※童話の更新は週1回(だいたい土曜日の夜)です(^0^)/

≫≫≫ ☆ もくじ ☆ ≪≪≪

2018年3月29日木曜日

キツネの価値観

ある日のことです。

「ここが噂のお金持ちの家かぁ」

キツネは貴族が住んでいる屋敷に忍び込みました。

「この家に住んでいる人間は、ものすごいお金持ちだから、
 きっとおいしいものがいっぱいあるぞ」

キツネは昨日、一日中エサを探して歩るき回りましたが、
大したエサを見つけることができず、
お腹がペコペコなってしまい、仕方なく人間の家に
忍び込むことなったのでした。

友だちが「どうせ忍び込むならお金持ちの家が良いよ」と
言っていたことを思い出し、この辺りで一番のお金持ちの
屋敷にやって来ました。

「さて、どんなおいしいものが食べられるかな」

キツネは屋敷の廊下にいました。

人間の家の中に忍び込むのは初めてでした。

家の中は、なんだか良く分からない物が多く、
戸惑いながらも、足を進めました。

廊下の壁には、扉がいくつも並んでいます。

とりあえず、一番近くの扉を、そろ~りと開けてみました。

「失礼しま~す」

扉の中に入ると、なんだか良く分からない
景色が広がっています。

“クンクンクン”

と、匂いをかいでみましたが、
おいしそうな匂いはまったくしませんでした。

変わりに、甘ったるい不思議な匂いが鼻につきました。

匂いがある方へ進むと、キツネはビックリしました。

目の前に、キツネがいたのです。

「やぁ~、キミも忍び込んだのかい?」

と、キツネが手を上げて聞くと、
目の前のキツネも同じように手を上げて聞いてきました。

「あ、これ、前に見たことある、自分の姿を写すやつだ」

どうやらキツネは鏡を知っていたようです。

キツネは鏡の前で、右手を上げたり、左手を上げたり、
踊ってみました。

「ヨッ、ホッ、ハッ」

すると、鏡の中のキツネも踊っているので、
キツネは楽しくなってもっと踊りました。

しばらく踊っていると、
鏡の前に置いてあるものに気付きました。

「なんだろー、コレ」

キツネはつまみ上げてみると、
キラキラした金色の輪っかのようなものでした。

まん中には透明の石が付いていて、
輪っかよりも、さらにまばゆい光を放っていました。

「キレイだ」

と、キツネはまじまじと眺めましたが、
“グ~ゥ”とお腹がなってしまい、

「キレイだけど食べられないなぁ」

と、金色の輪っかを元の場所に置きました。

キツネはキョロキョロと周りを見渡しましたが、
食べられそうなものはなかったので、とりあえず、
扉から廊下に出ました。

そして、ちょっと歩いて、隣の扉に入りました。

そこは広い部屋でした。

目の前に、木でできた机がドーンと置かれ、
その上には紙やペンなどがありました。

キツネはそれにはまったく興味を示さず、
“クンクン”と鼻を鳴らしながら歩きました。

しかし、食べ物の匂いは感じられませんでした。

「ん?」

キツネは不思議なものを見て首をひねりました。

壁のまん中くらいに、キツネの体くらいしか入れそうにない
小さな扉があったのです。

扉の前には、キツネが飛び乗れるくらいの台が置いてあります。

キツネに飛び乗ってください、と言わんばかりだったので、
ヒョイっとジャンプして飛び乗りました。

扉には丸い摘みみたいなものと、取っ手のようなものがありました。

キツネは適当に、取っ手の上の方を引っ張ると、
半円を描くように下に向き、同時に扉が静かに開きました。

静かに開く扉は大きさの割にやけに分厚いので、
変な扉だな、とキツネは思いながら中を覗きました。

中には紙の束が積んであり、それが何列か並んでいます。
その横には、何かが入っていそうな布の袋が
無造作に何個か置いてありました。

キツネは試しに布の上から“クンクン”と匂いをかぎましたが、
まったく食べ物の匂いがしませんでした。

「はぁ~、また空振りか~」

と、キツネは溜息を付いて、やたらと分厚い扉を閉めて、
棚から飛び降りました。

キツネは廊下に出ると「もう、帰ろうかなぁ~」と
呟きました。

「ん!」

その時、キツネの鼻に、
おいしそうな匂いが飛びこんできました。

「これは!」

キツネは匂いのする方へ走りました。

廊下を曲がったところに、それはありました。

窓際に、くすんだ銀色のお皿が見えました。

銀色の皿は床にそのまま置いてあります。

近づいて覗きこむと、中には、茶色やオレンジや緑色の
コロコロしたものが入っていました。

“スゥーーーーーーッ”

キツネは息を思いっきり吸いました。

「コレはおいしそうだ!」

キツネはコロコロしたものにかぶりつきました。

“ポリ、カリ、ポリ”

コロコロしたものはそんな音がする食感でした。

キツネはこんなおいしいものを食べたことがありませんでした。

“カリポリカリポリ”

一日、空腹だったからよけいです。
むしゃぶりつくように一心不乱に食べました。

“カリカリポリポリ”

