの頭にふと、遠い記憶が現れました。

それは、とても懐かしい、何年も前の記憶です───。



羊飼いはその日、不思議な体験をしました。

「さぁ~て、今日の放牧も終わったし、一休みするか!」

一面が緑に覆われた牧場で、仕事の疲れを癒すように背伸びをすると、
良く晴れた青空に、ところどころに浮かぶ白い雲が、
のんびりと流れていくのが見えました。

“ワンワンワン”

羊飼いが飼っている牧羊犬が激しく吠えました。

羊を追い込むとき以外、大人しい犬が必死に吠えているので、
羊飼いは驚きました。

「どうした?」

羊飼いは犬に近づき、地面に膝をつき、頭を撫でてやりました。

「ん?」

犬が小刻みに震えているのが分かりました。

「どうした? 怖いのかい?」

犬は必死に羊飼いの後ろの方を見ていて、時折、羊飼いの顔を見ては
すぐに後ろを見るという落ち着きない動きをしていました。

それは何かを訴えているようでした。

羊飼いは不思議に思い、ふり返りました。

少し行ったところに白い柵があり、その向う側には緑の草原が
広がっています。

草原の奥の方に、何やら、動くものが目に入りました。

「なんだ、あれは?」

羊飼いは「大丈夫だ」と犬の頭を撫でてから柵の方へ
歩いて行きました。

遠くに見えた動くものは、大型の茶色い動物のようです。

「ライオンか?」

羊飼いの鼓動は少し早くなり、咄嗟に腰に差している
ナイフに手を当てました。

近くにライオンがいることは知っていましたが、
滅多なことが無い限り人間には近寄って来ません。

羊の放牧の時は安全と言われている方向に進み、
念のためにライフル銃も持って出かけていました。

しかし、一度もライオンに会ったことはありませんでした。

羊飼いにとってもライオンを見るのは初めての経験だったのです。

ライオンは草原を歩きながら羊飼いの方へやって来ます。

それは猛獣の雰囲気が全く感じられない、
ヨロヨロとした足取りでした。

何か変だなぁ、と、羊飼いは胸のざわめきを感じながら
見つめていました。

ライオンはヨロヨロと歩きながら柵の側まで来ました。

飼いは柵ごしにライオンの顔を見ました。

ライオンの目はとても澄んでいて、ときどき頭を下げ、
何か困っているような仕草をしていました。

“ワンワンワン”

ライオンを見た犬が吠えました。

羊飼いは犬の方を向き“シーッ”と、人差し指を立てて
大人しくさせてから柵を飛び越え、ライオンの近くに行きました。

少し、ドキドキしましたが、近づいて行っても
ライオンはとても大人しくしていました。

羊飼いは、そっと手を伸ばし、羊の体を調べるときのように
ライオンに触れました。

体をさわられてもライオンは大人しくしています。

羊飼いは足を調べてみました。

すると、前足に大きなトゲが刺さっているのを見つけました。

「これじゃ、痛くてヨロヨロとしか歩けないな」

と、羊飼いはライオンの足を自分の膝に乗せ、
腰に差していたナイフを手に取り、大きなトゲを取ってあげました。

「痛かったろう……、さっ、これでもう大丈夫だ」

羊飼いは優しくライオンの足を戻してやりました。

ライオンは前足を何度か足踏みしました。

そして羊飼いを見つめました。

その目はとても澄んでいて、感謝しているように
羊飼いは感じました。

ライオンはサッ、と向きを変えると、草原の方へ軽快に走り、
あっという間に姿が見えなくなりました───。



───羊飼いは、固く閉じていた目をゆっくりと開け、
目の前にいるライオンを見つめました。

“ガルルルルル~”

