※しばらくの間、童話の更新は週1回(土曜日の夜)のみになりますm(_ _)m

≫≫≫ ☆ もくじ ☆ ≪≪≪

2017年12月2日土曜日

忘れな草

「危ないよ! やめなよ」

女の子は叫びました。

「大丈夫だよ、すぐ採ってくるから」

男の子は笑顔でそう言いました。

二人は大の仲良しで、今日は近くの山へ遊びに来ています。

崖に囲まれた場所で二人は話をしています。

「すぐって、崖の上だよ、どうやって登って行くの?」

「大丈夫さ、力には自信があるから」

男の子は力こぶを見せました。

今からほんの少し前のことです。

二人が山を歩いていると、崖に囲まれたところにたどり着きました。

「わぁ、可愛い花が咲いてる」

女の子は崖の中腹あたりを見つめて言いました。

男の子は目をキラキラさせている女の子の横顔から、
目線を崖の中腹にうつしました。

「ホントだ、キレイだね」

そこには、小さな青い花がありました。

崖の頂上から落ちる滝の側で、小さな体に青い花をたくさんつけて、
健気に咲いています。

「ボクが採ってくるよ!」

「ダメだよ、危ないよ、落っこちたらどうするの?
 下は流れの速い川よ」

崖の頂上から滝が流れ、川は、ザアー、ザアーと
音をたてて勢いよく流れています。

「平気だよ、泳ぎには自信があるから」

泳ぐ真似をしている男の子に、女の子は近づいて力強く言いました。

「ダメよ、イイ、よく聞いて───」

女の子は、男の子の両腕を掴み、
ギュッ、っと力を入れて握りしめました。

「もう分かった、分かったよ、痛いから、腕、離してよ」

「行かない?」

「うん、行かない」

男の子が神妙な顔で言ったので、女の子は手を離しました。

すると男の子は、

「へへへへーッ」

と、いたずらっぽい声を上げきびすを返すと、
あっという間に崖を登り始めました。

「もう、やめなって言ってるのに!」

そう言う女の子の言葉が聞こえないかのように、
男の子は滝の水しぶきを浴び、びしょびしょになりながらも、
崖をよじ登っていきました。

女の子は落ちないかと心配で、
手を祈るように組んで見つめています。

男の子が少し登ったところで足を滑らせました。

「キャッ」

女の子は小さく悲鳴を上げました。

男の子は体勢を整えて、

「大丈夫!」

と笑顔を女の子に向けました。

そして男の子はなんとか青い花に手が届くところまでよじ登り、
手を伸ばし花を掴むと、女の子に向けて手を上げました。

女の子の表情が少し明るくなりました。

「あっ、」

一瞬の出来事でした。

男の子の右足が濡れた石で滑り行き場を失いました。

花を持つ手を高く上げていたので踏ん張れず、
バランスを崩した男の子の体は、
そのまま真後ろに倒れて行きました。

女の子は息をのみ、体を硬直させました。

そして何もできず、後ろ向きに落ちていく男の子の姿を、
ただ呆然と眺めていました。

女の子には、時がゆっくりと動いているように感じました。

ゆっくりと落ちていく男の子。

女の子の耳には何も入って来ず、とても静かでした。

静かに落ちていく男の子。

落ちていく男の子を、ただただ見ていると、
ふと男の子は女の子の方を向きました。

そして男の子は笑みを浮かべて言いました。

「受け取って」

男の子の手から青い花が投げられました。

ゆっくりと、弧を描いて飛んでくる青い花に
女の子は手を伸ばしました。

青い花は、ゆっくりと女の子の手の中に降りてきました。

女の子は青い花を静かに手に乗せると、
愛おしむかのように、優しく包みました。

“バシャーン!!!!!”

