※しばらくの間、童話の更新は週1回(土曜日の夜)のみになりますm(_ _)m

≫≫≫ ☆ もくじ ☆ ≪≪≪

2018年3月25日日曜日

サルとマンゴーの木

むかし、むかしある国にマンゴー好きの王様がいました。

その日の昼食のデザートはマンゴーでした。

王様はとびっきりの笑顔で食べました。

「ん!」

一口食べた瞬間、王様は目を見開いてマンゴーを見つめました。

そして、近くにいた家来に言いました。

「おい、これはとてもうまいマンゴーではないか」

「お喜びいただき、なによりにございます」

頭を下げる家来に王様は、
“ガブリッ、ガブリ”と、マンゴーを食べながら、

「こんな美味しいマンゴーをわしは食べたことが無いぞ」

と、あっという間にたいらげてしまいました。

「おい、このマンゴーをどこで手に入れた?」

と、王様が訪ねると、

「実はですね、王様」

家来は低い声で言いました。

「昨日、1つだけ、川に流れていたものなのです」

「なに、川を流れていたものをわしに食べさせたのか!」

王様が病気になってしまっては大変なので、
川を流れていたものを食べさせるなんて
本当はあってはならないことです。

「ハイ、申し訳ありません」

家来は深々と頭を下げてから言いました。

「川を流れていたのですが、マンゴーだったので、
 一口食べてみた所、あまりにも美味しいものだったので、
 是非、王様に食べていただきたいと思いまして、
 こうしてお出ししたのでございます。
 もちろん、毒味はしっかりとした上でございます」

毒味とは、王様に出す前に家来が安全かどうか
試しに食べてみることです。

それを聞いた王様は、怒りもせず、

「そうか、そうか、気の利く家来じゃ」

と、喜びました。

「恐縮です」

家来は頭を下げました。

この家来への王様の信頼は厚く、そしてこの家来は、
王様は本当のことを言えば、ちゃんと話を聞くお方だ
ということを心得ていました。

美味しいマンゴーを食べ上機嫌な王様が言いました。

「ところで、このマンゴーをもっと食べたいが、
 もうないのか?」

家来は顔を上げて言いました。

「ハイ、流れて来たのは1つでしたので、もうありません。
 ですが、我々は早速、この実が採れるマンゴーの木を
 探索しております」

「おうおう、さすがに手が早いな、楽しみにしておるぞ」

王様は美味しいマンゴーの実がたくさん実っている木の姿を想像し、
満面の笑みを浮かべました。


そして数日後。

これからの仕事の話を一通りした後で、

「ところで王様、最後に、
 この間のマンゴー件でお話があります」

と、家来が言いました。

「おうおう、楽しみしておったぞ、どうだ、見つかったか!」

王様は椅子から前のめりになりながら聞きました。

「ハイ」

「でかしたぞ! よかった、よかった」

と、王様は美味しいマンゴーを食べられると大喜びでした。

しかし、目の前の家来の顔を見ると、
なにやら難しい表情になっていることに気づきました。

「ん、どうした、なにか問題でもあったのか」

王様は心配そうに聞きました。

「ハイ、少しばかり」

と、静かな口調で家来は言ってから

「大きな問題ではないかも知れないのですが、
 一応、王様に聞いていただき、
 判断をいただければと思っております」

「なんじゃ、申してみるが良い」

王様は座り直し、静かに背もたれに寄りかかり、
話を聞く体勢になりました。

家来はゆっくりと話を始めました。

「マンゴーが流れていた川の上流を探すと、
 山の中腹で、マンゴーの木を見つけました」

「おお、見つけたのじゃな」

「ハイ、しかし、マンゴーの木には先客がいたのです」

「そうか、あれだけ美味しいマンゴーだからのう、
 それは仕方がないのう」

王様はガッカリ肩を落としました。

「しかし、王様」

家来は続けました。

「その先客と言うのは、サルだったのです」

「サル? あの?」

王様はキョトンとした表情で聞きました。

「ハイ、あのサルです」

と答える家来に王様は、

「サルなら追っ払えばよかろう」

「その通りでございます」

家来が、同意と言わんばかりな口調で言うので、
王様は何か訳があるのだなと察して、話の続きを促しました。

「サルたちは、マンゴーがたくさん実っている木に乗り、
 美味しそうにマンゴーを食べていました。
 我々は、追っ払おうと、剣や槍で突いたので、
 サルたちは慌てて逃げようとしました」