キツネはあっという間にコロコロしたものを平らげ、
物足りないと言わんばかりに、銀色のお皿を
ペロペロとなめ回しました。

ひとしきりお皿をなめたあとで、

「ふ~、おいしかった~ぁ」

と、息をついた時です。

「ワンワンワンワン!!!!!」

という声が、廊下の向うの方から聞えてきました。

「ヤバイ! 犬だ!」

キツネは声がする方をまったく見ずに、
声とは逆の方向に一目散に走り出しました。

「ワンワンワンワン!!!!!」

犬は追いかけてきているようです。

キツネが廊下を走っていると、開いている窓が見えました。

キツネは、ヒョイ、っと飛んで窓枠に立って見ると、
その先は屋敷の庭でした。

キツネはすぐに庭に飛び降りると、一目散に壁まで走り、
よじ登って屋敷の外に降りたちました。

ふり返ると、壁の向うで犬が立っちどまって
吠えているのが見えました。

どうやら壁の外までは追いかけて来ないようです。

キツネは、よかった、と息を吐きました。

そして、

「それにしても」

と、思い出したように笑顔になって、

「おいしかったなぁ、さすがはお金持ちの家だ!」

と、言いながら、満腹のお腹を意識しながら、
満足げに帰っていきましたとさ。


おしまい。



今回のもとのお話はコチラ

福娘童話集『 キツネとお面 』
http://hukumusume.com/douwa/pc/aesop/05/06.htm



━━━ お話はここまで ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



☆ちょこっとHappy♪☆


今回のお話は物の価値がテーマです。

人間だったなら、ドックフードよりも、ダイヤのついた指輪や
現金の方が価値があるということが分かります。

ダイヤの指輪を売ったり、現金を持って高級料理店へ行けば、
ドックフードよりおいしいものが食べられます。

このように、人間の世界ではその物の価値を知っているかどうかで、
得をしたり損をしたりします。

しかし、価値を見定めるって難しいですよね。

芸能人が高級なものを当てるというテレビ番組もありますが、
普段から高級なものを手にしている芸能人でも、
本当の価値を見抜くことは難しいようです。

逆に、価値がある物はいいものだと思い込んでいると、
価値がある物だと信じ込まされ、高い金額を
だまし取られてしまうということもあります。

確かに、物の価値を知っていることは大切かも知れません。

でも、その前に、自分にとって本当に価値があるものなのか
どうかが重要な気がします。

私の好きなお肉は、鶏肉で、次いで豚、最後に牛です。
なので、モスバーガーが牛肉100%になったときはガッカリしました。

大半の日本人は牛肉100%のハンバーグが好きですから価値が
上がったのかもしれませんが、私の中でのモスバーガーの価値は
大幅に下がりました。

腹ペコのキツネにとっては、指輪よりもお腹がいっぱいになる
総合栄養食のドックフードの方が価値があります。

こんな感じで、自分にとって本当に価値があるのかを基準に考えると、
得も損も無いように思います。

例えば、偽物や騙されているとはまったく知らずに、
本当に価値がある物だと信じ込んでいるとしたら、
それはそれで幸せだと思うのです。

だから、本当は、本物の価値なんて知らなくても
いいのかも知れません。

「大切なのは、自分のしたいことを自分で知ってるってことだよ」

と、ムーミンというお話に出てくるスナフキンというキャラクターが
言っていますが、大切なのは、

「自分が何に価値を感じるかを自分で知っていること」

なのかも知れません。


今日のHappy♪ポイント

『 その物の価値は自分で決める 』


ご意見ご感想、お待ちしています(^0^)/


2018年3月25日日曜日

サルとマンゴーの木

むかし、むかしある国にマンゴー好きの王様がいました。

その日の昼食のデザートはマンゴーでした。

王様はとびっきりの笑顔で食べました。

「ん!」

一口食べた瞬間、王様は目を見開いてマンゴーを見つめました。

そして、近くにいた家来に言いました。

「おい、これはとてもうまいマンゴーではないか」

「お喜びいただき、なによりにございます」

頭を下げる家来に王様は、
“ガブリッ、ガブリ”と、マンゴーを食べながら、

「こんな美味しいマンゴーをわしは食べたことが無いぞ」

と、あっという間にたいらげてしまいました。

「おい、このマンゴーをどこで手に入れた?」

と、王様が訪ねると、

「実はですね、王様」

家来は低い声で言いました。

「昨日、1つだけ、川に流れていたものなのです」

「なに、川を流れていたものをわしに食べさせたのか!」

王様が病気になってしまっては大変なので、
川を流れていたものを食べさせるなんて
本当はあってはならないことです。

「ハイ、申し訳ありません」

家来は深々と頭を下げてから言いました。

「川を流れていたのですが、マンゴーだったので、
 一口食べてみた所、あまりにも美味しいものだったので、
 是非、王様に食べていただきたいと思いまして、
 こうしてお出ししたのでございます。
 もちろん、毒味はしっかりとした上でございます」

毒味とは、王様に出す前に家来が安全かどうか
試しに食べてみることです。

それを聞いた王様は、怒りもせず、

「そうか、そうか、気の利く家来じゃ」

と、喜びました。

「恐縮です」

家来は頭を下げました。

この家来への王様の信頼は厚く、そしてこの家来は、
王様は本当のことを言えば、ちゃんと話を聞くお方だ
ということを心得ていました。

美味しいマンゴーを食べ上機嫌な王様が言いました。

「ところで、このマンゴーをもっと食べたいが、
 もうないのか?」

家来は顔を上げて言いました。

「ハイ、流れて来たのは1つでしたので、もうありません。
 ですが、我々は早速、この実が採れるマンゴーの木を
 探索しております」

「おうおう、さすがに手が早いな、楽しみにしておるぞ」

王様は美味しいマンゴーの実がたくさん実っている木の姿を想像し、
満面の笑みを浮かべました。


そして数日後。

これからの仕事の話を一通りした後で、

「ところで王様、最後に、
 この間のマンゴー件でお話があります」

と、家来が言いました。

「おうおう、楽しみしておったぞ、どうだ、見つかったか!」

王様は椅子から前のめりになりながら聞きました。

「ハイ」

「でかしたぞ! よかった、よかった」

と、王様は美味しいマンゴーを食べられると大喜びでした。

しかし、目の前の家来の顔を見ると、
なにやら難しい表情になっていることに気づきました。

「ん、どうした、なにか問題でもあったのか」

王様は心配そうに聞きました。

「ハイ、少しばかり」

と、静かな口調で家来は言ってから

「大きな問題ではないかも知れないのですが、
 一応、王様に聞いていただき、
 判断をいただければと思っております」

「なんじゃ、申してみるが良い」

王様は座り直し、静かに背もたれに寄りかかり、
話を聞く体勢になりました。

家来はゆっくりと話を始めました。

「マンゴーが流れていた川の上流を探すと、
 山の中腹で、マンゴーの木を見つけました」

「おお、見つけたのじゃな」

「ハイ、しかし、マンゴーの木には先客がいたのです」

「そうか、あれだけ美味しいマンゴーだからのう、
 それは仕方がないのう」

王様はガッカリ肩を落としました。

「しかし、王様」

家来は続けました。

「その先客と言うのは、サルだったのです」

「サル? あの?」

王様はキョトンとした表情で聞きました。

「ハイ、あのサルです」

と答える家来に王様は、

「サルなら追っ払えばよかろう」

「その通りでございます」

家来が、同意と言わんばかりな口調で言うので、
王様は何か訳があるのだなと察して、話の続きを促しました。

「サルたちは、マンゴーがたくさん実っている木に乗り、
 美味しそうにマンゴーを食べていました。
 我々は、追っ払おうと、剣や槍で突いたので、
 サルたちは慌てて逃げようとしました」

「そうか、マンゴーを横取りしてしまって、
 サルたちには、悪いことをしたなぁ」

「ハッ、」

と、家来はとっさに頭を下げ

「王様ならそうおっしゃると思いました。
 我々も同様に少し気が引けました」

と言ったあと、顔を上げた家来の表情は
より一層、厳しいものになっていました。

「逃げ惑うサルの中に、一匹だけ、
 違う行動をしていたサルがいたのです」

「違う行動?」

「ハイ、そのサルは、剣や槍に向かって進んで来たのです」

「なに? なんのために?」

と、王様は眉間にしわを寄せて一瞬考えました。

そしてすぐに、目を見開き、

「まさか!」

「ハイ、そのまさかです」

「他のサルたちを逃がすために、自分から身を呈して
 剣や槍の前に向かってきた!」

「ハイ、剣や槍をどこに向けても、そのサルは
 他のサルをかばうように飛び出して来ました」

「サルながら、あっぱれじゃなぁ」

王様は感心と驚きを込めたの声を出しました。

家来は続けます、

「何度も何度も剣や槍の前に出てきましたから、
 そのサルの体は傷だらけでした、ところがです」

王様は唾を飲み込みながら聞きました。

「他のサルたちがマンゴーの木から無事逃げたあと、
 そのサルは、マンゴーの木を背にして、
 我々の前に立ちはだかったのです」

「なんと!」

「フラフラと、足取りもおぼつかない傷だらけの体で、
 この木は我々のものだと言わんばかりのものすごい表情で、
 我々を睨み続けたのです……」

一瞬の静寂のあとで、王様は“フーッ”と大きな息を吐いて
肩を落としました。

そして、

「そのサルはどうした?」

「ハイ、あまりにも傷だらけだったので、
 引き取ってまいりました」

「なんと、ここにおるのか?」

王様は立ち上がりました。

「ハイ、庭先の小屋で、傷の手当てをしております」

「よし」

と、王様はスタスタと歩き出し、庭の小屋に向かいました。

庭の小屋では、アチコチ傷だらけになっているサルが、
檻の中にいました。

ケガをしていても意識はしっかりあるようで、
鋭い目で王様を見ていました。

王様は、檻の前で膝まづくと、サルに言いました。

「サルでありながら、おまえの行動は立派だった。
 お主こそ、真の王の姿じゃ」

そして王様は立ち上がり、声を張り上げて言いました。

「皆の者、聞くがいい!
 今後、このサルが守るマンゴーの木に、
 一切、手を付けることを禁じる!
 そして、付近に兵を置き、なんぴとたりとも、
 マンゴーの木には近づかせるな!」

“オーッ!!!!!”