お腹を空かせて、目は血走り荒々しくうなり声を上げています。

(このライオンに食べられるのだな)羊飼いはと思いながらも、
なぜか落ち着いた気分でライオンを見つめていました。

遠い昔の不思議な経験を思い出したことで、
恐怖が極限まで小さくなっていました。

羊飼いは、静かな口調で、うなり声を上げているライオンに
語り掛けました。

「お腹が空いているのだろう……、さぁ、お食べ……」

語りかけたその声は、とても優しく透きとおった声でした。

ライオンの表情に少しの変化がありました。

うなり声は納まり、血走っていた目も段々穏やかに
なっていきます。

やがて、ライオンは落ち着いた足取りで、
ゆっくりと羊飼いに近づいてきました。

すぐ側まで来ると、澄んだ目で羊飼いを見つめました。

そしてライオンは、そっと、羊飼いの膝の上に前足を乗せました。

その時、羊飼いにも分かりました。

羊飼いは軽く両方の眉を上げ、

「やぁ、元気だったかい」

と、微笑みました。

“グルグル、グルグル”

ライオンは喉を鳴らしながら、羊飼いの足に
頭をスリスリとなすりつけました。

「おい、おい、くすぐったいよ」

身動きが取れない羊飼いは、苦しそうに笑いました。

ライオンは何度も何度も足に頭をスリスリとなすりつけたあと、
羊飼いに寄り添い、大人しく座り込んでしまいました。

予想外の展開に裁判官はあっけに取られました。

羊飼いの両親や友人が口々に、裁判官に言いました。

「ほら、猛獣だって、彼がイイやつなことは分かっている!」

「お願い、許してあげて!」

裁判官はその声を聴いて、静かに目を瞑りました。

そして少し間を置いてから、言いました。

「刑は執行された」

裁判官は役人に目配りをし、その場を去っていきました。

二人の役人が、寝そべっているライオンにビクビクしながら、
羊飼いに近づき、縛っている紐を解いてやりました。

羊飼いは自由になった両手で、ライオンを抱きしめて、

「元気で生きててくれてよかった」

と泣きながら言いました。

ライオンも、羊飼いの頬に、何度も何度も頭を
スリスリなすりつけました。

“グルグル~、グルグル~”

密室を出た羊飼いは、両親や友人に歓喜で迎えられました。

ライオンは名残惜しそうに羊飼いのそばにいましたが、
やがてきびすを返すと、草原の方へ軽快に走り出しました。

「ありがとう! 元気でな!」

と、羊飼いが声をかけると、ライオンは一度だけ振り向きましたが、、
すぐに走り出し、あっという間に姿が見えなくなりました。


おしまい



今回のもとのお話はコチラ

福娘童話集(ライオンとヒツジ飼い)
http://hukumusume.com/douwa/betu/aesop/02/16.htm



━━━ お話はここまで ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



☆ちょこっとHappy♪☆


お互い、心の扉が開いたときに、
初めて信じあえる関係になれるんだと思います。

心を閉ざしていては、信じあえる風も通りません。

この物語の羊飼いとライオンはどちらが先に
心の扉を開いたのでしょう。

すがる思いのライオン。

襲われる危険を感じる羊飼い。

羊飼いはライオンが心を開いていることを感じ、
自らも警戒心を解くことができました。

そしてお互いの心の扉が開き、信じあえる風が流れ込みました。


あなたのことを信じてくれる人はいますか?

その人に対しては、あなたの心の扉は
開いているのではないですか?

逆に、信じられない相手には、
あなたの心の扉は閉ざされていませんか?

関わらなくても済む相手なら、閉ざしていても
問題ないかもしれません。

でも、信じられない相手(もしくは環境)が、
どうしても関わらなくてはならない相手なら、
ちょっとだけ、あなたの方から心の扉を開けてみるのは、
いかがでしょう?

