※童話の更新は週1回(だいたい土曜日の夜)です(^0^)/

≫≫≫ ☆ もくじ ☆ ≪≪≪

2017年8月30日水曜日

王様と望遠鏡

むかし、むかし、ある国に王様がいました。

一カ月前に王様になったとても若い王様でした。

自分の国を立派にし、国民が豊かで健康に暮らせる国にしようと、
志を高くもっていました。

そんな新人王様のもとへ商人がやって来ました。

「今日は、望遠鏡をお持ちしました」

「なんと!!!」

望遠鏡と聞いて王様は大喜び。
ずっと望遠鏡をのぞいてみたいと思っていたからです。

「どれどれ、商人、望遠鏡はどこだ」

王様は早く見せてくれと言わんばかりに、
両手を商人の方へのばしました。

「これにございます」

商人は細長い形をした望遠鏡を差し出した。

「おう、これが望遠鏡か」

王様が望遠鏡を手にすると、
王様の近くにいた家来が王様に声をかけました。

「よかったですね王様」

この家来は、とても頭がよく、
王様がもっとも信頼(しんらい)する者でした。

「おう」

と、王様は満面な笑みをうかべ

「使い方は知っとる、ここをのばしてのぞきこむんだな」

大喜びで窓のそばまで走って行って、
望遠鏡を覗きこみ景色をながめました。

今、王様がいるお城は、高い山の上に立っていて、
城の一番高い場所に、王様の部屋がありました。

ですから、窓からは国中がよく見わたせます。

王様は、国民がどのように暮らしているか、
幸せそうにしているかを望遠鏡を使って観察したいと
ずっと思っていました。

「おお、見える見える、おっ、噴水(ふんすい)だ、
 水のひとつぶひとつぶが見えるぞ」

願いがかなって、王様は大はしゃぎです。

「手をのばせばさわれそうだ」

王様は片方の手をのばして噴水をさわろうとしました。

「よっ、ほっ、はっ」

そんなかけ声を上げて、噴水をさわろうとしている王様に家来は、

「王様、近く見えてもさわることができないのが望遠鏡でございます」

「そうか、目の前にあるように見えて、実はすごく遠いんだったんだな」

そう言って王様はちがう方向に望遠鏡を向けました。

「おっ、今度は何やら人が集まっているな。台の上に人がいて、
 何か話していて、周りの人がその話を聞いておるぞ。
 あいつは、何を話しているのだろう」

と、気になった王様は、のぞいていた望遠鏡を耳に当てました。

それを見た家来は言いました。

「王様、残念ながら望遠鏡を耳に当てても、遠くの音は聞こえません」

「なんだ、そうかぁ、聞けたら便利なのに」

王様は少しがっかりしました。
でも、欲しかった望遠鏡を手にしてるので、
すぐにきげんが良くなりました。

そして今度は、国の入口にある広場の方へ望遠鏡を向けました。

「あ、あれは姉上ではないか、旅から帰って来たのだな」

王様は望遠鏡をのぞきながら、片方の手を大きく上げて、

「おーい! あねうえー!! おかえりなさーぁい!!!!」

と、大声で叫び、手を大きくふりました。

そんな王様を見て家来は言いました。

「王様、あんなに遠くにいるかたには、王様の姿は見えませんし、
 声も届きませんよ」

「そうかぁ~」

と、王様はかたを落として、

「こんなに近くに見えるのに、あちらからは見えんのかぁ……」

そう言ったあと、王様は静かに望遠鏡をのぞきました。

望遠鏡を手にしたときのはしゃぎぶりとはうってかわり、
無言のまま国中を見わたしました。

しばらくして、王様は窓をはなれ、自分のイスに座りました。

商人は、王様の前に片膝をつきました。

「ありがとう、これは国を守るのに必要なものじゃ、
 できるだけ多くそろえてくれ」

と言う王様に、商人は深々と頭を下げ去っていきました。

商人が帰り、王様と家来の二人だけになりました。

王様は静かな口調で、こう言いました。

「わたしは、この城から望遠鏡で国民を観察し、生活を知ろうとした。
 しかし望遠鏡では、国民にふれることも、声をきくこともできない。
 加えて……」

王様はイスから立ち上がり窓に近づき外をながめました。

「わたしがここからながめていても、
 国民にはわたしの姿が見えないのだな」

家来は「ハイ」と答えました。

王様は家来の方へ向き、

「だからわたしは、望遠鏡で国民を観察することは止めにしたい」

家来は静かに王様の話を聞いた。

「わたしは直接、国民のそばに行って言葉を交わし、
 生活を知ろうと思う。
 その方が、ここから望遠鏡で国民を観察するよりも、
 理想の国を作るのに適していると思うが、お前はどう思うか?」