近くにいた家来たちが声を上げました。

王様は檻の前に膝まづき、サルに言いました。

「おまえたちの生活を壊してしまって申し訳なかった。
 言葉は通じないかもしれないが、
 我々の行動をお詫びのしるしとする」

王様は、ケガが治るまで手厚く看病し元気になったら、
マンゴーの木に返してやるように家来に命じました。

その後、王様は毎日のようにサルの檻に様子を見に来ました。

そして何日か過ぎたあと、元気になったサルを連れて、
家来たちと共にマンゴーの木まで行きました。

マンゴーの木のところで、サルを放すと、
一目散に仲間の方へ走って行きました。

王様は笑みを浮かべながらそれを見届け、
そして呟きました。

「達者でな」

王様はマントを翻し、その場を立ち去りました。

(自分も、人々の盾になれるような立派な王になろう)

と、心に熱いをものを感じながら。


おしまい。



今回のもとのお話はコチラ

福娘童話集『 サルの王さま 』
http://hukumusume.com/douwa/pc/world/05/04.htm



━━━ お話はここまで ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



ご意見ご感想、お待ちしています(^0^)/


2018年3月21日水曜日

赤い顔のお地蔵さま

むかし、むかしのことです。

とある村の片隅にお地蔵さまがおりました。

お地蔵さまは、だまって道端に立っていますが、
実は村人たちのことをよーく知っています。

ある日のこと、若者がやって来ました。

この若者は毎日のようにお地蔵さまに手を合わせに来て、
元気に感謝の言葉を言っていきます。

そしてこの若者が、村で一番の働き者だということも、
お地蔵さまは知っていました。

しかし今日の若者は様子がおかしいと、
お地蔵さまは感じました。

さえない表情をしていて、いつもの元気もなく、
なんだか青白い顔をしています。

若者はお地蔵さまに手を合わせて言いました。

「お地蔵さま、この田植えで忙しい時期に、
 私は体調を崩してしまいました。
 こうして、お参りに来るのもヘトヘトになるくらい、
 体調が悪く、田植えができません。
 どうか私の体調を直してください」

若者は念入りにお辞儀をすると、おぼつかない足取りで、
フラフラと帰っていきました。

若者の祈りを聞いたお地蔵さまは、

(願いを叶えてやりたいが、困ったなぁ、
 私は医者じゃないから、体調は治せないなぁ)

と、思いました。

(とは言え、この時期に田植えができなければ、
 あの若者はこの一年、収入がなくなってしまうなぁ)

それは若者にとっては辛いことです。

(あの若者は働き者だし……、よし、ここは私が一つ、
 力になってやるか!)

お地蔵さまおもむろに目をパッと開けました。

すると、体を覆っていた灰色の石が、ボロボロとはがれていき、
その下から、人間の肌が現れ、あっという間に、
人間の姿になってしまいました。

お地蔵さまは自分につけられていたヨダレかけを
ふんどしの代わりにし、チャンチャンコを羽織ったまま、
若者の田んぼへ向かいました。

そして裸足のまま田んぼに入り、せっせと耕し始めました。

通り掛かった村人が「こんにちは」と挨拶するので、
「こんにちは」と答えました。

村に住むハチベーだと、お地蔵さまは気付きましたが、
ハチベーは、知らない顔を見た、と、首を傾げ、
不思議そうな顔をしながら去っていきました。

次の日も、次の日も、お地蔵さんは若者の田んぼに行って、
作業をしました。

田んぼで作業をしていると、村人からよく声をかけられました。

お地蔵さまは、声をかけて来たものが誰かはすぐ分かりました。

しかし、声をかけた村人たちは、みんな不思議そうに
「誰だろう?」という表情をするので、お地蔵さまは
楽しくてしょうがありませんでした。

やがて、若者の田んぼで働く見知らぬ人の噂は村中に広まり、
村長さんのところまで届きました。

田んぼの仕事が一通り終わり、お地蔵さまは土手に座って、
(後は体調が戻った若者に任せれば大丈夫だろう)
と、のんびり田んぼを眺めていと、後ろから声をかけられました。

「どなたか知らんが、この田んぼの世話をしてくれて
 ありがとうございます。
 お礼をしたいので、一緒にお酒でも呑みかわしませんか?」

声をかけてきたのは村長でした。

お地蔵さまは村長の言葉に甘えて、お礼を受けることにしました。

村長の家では、お地蔵さま(知らない人)を囲んで、
何人かの村人が集まって大宴会が開かれ、翌朝まで盛大に続きました。


次の日、なんとか体調が良くなった若者は、
すっかり田植えが終わっている自分の田んぼを見て
ビックリしました。

「きっと、お地蔵さまが、私の祈りに応えてくれたのだ」

若者は走ってお地蔵さまのところへ行きました。

そして、お地蔵さまの前に膝まづくと、

「ありがとうございます、ありがとうございます」

と、手を合わせて何度も何度もお辞儀をしました。

ふと、改めてお地蔵さまの姿を見ると、
おかしなことに、泥で汚れたヨダレかけを股にかけ、
顔が赤く汚れていることに気づきました。

「お地蔵さま、ちょっとの間、だいぶ汚れちゃいましたね」

と、呟くと、若者は急いで家に帰り、樽と桶に水を入れて、
キレイなぞうきんを持ってお地蔵さまのところへ戻って来ました。

泥のついたヨダレかけやチャンチャンコを樽の中に入れ
キレイに洗い、お地蔵さまを顔や体をぞうきんでキレイに拭き、
ヨダレかけとチャンチャンコを元通りの位置につけました。