最初は、試しに、ちょっとだけ隙間を開けてみる。

その隙間から、少しでも信じあえる風が吹き込んで来れば、
信じあえる関係まではならなくても、少しくらいは、
『マシ』な関係になれるかも知れませんよ。


今日のHappyポイント♪

『 恥ずかしいケド、自分から心を開いてみる 』



あなたの意見をお聞かせくださ~い(^-^)




2017年7月15日土曜日

キツネとツル

キツネが同じ村に住むツルを食事に誘いました。

キツネはいたずらが大好きです。

ツルを困らせてやろうと思いつきました。

やって来たツルに座るようにすすめると、
テーブルに薄いオレンジのチェックが入ったお気に入りの
ランチョンマットをひきました。

「あ、キツネさん、なんだか本格的ですね」

いたずらされるとも知らずに、ツルは驚いてそう言いました。

二コリとだけ笑みを浮かべたキツネは、縁に赤い線の入った
真っ白な平らなお皿に、とびっきりおいしいスープをよそり、
ランチョンマットの上に置きました。

「さぁ、さぁ、ツルさん、たーんとお食べ」

キツネは満面な笑みを浮かべてそう言いました。

ツルは「うん……」と返事をしましたが、
目の前に出されたお皿を眺めて、

(どうしたらいいだろう……)

と悩みました。

ツルのくちばしでは、平らなお皿によそられた
スープを飲むのが難しいからです。

キツネは悩んでいるツルを見ながら上機嫌で、
自分のスープもよそりました。

そして、舌を使って美味しそうに飲み始めました。

ツルには分かっていました。

いたずら好きなキツネが、自分をからかって楽しいんでいることを。

だから逆に、上手く飲んで驚かせよう、と思いました。

考えたすえ、ツルは行動に出ました。

テーブルの高さまで首を下げると、
スープが入っているお皿を“ジーっと”凝視しました。

キツネはツルの行動が気になって、
スープを飲むのを止めて見ていました。

ツルはお皿を凝視したまま、
くちばしをお皿と水平になる位置につけました。

そして、まっすぐ皿の方へ進め、お皿の縁の赤い線を越えた辺りで、
くちばしを少し開き、スープの中に入れていきました。

くちばしを少し持ち上げると、
くちばしの下にスープが溜まっています。

それを見て、キツネはごくりと唾を飲み込みました。

ツルの動きが止まりました。

このままゆっくりと首を上に向けてスープを流し込もうか、
一気に上に向けてスープを流し込もうか、
どちらにするか考えていたのです。

やがて、ツルは一気に首を上に向けました。

すると、スープが一気に口に入って来てしまい、
苦しくなって吐き出してしまいました。

「クカーッ」

と、苦しそうな声を上げるツルを見て、キツネを大笑いです。

ツルはあきらめずに、二回目の挑戦!