家来は深々と頭を下げながら、

「大変、素晴らしい考えかと存じます」

「そうか」

と、王様は満面の笑みをうかべました。

「では、早速仕度をせい、これから街に降りて国民とふれ合う」

「かしこまりました」

その日から王様は、毎日街に出かけるようになりました。

興味あるものにふれ、分からないことは気軽に国民に声をかけ、
耳を傾けました。

王様に声をかけられ最初はとまどっていた国民たちも、
何度か接しているうちに王様の人がらにひかれていきました。

国民を観察することをやめ、ふれ合うことを選んだ王様は、
国民からしたわれ、その国は豊かで平和な国になったそうです。


おしまい。



今回のもとのお話はコチラ

福娘童話集『 遠めがね 』
http://hukumusume.com/douwa/pc/kobanashi/11/27.htm



━━━ お話はここまで ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



☆ちょこっとHappy♪☆


この物語の王様は、人とふれ合いながら国を治め成功しました。

最初は望遠鏡を使って国民を観察しようとしました。
しかし、それがうまくいかないことに気付きました。

そこで王様は考えを変えました。

望遠鏡で観察することをやめて、
国民に直接会いに行くことしたのです。

王様は望遠鏡のいいところを認め、商人に大量に発注しています。
その上で、想定していた使い道がまちがっていたことに気づくと、
すぐに考え方を切りかえました。

そして変わりのアイデアをだし、人に相談して実行しました。

考えがにつまってしまったときは、本当にこの方法しかないのか
疑ってみるとイイのかもしれません。

1つのことにこだわり過ぎて、考えが広がらなくなっているだけかも
知れないからです。

別の方法を探りましょう。

相談相手がいるのなら、意見を聞くことで、
別の視点が見えてくるかもしれません。

他の方法を探ってみて、何か出口が見つかりそうなら、
思い切ってそちらに方向を変えてみる。

煮詰まった料理を捨てる、または、一旦たなに上げることで、
別の方法を試すことができるようになり、
今度はおいしい料理に仕上がるかもしれません。


今日のHappy♪ポイント

『 1つの考えにこだわらない 』


ご意見ご感想、お待ちしています(^0^)/


2017年8月28日月曜日

明日のひこうき雲

『 明日のひこうき雲 』 八束澄子 作


「14歳の等身大の、恋、友情、葛藤を描く青春小説!」

※この先は、あらすじも含んでいます
最後はネタバレがあるので注意です


主人公は中学二年生の女子。

学校では仲のイイ友だちがいて毎日楽しく過ごしています。
だけど、家に帰れば辛いことが待ち受けています。

家の事情を誰にも話せずにいる主人公。

そんな中、気になる男子生徒が現れる。
男子生徒に近づくために、友だちを巻き込む主人公。

家庭の問題を抱えながらも、彼女たちの恋が動き出す。

学校を舞台にした夢のような楽しい日々と、
家庭を舞台にした厳しい環境。
このギャップがこの物語の核です。

学校を舞台にした物語を読んでいると、
友だちと仲良くなっていくのってこんな感じだったなぁ、
と、遠い記憶が蘇ってきます。

恋も友情も、最初はなんかぎこちないケド、
フトした切っ掛けで急に距離が近くなる瞬間。

あの瞬間って、何なんでしょう、今思い出しても、
とってもフワフワした気分になります。

何かが始まる! という感覚。

そんな感覚も共感できる仲間がいた充実した日々。

当たり前のようにあったそれらのことは、
すごく特別な状況だったと、
この物語は思い出させてくれました。

そう言った意味では、
大人の方が共感できる内容なのかもしれません。

一方、主人公の家庭が舞台の話では、
とにもかくにも弟くんの存在が大きいです。

家庭は仲良しなのが一番、それだけでイイ。それだけで幸せ。
そんな気持ちが弟くんの健気な態度や台詞から伝わってきます。

主人公は弟を見て、いろいろと気づかされます。

自分には出来ないこと、そして、自分の本当の気持ち。

意図せず気づきを与える、恐るべき小1の弟です。

学校でも家庭でも、複雑な出来事を前にしても、
中学生らしい一面が常に描かれている作品。

等身大の中学生の女の子が描かれているだけに、
同世代の読者にはどう伝わるのか分かりませんが、
等身大なので、中学生からだいぶ年月が経った人が読むと、
懐かしいあの日の感覚が蘇ってくる。