そして、キレイになったお地蔵さまの前に立ち、
改めて、手を合わせて深々とお辞儀をしました。

若者は最後にお地蔵さまの顔に目をやりました。

何度キレイに拭いても、赤い顔の汚れは取れませんでした。

でも、赤い顔のお地蔵さまは、なんだか気分が良さそうに
見えたので、そのままにしておくことにしました。

そして、もう一度お辞儀をして、若者は笑顔で帰っていきました。

この年の秋、若者の田んぼには立派なお米がみのり、
若者はすぐにおもちをこしらえて、お地蔵さまに備えましたとさ。


おしまい。



今回のもとのお話はコチラ

福娘童話集『 地蔵の田植え 』
http://hukumusume.com/douwa/pc/jap/05/03.htm



━━━ お話はここまで ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



☆ちょこっとHappy♪☆


「困った時の神頼み」

こんなことわざがありますが、普段はお参りもしてないのに、
困った時にだけ神や仏を頼っても応えてくれるはずもありません。

今回のお話の若者は、いつもお地蔵さまにお参りしていたから、
いざという時に助けてもらえました。

普段からお地蔵さまにお祈りをしたり、特定の神さまに
お祈りをするということは大事なことなのかもしれません。

しかし、宗教というと、どうしても胡散臭く感じる日本人は
多いと思います。

そう思う人は、何の対象も持たず、
心の中で、勝手に感謝してみるとイイと思います。

良いことがあったら、とりあえず感謝。
悪いことがあっても、とりあえず感謝。

心理学や脳科学の世界では
『楽しいから笑うのではなく、笑うから楽しいのだ』
ということが事実として知られています。

いつも感謝している人間になれると、
いつしか感謝される人間になれるかもしれません。

いつも何かに感謝していると態度が変わり、
行動が変わります。

すると、それが他の人にも伝わり、いつの間にかに、
感謝される人間になる、という理屈です。

本当かどうか、証明するのは簡単です。

今から、なんでもかんでも、感謝すればいいだけです。

感謝しまくって、あなた自身で、
真実かウソか確かめてみちゃいましょう。


今日のHappy♪ポイント

『 心の中で、勝手に感謝しちゃいましょう! 』


ご意見ご感想、お待ちしています(^0^)/


2018年3月17日土曜日

季節の妖精たち

ある日のこと、冬の妖精と春の妖精が話をしていました。

「春さんはいいよなぁ、あなたが顔を出すと、
 人間たちはニコニコしながら外に出て来て、
 楽しそうになる。それに引き換え……」

冬の妖精は俯いて淋しそうな表情で、

「冬になると人間たちは、着物の襟を押えて縮こまり、
 家の扉をしっかり閉めると、
 閉じこもって外に出て来なくなってしまう。
 そして、みんな家の中で言うんだ。
 早く春が来ないかなぁ~、って」

冬の妖精が言い終わると、

「そうですか? そんなことないと思っていました」

春の妖精が明るい声で言いました。

「私は、冬の人間たちは、雪山や氷の上をすべって楽しんでんるなぁ、
 と思っていましたよ。
 こたつに入っている姿も暖かそうで幸せそうだし、
 雪だるま作りなんて、私、やりたくてやりたくて
 憧れちゃいますよ」

「へー、そんな風に思ってるんだ~」

と、冬の妖精は呟きました。

春の妖精は続けました。

「それに、春になったら、人間たちは、やれ風が強いだの、
 暑い日と寒い日の変化が激しいだの、
 頭がボーっとするだの、着る物が分かんな~いだの、
 最近では、目がかゆくて鼻水がダラダラと止まらないだの、
 も~う、うるさ~ぁい! って叫びたくなっちゃうほど、
 たくさんの愚痴を言ってますよ」

「え、そんなに愚痴が多いんだぁ」

「ハイ、梅雨に入れば入ったで、早く夏にならないかなぁ、
 あのギラギラした日射しが待ち遠しい~、
 とか言い出しますしね」

「確かに! 夏の人間は楽しそうだよね。
 それこそ活動的になって、海へ行ったり、山に行ったり」

「それに、お祭りしたり、花火まで上げて「たまや~」って
 もりあがっちゃう!
 かき氷もスイカも美味しそうで、私は夏に憧れちゃいます」

と、春の妖精が笑顔で言うと、

「それは誤解だよ」

「あ、夏の妖精さん、こんにちは」

冬の妖精と春の妖精は、夏の妖精に挨拶をしました。

「君たちは夏を誤解しているよ」

「そうですか、人間たちは、夏を待ち焦がれているように
 見えますけど」

と、春の妖精が言うと、夏の妖精は「そんなことはない」
と、言ってから続けました。

「夏になったら、どれだけの人間が動かなくなるか、
 外はもちろん、家の中にいても、グダ~っとしてるし、
 熱中症になってしまうもの多い。
 最近じゃエアコンなんてつけるから、よけいに疲れ果てて、
 夏の終わりには「いつまで暑いんだ」と力なく訴える始末だ」

聞いていた春の妖精は、

「確かに、あの時期の人間は、かなり元気が無くなって、
 まさに夏バテ、って感じがしますね」

と、同情するような顔をしました。

「すると、人間が一番好きなのは秋なのかなぁ」

と、冬の妖精が言うと、夏の妖精が言いました。

「そりゃそうだろう、過ごしやすい気温になるし、紅葉はキレイだし、
 なんたって、米だの野菜だの、いろんな食べ物が実るし、
 秋は人間にとってイイことが詰まっているだろう」

「そうですよね」

と、春の妖精は、

「実りの秋、食欲の秋、読書の秋、なんて言葉があるくらいだもの
 人気アリアリ~、って感じですね」

「睡眠の秋、なんて言っている人間もいるね」

冬の妖精が頷くと、

「さぁ~、それはどうなんでしょう」

と、静かな声で秋の妖精が現れました。

「こんにちは」

冬と春と夏の妖精が挨拶をすると、

「はい、こんにちは」

ゆったりとした口調で秋の妖精は答えてから言いました。

「秋になると、長雨が続いてしまって、人間たちは大そう困ります。
 お日様が出ている時間も短くなり、段々、気温も下がって来るので、
 不安になってくるかたも多くいて、皆、淋しそうにしています」

それから秋の妖精は「フフフ」と、少し微笑んでから、

「秋の人間たちは、早く冬になって、
 クリスマスやお正月が来ないかなぁ~、と、
 待ち遠しく思っていますよ」

「へぇ、冬を待ち遠しく思っているのかぁ」

冬の妖精が呟きました。

春と夏の妖精は、秋の妖精の話を聞いて、
「う~ん……」と、考え込んでしまいました。

それからしばらく、四季の妖精は頭を傾げて、
黙ってしまいました。

「つまり……」

冬の妖精は言いました。

「人間たちは、それぞれの季節で楽しみ、
 それぞれの季節で苦しみ、それでも生活している、
 ってことなのかなぁ」

春の妖精が答えます。

「そうですね、それぞれの季節の良いところではしゃぎ、
 悪いところでは愚痴りながら、生きているのかもしれませんね」

夏の妖精が続けます。

「つまり、どの季節にも、いいところもあれば
 悪いこともある、ってことだな」

「はい、」

と、秋の妖精は静かに言ったあと、

「私たちは、その季節に合った、その季節らしい世界を
 作り上げることが、大切なのだと思います」

冬と春と夏の妖精は大きく頷きました。

そして、冬の妖精は春の妖精に言いました。

「立派な春にしてくださいね」

「ハイ、任せてください、後はお願いしますよ、夏さん」

「おう、ギラギラの夏にするよ、次は頼むぞ秋さん」

「はい、暑さでバテた体を、優しく包み込みます。
 そして冬さん」

「うん、一年間過ごせるように、じっくりと人間たちが
 休める季節にするよ、そして、」

と言ってから冬の妖精は、春、夏、秋の妖精の顔を見て、

「素敵な一年を作りましょう」

そう言ったのと同時に手を伸ばし、春夏秋の妖精も手を添え、
四季の妖精たちはしっかり握手をしました。

そして笑顔で、自分たちの季節へ帰っていきました。


おしまい。



今回のもとのお話はコチラ

福娘童話集『 冬と春 』
http://hukumusume.com/douwa/pc/aesop/04/19.htm



━━━ お話はここまで ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



☆ちょこっとHappy♪☆


梅雨のころに「夏が待ち遠しい」と言っていたのに、
夏になると「毎日暑くて嫌になりますね」と言っている人、
いませんか?

「一年ってあっという間だよね」

と、いつも言っている人、いませんか?

