※しばらくの間、童話の更新は週1回(土曜日の夜)のみになりますm(_ _)m

≫≫≫ ☆ もくじ ☆ ≪≪≪

2017年10月25日水曜日

お侍さんを黙らす方法

むかしむかし、表町の隠居(いんきょ)と横町の隠居がいました。

二人は、自分たちの店を息子に任せ、
朝から、表町の隠居の家の前で長椅子に座り、
大好きな将棋をさしていました。

すると、どこからともなく、お侍さんがやってきて、
不意に地面にしゃがみこんで、二人の対局をのぞきこみました。

お侍さんは、しばらくは黙って見ていましたが、
やがて隠居たちが一手さすたびに、

「あ~ぁ、その手は、ダメだろう!」

「いやっ、そこは銀を動かさなきゃ!」

「お、それはいい手だ、それでは、飛車を動かすしかねぇな」

と、やかましく口を出してきました。

隠居たちは、しばらくはがまんしていたのですが、
気の短い表町の隠居が耐えられなくなり、

「コレ、少しは黙っておれ!」

と、お侍さんの頭をもっていた扇子(せんす)でポンと叩きました。

お侍さんは、びっくりしたように目をまん丸に開けて、
叩かれたところを手で抑えました。

そして、なにも言わず、その場から立ち去りました。

「これで集中して将棋ができる」

と、表町の隠居は言いましたが、人の良い横町の隠居は、

「将棋は静かでやりやすくなったが、
 お侍さんの頭を叩いたのは、まずかったんじゃねぇか?」

「あ、そうか、相手はお侍だったか、カッとなって、
 つい手を出しちまった」

この時代、お侍さんは、隠居たちのような商人よりも身分が上で、
怒らせると、命をうばわれるかもしれないほど、こわい存在でした。

「あやまった方がいいかなぁ」

「そうだな、すぐにあやまったほうがいい」

「よし、あ、でも、あの人の住まいはどこかのぉ」

「あ、それはわしも知らんわい」

と、隠居たちがのんきに話していると、
先ほどのお侍さんが帰って来ました。

地面に、どかっ! と腰を下したお侍さんの姿を見て、
隠居たちは目を丸くしました。

お侍さんは、頭に兜(かぶと)をかぶって来たのです。

表町の隠居は、お侍さんをしばらく見てから、
横町の隠居のほうを見ました。

横町の隠居も驚いた表情をしていましたが、
アゴを前にだして、ホレ、とあやまるように指図しました。

表町の隠居は、

「先ほどは、つい、カッとなり、
 手を出してしまい申し訳ございませんでした」

と、丁寧に言って、頭を下げました。

すると、お侍さんは大声で笑い、

「気にするな、こうして叩かれてもいいように、
 兜をかぶってきた、ほれ、将棋を始めろ」

と、手をパンパンならしました。

隠居たちは不思議そうな表情で目を合わせましたが、
気を取り直して、将棋をさし始めました。

すると、お侍さんは、

「そこは桂馬での方がよかった」

「いわんこっちゃない、最初に取っておけばよかったんだ」

「なんでその手をさすかなぁ、
 金を下げれば逃げられてしまうじゃないか」

と、また口を出して来ました。

隠居たちは、相手はお侍さんだからとがまんしていましたが、
気の短い表町の隠居は、扇子を手にすると、

「黙っておれと言うとるに!」

と、無防備なお侍さんのお腹を突っつきました。

びっくりしたお侍さんは、突かれたお腹に手を当てて、

「くそー、今度は腹かーぁ」

と言いながら、その場を離れて行きました。

お侍さんがいなくなると、横町の隠居が慌てて言いました。

「ほら、短気を起こしちゃいけねぇよ、相手はお侍さんだってのに」

「分かってんだ、分かってんだけど、つい……」

と、隠居たちが話していると、お侍さんがまたやって来ました。

ドサッ、と地面に座るお侍さんを見て、隠居たちはビックリしました。

今度は全身、鎧(よろい)を着ているではないですか。

お侍さんは機嫌のイイ口調で、

「将棋も戦(いくさ)じゃからなぁ、
 見る側もそれなりの格好で見ないとな」

と、兜を叩き、鎧のお腹の辺りを触りました。

「さぁさぁ、始めなされ」

お侍さんは大声で言いました。

隠居たちは、やれやれ、という表情で将棋をさし始めました。

「ほら、下手くそ、そんな手があるか」

「うわぁ、そんな手を打つならやめちまえ」

「ダメだ、話にならん、下手な手だ」