そんな本です。


※※※ネタバレ注意!!※※※


ただ、二つの物語が、

絡み合って何かが起こるのを期待していたのですが、
ちょっと触れたなぁくらいで終ってしまったのが残念でした。
まっ、現実はそんなもんなのでしょう……けど……。


※※※ネタバレ注意!!※※※

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2017年8月27日日曜日

ナシ売りと青年

むかしむかしの話です。

青年は、とある街に立ち寄りました。

遠い街に出稼ぎに行き、長い仕事がやっと終わり故郷へ帰る途中です。

青年が街をブラブラと歩いていると、道端で一人の男が
荷車を停めて何かを売っているのが目に入りました。

なんだろうと思い近寄って行くと、甘い果物の香りがしてきました。

「さぁ、さぁ、甘いナシだよ。この辺じゃ取れない、
 甘くておいしいナシはいらんかい」

男は通りを歩く人に声をかけていました。

青年は、給料ももらったし、故郷の土産として買ってみようと思い、
懐の財布を取ろうとしました。

すると、ナシ売りの男に、青年よりも先に近づく者がいました。

ボロボロの服を着たお爺さんです。

髪の毛は長く、まったく手入れしていないような
ボサボサでねずみ色をしていました。

お爺さんはそのボサボサの頭を、
ナシ売りに向かって深々とさげました。

そして頭をあげると力ない声で言いました。

「スミマセンが、ナシを一つ分けてはいただけないでしょうか、
 のどが渇いて渇いて、今にも倒れそうなもので」

声をかけられたナシ売りは、とても迷惑そうな顔をして、

「なんだい爺さん、金は持っているのかい?」

「いや、持ち合わせておりません」

「それじゃ、分けてやれる訳がないだろう、
 ほら商売の邪魔だ、あっち行け」

シッシッ、と手で払う仕草をしました。

お爺さんは、しょぼん、っと肩を落としてその場を去ろうとしました。

「ちょっと待って、お爺さん」

青年はたまらずお爺さんを呼び止めました。
そして、ナシ売りに言いました。

「ナシを一つおくれ、金ならある」

「金があるなら、問題ありませんよ、ハイ、毎度アリ」

青年はナシ売りから渡されたナシをお爺さんの前に出しました。

「お爺さん、食べて」

お爺さんの目は差し出されたナシに、くぎ付けになりました。

すると、ナシ売りの大きな声が聞こえてきました。

「お客さん、そういうことされたら困るんですよね。
 そんな爺さんにやるのなら、私の見えないところで
 やってもらえませんかね」

青年は、ナシ売りの方には目もくれず、

「お爺さん、向うに椅子があります。あそこへ行きましょう」

と、お爺さんを引っ張って行きました。

お爺さんを椅子に座らせ、青年はナシを差し出しました。

「ハイ」

差し出されたナシに、またもやお爺さんの目はくぎ付けになりましたが
慌てて首を振り、

「いっ、いやぁ悪い、若いの、あんたが買ったんだから、
 あんたが食べなよ」

「大丈夫ですよ、ボクはのどが渇いている訳じゃないから、
 さっ、食べて」

「そっ、そうですか、感謝いたします」

お爺さんは差し出されたナシを両手で大切そうに受け取り、
一口かじりました。

「おいしい、おいしいよ」

と言いながら、おじいさんは
あっという間にナシを食べてしまいました。

「ありがとう、ありがとう」

おじいさんは感謝のおじぎを何度も何度もしました。

「いいよ、お爺さん、ボクはナシをあげただけだよ、
 そんなに感謝されても困るよ」

と青年は言ってから、

「じゃ、ボクは行くから、元気でね」

青年は片手を上げて立ち去ろうとしました。

「待ってくれ、若いの」

と、お爺さんは呼び止めて、

「せめてお礼だけでもさせてくれ」

「いいよ、いいよ」

「いや、ダメだ」

お爺さんは力強い口調で言いました。

青年はその声に圧倒され、立ち止まりました。

「いいかい、よーく見てるんだよ」

お爺さんは先ほど食べたナシの芯の部分を、
足元の土に埋め込みました。

「こうやって、埋めてじゃなぁ、手の平をこうやって」

と、空に向かって両手を広げました。

「そして言うのじゃ、のびろ、とね」

お爺さんは青年の顔を見て、

「一緒にやってくれるかの」

「ボクもですか」

お爺さんは力強くうなずいたので、
青年は仕方なく付き合うことにしました。

青年はお爺さんと同じように両手の手の平を空に向けました。

「よい、よい」

お爺さんはうなずいてから、

「それでは参るぞ、せ~のぉ」

『 のびろ!!! 』

二人は声を合わせて叫びました。

すると、地面がらちょこんと緑色の芽が出たと思ったら、
シュルシュルシュル、と勢いよく伸び始めました。

そしてすぐに茶色っぽくなり枝ができ、ポンポンポンと
あっという間に白いつぼみがいっぱいできたかとおもうと、
下の方から、パッ、パッ、パッと、白い花が咲いていきました。

その頃になると、なんだなんだと人が集まって来ました。
その中には先ほどのナシ売りも交じっていました。

白い花はあっという間にちってしまい、
あとにはたくさんの実がみのりました。

青年は、目の前で起きたことに、ただただ驚いて、
両手を広げたまま、口をあんぐりと開けて突っ立っていました。

そんな青年に向かってお爺さんは言いました。

「ナシの実です。おいしいですから食べてみて下さい、さぁ、さぁ」

お爺さんは一つもぎって青年に渡しました。

ナシをもらった青年は、呆気に取られて心ここに有らず、
という状態のまま、ナシを一口ほうばりました。

すると、頭の中が一気に冴えわたりました。

「ウマイ!!」

青年は、二口三口とナシをがむしゃらにほうばりました。

お爺さんは青年の姿を見て微笑んでから、
集まった人たちの方を向きました。

「お集りの皆さん、天下一おいしいナシです。
 早く食べないとあっという間に熟して、落ちてしまいますよ」

と、声をかけました。

集まった人たちはすぐにナシをもぎり、一口食べました。

「ウマイ!」

と言う声がアチコチから上がりました。

そして中には、

「さっき買ったナシ売りのよりも、断然、いや圧倒的においしい」

と言う者までいました。

ナシ売りは呆然とその光景を眺めていました。

お爺さんは、ナシを一つもぎ取り、ナシ売りに渡しました。

「ホレ、お主も食べてみろ」

ナシ売りはナシを受け取り、しぶしぶ、食べてみました。

一口食べた瞬間に、ナシ売りの目が変わりました。

「ウマイ、ウマすぎる」

と、ガブリつくように食べました。

お爺さん青年のところに近づきました。

「おいしかったですか」

「ハイ、それはもう」

「それはヨカッタ、その食べ残した芯の中にあるナシのタネ、
 今すぐ取りなさい。そして大切に持って帰って、
 庭に埋めるといいですよ」

青年はすぐ言われたとおりにしました。

タネをとり終え、お爺さんの方を見ると、
立ち去ろうとしている後ろ姿が見えました。

青年はお爺さんを追いかけようとしましたが、
その途端、ナシの実が次々に地面に落ち、木は、ガリガリガリ、
と音を立てて、あっという間に枯れてしまいました。

青年は枯れていく木を眺めていましたが、ハッ、と我に返り、
慌てて辺りを見渡しましたが、もうお爺さんの姿はありませんでした。

「不思議なお爺さんだったなぁ」

青年は、ナシのタネを大切に懐に入れ、故郷に帰りました。

故郷に帰ったあと青年は家族にこの街であったことを話し、
早速、庭にタネをまきました。

そして家族総出で、両手を天に向けて「のびろ!」と叫んでみました。

ところが、芽は出ませんでした。

何度やっても、芽は出てきません。

ガッカリした青年を家族は慰めてくれました。

青年はあきらめず、毎日、その儀式を行いました。

すると、何日か経ったとき、ちょこんと芽が顔を出しました。

青年は飛び上って喜びました。

その芽は何日もかけて成長していき、何年か後には
天下一のナシよりは若干味が劣るけど、
甘くてとてもおいしいナシの実をみのらせました。

青年はそれを家族で食べ、余ったものはご近所に配り、
さらに余ったものは街で売りました。

その後も毎年ナシの実はみのり、青年と家族は豊かに暮らしました。

青年はたまにあの不思議なお爺さんを思い出し、

「あの方はきっと、神様だったのだろう」

と感謝するのでした。


おしまい。



今回のもとのお話はコチラ

福娘童話集『 ナシ売りと仙人 』
http://hukumusume.com/douwa/pc/world/11/21b.html



━━━ お話はここまで ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



☆ちょこっとHappy♪☆


更新が日曜になってしまいました。
お詫びいたしますm(_ _)m


さてさて、気を取り直して(^^;;