くちばしにスープを入れると、
今度は、ゆっくり首を上に向けました。

今度はスープがゆっくり口の中に入ってくるのですが、
くちばしの横から、じょぼじょぼと、こぼれてしまい、
少ししか飲めませんでした。

キツネはそれを見て、また大笑いをしています。

ツルはその後、何度も繰り返し最後の方では、
結構上手にスープを飲むことができるようになりました。

キツネは食事が終わるころには、笑うのもやめて、
静かにスープを飲んでいました。

「ごちそうさまでした」

食事が終わり、帰りがけにツルは言いました。

「今日は、おいしい食事をありがとう、
 今度は私のうちへ遊びに来てくださいな」

キツネはイヤな予感がしましたが

「よろこんで!」

と笑顔で答えました。


───数日後…。

今度は、ツルの家にキツネが食事にやって来ました。

ツルはこの前の仕返しをしてやろうと考えました。

そして、細長い首の透明な瓶の中に、
たくさんの豆を入れてキツネの前に出しました。

「どうぞ召し上がれ」

召し上がれ、と言われてもキツネはどうすることもできません。

どうしたって、この細長い首の瓶に口が入らないからです。

ツルは、われ関さず、とばかりに、器用にくちばしを使い
豆をポリポリと食べていました。

キツネはツルの仕返しだということに気付きました。

なので、この前ツルがしたように自分もこれをなんとか
食べてやろう、と思いました。

キツネは細い瓶の口を真上から、ガブリ、っと噛みつきました。

器用に豆を食べていたツルは、いきなりのキツネの行動を、
目を丸くして見つめました。

キツネは瓶の口を真上から噛みついたまま、
しばらく動きませんでしたが、やがて、
ゆっくり首を後ろに倒していきました。

キツネの首が後ろに倒れて行くのに合わせて、
くわえている瓶も徐々に傾いて行きます。

そして、瓶が真っ逆さまになったとたんに、
たくさんの豆が一気に口の中に入って来て、
むせ返してしまいました。

「ゲホゲホ」

と、苦しそうな咳をしているキツネを、
ツルは目を丸くして見ています。

キツネはあきらめずに二回目の挑戦!

今度は、素早く首を傾けました。

すると、豆は塊になり細い瓶の中で詰まって、
なかなか口の中に入って来ません。

それでもキツネは何回も何回も挑戦し、そのうちコツを掴み、
だんだん自分の上手に食べられるようになりました。

「ごちそうさまでした」

キツネとツルは食事を終えました。

二匹の間に少しの沈黙が生まれました。

─────。

それを破るかのように、

『あのっ、』

と、同時に声を出しました。

お互い気まずそうに顔を下げてからツルが
大きな羽をキツネに向けて、先に話していいよ、
という仕草をしました。

それを見てキツネは言いました。

「あのね、ボク、このまえツルさんに、お皿でお食事出しちゃって
 意地悪だったね、ごめんね」

ツルは答えました。

「ううん、私こそ、食べ辛い瓶で食事を出してしまって
 ごめんなさい」

「あのね、もう一度、今度は食べやすい器、
 お互いが食べやすい器でね、もう一回、お食事しない?」

それを聞いてツルは目を丸くしながら、

「私も同じことを言おうとしてました」

キツネはキョトンとした表情でそれを聞きました。

そして二人は同時に笑いました。

数日後、二人はキツネの家で食事をしました。

キツネは赤い縁の皿の上に料理を乗せ、
ツルは透明な細長い口の瓶に料理を入れ、
二人とも食べやすい器で、楽しく食事をしました。


おしまい



今回のもとのお話はコチラ

福娘童話集
http://hukumusume.com/douwa/pc/aesop/01/31.htm



━━━ お話はここまで ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



☆ちょこっとHappy♪☆


意地悪されたとき、あなたはどうします?

怒ったり悲しんだりする前に、本当に意地悪されたのか
確認してみるのはどうでしょう?

相手は、自分が意地悪るなことをしたことに気づいてなかったり、
逆に善意でやっていたりすることもあるからです。

早合点して感情的になるのはもったいない。
相手が大切な人なら尚更です!!

相手が本気で『意地悪している!』と確認できてから、
怒ったり悲しんだりしてみましょう。

まず『真意を確認する』その方が、関係を修復するときも
近道ですよ。


今日のHappy♪ポイント

『早とちりしないで、まずは確認してみては?』


あなたの意見をお聞かせくださ~い(^-^)




2017年7月12日水曜日

泉のほとりのシカとライオン

金色の草原が広がるサバンナ。

その中で、キラキラと光り輝く水飲み場は、
動物たちの渇いた喉を潤す大切な場所です。

一頭のシカがやって来ました。

シカは足をピンと伸ばし、
ゆっくりと水面に口を寄せて行き、優雅に水を飲みました。

そして静かに顔を上げ、水面に映った自分の姿を眺めました。

(どーだい、この立派な角、いつ見てもキレイだ)

水面に映った立派な角が、シカの一番の自慢でした。

(こんなにも枝分かれしてる角を、自分以外、見たことがない)

