※童話の更新は週1回(だいたい土曜日の夜)です(^0^)/

≫≫≫ ☆ もくじ ☆ ≪≪≪

2018年4月21日土曜日

森を守るテング

昔々、悩みを相談するとなんでも解決してしまう
和尚がいました。

ある日、和尚のもとへ木こりが訪ねて来ました。

「最近、木が切れなくてこまっているのです」

「ん、それは木を切る体力が無くなったということか?」

と、和尚が訪ねると、

「いえいえ、そうではありません。
 体力には自信があります」

木こりは手を顔の前で振りながら言いました。

ではなんじゃ、と和尚が訪ねると、

「実はですねぇ、何とも不思議な話なんですがね、
 木を切ろうとすると、ビャーっと、強い風が吹いきて、
 木を切るどころじゃなくなってしまうんですよ」

「なんと、木を切れないくらいの風がふくというのか?」

はい、と頷く木こりに和尚は言いました。

「それなら、風が吹かないとき切ればいいでは無いか」

木こりは困った顔をしながら、

「それができれば、わざわざご相談にきませんよ、
 毎回毎回、木を切ろうとすると立ってられないほどの
 風がふくのです」

「毎回か?」

「はい、毎回です」

和尚さまは頭をポリポリとかきながら、

「お主、今から木を切りにいけるか?」

「はい、いつでもいけますが」

「では、わしも一緒にいくから案内してくれ」

と、和尚は立ち上がりました。

木こりは和尚を先導するように先を歩き、
途中、斧を取りに家に立ち寄ってから森に向かいました。

その日は、暑くもなく涼しすぎることもなく
過ごしやすい天候でした。

道を歩きながら和尚は周りを見て、

「この辺は、まったく風を感じないなぁ」

と呟くと、前を歩く木こりは振り向いて言いました。

「そうですねぇ、穏やかな天気です」

「これなら、木が切れるのぉ」

「はい、これなら木が切れます。
 でも、穏やかなのはいつも森に入るまでなのです」

和尚は不思議そうに何度も首を傾げながら、
木こりに着いて歩きました。

やがて森に着いた二人は、中へと入っていきました。

「おや?」

森の中へ入ったとたん、辺りが急にうす暗くなりました。

和尚は森の木々がお日様の光をさえぎったから
暗くなったのかと思い、空を見上げました。

すると、空は先程までの穏やかな天気がうそのように、
一面、雲に覆われていました。

(これはただ事じゃなさそうだ)

和尚はそう思いました。

森の中をしばらく歩くと、木こりは、
手頃な木の前で立ち止まりました。

「和尚、この木を切ってみます」

それは、まっすぐに伸びた立派な木でした。

「うむ」

和尚が静かに頷くと、木こりは斧を振り上げました。

すると地面に敷き詰められた木の葉が舞い上がり、
勢いよく風がふきました。

“ビューーーーー”