私は小さいころ疑問に思っていました。

「あなた、夏が待ち遠しい、って言ってなかった?」
「一年なんて同じ長さだから、いい加減、気づこうよ」

と、捻くれた思いを浮かべていました。

でも、コレって、捻くれている訳では無く、

『言葉の意味をそのまま受け入れている素直な子』

の考え方なんだと思います。

大人になって知りました。

「夏が待ち遠しい」
「一年ってあっという間だよね」

って、ただの、コミュニケーション手段だったんですね。

実際、自分でも使ってみて分かりました。

季節の話題で会話を始めると、その後の会話が、
とても自然な感じに進んで行きます。

会話が苦手、会話が続かない人がよくやりがちなのが、
相手との呼吸やタイミングを合わせずに、
話を始めてしまうことです。

長縄とびに入れないで引っかかってしまうのと同じで、
会話にも呼吸やタイミングを合わせることが重要です。

呼吸やタイミングを合わせるのに手っ取り早いのが、
お互いが分かる言葉を交わすことです。

それには季節の話題や天気の話題がうってつけなんですね。

なぜなら、皆が一緒に経験していて
「雨はうっとうしい」
「夏は暑い」
など、ある程度、同じような感想を持っているからです。

お互いが分かる言葉としてこんな都合のいいものはありません。

季節の話題は真に受けず、会話のクッション材として、
やんわりと受け取る。

そして、自分から会話をするときは、思い切って、
ベタに季節の話題から入ってみる。

そうすれば、きっと、会話がしやすくなると思いますよ。


今日のHappy♪ポイント

『 会話の切っ掛けは、季節の話題が一番! 』


ご意見ご感想、お待ちしています(^0^)/


2018年3月14日水曜日

ハトとアリの救出大作戦!

森の中にある水飲み場に、一羽のハトがやって来ました。

水が溜まっているところに、ちょうどいい木の枝があり、
ハトはいつものようにそこにとまり、
くちばしで水をすくって、飲みました。

「おいしい」

ハトは満足そうな表情をしました。

その後で、キョロ、キョロ、と、周りを確認しました。

水を飲むたびに顔を上げ、同じような行動をとっています。

この森には水飲み場が少なく、
ここにはいろんな生物がやって来てます。

その中にはハトを襲ってくるものもいるので、
警戒していたのです。

ハトは何回か水をくちばしですくって飲みました。

そろそろ飛び立とうかと思い、
もう一口、と水にくちばしを伸ばしました。

すると、水の上になにかがいるのに気づきました。

さっきまでは気づきませんでした。
いや、さっきまで水の上にはなにもありませんでした。

目をこらして見てみると、アリのようでした。

あやまって水場に落ちてしまったのか、
バタバタと必死に足を動かして、もがいていました。

ハトは水をすくうのをやめ、
近くにあった、大きな葉っぱをくちばしでちぎり、
アリのそばに置いてあげました。

アリは必死に足を動かして、葉っぱに近づいて、
よじ登りました。

アリが葉っぱの上に乗ったのを確認すると、
ハトは葉っぱを水飲み場の外に運びました。

運んでいる途中で、一瞬だけ、葉っぱの上にいるアリと
目が合ったような気がしました。

水の無いところに葉っぱが置かれると、
アリはすぐに葉っぱからおりました。

******

アリは、森の中で今日もエサを探して歩いていました。

「エサはないか、エサはないか」

ヒクヒクと触角を動かして、
ちょろちょろと忙しなく歩きました。

すると、目の前にエサになりそうなものがありました。

ヨシ、これは大物だぞ!

と、意気込んで噛みつき運ぼうとしましたが、
なかなか重くて、動かすことができません。

「フムムムムム!」

足を踏ん張り、全身に力を入れました。

それでもエサは動きません。

アリは一度エサを離し、呼吸を整えました。

「ふーぅ」

と大きく息を吐くと、もう一度エサにかぶりつきました。

そして、先ほどよりも足を踏ん張り、全身に力を込めて、
引っ張りました。

「ンヌヌヌヌヌヌヌヌ!!!」

力を込めた分、エサが少し動いたのを感じました。

もう少しだ! と思ったアリはもっと力を込めて引っ張りました。

「フンッ、ンヌヌヌヌヌヌヌヌ!!!」

と、その時、

“プチン!”

という音とともに、アリが噛んでいたエサのいち部分が
チギレてしまいました。

激しく引っ張っていたアリの体はチギレた反動で、
ピョ~ンと、空中に舞い上がりました。

“ポシャン!”

アリが着地したのは水の上でした。

アリは慌てました。

早く陸に上がろうと、足をバタバタさせました。

しかし、なかなか思うように体が進まず、
水の上でバタバタしているだけでした。

「ふ~、いつものように泳げない」

アリは先ほどまで力いっぱいエサを引っ張っていたので、
少し体力が落ちていました。

でも、早く陸に上がりたいので、
足を動かすことをやめませんでした。

「フヌヌヌヌヌ」

必死になって足を動かしていると、
近くに木の葉っぱが落ちてきました。

よし、アレに乗っかろう!

アリは一所懸命、足を動かして葉っぱに近づき、
なんとか乗ることができました。

“ふぅ~”と息をつく間もなく、
今度は乗った葉っぱが動きだしました。

「うわわわわ」

慌てるアリは、葉っぱをくわえている生き物と目が合いました。

「ハトさん」

アリがハトの顔を不思議な表情で眺めているうちに、
葉っぱは陸の上に置かれました。

アリはすぐに葉っぱから、陸に降りました。

見あげると、枝にとまったハトがコチラを見ていました。

“ありがとう”

と、アリは言おうとしましたが、
ハトの背後になにかがいるのに気づきました。

「アレは人間の手だ!」

人間がハトを捕まえようとしていたのです。

“マズイ、このままではハトさんが人間に襲われちゃう”

アリはハトを助けようと思い走り出しました。

アリは人間が嫌がることを知っていました。

すぐに人間の足元へ走っていって、ズボンの中に入りました。

ごそごそズボンの中で歩いているだけで人間は嫌がります。

その上で、もっと人間が嫌がることをしました。

“ガブリッ”

人間の足に噛みついたのです。

『イデーッ!!』

と、人間は声を上げ、同時に足を激しく振ったので、
アリの体は投げ出され、またもや空中を舞いました。

空中を舞っているとき、目線のすみに、
元気に飛び立っていくハトの姿が見えました。

「よかった」

と、アリは思いました。

“ポトン!”