今回は、チャンスは誰にも必ず訪れる、という物語になりました。

お爺さんはナシを青年にだけではなく、集まった人たち、
そして、ナシをくれなかったナシ売りにも渡しました。

青年にだけはヒントを残して去って行きましたが、
ナシをもらった時点では、全員にナシを売って豊かに暮らす
チャンスが与えられました。

ナシ売りも含めて、他のものたちがそのチャンスをものに出来たかは
知りませんが、青年は素直に言うことに従いチャンスをものにしました。

チャンスは誰にでも同じように目の前に現れるそうです。
それをものにするには準備が必要です。

ある意味、青年だけがヒント得られたのは、
準備ができていたということでしょう。

困った人を助けようという心と、半信半疑でも素直に従ってみる
という性格などが準備ということです。

チャンスはチャンスとして分かりやすい形で目の前に現れることは
少ないそうです。

なので、何がチャンスになるか分かりません。

逃さないように普段から準備を怠らないことが大切です。

それには、世の中で「正しい」と言われている生活をすることも
入っているような気がします。

自分がイイと思うことを信じて進むことも、準備となることでしょう。

大事なのは準備を続けること。
だって、いつチャンスがくるか分からないのですからね。

芽が出ないからと言って投げ出していたら、この物語の青年だって、
ナシを売って豊かに暮らすチャンスを失っていたかもしれません。

気を抜いたら、もったいないですよ。


今日のHappy♪ポイント

『 チャンスは忘れたころにやってくる。こっそりと 』


ご意見ご感想、お待ちしています(^0^)/


2017年8月23日水曜日

黒が危ない!

横町の隠居(いんきょ)と表町の隠居が囲碁を打っていました。

二人とも、将棋が大好きで、朝から晩までやっていたのですが、
ちょっと気分転換に、と囲碁を始めてみました。

やってみると結構おもしろく、二人で書物を見ながら、
探り探り楽しんでいました。

今日は、通りに面した表町の隠居の家の玄関前で、
長椅子を置いて囲碁を打っています。

二人が何回か対局している間に、何人もの人の往来がありました。

今も、何回目かの対局を行っています。

この対局は今までになく接戦で、二人ともじっくり考えながら
一手一手を慎重に打っていました。

その為、対局が始まってから、だいぶ時間が経過していました。

二人は、とても集中していました。

そんな静かに白熱した対局をしている二人のところへ、
通りがかりの男が近寄って来ました。

そして、碁盤を見て言いました。

「おっ、黒が危ねぇぞ」

対局に集中していた二人の隠居は同時に男の顔を見ました。

男の顔を二人とも見たことがありませんでした。

きっと囲碁が好きな男なんだろうと思い、
二人の隠居は碁盤に目を戻しました。

黒は横町の隠居の石でした。

今、まさに次の手を打とうと思ったところに『黒が危ない』と
横やりが入ったので、どこが危ないのかじっくり考えました。

横町の隠居は隅から隅まで見渡しましたが、
危ないと言われるほどの場所を見つけることができませんでした。

聴くのもしゃくなので、仕方なく、元々打とうと考えていたところに
石を置きました。

すると男は、

「お、今度は、白も危なくなった」

と、言いました。

横町の隠居は、

(すると、オレが打ったこの手は良かったってことか)

と思い、ほくそ笑みました。

白石は、表町の隠居の石でした。

自分ではさほど危ない展開ではないと思っていたので、
何か見落としているところはないかと、隅々まで確認しました。

(ははーん、ここだな~)

表町の隠居は危ないところを見つけ、パチン、っと白石を置きました。

「どうだ!」

「むむっ」

横町の隠居は痛い手を打たれたと思い、うなり声を上げました。

すると男が言いました。

「ほらほら、白が危ない」

良い手を打ったと思ったのに危ないと言われ、気の短い表町の隠居は、

「危ないことなんてない!」

と、男に言いました。

隅々まで確認して打った手ですから自信がありました。

「いや、危ない、白が危ない」

「そんなことは無い」

表町の隠居は負けずに言いました。

そんなやり取りの最中、横町の隠居は次の一手がひらめきました。

パチン!

