※童話の更新は週1回(だいたい土曜日の夜)です(^0^)/

≫≫≫ ☆ もくじ ☆ ≪≪≪

2018年5月6日日曜日

ライオンの母とウシの母

お母さんライオンは、水飲み場でウシを見つけました。

(よし、一頭でいるわね)

ここ何日間か、ずっとエサを探し歩いて、
やっと見つけた獲物でした。

お母さんライオンは、静かにウシに忍び寄りました。

ウシは、まったく気づいていない様子です。

ゆっくり、ゆっくりと慎重に近づきました。

もう少しで、ウシに飛びかかれるところま近づきました。

その時です、突然、ウシがふり返りました。

お母さんライオンは、いきなりウシと目が合ってしまい、
びっくりして身動きが取れなくなってしまいました。

どうやらそれはウシも同じようで、
慌てた様子でこちらを見ています。

お母さんライオンは気を落ち着かせてから、
ウシに言いました。

「観念してください! 静かにしてれば痛くはしません!」

そう言われたウシは、少し後ずさりしましたが、
やがて観念して声を上げました。

「分りましたライオンさん。あなたはお腹を空かしている。
 私はどのみち死ぬのでしょう。どうせ死ぬなら、
 いさぎよくアナタのお腹の足しになりましょう」

「そうしてくださると、私も助かります」

お母さんライオンはそう言うと、ウシは続けて言いました。

「でも、ひとつだけお願いがあります。
 私にはお腹を空かしている子どもがいるのです。
 最後にその子どもにお乳を飲ませてやりたいのです」

「子どもが?」

お母さんライオンは、そう言ってから激しく頭を振って、

「ダメよ、そんなことを言って、逃げて戻って来ない気でしょう」

「必ず戻ります。
 このままでは私のお乳は無駄になってしまいます。
 最後のお別れに、子どもに飲ませてやりたいのです」

お母さんライオンは悩みました。

ウシの気持ちはとても良く分かります。
それだけに、このまま食べてしまうと、
自分自身に後悔が残る気がしました。

ライオンはしばらくの間、ウシの目を、
ジッと見つめました。

そして、

「分りました」

お母さんライオンがそう言うと、
ウシの顔が明るくなったのが分かりました。

「お乳をあげにいってらっしゃい、私はここで待ってます」

「ありがとう」

ウシは笑顔でそう言うと、走り去っていきました。

(ヤレヤレ)

お母さんライオンは、獲物を逃がした自分が
愚かなことをしたと感じ、ため息をつきました。

そこへ、

「母ちゃん、腹減った」

と、子どものライオンが近づいてきて言いました。

「なんで、逃がしちゃったんだよ!」

「ごめんよ、戻って来るって言ってたから、ついね」

「戻ってくる訳ないだろー、もう、腹減った!」

「もう、少しは待つことも覚えなきゃいけないよ!」

お母さんライオンは子どもに怖い顔を向けました。

シュン、となる子どもライオンを申し訳なさそうに眺めてから、
お母さんライオンは

(この子の言う通り、きっと戻って来ないだろうなぁ)

と思いながら、ウシが走り去っていた方を眺めました。


しばらくの間、お母さんライオンと子どもライオンは
ウシが帰って来るのを待ちました。

すると、遠くの方から、ウシが近づいてくる姿が見えました。

お母さんライオンはホッと胸をなで下ろしました。

しかし、よく見ると、ウシは一頭ではありませんでした。

先程のウシに寄り添うように子ウシが歩いています。

二頭は、お母さんライオンのそばで止まりました。

ウシの目が、一瞬、子どもライオンに向いたことを、
お母さんライオンは気付きました。

ウシは視線をお母さんライオンに戻し、話し始めました。

「約束通り、戻って来ました」

ライオンはすぐに聞きました。

「どうして、お子さんと一緒に?」

母ウシは申し訳なさそうな表情で話しました。

「実は、お乳をやりにいきましたら、
 この子が、どうしても私と離れたくない、と、
 ダダをこねまして……。言い聞かせたのですが、
 どうしても言うことを聞かないので連れてきました」

「そうですか」とライオンが言うと、母ウシは続けました。

「この子が言うのです。
 『腹ペコのライオンが、私たちを食べたら、
  しばらくは他の動物を食べないでしょう?
  私、お母さんと一緒に、他の動物の命を助ける!』と」

ライオンが何も言わずにいると、母ウシは続けました。

「あなたのお子さんもいるようですから、ちょうどいい、
 どうぞ、私たち親子を食べてください」

ライオンは母ウシと子ウシを交互に眺めました。

(どうしましょう)

と、困惑するライオンに、母ウシが言いました。

「さぁ、食べてください」
続けて子ウシも、「私も食べて」

その言葉を聞いて、ライオンは目を閉じ、
深く息を吐きました。

そして、ウシに目を向けて言いました。

「分かりました。私はもう、
 あなたたちを食べることはできません。
 他の動物に食べられないよう、お気をつけてお帰り下さい」

そう言うと、お母さんライオンはウシに背中を向け、
「さぁ、いくよ」と、子どもに言ってから歩き出しました。

子どものライオンは、少し二頭のウシを見てから
お母さんライオンに、ついて来ました。

そして、しばらく歩いた後で、
子どもライオンは訴えるように言いました。

「なんで、逃がしちゃうのさ! おいらお腹空いたよ!」

お母さんライオンは強い口調で言いました。

「黙って歩きなさい!」

子どもライオンは立ち止まり、

「もうやだ! おいら歩けない!」

と叫びました。

お母さんライオンは、

「わがままは、自分でエサをとれるようになってから
 言いなさい!!」

と強い口調で言いました。

お母さんライオンの勢いにたじろいだ子どもライオンは、

「そんなこと言ったって、お腹空いたもん」

と、寂しそうにうつむいてしまいました。

お母さんライオンは困った表情を浮かべてから、
視線をウシの方へ向けました。

寄り添いながら、来た道を帰っていく
ウシの親子の後ろ姿が見えました。

「確かに、私は甘いのかもしれないなぁ~」

と、呟いてから、我が子に向かって優しい声をかけました。

「今度こそは、美味しいもの食べさせてあげるから、
 許して」

子どもライオンはジッとお母さんライオンを見つめてから、
しぶしぶといった表情をしながらも、
立ち上がり、先に歩き出しました。

お母さんライオンは、少し息を吐いてから、

「よし!」

と声を上げて、小走りで子どもライオンに追いついて、
並んで歩きました。

「僕もがんばるよ!」

子どもライオンが正面を向いたままそう言ったので、
お母さんライオンは微笑みました。

「頼りにしてるわよ」

二頭のライオンは、再びエサを探して、
歩きはじめました。


おしまい。



今回のもとのお話はコチラ

福娘童話集『 メスウシとライオン 』
http://hukumusume.com/douwa/pc/world/05/14.htm



━━━ お話はここまで ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



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