と、今度は地上に着地でいたので、
人間に踏まれないように一目散に走って逃げました。

ハトとアリはそれっきり出会うことはありませんでしたが、
お互い、とても感謝しながら過ごしました。



おしまい。



今回のもとのお話はコチラ

福娘童話集『 アリとハト 』
http://hukumusume.com/douwa/pc/aesop/04/15.htm



━━━ お話はここまで ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



☆ちょこっとHappy♪☆


童話でHappy♪では、学校の道徳のようなことを
書くつもりはないのですが、今回のお話は、
「助け合い精神」という道徳的な内容になりました。

「情けは人の為ならず」

という諺があります。

『情けを人にかけると、巡り巡って自分へ返ってくるよ、
 だから、良いことを人にしなよ』

という意味です。

「自業自得」

という熟語があります。

『自分のした業(ごう:行ない)は、自分に返って来る。
 良い行ないをすれば、良いことが、悪い行ないをすれば
 悪いことが返って来る』

という意味があります。

「因果応報」と共にお釈迦さまの基礎的な教えです。

そして今回の物語で、イソップさんは、
『ハトでもアリでも、恩返しは大切だよ』と説いています。

現代に目を向けると、感動プロデューサーの平野秀典さんは、
『恩送り(贈り)』を提唱しています。

受けた恩を本人に返すことができなくても、その恩を他の人に
渡すと良いという、江戸時代にはあった言葉だそうです。

自分の受けた恩を、周りの人と分かち合うことを、
たくさんの人がやり始めたら、この世の中は、
きっとステキになるでしょうね。

人助けをすることや、受けた恩は返すということは、
自分にとっても良いこと。

これは、いつの時代でも変わらない真理なのかもしれません。



今日のHappy♪ポイント

『 もらった恩は感謝して、みんなで分かち合おう! 』


ご意見ご感想、お待ちしています(^0^)/


2018年3月10日土曜日

カメの長老には叶わない

この海には、長老と呼ばれるカメが住んでいました。

どの生物よりも長く生きているだけではなく、
とても良い性格なので、みんなから慕われていました。

ある時、カメの長老が悠々と泳いでいると、
なにやら海の底で魚たちが難しそうな顔をして
話しているのが見えました。

長老は近づいて行き

「やぁやぁ、ご機嫌うるわしゅう、なにかお困りかな」

と、声をかけました。

「あ、カメの長老、いいところに来てくださりました」

声を上げたのは、魚のアジでした。

「おや、なにか厄介ごとかい?」

「ハイ」と次に声を上げたのはイワシでした。

「私たちは困っているのです、長老」

「うんうん」と横で頷いたのはサバでした。

「どうしたのだい、このカメの長老が聞いてあげよう」

カメの長老は笑顔で言いました。

アジが話を始めました。

「実は、長老、上を見てください」

カメの長老は言われたとおり上を見ました。

「おやおや」

海の上の方で、大きな物体の集まりが二つに分かれて
向き合っているのが分かりました。

「あれは~、イルカとクジラかな~」

と、カメの長老が言うと、

「そうなんです!」

と、今度はイワシが、「私たちはアレに困り果てているのです」

「どうしたのじゃ?」

カメの長老が聞くと、イワシは続けて言いました。

「イルカとクジラが、なんの理由か分かりませんが、
 三日くらい前からケンカしてまして、
 今はまだ落ち着いていますが、一度、荒れだすと
 この辺りの水がグラングラン揺れだして、
 普通に生活できないのです」

イワシがそう言うと、隣でサバが「うんうん」と頷きました。

カメの長老は「おやおや、それは困りましたねぇ~」と言ってから、

「どなたか『やめてくれ』と頼まないのですか?」

今度はアジがそれに答えました。

「長老も人が悪い、私たちは魚で、彼らほ乳類とは言葉が通じません」

「おぉ、そうでしたねぇ~、面目ありません」

カメの長老は前足で頭をなでました。

アジは続けます。

「例え言葉が通じたとしても、我々のような小さな生き物の話なぞ、
 聞き耳を持ってくれるはずがありません」

そう話すと、アジはシュンと俯き、隣にいたサバもシュンとなりました。

それを見かねたカメの長老は、

「分かりました。では、このカメの長老が、一つ話をつけてこよう」

というので、アジもイワシもサバも
キラキラした目でカメの長老を見つめました。

イワシが言いました。

「長老は、ほ乳類とお話ができるのですか?」

「朝飯前です!」

魚の3匹は「オォォォ」と感嘆の声を上げました。

「では、少し待っていてくれたまえ」

と、カメの長老は体を返して海の上の方へのぼって行きました。

そこでは、イルカとクジラが今にもぶつかり合いそうなくらい
険悪な雰囲気で相対していました。

「ハイ、ごめんくださ~い」

という軽い口調で、カメの長老は2匹の間に入りました。

「これはこれはカメの長老」
「お久しぶりでございます」

イルカとクジラが同時に声を上げました。

カメの長老は2匹を交互に見ながら言いました。

「賢いお二方が、なにゆへ、そんなにもめているのです」

その言葉を聞いて、カメの長老が仲裁に来てくれたと思い、
すがるような口調で、クジラが言いました。

「聞いてくださいよ長老、コイツが俺のエサ場を横取りしようと、
 来やがったんだ」

するとすかさずイルカが、

「それは誤解です長老、
 ここはクジラさんだけのエサ場では無いはずです」

「いいや、ここは爺ちゃんのそのまた爺ちゃんの、
 そのまた爺ちゃんの時代から、俺のエサ場だったところだ」

「うそつけ!」

「うそじゃない!」

と、またヒートアップしそうだったので、

「まぁ、まぁ」

カメの長老は間に入り言いました。

「お互い、いい分はあるだろうが」

イルカとクジラはどんな仲裁案が出るのか、
カメの長老をジッと見つめました。

「どうだろう、お二方が揉めたいのであれば
 別の場所でお願いできないであろうか」

「え?」

仲裁案が出るかと思っていたイルカとクジラは
少しびっくりした顔をしました。

カメの長老は続けます。

「お二方が揉めるのは勝手だが、海の下の方では
 お二方が起こす水流で魚たちがたいそう困っている」

「そんなの関係ありません!」

と、イルカが言いい、クジラも

「そうだ! これは俺たちだけの問題だ!」

と、同意の表情と共に言いました。

カメの長老は少し強い口調で言いました。

「クジラさん、あなたは良く、自分たちは魚に比べて
 賢いと言っていますよね」

クジラは呆気にとられた表情をしていると、
イルカが「ざまーみろ」という表情をしましたが、

「イルカさん、あなたも同じです」

と、カメの長老に言われ、恥ずかしそうにうつむいてしまいました。

「本当に賢いものというのは、世の中のために活躍するものです。
 ましてや、他の生物が困るようなことは決してしないものです。
 お二方も、本当に賢いのですから、そこは当然お分かりですよね」

イルカもクジラも立場無さそうな顔をしました。

そして、カメの長老は続けます。

「わたしも、こんな話は賢い者にしか言いません。
 お二方だからこそ、お話するのです」

イルカもクジラも黙りこくってしまいました。

やがて、イルカが静かに言いました。

「カメの長老には叶わないな」

そして、静かにきびすを返すと、泳いで行ってしまいました。

クジラも別の方向へ泳いで行きました。

カメの長老はそれを見届けると、海の中を潜っていきました。

そして、帰りを待っていた魚たちに声をかけました。

「すべて、このカメの長老が解決したぞ」

「ありがとうございます!」

と、アジとイワシが声を上げ、サバは大きくシッポを振りました。

そしてカメの長老は足を翼のように広げ、
魚の上を円を描くように一周すると、
勢いよく泳いで行きました。


おしまい。



今回のもとのお話はコチラ

福娘童話集『 イルカとクジラとハゼ 』

http://hukumusume.com/douwa/pc/aesop/04/13.htm



━━━ お話はここまで ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



ご意見ご感想、お待ちしています(^0^)/


2018年3月7日水曜日

カエルの家探し

ある沼に2匹のカエルが住んでいました。

春のころにこの沼に移り住んで来たのですが、
夏になって日差しが強い日が続くと、段々水が少なくなってきて、
とうとう沼の水はカラッカラに枯れてしまいました。

「どうしようねぇ」

カエルたちは話し合いました。

「このままでは私たちも干からびてしまうから、
 どこか他に住むところを探しましょうか」

「そうだね、早速、探しに行こう!」

2匹は旅支度をして新しい住みかを探しに出かけました。

“ぴょ~んぴょん”

と、軽快な足取りで旅を始めた2匹でしたが、
外は暑い日差しです。

「暑い~ねぇ」

「ハイ、地面も熱くて足がヒリヒリしてきました」

夏の暑さは徐々に2匹の体力を奪っていきました。

「疲れたねぇ」

「疲れました~」

2匹とも、体力がないわけではありませんでしたが、
暑さで足はフラフラ、目はグラグラしてきました。

「あ、アレは」

1匹のカエルが前を向いて言ったので、
もう1匹も目線を前に向けました。

「アレは、人間が作った井戸ではないでしょうか?」

「そうだね、アレ、井戸だよね」

「井戸なら、水がありますね!」

2匹は疲れが少し吹っ飛び、ぴょんぴょん、と足取り軽く
井戸に向かって跳ねていきました。

井戸に着いて縁から中をのぞくと、

「水だー!!」

下の方に水があるのが見えました。

「よーし、飛び込もう!」

と、1匹が言うので、

「待って、」

と、もう1匹が止めようとしましたが、
それよりも早く、1匹は井戸の中に飛び込んでしまいました。

“バシャーン!”