と、黒石を打ち、これは会心の一手だと横町の隠居は思いました。

表町の隠居も目を大きく開いて、コレはマズイという顔をしました。

「フッ」

横町の隠居はニヤリと自信の笑みを浮かべました。

「おぉ、黒も危ないままだ」

と、男は言いました。

さすがに堪忍袋の緒が切れた二人の隠居は同時に男を見て、
厳しい口調で言いました。

『どこが危ないって言うんだ!!』

隠居二人に同時に言われて、男はちょっと驚きました。

でも、何食わぬ顔で

「そこです」

と碁盤の上を二か所、指でさしました。

「黒は右上隅の石が、白は右下隅の石が危ないです」

二人の隠居は同時に目を碁盤に向けました。

しかし二人とも指摘されたところを見ても、まったくピンときません。

二人の隠居は碁盤を挟んで、お互いの目を合わせて小首をかしげました。

横町の隠居は、きっと、自分たちでは分からないことがあるのだろう
と思い、男に言いました。

「実は、二人とも囲碁を始めたばかりで、
 どこが危ないのかさっぱり見当がつかん。
 具体的に言っていただけるか?」

すると男は言いました。

「おらも、囲碁のことなんて、皆目わからねぇなぁ~、
 でもよ、さっきっから、黒い石も白い石も、
 今にも落ちそうなんだよ」

男が指さした石は、碁盤の端すれすれに置かれていて、
今にも落ちそうな状態でゆらゆらしていました。

「なぁ~、危ねぇだろぅ」」

と、男は言いました。

隠居は、お互いの目を合わせました。

やっと「危ない」の意味が分かった気の短い表町の隠居は、

「はんっ!」

と、声を吐き、家の中へ入って行きました。

横町の隠居は「教えてくれてありがとう」と男に言ってから、
落ちそうな石を直して、碁盤をゆっくり両手で持ち上げて、
表町の隠居のあとを追って家の中に入りました。

残された男は「ありがとう」と言われたので、

「うん、良いことをした」

と、笑顔で帰って行きました。



おしまい。



今回のもとのお話はコチラ

福娘童話集『 黒があぶない 』
http://hukumusume.com/douwa/pc/kobanashi/11/18.htm



━━━ お話はここまで ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



☆ちょこっとHappy♪☆


中々、自分の気持ちって伝わりません。

それどころか、誤解して伝わっていたりするので厄介です。

言い訳のチャンスも無い場合なんて、どうしたらいいのか、
困ってしまうこともあります。

誤解されるのは、基本的に自分と相手が気持が違うことが
原因なんだと思います。

この物語の登場人物も気持ちが違っています。

隠居二人は、囲碁を打っています。
通りがかりの男は、ただ落ちそうな石を心配しています。

この状態で会話をすると、それぞれの視点で理解しようとするので、
すれ違いや誤解が発生してしまいます。

この場合、誤解を発生しないようにするには、
「これから話すのは“〇〇”の話ですよ」
ということを明確にすることが大切です。

そうすれば聞いているほうも、その気持で聞きますから、
誤解は減り、内容も伝わりやすくなると思うのです。

誤解されることが多い人。
言いたいことが上手く伝わらない人。

まずは「“〇〇”の話です」と伝え、気持ちを合わせることを
意識すると、いいかもしれません。


今日のHappy♪ポイント

『 相手との「気持ち」を合わせよう 』


ご意見ご感想、お待ちしています(^0^)/


2017年8月19日土曜日

将棋のとも

横町のいんきょは将棋が大好きです。

息子に自分の店を任せてからは毎日、将棋をさして暮らしています。

相手は、若いころ商売を初めたときから仲の良い、表町のいんきょです。

商売ではお互い競い合い、仕事が終わると酒を酌み交わし
好きなことを言い合うという付き合いを長年続けていました。

お互い、いんきょとなり、競い合うのは商売から将棋に変わりましたが、
それ以外はなにも変わらない毎日をおくっていました。

今日も、朝から表町のいんきょの家で、将棋をさしていました。

いつもなら、お互い、勝ったり負けたりの勝負になるのですが、
今日は、横町のいんきょの調子が悪いのか、三連敗してしまいました。

「今日はもうやめにするか?」

との表町のいんきょの提案に、一勝もできず悔しい横町のいんきょは、

「あと、もう一回」

と、言って、四戦目に突入しました。

しかし、対局が進むにつれ、横町のいんきょの旗色が
悪くなって行きました。

そして、ついに表町のいんきょに厳しい手をさされてしまいました。

「待った、それ待った!」

横町のいんきょは大声で待ったをかけました。

すると表町のいんきょは不快な顔をしながら言いました。

「またぁ? これで三度目だ、もう、待ったはダメだ」

「そんな、もう一回、これで最後だから、頼む」

「ダメだ、早く負けを認めろ」

「そこを、もう一回、ね」

「ダメだ、ダメだ、ダメだ」

と、表町のいんきょは、頑として譲りませんでした。

朝からの調子の悪さで、ずっとイライラしていた横町のいんきょは、
とうとう、

「あー、もう、やめだ! やめだ!」

と、かんしやくを起こして将棋盤の駒を
ぐちゃぐちゃにしてしまいました。

「なんてことを」

表町のいんきょは驚いた声を上げました。

横町のいんきょは、癇癪の勢いのまま

「長い付き合いなんだから、
 待ったくらいしてくれてもいいじゃないか」

「何度も待ったしてやったじゃないか」

「してやっただと~ぉ」

表町のいんきょが、あまりにも正論を言うので、
不満の行き場を失ってしまった横町のいんきょは

「もう、金輪際、お前と将棋はやらん!」

と、言ってしまいました。

売り言葉に買い言葉、そう言われた表町のいんきょは

「おう、そうしよう、おまえと将棋をやるのは今日までだ」

と怒ってしまいました。

横町のいんきょは表町のいんきょをしばらく睨み付けてから

「じゃぁな」

と吐き捨てて、家に帰りました。


さてさて、勇ましく家に帰って来た横町のいんきょでしたが、
だんだん頭が冷えてくると、後悔の念が頭の中をめぐるように
なってしまいました。

(まったく、あの時、待ったなんかせず、負けを認めれば良かった)

(そもそも、今日は調子悪かったんだから、
 将棋は早く切り上げて、酒でも呑みに行けばよかった)

(そうしてれば、こんなことにはならず、
 今頃、楽しく酒を呑んでいただろうなぁ……)

そんなことを考えていると、居ても立っても居られないくなりました。

そして足は独りでに、表町のいんきょの家に向かっていました。

角を曲がり、表町のいんきょの家が見えると、
表町のいんきょも外へ出ていました。

なにやら、ソワソワした感じで落ち着きがありません。

二人は顔を合わせました。

横町のいんきょは、少し迷いましましたが、
意を決してツカツカツカと表町のいんきょに近づいて行きました。

そして、

「さっきのは、頑固なおまえが悪い」

と言いました。

すると表町のいんきょは、

「なんだと、癇癪起こしたおまえが悪い」

また言い争いが始まってしまいました。

「なんだと、悪いのはおまえだ」

「おまえの方こそ、悪い」

「じゃぁ、分かった」

横町のいんきょが話の流れを変えることを言いました。

「どっちが悪いか、将棋で決着つけようじゃないか」

「おう! 望むところだ!」

表町のいんきょも受けて立ちました。

「吠えずらかくなよ」

「なにを、連敗中なのを忘れたか!」

「それは、終わったことだ」

「今度は、待ったなしだからな」

「待ったは、三度までにしよう」

「いや、ダメだ」

「じゃぁ、一度だけ」

「よし、一度ならいいだろう」

と、二人は言い合いながら、家の中に入っていき、
将棋盤に向かいました。

こうして、二人の付き合いは今後も変わらず続いていくのでした。


おしまい。



今回のもとのお話はコチラ

福娘童話集『 将棋がたき 』
http://hukumusume.com/douwa/pc/kobanashi/11/09.htm



━━━ お話はここまで ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



☆ちょこっとHappy♪☆


素直になれないときってありますよね。
特に、なにかうまくいかないときは意固地になってしまいます。

そんな時は、少し冷静になり
自分の気持に素直になってみるとイイです。

自分の気持ちまで意固地になってしまい素直になれないことも
ありますが、自分の頭の中は1人きり、絶対に誰も訪れない
唯一の場所です。

だから思いっきり「ぶっちゃけ」ても大丈夫です。
言い訳も存分に言って大丈夫です。

考えもしなかったことを思っても、受け入れてみましょう。

あなたの頭の中は、誰にも、見えません。
恥ずかしいことを考えても、カッコ悪く考えても、バレません。
別の考えが浮かんで考えが変わったって、誰も気付きません。

大丈夫です。

思う存分「ぶっちゃけ」ちゃいましょう!