シカは自分の角を見て、惚れ惚れとした気分で笑みを浮かべました。

(それに比べて……)

視線を下げていき、水面に映る自分の足を見つめました。

(この、細長い“ひょろ”と頼りない足はなんなんだ)

立派な角には似つかわしくない足を見るたび、
シカはガッカリするのでした。

シカはしばらく、自分の立派な角を眺めては惚れ惚れとし、
足を見てはガッカリとしながら水面に映る自分を眺めていました。

“ガサガサ”

後ろの繁みから微かな音が聞こえてきました。

ハッ、と我に返ったシカは視線を水面から繁みへと移しました。

凝視するまでもなく、そこには何かがいました。

しかも、何頭かいます。

群れで狩りをする動物、ライオンのようです!

シカは自分の姿に見とれていてライオンが近づいていることに
気付かず、周りを囲まれてしまいました。

(マズイ!)

そう思うと同時に、シカは俊敏な足さばきで走り出しました。

すると繁みの陰から一頭のライオンが飛びかかって来ました。

シカは軽やかにジャンプして、間一髪でライオンを飛び越し、
そのまま一目散に草原の方へ逃げました。

後ろからは、何頭ものライオンが現れて追いかけてきます。

(追いつかれたら食べられる)

シカは持てる力を振り絞って走りました。

今度は違う方向から、一頭のライオンがシカに襲い掛かってきます。

シカはすぐさま向きを変え、走りました。

シカが急に向きを変えたので、ライオンたちは、
足を滑らせたり、大回りしたり、ぶつかったり大慌てです。

そんなことなどお構いなしにシカは逃げました。

体制を整えたライオンたちも懸命に追いかけてきます。

しばらく草原を走っていたシカでしたが、
闇雲に走っていたために、森の中へ迷い込んでしまいました。

森の中では、草や木の根っこに足を取られてしまい、
速く走ることができなくなってしまいました。

追いつかれてしまう、と、シカは思いましたが、
足を取られるのはライオンたちも同じのようで、
距離が縮むことはありませんでした。

シカはホッとしながら、森の中をなんとか走り続けました。

しかし、だんだん森が深くなってくると

(イテテテテ……)

木々の枝に頭の上に生えている立派な角が引っかかるようになり、
その度に足を止めるようになってしまったのです。

角が無いライオンはどんどん距離を詰めて来ます。

“ガリッ”

角が枝に引っかかる度にシカは思いました。

(このままではライオンに追いつかれてしまう、
 この細長く頼りないと思っていた足は追いつかれない
 速さで走ることが出来るのに、立派だと思っていた
 自慢の角が邪魔になって走れないなんて……)

気付けばライオンはすぐ側まで来ています。

もう逃げるのは無理、捕まる!

シカは死を意識しました。

ライオンたちがどんどん迫ってきます。

シカは、何かいい方法はないか考えました。

ゆっくり考えている時間はありません。

周りを見渡すと、この辺りは森の中でも、
木々の少ない場所だということに気付きました。

(ここなら角にあたる邪魔な木々が無い)

シカに、ちょっとしたアイデアが浮かびました。

(やってみるか!)

と、ダメで元々で行動しました。

踵を返し、一頭のライオンめがけて突進したのです。

頼りないと思っていた足に力を込めて、自慢の角を向けて、
ライオンめがけて一直線に走り、体当たりをしました!

“グガァ!!!”

自慢の角に突かれたライオンは、
悲鳴にも似た叫び声を上げました。

シカはすぐに体制を整えると、別のライオンめがけて突進しました。

頼りないと思っていた足は、シカの意志にしっかりと応え、
凄まじい勢いでライオンに向かっていきます。

そして、自慢の角はライオンの体に鋭くぶち当たります。

“グガガガガァァァァァ!!!”