と、水しぶきを上げて飛び込んだカエルが、

「気持ちい! 君も早く飛び込みなよ!」

井戸の縁で眺めていたもう1匹のカエルは、
飛びこんだカエルがあまりにも気持ちよさそうだったので、
頭ではダメ、と思っていましたが、体がかってに反応してしまい、

“バシャーン!”

と、思わず飛び込んでしまいました。

「気持ち―ぃ!!!」

井戸の水は冷たくて最高な気分でした。

気持よく水の感覚を味わっていると、
最初に飛び込んだカエルが言いました。

「ねぇ、ここに住んじゃおっか!」

ニコニコ笑顔で言うカエルに、後から飛び込んだカエルは、
「えっ」と困った声を出してから言いました。

「確かに水があって気持ちいいですが、水から上がりたいときは
 どうします? 座ってられるところありませんよ」

「えーとー」

最初に飛び込んだカエルは少し考えてから、

「そうだ!」

と、井戸のカベに向かってジャンプして張りつきました。

「こうやって休めばいい」

後から飛び込んだカエルはなにも言わずに、
カベに張り付いているカエルを見つめました。

カベに張り付いたカエルは、始めのうちは
しっかりとカベに張り付いていましたが、
すぐに疲れて来たのか、ズルズルと落ちて来て、
たえきれなくなって、ポチャン、と、さみしく水に落ちました。

「私たちはずっと水の中にいる訳にはいきませんから、
 ここで生活するのは無理ですね」

後から飛び込んだカエルがそう言うと、カベから落ちたカエルは、
てへへへ、と、照れ笑いをしました。

後から飛び込んだカエルが、

「それよりも、ここから出るのが大変そうです」

そう言って上を向いたので、
カベから落ちたカエルも見上げました。

カベに張り付いているだけでも結構大変なのに、
上まで登るのは、相当、疲れそうだと思いました。

「飛びこむ前に、ちょっと考えれば良かったですね」

と、後から飛び込んだカエルが言うので、

「とりあえず、もうちょっと体力が回復してから、
 のんびりと、登ろう」

カベから落ちて先に飛びこんだカエルが言いました。

それから2匹のカエルはしばらく水の中で休んでから、
井戸のカベを登り始めました。

時間をかけてやっと井戸の縁まで来たときは、
2匹とも疲れ果てて、井戸に飛びこむ前よりも
ヘトヘトになっていました。

「とりあえず、今日のところはもとの沼に帰ろうか」

「そうですね、あそこなら水はありませんが、
 眠るところはありますからね」

2匹は足取り重く、ぴょよ~ん、ぴょよ~ん、
と沼へ帰っていきました。

帰り道は、夕方だったので昼間のような日差しではありませんでしたが、
それでも、暑くてたまりませんでした。

やがて、足取り重く跳ねていたカエルの頭に、

“ポタッ”

と、何かがあたりました。

“ポタッ、ポタッ、ポタッ”

雨のようです。

「ふ~ぅ、これで少しは暑さが和らぐね」

「そうですね、助かります」

2匹は雨に打たれて、少しだけ元気が湧いてきて、
ぴょん、ぴょん、と軽い足取りで沼に帰っていきました。

しばらくして沼にたどり着くと、2匹はびっくりしました。

「あ、沼に水がある!」

2匹は笑顔でお互いの顔を見ながら、

「良かったね」

「ハイ、またここで暮らせますね!」

と、大喜びで沼の水に飛びこみました。

そして2匹のカエルは沼の水から顔を上げて、

「ここが一番だね~」

「そうですねぇ、ここが一番です」

と、言いながら、しばらく沼の水に身を任せ、
ぷかぷかと、の~んびり浮かんでいましたとさ。


おしまい。



今回のもとのお話はコチラ

福娘童話集『 水の枯れた沼のカエル 』
http://hukumusume.com/douwa/pc/aesop/04/09.htm



━━━ お話はここまで ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



☆ちょこっとHappy♪☆


先が見えないときって、不安ですよね。
住んでいた沼の水がなくなって、
カエルたちはとても不安だったと思います。

カエルたちは新しい住みかを探す旅に出かけますが、
うまくいかず、結局、もとの沼に帰ってきました。

先が見えないとき、不安になることは良くあります。
状況を変えようと何か行動を起こしたくなりますが、
うまくいかないことが多いような気がします。

あたりまえですが、行動はよく考えてから起こす方が
失敗は少なくて済みます。

不安にかられて良く考えずに行動してしまうと、
うまくいかないのは当たり前なのかもしれません。

今回のお話のように、もといた所に戻ることができれば、
行動を起こしやすいですが、転職など、もとに戻ることが
できにくい状況では、よく考えてから行動したいものです。

とは言え、先が見えないときは不安で、
なにか行動を起こしたくなってしまうものです。

そんな衝動に駆られたときは、ちょっと落ち着いて、
先ではなく、周りを見渡してみてはいかがでしょう?

先は見えなくても、周りなら見渡せるはずです。

周りを見渡すと、良いことがあるかもしれません。
良いものを持っていることに気づくかもしれません。
先がちゃんと見えることが見つかるかもしれません。

不安だからと、闇雲に行動する前に、周りを見つめて、
先が見えそうなものを見つけてから、
ゆっくりと動き出すと、案外うまくいくかもしれませんね。


今日のHappy♪ポイント

『 見えない先より、見えるところを、よ~く見みる 』


ご意見ご感想、お待ちしています(^0^)/


2018年3月5日月曜日

【日記】大変ご迷惑をおかけしました

リンク切れを起こしてしまい大変ご迷惑をおかけしました。
私の設定がまちがっていたようです(^◇^;)

なにはともあれ、本日から復旧致しました!
そして、ブログもリニューアルです(^-^)

これからも Happy♪ なお話を更新していきます!