今日のHappy♪ポイント

『 頭の中では、恥ずかしいくらい、ぶっちゃけても大丈夫 』


ご意見ご感想、お待ちしています(^0^)/


2017年8月16日水曜日

医者に説法

昔々、悩みを相談するとなんでも解決する和尚がいました。

ある時、町で有名な医者が和尚を訪ねて来ました。

「はて、お医者さま、わしはどこも悪くないが、なにようかな」

「はい、和尚さま、今日は診察ではなく相談に来ました」

「そうですか、では、奥で聞きましょう」

二人はうす暗い寺の板の間で向き合って座りました。

和尚が悩みを聴きましょうと促すと

「いや実は悩みというのはですね」

と、医者は言ってから、少し言い辛そうな仕草をしました。

それを見て和尚は、

「案ずるな、悩みは他言無用じゃ」

「はっ、それでしたら~」

と、医者は後頭部の辺りに手を当てながら

「実はですね、この間、病人を三人もなくしてしまいましてね」

「なんと、名医と名高いあなたが、病人を三人も」

と、和尚は目を見開いて

「まぁ、なんだな、お気の毒だが、それはその病人の
 寿命だったのかもしれないな。
 どれ、成仏できるようお経をあげてやろう」

数珠を構えた和尚に医者は慌てて、

「いや、いや、和尚さま、そうじゃないんですよ」

「そうじゃない、じゃぁ、なんじゃ」

「なくしたという言い方が悪かったですね。
 病人は、三人とも病気が治ってぴんぴんしております」

「なんじゃ、そりゃ良かったじゃないか、なにを悩むことがあるのか」

「病気が治ったことは良かったんですが……」

言いづらそうにしている医者に和尚は、

「なんだ、はっきり言ったらどうじゃ」

「はぁ」

と、医者は、力なく返事をしてから言いました。

「患者がいなくなってしまいまして、
 その……、明日からの生活が、
 ままならないというありさまでして……」

「ほうほう」

と、和尚は状況が分かったらしく次のように言いました。

「つまり、お医者さまが名医なばっかりに、
 病人が来てもすぐに病気を治してしまうから、
 生活できるだけの銭が稼げない、と言うのじゃな」

「さすが和尚、その通りでございます」

「なんとも、贅沢でもあり、切ない悩みでもあるのぉ」

和尚は坊主頭を擦りながら言いました。

「はぁ、面目ありません」

医者は後頭部に手を当てて、恥ずかしそうに頭を下げ、

「かと言って、病人からいただく銭を上げるのも気が引けまして……」

「ふむふむ」

と、和尚は大きく頷き「分かった」と言ってから続けました。

「それではお医者さま、わしは、治療費を上げずとも、
 あなたが生活できるような知恵を授ければ良いのじゃな」

「はい、良いお知恵がありましたら、ご教授いただければ幸いです」

「ふむ、まぁ、簡単なことじゃ」

「は、そうですか」

「つまり、あなたは名医だから、生活ができるくらい銭が
 貯まる前に病人が治ってしまうのじゃな」

「はい」

「名医ならではの悩みじゃ」

「はい」

「他の医者がそれを聞いたら、どう思うだろうな」

「そうですね……」

医者は小首をかしげ考えてから、

「やっかみますかな」

「そうじゃな、やっかむ者もおるかもしれんな。
 それ以外はおらぬか」

「そうですねぇ……」

 医者は、右手を後頭部に当てながら考えて、

「羨みますかな」

「そうじゃな、羨むものも出てくるじゃろうなぁ」

と、和尚は言ってから、身を乗り出しました。

「ところで、お医者さま」

「はい、なんでしょう」

「皆がやっかんだり、羨んだりする名医が、
 あなたの前にいらっしゃったら、
 あなたはどうしたいと思いますか」

「どうしたい…ですか……」

と、医者は考えました。

しばらく考えたあと、

───はっ!

何かひらめいたように、両目を大きく開けました。

「私なら、その名医に教えを乞いたいと思います」

和尚は落ち着いた表情のままで、

「そうじゃろなぁ、そんなに、あっという間に病気を治す
 医者の技術は、銭をいくら払ったって学びたいものじゃ」

「確かにそうですね。つまり私は、医者の学校を開けばいい、
 と和尚さまはおっしゃりたいのですな」

「さすがは名医、勘がいい」

和尚は笑顔で言いながら、

「あなたの技術が伝われば、助かる命も増えるであろう」

「なお良し、ですね」

医者は「ありがとうございました」深々を頭を下げ、
喜んで帰って行きました。

和尚は医者を見送ってから、

「なんとも贅沢な悩みじゃのぉ」

と、目を細めて言いました。


おしまい。



今回のもとのお話はコチラ

福娘童話集『 貧乏医者 』
http://hukumusume.com/douwa/pc/kobanashi/10/30.htm



━━━ お話はここまで ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



☆ちょこっとHappy♪☆


器用貧乏、なんて言葉もありますね。

なんでもできるけど、1つのことに絞れず、
どっちつかずで、なにもものにできないという人。

この物語の医者は、腕が良すぎて患者がすぐに良くなって、
病院に来てくれなくなるという悩みを持っていました。

そこで和尚さんはその技術を教えなさいと説きます。

自分の持っている技術や能力って、自分で使うだけでは、
実はもったいないのかもしれませんね。

自分はできると、なまじ思っているから気付かないだけで、
他人から見たら羨ましい、教えてもらいたい、
と思うほどの能力なのかもしれません。

でも、それは他人の目にさらしてみないと分からないものです。

器用貧乏の人も、もしかすると、その能力で
助かる人がいるかもしれません。

自分の能力を勝手に過小評価しないで、周りの人に披露して、
判断をゆだねてみるのもいいのかもしれませんね。

あなたは、なにができますか?