「そうか、マンゴーを横取りしてしまって、
 サルたちには、悪いことをしたなぁ」

「ハッ、」

と、家来はとっさに頭を下げ

「王様ならそうおっしゃると思いました。
 我々も同様に少し気が引けました」

と言ったあと、顔を上げた家来の表情は
より一層、厳しいものになっていました。

「逃げ惑うサルの中に、一匹だけ、
 違う行動をしていたサルがいたのです」

「違う行動?」

「ハイ、そのサルは、剣や槍に向かって進んで来たのです」

「なに? なんのために?」

と、王様は眉間にしわを寄せて一瞬考えました。

そしてすぐに、目を見開き、

「まさか!」

「ハイ、そのまさかです」

「他のサルたちを逃がすために、自分から身を呈して
 剣や槍の前に向かってきた!」

「ハイ、剣や槍をどこに向けても、そのサルは
 他のサルをかばうように飛び出して来ました」

「サルながら、あっぱれじゃなぁ」

王様は感心と驚きを込めたの声を出しました。

家来は続けます、

「何度も何度も剣や槍の前に出てきましたから、
 そのサルの体は傷だらけでした、ところがです」

王様は唾を飲み込みながら聞きました。

「他のサルたちがマンゴーの木から無事逃げたあと、
 そのサルは、マンゴーの木を背にして、
 我々の前に立ちはだかったのです」

「なんと!」

「フラフラと、足取りもおぼつかない傷だらけの体で、
 この木は我々のものだと言わんばかりのものすごい表情で、
 我々を睨み続けたのです……」

一瞬の静寂のあとで、王様は“フーッ”と大きな息を吐いて
肩を落としました。

そして、

「そのサルはどうした?」

「ハイ、あまりにも傷だらけだったので、
 引き取ってまいりました」

「なんと、ここにおるのか?」

王様は立ち上がりました。

「ハイ、庭先の小屋で、傷の手当てをしております」

「よし」

と、王様はスタスタと歩き出し、庭の小屋に向かいました。

庭の小屋では、アチコチ傷だらけになっているサルが、
檻の中にいました。

ケガをしていても意識はしっかりあるようで、
鋭い目で王様を見ていました。

王様は、檻の前で膝まづくと、サルに言いました。

「サルでありながら、おまえの行動は立派だった。
 お主こそ、真の王の姿じゃ」

そして王様は立ち上がり、声を張り上げて言いました。

「皆の者、聞くがいい!
 今後、このサルが守るマンゴーの木に、
 一切、手を付けることを禁じる!
 そして、付近に兵を置き、なんぴとたりとも、
 マンゴーの木には近づかせるな!」

“オーッ!!!!!”

近くにいた家来たちが声を上げました。

王様は檻の前に膝まづき、サルに言いました。

「おまえたちの生活を壊してしまって申し訳なかった。
 言葉は通じないかもしれないが、
 我々の行動をお詫びのしるしとする」

王様は、ケガが治るまで手厚く看病し元気になったら、
マンゴーの木に返してやるように家来に命じました。

その後、王様は毎日のようにサルの檻に様子を見に来ました。

そして何日か過ぎたあと、元気になったサルを連れて、
家来たちと共にマンゴーの木まで行きました。

マンゴーの木のところで、サルを放すと、
一目散に仲間の方へ走って行きました。

王様は笑みを浮かべながらそれを見届け、
そして呟きました。

「達者でな」

王様はマントを翻し、その場を立ち去りました。

(自分も、人々の盾になれるような立派な王になろう)

と、心に熱いをものを感じながら。


おしまい。



今回のもとのお話はコチラ

福娘童話集『 サルの王さま 』
http://hukumusume.com/douwa/pc/world/05/04.htm



━━━ お話はここまで ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



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