変わらぬご愛顧のほどを。

お楽しみ!(^^)v

2018年3月3日土曜日

ネコとオウムの合唱団

「ん、なんだか騒がしいなぁ」

お気に入りのソファーでお昼寝をしていたネコは、
なにやら聞きなれない声で目を覚ましました。

「ピヨピヨピ~♪ ヒュルルルルル♪」

目をこらして見ると、天井から
カゴがぶら下げられているのが見えました。

ネコが近寄って行くと、中には鳥がいました。

「ピィピッピ~♪ ヒュルルルルル♪」

ネコより一回りくらい小さな体の鳥は、
羽の部分が緑色で全身はオレンジ色をしていて、
キレイな声で鳴いていました。

「ヒュルル~♪ ヒュルルルルル♪」

この家にずっと住んでいるネコは、昼寝を邪魔されたことを
一言文句を言ってやろうと声をかけました。

「昼寝の邪魔して、あんたは誰だい?」

鳥は鳴くのやめてネコの方を見ました。

「あ、あなたはこの家のペットの先輩のネコさんですね。
 こんにちは」

先輩などと言われ、ちょっと照れくさいネコは、
なにも言わず不愛想に軽く頭を下げました。

鳥は話を続けます。

「私はオウムと言います。ここのご主人さまに飼われ
 本日からお世話になることになりました。
 どうぞよろしくお願いします」

オウムはそう言うと、深々と頭を下げました。

ネコは退屈そうな顔をしてから言いました。

「なんだ、あんた新入りかぁ」

「ハイ!」

と元気に挨拶するオウムにネコは、

「オウムとか言ったねぇ、さっきまで大きな声を出していたけど、
 あんたは大きな声で鳴くのが好きなのかい」

「ハイ! あっ、でも、あれは鳴いていた訳ではなく、
 歌っていたのです」

「歌?」

「ハイ! 私は歌うのが大好きなんです!」

と、答えるオウムにネコは悲しい表情を浮かべて言いました。

「それは残念だったなぁ」

「え?」

オウムがキョトンとした表情で聞き返すとネコは、

「ここのご主人は、大きな鳴き声が大嫌いでねぇ、
 さっきみたいに大声を上げて鳴いていると、
 きっと外に放りだされるよ」

オウムは「鳴き声ではなく歌です」と言ってから続けました。

「えっ、それは本当ですか? おかしいですね」

オウムは首をななめに傾けたので、
ネコもつられて首をななめに傾けました。

オウムは続けます、

「ご主人さまは私の歌声を
 たいへん気に入ってくださったんですよ」

「なんだって?」

ネコは静かに驚きました。

そして、

「それはおかしい、おいらが鳴くとご主人は
 “うるさい!”っていつも怒鳴るんで、
 おいらはなるべく鳴かないようにしてるんだ」

ネコは反対側に首を傾けました。

「う~ん」

オウムも首をななめにして考えてから、
「試しに~」と、おそるおそる訪ねるように、

「先輩、一度、外に放り出されたときのように、
 声を出してもらえませんか?」

「え、声か? 普通だよ」

と、ネコは言ってから、外に放り出されたとき声を上げました。

「ンギャギャギャギャ~!!」

その声に、オウムは思わず羽で耳をふさぎました。

ネコは何食わぬ顔でオウムを眺めました。

オウムは羽を耳から外して言いました。

「ネコ先輩。ご主人さまが外に放り出した理由が私には分かりました」

「え! ホント?」

「ハイ、きっと声の出し方に問題があると思うんです」

「声?」

ネコがキョトンとした顔をしていると、

「そうだ先輩、私、歌を教えますよ」

「歌?」

「ハイ、声の出し方さえ変えれば、
 きっと外に放り出されることは無くなりますよ」

「ホントに?」

「ハイ、だって先輩、声はステキですもん」

「おいらの声がステキ?」

「ハイ、とっても魅力的です」

「魅力的……」

ネコは、内心“ポッ”っと赤くなりました。

そして、

「おいらに、歌、できるかなぁ」

「ハイ、私が教えます! 上手くなったらご主人さまの前で
 披露しちゃいましょう!!」

と、オウムが言い、ネコがなんとなく同意すると、
次の日から歌の猛練習が始まりました。

「上手になって突然披露して驚いてもらおう」
とオウムが言ったので、練習はご主人がいない昼間に行われました。

朝、ご主人が出かけると、練習が始まります。

ネコは必死に頑張りました。

最初はオウムの歌声に、
まったく合わせることができませんでした。

オウムはまずは発声の練習から教えました。

それまで、ただ闇雲に声を出していたネコは、
声を出すときの強さを調整することを練習しました。

そして、キレイな声を出すには音色も重要だということも知り、
いろいろな音色を出す練習もしました。

最後に、歌を歌うには音程があることを学び、
繰り返し、繰り返し練習しました。

日が経つにつれて、徐々にネコは良い声を出せるようになり、
最初は難しかった、オウムの歌に合わせて声を出すことが
段々できるようになって行きました。

こうして練習を始めて、
あっとう言う間に1ヶ月が経ちました。

その日の練習が終わったあと、オウムはネコに言いました。

「もう完璧です!
 先輩、今日、ご主人さまが帰ってきたら、
 披露しちゃいましょう!」

「い、いよいよかー」

「先輩、緊張してますか? 大丈夫ですよ!
 たくさん頑張ってきたじゃないですか!
 カッコよくできますよ」

「そ、そうかなぁ」

「ハイ、大丈夫です! 自信もって!」

「う、うん、分かった」

ネコは頷きました。

そして、玄関の方から物音が聞こえました。

「あ、帰ってきましたよ」

と、オウムが言いました。

ネコは“フーゥ”と、息を吐きました。

部屋の扉は閉まっていて玄関は直接見えません。

ご主人は玄関で靴を脱いでいる様子です。

玄関から、この部屋までは少し廊下があり、
まだ、この部屋に来るまで時間があります。

ネコは息を吐き出してから、オウムの方に目をやりました。

そして、

「ありがとな」

と、言いました。

「せんぱーい!! 泣かせないで下さいよー」

オウムは涙目になりながら、
羽を持ち上げて「大丈夫!」の仕草をしました。

ご主人が廊下を歩いてくる音が聞えました。

ネコは、ご主人が入ってくる扉をジーッと見つめました。

心臓は、今まで体験したことがないほどバクバクしていて、
全身の毛の全てが逆立っているような感じがしました。

そして、ネコが見つめている扉が静かに開きました───。


───数日後。

「ピィピッピ~♪ ヒュルルルルル♪」

オウムは今日もご機嫌に歌っています。

ネコはソファーに丸くなって、ウツラウツラまどろみながら
オウムの歌を聞いていました。

ネコはあの日以来、あまり歌を歌っていませんでした。

歌を歌うのは特別な日と決めていたからです。

歌を初めて披露したあの日。

それは特別な日になりました。

ご主人は信じられないというような驚きの表情を見せ、
今までになかったくらいネコを撫でまわし喜びを爆発させました。

ネコはとても嬉しくて嬉しくてたまりませんでした。

あんなに喜んでいるご主人を見たのは初めてだったし、
あんなに撫でまわされたのも初めてでした。

その日の夕飯が特別美味しかったのも覚えています。

それはネコにとって本当に特別な日、そして、
とても嬉しい日になりました。

だから決めたのです。

これからは歌うのは特別な日だけにしようと。

それをオウムに伝えると「先輩らしいですね」と
声をかけてくれました。

歌を歌うことで、ご主人との特別な日が増えることを、
ネコは楽しみにしながら、今日も何気ない日を過ごしました。


おしまい。



今回のもとのお話はコチラ

福娘童話集『 オウムとネコ 』
http://hukumusume.com/douwa/pc/aesop/04/08.htm



━━━ お話はここまで ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


☆ちょこっとHappy♪☆

あなたは何か成し遂げたことはありますか?

私は何一つ長続きがしない人生を送って来たので、
何かを成し遂げる、という経験があまりありません。

なので、今回のネコのような気持に果たしてなるものなのか、
正直、良く分かりません(^^;;

「何かを成し遂げる」

と言うと、何か大事(おおごと)のような感じがしますが、
本当は、小さな成功の積み重ねなのだと思うのです。


「ペンギン・ハイウェイ」森見 登美彦 作


という小説の主人公の少年のもっとうは

“昨日の自分より偉くなる”

です。

昨日の自分と比べて「成長できている」と
感じられることを毎日毎日やっていく。

その積み重ねが、何かを成し遂げることに
繋がっているような気がします。

お昼寝でもしながら肩の力を抜いて、
昨日よりちょっとだけ成長していきましょう。


今日のHappy♪ポイント

『 昨日の自分より、今日の自分の方がスゴイですか? 」


ご意見ご感想、お待ちしています(^0^)/


2018年3月1日木曜日

【日記】仮オープン!!

ようこそ! 童話でHappy♪へ!!

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