今日のhappyポイント♪

『 実はそれ、スゴイことなのかもよ! 』


ご意見ご感想、お待ちしています(^0^)/


2017年8月12日土曜日

太陽と北風と雲と

今日もボクは真っ青な空にぼんやりと浮かんでる。

“雲”って人間たちはボクのことを呼んでいる。

一見、悩み無さそうにしているボクだけど、結構、悩みが多いの。

今もすごく悩んでる。

この前、太陽さんと北風さんの戦いを見た後から悩んでるの。

ボクはなんでこんななんだろう、って。

太陽さんと北風さんは、どちらが人間が着ている上着を
早く脱がすことができるかということで勝負してた。

勝負は太陽さんの勝ち。

ギラギラと人間を照らし気温を上げ、
暑くなった人間は自分から上着を脱いじゃったんだ。

さすが太陽さんはやることが大きい。

しかし負けたとは言え、北風さんもスゴイ!

だって、人間を縮み上がらせるほどの冷たい風を、
あんなに強く起こすことができるのだから、

ホント、スゴイ。

それに引き換え、ボクなんてこうやって青空のもと、
のんびりただ漂っているだけ。

太陽さんと北風さんのように、特別優れたものを持ち合わせていない、
なんて退屈な存在なんだろう、って思っちゃう。

そして、ついつい考え過ぎちゃって、悲しくなって涙を流しちゃうんだ。

涙を流していると、地上に落ちて「天気が悪くなった!」とか
「洗濯ものが乾かない」とか人間たちから文句を言われる。

慌てて通り過ぎ、ボクのあとに太陽さんが顔をだすと、
人間たちはみんな笑顔になって喜んでいる。

そんな人間たちを見て、人間たちはボクを嫌ってるんだな、
って分かっちゃう。

ボクは、どれだけ役立たずなんだ、と、また涙が溜まっちゃうんだ。

いけない、泣いたらダメだ。

ガマン、ガマン。

最近そう思って、涙を流すのを我慢してる。

ボクが泣いたら、また人間たちが怒っちゃう、悲しんじゃう。

ガマン、ガマン。

でも、泣くのを我慢していると、どんどん涙が膨れ上がって、
だんだん耐えられなくなっちゃう。

だから、怒られてもしかたないと思って泣いちゃうこともあるけど、
今回は我慢してやる、泣くことを我慢することで、
違った自分を発見してやる。

ボクも太陽さんや北風さんのような特別な存在になりたいんだ。

───ただね、

涙が溜まってどんどん体が大きくなって来ちゃってる。

体が重くて耐えられない。

我慢しようと思っても、涙が今にも溢れそうだ。

ガマン、ガマン。

でも、もぅ限界だ、どうしても涙がこぼれちゃう。

まったく、ボクって、いったいどこまで情けないんだ!

つくづく、自分が嫌になってくるよ!

『 泣きたければ、泣くといいよ 』

えっ?

なんか聞えた?

あ、太陽さんが笑顔でこっちを見てる。

「泣きたければ、泣くといいよ」

太陽さん、そんな気休めはいいよ。

「そうだ、そうだ、泣け泣け」

あ、今度は北風さんだ。

なんでみんなそんなにボクを泣かせたいんだ!

「ホラ、あっちまで飛ばしてやるから、うんと泣け」

って北風さんは言ったとたん、ボクに物凄い風を吹きかけてきた。

ボクは、物凄い勢いで飛ばされた。

今まで体験したことないような物凄い速さで飛んでいく。

どこに向かっているの?

怖い、怖い、早く止めて。

しばらく飛んだあと、

───徐々にスピードが弱まって来た。

そして、周りを見た。

どこ、ここ?

まるで知らないところ。

あっちもこちっちも知らない景色。

───心細い…。

どうして、ボクばっかりこんな目に合わなければならないの?

悲しい。

ずっと泣くのを我慢してきた。

でも、その我慢も限界。

でも、泣いたらダメ。

人間たちか悲しむから。

人間たちの悲しい顔を、もう見たくない。

ボクが我慢すれば済むこと。

そう、ボクが我慢すればいい。

我慢すれば、それで皆が笑顔になれるから……、

ガマン、ガマン

『 泣きたければ、泣くといいよ 』

必死に涙をこらえているのに、なんで太陽さんの言葉を思いだすんだ。

『 泣きたければ、泣くといいよ 』

ダメだ、ガマンしよう。

ガマン、ガマン。

───あ、
  
ひとりでに涙が一粒、落ちた。

あ、二粒目も。

もう、もう、止まらないよ~、

次から、次に、涙が出てくる。

我慢していた分、大量の涙が次から次へと流れてきた。

もう止まらない。

ボクは泣いて泣いて、泣き続けた。

頭に、人間たちの顔が浮かんだ。

怒ってる人、悲しんでる人、うなだれている人……

頭の中には、そんな人間の顔ばかりが浮かんでた。

きっとボクを恨んでいるだろう、そう思った。

ボクはおっかなびっくり地上を見た。

人間たちが、ボクの方を見てる。

───ん?

地上の人間たちの表情は、ボク思っていたのと違ってた。

笑ってる人がいる?

見間違い?

手を上げて踊っている人もいる!

えっ、なに?

なにが起こっているの?

ボクに向かって何度も頭を下げている人もいる。

なに? これはいったい?