風は、斧を振り上げた木こりに狙いをつけたように、
物凄い勢いでふきつけ、あっという間に、

「うわぁ!」

木こりは斧を振り上げた体制のまま、バランスを崩し、
後ろへ転がるように倒れました。

「大丈夫か!」

和尚はすぐに木こりに近寄り体を起こしてやりました。

その時にはもう風はやみ、
静かな中にも張り詰めた空気が周りを包んでいます。

木こりは「大丈夫です」と言ってから、

「どうです、最近、いつもこうなのです」

「なるほどぉ」

和尚は頷いてから、目線を上げて森の様子を眺めました。

そして、呟くように

「もしかすると……」

と、言ってから、低い声で言いました。

「これはテングの仕業かもしれん」

「て、テングですか!」

驚く木こりに、和尚は深く頷きました。

木こりは和尚にすがるように言いました。

「テングだなんて、困ります!
 私は木こりをして生活しています。
 これでは生活できません! なんとかできませんか?」

「うむ~」

和尚は渋い顔で頷いてから、

「どうしたものかのぉ……」

と、目を閉じて考えました。

張り詰めた空気に包まれた森の中で時間は過ぎました。

しばらく考えていた和尚は、やがて何か思いついたのか、
と、パッと目を開き、

「お主、もう一度、斧を構えてくれ」

と、木こりに言いました。

「は、はい、ですが……」

「大丈夫だ、わしが何とかする」

和尚が力強く言うと、木こりは仕方なさそうに
木に近づいていきました。

「それじゃ和尚さん、いきますよ!」

と、木こりは斧を振り上げました。

途端に、強風がふいて来ます。

“ビューーーーー”

和尚は強風に負けないような大きな声をあげました。

「テング! この者は木を切ることで生活しておる!
 じゃませんでもらえぬか!」

すると、どこからともなく声が聞えて来ました。

『ならぬ! この森の木は切られ過ぎた!
 もう、一本なりとも切らせぬ!』

低くおどろおどろしい声が森の中に響きました。

風は一段と強くなりました。

木こりは風を受けて、後ろに倒れ込んでしまいました。

和尚は強風になんとかたえながら、さらに大声で言いました。

「これほどの風を起こせるとは、お主、並の神通力を持った
 テングでは無いと見受ける!」

『おうよ! オレの神通力は、そこら辺のテングと
 比べもんにもならんわい』

「そうであろう、お主の神通力は並外れている!
 わしもこれほどの神通力を持ったテングにあったことはござらぬ」

『そうであろう、そうであろう』

謎の声が少し明るい声になりました。

「そして、森を守ろうというその気持ち、
 あっぱれじゃとわしはお主を尊敬する!」

『おぉぉ、そうであろう、そうであろう』

明るい声に対し、和尚さんはさらに声を張り上げて
言いました。

「しかし! お主の神通力を持ってしても
 この森は守れまい!」

『なんだと?』

「この木こりがすることが、この森にどのくらいの影響があるか、
 わしには分からない。しかし、この者がこの森に与える影響など
 お主の並外れた神通力に比べたら微々たるもののはず。
 それをあえて拒絶するようなお主に、この森を守ることはできまい!」

『………』

和尚の声に対する返答はなく、風が少し弱くなったように感じました。

和尚は続けます。

「どうであろう、この森を守るために、切った分の木は植える。
 村人たちにも計画的に木を切るようさせる。
 それでお互いにこの森を守っていくというのは?」

和尚はそう言うと、木こりを見ました。

木こりは無言でうなずきます。

和尚は謎の声に語り掛けるような口調で言いました。

「並外れた神通力を持つ者なら、そのくらいの寛大さが
 あっても良いと思うが、どうかな?」

すると、和尚と木こりの間に“スー”っと風がふき抜けました。

それは、今までふいていた強い風とは違っていました。

風はおさまり、森の中が静かになりました。

しばらくすると、周りが明るくなって来たので、
和尚が上を見てみると、穏やかな青空が広がっていました。

そのまま辺りを伺うように眺めてから、木こりに目を戻すと、

「もう一度、斧を構えてみよ」

木こりはうなずくと、木のそばにたち斧を構えました。

空気は穏やかで、まったく風はふいてきませんでした。

そして木こりが斧を振り下ろすと、

“コーン”

という甲高い音が響き、斧が木に刺さりました。


和尚と木こりはその日のうちに村人たちに呼びかけ、
森を大切に守っていくための話し合いの場を設け、
その後、何回も話し合いをしました。

村人たちからいろいろな意見が出ましたが、
和尚と木こりは根気よく説得し、やがて、
切っていい森の木の数は管理され、
切った分の木の苗を植えることが決まりました。

話し合いの後、森の中で強い風がふく、という苦情は
今のところ、和尚のもとに来ていないということです。


おしまい。



今回のもとのお話はコチラ

福娘童話集『 テングを説きふせた男 』
http://hukumusume.com/douwa/pc/minwa/05/12.htm



━━━ お話はここまで ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



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