※童話の更新は週1回(だいたい土曜日の夜)です(^0^)/

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2018年10月13日土曜日

少年が思った良かったこと

昔々の話です。

ある村にとても臆病な少年が住んでいました。

体はとても小さく、いつもビクビクしていて、
まるで小動物のようです。

特に、大きな音が嫌いで、大きな音がすると、
体を大きくのけぞらし、「うわーっ!!!」と、
大きな音に負けないくらい、大きな声を上げてしまいます。

周りの人たちは、そんな少年をからかうことが大好きで、
道を歩いていると、すれ違いざまに「コラッ!!」と
大声を浴びせ、その度に「うわーっ!!!」と大声を
上げて、体をのけぞらせていました。

そんなものだから、少年は、家で、膝を抱え耳をふさいで、
あまり外に出なくなりました。

そんなある日のことです。

村の子どもたちが集まって、山に出かけ、一晩泊まって、
交流を深めるという、少年にとっては、いい迷惑な催しが
行なわれることになりました。

少年は、断固いきたくない! と親に訴えましたが、
なんの効果もなく、参加させられてしまいました。

当日、広場に集められた村の子どもたちは、引率の
大人たちに連れられ、山に向かって歩き出しました。

少年は、なるべく人と拘わらないようにと、
列の一番後ろを歩いていました。

すると、当然、ちょっかいを出してくる子供がいて、
「それ!」と、虫を投げられたり、後ろから静かに
近寄られ「うわっ!」と大声を掛けられたりしました。

その度に少年は、「うわーーーー!!!」と大声を出し、
周りの子供たちは、大いに笑い喜びました。

ただでさえ山登りはしんどいのに、そんな状況ですから、
頂上に着いたとき少年は、グッタリと疲れ果てて
しまいました。

頂上には、緑の草原が広がり、ところどころに、
背の高い木が生えていて、草原を囲むように、
宿泊できる小屋が何個か建っていました。

それぞれの小屋に、子どもたちが数人ずつで宿泊する
ことになっています。

しかし、まだ誰と誰が宿泊するのか、
子どもたちは知らされていませんでした。

引率している大人たちが、今から発表します。

子どもたちは誰と宿泊することになるのか、
気になって、ワイワイと大はしゃぎです。

誰とも宿泊なんてしたくない少年は、
退屈そうにはしゃぐ他の子の姿を眺めていました。

やがて、宿泊する小屋が決まりました。

少年と同じ小屋になると分かった子どもたちが、
決まった瞬間に、どんな声を発したかなんて、
そんな分かり切ったこと、少年には興味がありませんせした。

少年は、言われた小屋に向かいました。

「よろしく」

と、少年は同じ小屋に入って行く子どもたちに向かって
声をかけてみましたが、無視をされました。

少年にとっては、無視をされるのは良いことでした。

突然、1人の子どもが、なんの前触れもなく、
少年の方を向いて、大声で、

「よろしく!!!!!」

と、肩を叩いて来たので、

「うわわわわわぁー!!!」

少年は床に倒れ、転げるように怖がりました。

笑う子どもたちの顔を見て、少年は泣き出したい
気分になりました。

これなら、無視をされる方が、まだましです。

小屋には窓がなく、出入り口の扉を閉めると、
明かりを灯さないと真っ暗でなにも見えない感じでした。

小屋に荷物を置くと、すぐにお昼を作る時間になりました。

みんなで食材を家から持ち寄って、
料理をすることになっています。

少年も食材を持って料理に参加しましたが、
いちいち驚かされ、その度、激しく驚いてしまい、
料理どころではなく、なにをやっているのか
さっぱり分からない状態で時間は過ぎていきました。

お昼ご飯が出来上がり、みんなで食べることになりました。

少年は、自分の食べる分の食事を持って、
みんなと少し離れた切り株に座りました。

山の上で、1人で落ち着いて食べる食事はとても美味しく、
今日初めての安らぎを感じることました。

食事が終わり、ボーっしていると、

“ゴロゴロゴロー”

少年の肩が、ビクッ、と飛び跳ねました。

遠くのほうで、雷の音がなったのです。

山の天気は変わりやすいので、

「よしみんな、雨が降ってくる前に、
 片づけて、小屋へ避難しろ!」

引率の大人たちが叫び、
子どもたちが片づけを始めました。

少年は、子どもたちに近づき、
片づけを手伝おうとしました。

“ゴロゴロゴロゴロゴロー!!”

さっきより大きな音がしたので、少年は思わず
頭を抱えて、うずくまってしまいました。

「なんだコイツ、雷もダメか!!」

小屋の中で、肩を叩いて驚かせた子どもが、
また。こちらを見て笑っていました。

少年は片づけを手伝おうと立ち上がりましたが、

“ゴロゴロゴロゴロゴロー!!”

と、音がする度に、頭を抱えてしまうので、
みんなから邪魔者扱いをされるようになってしまいました。

やがて、ポタン、ポタン、と雨が降って来ました。

「それ、みんな小屋に入れ!」

引率の大人たちが叫ぶので、子どもたちはいっせいに、
自分たちの小屋に向かって走り出しました。

少年も小屋に向かって走り出しましたが、

“ゴロゴロゴロゴロゴロー!!”