角を喰らったライオンは倒れ込んでしまいました。

二頭のライオンがあっという間に倒されたのを目の当たりにして、
他のライオンたちはひるんで近づいてきません。

その一瞬のスキを逃さず、
シカは草原の方向へ一目散に走って行きました。

森を出ると細長く頼りない足は速度を上げ、
草原を一気に駆け抜けました。

自慢の角には風が当たり、ヒューヒューを音を立てています。

どうやらライオンたちはもう追って来ないようです。

(助かったー)

とシカは安堵の息を吐きました。

そして足の動きは止めずに、思いました。

(自分は、なんてステキな角と、
 なんてステキな足を持っているんだろう)

シカは嬉しくなり、自慢の角で風を切りながら、
自慢の足を軽快に動かして、しばらく草原を駆け巡りました。


おしまい



今回のもとのお話はコチラ

福娘童話集
http://hukumusume.com/douwa/pc/aesop/01/18.htm



━━━ お話はここまで ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



☆ちょこっとHappy♪☆


もとのお話のシカは、欠点だと思っていた足が役に立ち、
自慢の角があだとなり、命を落としてしまいました。

童話でHappy♪のシカは、そこで終らず、
自分の持っているものを組み合わせることによって、
生き延びました。

発想を変えれば、欠点だと思っていたものって、
意外と武器になったりするんです。

欠点と長所を組み合わせたら、
さらにスゴイ武器に変わっちゃうかもしれません。。

『大切なのは、なにが与えられているかではなく、
 与えられたものをどう使うかである』

オーストリアの精神科医で心理学者、アルフレッド・アドラーの
言葉です。

欠点がたくさんある、というあなたは、
実は、武器をたくさん隠し持っている人なのかもしれません。


今週のHappyポイント♪

『 欠点を上手に使って、武器にしちゃいましょう 』


あなたの意見をお聞かせくださ~い(^-^)



2017年7月8日土曜日

塩を運ぶロバ(イソップ物語より)

あるところに、重たい荷物を背中に載せて歩いているロバがいました。

「重たいなぁ~ 暑いななぁ~」

ロバは、荷物の重さと、暑さでフラフラです。

「ガンバレ、ガンバレ、もうちょっとだ!」

そう言う、飼い主さんの声も、ボンヤリとしか聞こえないほど、
ロバは疲れていました。

やがて飼い主さんとロバは、川にかかる橋までやって来ました。

フラフラなロバは、川を眺めて、一瞬気が遠くなりました。

「危ない!」

飼い主さんの叫び声を遠くに聞きながら、ロバは足を踏み外し、
真っ逆さまに川へ落ちてしまいました。

激しく水しぶきが上がりました。

(冷たい!)

全身が川につかってロバは大慌てで、もがきました。

すると、川底に足がぶつかりました。

ラッキーなことに、だいぶ浅い川だったので、
すぐに立ち上がることができました。

(あ~、びっくりした)

と驚いているロバのところに飼い主さんが、
バシャバシャと水しぶきを上げながら走って来ました。

「大丈夫か!」

飼い主さんは心配そうな表情でロバの体をさすり、
ケガが無いか確かめました。

「うん、ケガは無いな」

と、安心した声を出した飼い主さんは、

「でも、積み荷が……」

と、ガッカリした声を出しました。

ロバが積んでいたのは塩がたっぷり入った袋で、
川に落ちた拍子に、溶けてなくなってしまったのです。

ガッカリしている飼い主さんには構わず、ロバは思いました。

(水にぬれて、すごく涼しい、しかも、なんだか背中が軽いゾ。
 そうか! 重くて暑い時は川に入ればイイんだ、涼しくて、
 軽くなる!)


次の日、飼い主はロバに軽い荷物を持たせました。

昨日は荷物が重すぎて川に落ちてしまったのかもしれない、
と思ったからです

ロバは足取り軽く、荷物を背負って歩きました。

そして、昨日も通った橋に差し掛かりました。

ロバは思いました。

(今日は荷物が軽いケド、昨日のように川に落ちたら、
 きっと、もっと軽くなるゾ)

そして橋の上で、わざとよろけて川の中へ飛び込みました。

“バシャーン!!!”