男の子の体は、川の中に落ちました。

女の子は “ハッ” として、慌てて男の子に近づきます。

男の子は顔を出し、片腕を大きく上げていました。

川の流れが速く、男の子の体はどんどん女の子から離れていきます。

女の子は、流される男の子を追いかけました。

石だらけで足場が悪い地面につまづきながらも、
必死に女の子は走りました。

しかし、追いつけません。

女の子の耳には、ゴーッ!ゴーッ!、
という川の音だけが聞こえました。

それは男の子を飲み込もうとしている
荒々しい生き物の叫び声のように聞こえました。

「イヤーッ!」

思わず女の子は叫び声を上げました。

すると、流されながら男の子が言いました。

「ボクのこと、忘れないで……」

川の音で消え入りそうな男の子の声を、
女の子は必死で聴こうとしました。

男の子はどんどん川に流されていきます。

それでも必死にもがき顔を出しました。

女の子も男の子から離れないように走っています。

男の子の顔は川から出たり入ったり繰り返しています。

女の子は、男の子を絶対に見失わないよう目をこらします。

男の子はなんとか川から顔を上げて、女の子の方を向きました。

女の子は男の子の目をしっかりと見つめました。

男の子も女の子の視線をしっかりと受け止めました。

そして男の子は消え入るような声で言いました。

「───大好きだよ…」

川の音に邪魔されず、女の子に、はっきりと伝わりました。

そして、それが女の子が聴いた男の子の最後の言葉になりました。

女の子は一生懸命走りました。

男の子を見失わないように目をこらしました。

しかし、追いつけぬまま、
男の子の体は、ついに見えなくなってしまいました。

女の子はその場にしゃがみ込みました。

そして、女の子は一言、呟きました。

「私も、大好きだよ」

両手には青い花が握りしめられていました。



「さっきまで、二人であんなに楽しく山を歩いていたのに、
 なぜ、どうして、こんな、こんな……。
 と、女の子は涙をこぼしました」

と、女の子は言ってから、

「って、こんな悲しいお話が出来上がっちゃったら、
 どうするのよ!」

女の子は握った手に力を込めて男の子に向かって言いました。

二人は崖に囲まれた滝の近くにいました。

「痛いよ、分かった、分かったよ」

男の子は、両手を引っ張られ、嫌そうに言いました。

「ホントに?」

女の子の真っすぐな視線を向けられ、男の子は少し視線をずらして、

「うん」

と、頷きました。

女の子は、ジーッと、男の子の目を見てから、
手を放しました。

男の子は解放された手を擦りながら、

「ったく、相変わらず物語作るのが好きだな、小説家にでもなれ」

女の子はニコッと笑うと、

「じゃっ、いこ」

と言って、今度は優しく男の子の手を繋ぎました。

男の子は女の子に引っ張られ歩き出しました。

ふと、崖の花を見上げました。

男の子は、崖に咲いている青い花を眺めながら、
ふとあることに気付きました。

「あ、」

「どうしたの?」

不思議そうに尋ねる女の子に、男の子はニッコリ笑い、

「ううん、別に」

「変なの」

と、プイっと向こうを向いた女の子の後ろ姿に、
男の子は小声で呟きました。

「ボクも好きだよ」

「え? 何?」

ふり返った女の子に、

「なんでもない!」

男の子は笑顔で言って、

「へへへへーッ」

と、いたずらっぽい声を上げ、女の子を抜いて先に走り出しました。

「もう、待ってよ」

二人は崖に囲まれた場所を後にして、
楽しく山を降りていきました、とさ。


おしまい。



━━━ お話はここまで ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



☆自己啓発もHappy♪☆


今回のもとのお話はコチラ

福娘童話集『 忘れな草 』
http://hukumusume.com/douwa/pc/world/02/27.htm


チャンスだと思っていたのに、
うまく生かせなかった経験ありませんか?

そういう経験って、後悔として残っちゃったりするんですよね。

あの時「こうしてればなぁ~」とか
「こうなってたらな~ぁ」とか。

この物語の男の子も、女の子にいいところを見せられるチャンスだと
思ったのに、女の子から止められてチャンスを逃してしまいました。

でも、チャンスを逃したように思えても、いい方に進んでいることを、
この物語を読んだあなたは分かっているハズです。

自分では、チャンスだと思っていることって、自分の思い込みで、
実は、チャンスですらなかったのかもしれません。

それを生かせなかったと、後悔しているなんて、
もったいない話です。

「なるようにしかならない」

人生を悟ったような人がよくそう言いますが、
本当に、そうなのかもしれませんね。


今日のHappy♪ポイント

『 すべては、なるようになった、それだけです。 』


ご意見ご感想、お待ちしています(^0^)/


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