と、お侍さんは言いたい放題、口を挟んできました。

しばらく耐えていた表町の隠居でしたが、
カッ、となって、扇子を手にしました。

それを見て、横町の隠居が手を伸ばし、扇子を抑え、
やめとけ、と言わんばかりに首を横に振りました。

「どうした、対局が進まねぇなぁ、早よさせ」

と、なかなか隠居たちが次の手をささないので、
お侍さんはしびれを切らしてそう言いました。

そして、ニヤっと不敵な笑いを浮かべながら、

「それともなにか、また扇子で叩くのか? それとも突くのか?
 やれるもんならやってみろ」

と、兜と鎧をこすりながら高笑いをしました。

その言葉で、カチン、ときた表町の長老は、扇子を振り上げました。

しかし、完全武装のお侍さんのどこにも叩く場所がありません。

「どうした、叩かんのかぁ」

とお侍さんは、表町の隠居をバカにするように言いました。

扇子を振り上げたまま手出しできないで震えている表町の隠居に、
お侍さんは、勝ち誇ったような顔を向けていました。

その時、横町の隠居は立ち上がりました。

そして、素早い動きで、お侍さんの、わきの下に両手を入れました。

そこには鎧がありませんでした。

呆気に取られているお侍さんに、横町の隠居は、

「お侍さん、うるさくすると、こうですよ!」

と、言って、

「コチョコチョコチョ」

と、お侍さんのわきの下をくすぐり始めました。

「こ、ハハハ、これ、ハハハ、な、ハハハなにをする」

お侍さんは文句を言いながら、
くすぐったくて笑いが止まりませんでした。

横町の隠居は、さらにくすぐり続けました。

「ハハハ、これ、ハハハ、やめないか」

お侍さんは、体をクネクネさせて、笑い続けました。

横町の隠居は手を休ませません。

「ハハハハハハ、くるし~、ハハハハハハハハ、」

お侍さんは笑いが止まりません。

そして、さんざん笑い転げたあと、

「分かった、分かった、降参じゃ、わしの負けじゃ」

と、涙を流しながら言いました。

横町の隠居は手をわきの下から離しました。

「ふーっ」

と、お侍さんは息をついて、

「悪かった、もう口出しはせん、おとなしく観戦しよう」

と言って、座り直しました。

やがて、隠居たちは将棋をさし始めました。

それを、お侍さんは鎧を着たまま静かに眺めていました。

通りを歩く人たちは、その光景を横目で見て、

なにごとか? 

と、首をかしげていきましたとさ。


おしまい。



今回のもとのお話はコチラ

福娘童話集『 叩かれても安心 』
http://hukumusume.com/douwa/pc/kobanashi/01/25.htm



━━━ お話はここまで ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



☆ちょこっとHappy♪☆


嫌なことをされると、つい怒っちゃいますよね。

怒って効果があるときもありますが、たいてい、
怒りは怒りでしか返ってきません。

戦争なんて、まさにそれですよね。

そんなとき、今回の横町の隠居みたいに、
怒り以外で返せるとイイですよね。
しかも、相手を笑わせられたら、理想的です。

でも、なかなか怒りを覚えたときに、
とっさに違う方法をとるのは難しいですよね。

なので、普段から、怒りに対しての返し方、を
練習しておくといいと思います。


急かされたら

「いまやっていますので、少々おまちください」


嫌味を言われたら、

「その言い方は、どうかとおもいますが」


バカ、って言われたら、

「バカと行った方がバカだ!」


などなど、自分なりの返し言葉を作っておくとイイと思います。


お釈迦さまは真実を伝えるとき、
相手を敬いながら、尊厳を傷つけないように、
ユーモアを交えながら、伝えるそうです。

※詳しくは管理者日記 ブッダのユーモア を読んで!

お釈迦さまのようにはできませんが、
少しでも近づけるように練習しておくといいと思います。


今日のHappy♪ポイント

『 怒りはユーモアで返しましょう! 』


ご意見ご感想、お待ちしています(^0^)/


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