昨日と同じように激しく水しぶきが上がりました。

水の中はひんやりしていて気持ちよく、そして昨日と同じように、
荷物が軽くなるはずでした。

しかし、今日は軽くなりません。

(おかしいなぁ、ぜんぜん軽くならないゾ)

軽くなるどころか、どんどん重くなって行くような感じがします。

ロバは足をバタつかせました。

川底に足がついたので立ち上がろうとしました。

でも、背中の荷物が重くて立ち上がれません。

ロバは何が起こっているのか分かりません。

ただただ、足をバタつかせてもがくばかりです。

しかし、もがいても、もがいても、どんどん、どんどん、
川の奥へ引きづり込まれていきます。

(くっ、苦し……)

ロバは足をバタつかせましたが背中の荷物が重くて
どうにもなりませんでした。

いっぱい足をバタつかせ、苦しくて口を開けると、
たくさんの水が入って来て、さらに苦しくなりました。

苦しくて苦しくて、だんだんロバは意識が薄れて行くのを感じました。

薄れる意識の先に、

「今、助けるぞー!」

という飼い主の声が聞こえました。

────。

やがてロバは目覚めると、川の土手に寝そべっていました。

「よかった、意識が戻った」

飼い主の心配そうな顔と、何人かの男の人の顔が見えました。

溺れるロバを飼い主と数人の男の人が土手の上まで、
引き上げてくれたのです。

飼い主はロバに言いました。

「今日は荷物が軽いようにと、綿(ワタ)を背中に乗せたから、
 川の水を吸ってどんどん重くなったんだなぁ」

そして飼い主は暗い表情で続けました

「それにしても、川に二度も落ちるなんて、困ったロバだ」

ロバは助かりました。

しかし、二度も橋から落ちて荷物をダメにしてしまったということで、
売られることになりました。

ロバは優しいご主人と別れるのだと気づくと、とても辛く、
悲しくなりました。

(こんな事になるなら、もっとまじめに、優しいご主人のために
 働ければよかった)

遠くなるご主人を涙を浮かべた目で眺めながら、
ロバはそう思いました。

優しいご主人はロバのためにと、慎重に売り先を選んでくれました。

そして、重たい荷物を運ぶのではなく、
子どもを乗せて楽しませる仕事を見つけてくれました。

しかも、小さな子どもを1人ずつ乗せる仕事です。

ロバは優しかったご主人のことを思い出しながら、
毎日まじめに、楽しく仕事をしました。

 

おしまい



今回のもとのお話はコチラ

福娘童話集
http://hukumusume.com/douwa/pc/aesop/01/02.htm



━━━ お話はここまで ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



☆ちょこっとHappy♪☆


もとのお話では、ロバは死んでしまい、
こんな文章で締めくくられています。


このロバと同じように、人間もずるい事をやる人は、
うまくいったと思っても思いがけない不幸におちいる事があります。



確かにズルはいけないケド、ズルしたいほど辛い時ってありますよね。

そんな時、私はすぐ音を上げます。

誰よりも真っ先に音を上げるタイプです。

辛い時は音を上げるのはアリだと私は思っています。

案外、音を上げてみると、助けてくれる人が現れたり、
実はそこまで頑張る必要は無かった、など、
いい方に転がる結果になることが多いと感じるからです。

ロバも“ズルをする”ということで音を上げました。

結果、ご主人の優しさが分かり、
打ち込める仕事にも就くことができました。

辛いとき、疲れたとき、我慢は美徳かもしれませんが、
たまには音を上げてみてはいかがでしょうか?


今日のHappy♪ポイント
『 たまには、音を上げてみてもいいんじゃない? 』



あなたの意見をお聞かせくださ~い(^-^)