雷がなる度に、頭を抱えうずくまり、なかなか小屋に
近づくことができませんでした。

そうこうしているうちに、雨は、激しく降ってきました。

ほとんどの子どもたちは、もう、小屋に入っていて、
姿が見えませんでした。

大人たちの姿も見えません。

少年も慌てて小屋に向かいました。

そして、小屋の扉に手をかけましたが、
扉は開きませんでした。

押しても引いても開きません。

「開けてよ!!」

扉を、“ドンドン”と叩いて叫びますが、
扉はびくりとも動きませんでした。

雨はどんどん強くなってきます。

“ゴロゴロゴロゴロゴロー!!”

雷がなり、少年はうずくまりました。

立ち上がった少年は、隣の小屋に向かって走り出しました。

“ドンドンドン”

「開けてー!」

と、叫びますが、扉は開きませんでした。

少年は、何個か小屋の扉を叩きましたが、
どの扉も固く閉ざされていて、開きませんでした。

少年の体は、びしょぬれでした。

雨が激しく降り続ているので、とにかく雨を防ごうと、
少年は、近くの木の下に走りました。

木の下は少しは雨がふせげました。

少年は膝を抱え座りましたが、びしょぬれの寒さと
雷の怖さで、体は震え続けました。

“ゴロゴロゴロゴロゴロー!!”

少年は頭を膝につけ、腕で耳の周りを抑えつけました。

その時です、少年の耳にとてつもない音が入ってきました。

“ビシャ!ビシャ!ズドドドドドーン!!!!!”

物凄い音とともに、空気の振動のようなものが、
少年に伝わって来ました。

少年は思わず顔を上げました。

すると、草原を挟んだ少し離れたところに生えていた
木から煙が上がっているのが見えました。

「雷が、落ちた?」

少年の体の震えは、激しくなりました。

手や足や唇や目や、動くところは
全部震えているような感覚です。

「このままここにいたら、ここにも落ちるかもしれない」

少年はパニック寸前でした。

ここにいたら雷が落ちる。

でも、小屋には入れてもらえない。

雨はさらに激しさを増して降り続いています。

少年は、震える体を押えることもできず、
ただうずくまっているしかありませんでした。

その時、

“バリバリバリビシャ!ビシャ!
 ズドドドドドドドドドドドドドドーン!!!!!”

と、物凄い音とともに、少年のいる木のすぐそばの木に
雷がおちました。

少年の体は、ひとりでに反応しました。

立ち上がると、雨が激しく降る草原に飛び出しました。

頭を低くした姿勢で全力で走り、草原のまん中くらいまで
来ると、大の字になって仰向けに寝っ転がりました。

「もうー、どうにでもなれ!!!」

少年はそう叫ぶと、目をギュッと閉じました。

顔やお腹や足に、痛さを感じるほど雨が激しく当たります。

でも、こうしている方が、木の下にいるよりも、
雷から逃げられることを少年は知っていました。

それでも、怖くて、怖くて、仕方ありません。

“ズドドドドドーン!!”
“ビシャ!ビシャ!ビシャ!ビシャ”
“バリバリバリバリバリバリーーー!!!”

周りで雷が激しく鳴り響き、何個も近くに
落ちているようでした。

少年は固く目を瞑り、雨を全身に受けながら、
怖いのを我慢して、歯を食いしばり、
耐えて、耐えて、耐え続けました。


そのまま、どのくらいの時間が経ったのでしょう。

少年は、仰向けで大の字になって寝ていたので、
いつの間かに、眠っていたようです。

気が付くと、雨は上がり、
雷の音も聞えなくなっていました。

太陽の日差しを感じながら、少年はゆっくりと
目を開けました。

すると、さっきまでの雨がウソのように晴れわたった
青空が見えました。

青空を、ボーっと眺めていると、子どもの顔が現れました。

1つ、2つと増えていき、大人の顔も交じってきました。

少年が、体を起こすと、

「無事か、よかったなぁ」

と、大人に声をかけられました。

「すごい、あんな雨と雷の中、外にいて1人でいて、
 無事でいられたなんて」

子どもたちからも、声をかけられました。

少年は体をひねり、周りを見ると、
1つの小屋が丸焦げになっているのが見えました。

「おまえが泊まるはずだった小屋だ、雷が落ちて、
 中にいた子たちは無事だったが、あの通りだ」

こげた小屋から離れた場所で、一緒に泊まるはずだった
子どもたちが膝を抱えて座り込み、体を寄せ合って
震えていました。

少年は、もう1つに目を向けました。

自分が身をひそめていた木を見て、
目は丸くなり、そして釘付けになりました。

まん中に雷が落ちたのか、見事なくらいに
真っ二つに裂かれていました。

裂かれた部分は真っ黒に焦げています。

あの根元の辺りに、自分は座っていたのです。

「さぁ、小屋に泊まることは中止だ、帰ろう」

そう促されても少年は、裂けて真っ黒に焦げている木から、
目を離すことができませんでした。


少年は、この経験によって、少しは臆病でなくなりました。

まだ、大きな音がするとビックリしてしまいますが、
以前のように、体を大きくのけぞらせたりは、
しなくなりました。

雷がなっても、肩を少しすぼめるくらいで、
頭を抱えてうずくまることも無くなりました。

そんな状態ですから、少年を驚かせて喜ぶ子どもたちは、
すっかり、いなくなりました。

それが、少年にとって、なによりも良かったことでした。


おしまい。



今回のもとのお話はコチラ

福娘童話集『 どうでも、しやぁがれ 』
http://hukumusume.com/douwa/pc/kobanashi/06/20.htm



━━━ お話はここまで ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



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