「人間はあなたに感謝しているのですよ」

と、太陽さんが声をかけてくれた。

「ここの地区にあなたが来ないもんだから、
 ここに住む人間は水が無くて困っていたんです」

「そうだぞ」

と、今度は北風さんが声をかけてくれる。

「人間は、お前が降らす涙が無いと生きていけないんだ。
 だから、お前は泣かなくちゃダメなんだ」

ボクは泣かなくちゃダメ?

「そうですよ」

と太陽さん、「これは、あなたにしかできないことなのです」

えっ、ボクにだけ?

「そうだ、だからこれからもオレが飛ばしてやる、
 飛ばされたところで好きなだけ泣け」

え、北風さん、好きなだけ泣いていいの?

すると太陽さんが

「あなたの涙は、人間にとって恵の雨になります」

ボクの涙が、恵の雨?

「そうです」

ボクの涙には、そんな力があったの?

太陽さんは続けて、

「但し溜めてはダメ、一気に涙を流したら人間は大変困ってしまいます。
 泣きたくなったら、素直に泣いて、すぐに気分を変えること、
 それが大事ですよ」

そうか、そうなのか。

ありがとう、ボクはなんだか、
自分のことが少し分かったような気がするよ。

散々、泣いて、ボクはスッキリとした感じがした。

ボクが泣きやみ、変わりに太陽さんが現れたると、
人間たちは、歩き出したり仕事を始めたりしていた。

ボクの涙は人間の恵み。

これからは泣きたくなったら、溜めこまずすぐに泣こう。

そして泣きたくなったら北風さんに頼んで、
困っている場所に飛ばしてもらおう。

それまで、静かに浮かんでいよう。

青空のもとで、のんびりと。


おしまい。



今回のもとのお話はコチラ

福娘童話集『 北風と太陽 』
http://hukumusume.com/douwa/pc/aesop/09/18.htm



━━━ お話はここまで ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



☆ちょこっとHappy♪☆


あなたは自分には、イイところがない、と悩んだことはありませんか?

私はしょっちゅう悩んでいます。

今回の雲も悩んでいました。

この物語を読みながら、悩んでいる雲に対して、
読んでいるあなたはきっと、雲のイイところを
いっぱい考えたのではないでしょうか?

そして、雲のイイところがたくさん浮かんだと思います。

試しに、同じことを、自分に対してもやってみましょう。

自分のイイところをいっぱい考えてみましょう。

雲のイイところを見つけられたあなたなら、
自分のイイところを見つける能力を持っています。

たくさん見つけなくても大丈夫です。
1つで十分。

1つ見つけた自分のイイところを大切に育ててください。

キレイな花が開くように、大切にのんびりと。


今日のHappyポイント♪

『 イイところがあるのに、探さないだよね、みんな 』


ご意見ご感想、お待ちしています(^0^)/


2017年8月9日水曜日

だって親子だもの

昔々の江戸の長屋に父、母、息子の三人家族が
平穏に暮らしていました。

ある日の出来事です。

「あら、お前さん、帰って来ていたのかい?」

夕飯の仕度をしていた奥さんは、
不意に旦那さんがいることに気づきました。

いつもは「今帰ったよ!」と威勢よく帰って来るのに、
なんだか様子が変です。

「どうしたんだい? なにか問題でもあったのかい?」

と、旦那さんに尋ねました。

「いやぁ、その、なんだなぁ」

旦那さんは肩をすぼめ、奥さんと目を合わせたり反らせたり、
そわそわしていました。

「なんなのよ、忙しいんだから、早く話しておくれよ」

奥さんがせかすと、旦那さんはボソボソ、
っと何かを呟きました。

「えっ、なに? 聞こえないわよ」

奥さんは、耳に手を当てて聞き返しました。

「いや、あの~ぉ、なんだ…、おかねぇ~……」

「はぁ?」

「お金を! 落とした……」

「なんだってぇ!」

奥さんは驚いて大きな声を出してしまいました。

「おいおい、そんなに大きな声を出すんじゃないよ、
 ご近所に聞こえちまうじゃないかよ」

旦那さんは困ったような表情をしながら、
両手をバタバタさせて奥さんをなだめるような仕草をしました。

奥さんのほうは、そんなことには構わず大きな声で、

「いったい、いくら落としたの!」

そう言われて、旦那さんはすまなそうに肩を落として
「小判」と言ってから、右手の人差し指を立てました。

それを見た奥さんは、

「小判、一枚かい、もーう、まったく、稼ぎも少ないのに
 小判を落とすなんて、どれだけ間抜けなんだろうね!」

旦那さんは、一回りも二回りも体をすぼめて
小さくしぼんでしまいました。

そこへ「ただいまー!」と息子が元気よく帰って来ました。

帰って来た早々、息子は母親に嬉しそうな顔で言いました。

「今ね、歩いていたら、小判を拾ったよ!!」

「なんだってぇーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!」

母親と、小さくしぼんでいた父親が、
驚いて息子の方に近寄って来ました。

「でかしたゾ、わが息子!!!」

父は大喜びです。

「へへへ」

息子も得意げな笑みを浮かべました。

「えらいね~ぇ」

と母も満面な笑みを浮かべながらが「どれ、見せてみな」

息子はとびっきりの笑顔で、元気いっぱいな声で言いました。

「拾ったんだけど、家に着くまでに、どこかに落として来ちゃった~」

「なんだってぇーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!」

母も父も、目を見開いて驚きの表情を息子に向けました。

両親の表情を見て、笑いに包まれていた息子の顔は、頬がヒクヒクし、
こめかみの辺りから一筋の汗が落ちて行きました。

父親は、ドサッ、とその場に座り込んで、頭を下げてうなだれました。

母親は

「まったく、そろいもそろって、なんて間の抜けた親子なんだろうねぇ、
 あー、情けない情けない」

と、途方にくれ

「もう、あんたたちのために夕飯なんて作ってられない、
 今日は夕飯ぬきだよ!」

「えーーーーーー!!!!!」

息子と父親は抗議の声を上げましたが、

「うるさーーーーーーーーーい!!!!!!!」

と、母親に鬼の形相で一喝されてしまい、二人とも
しょぼんとしてしまいました。

そこへ、

「あの~、お取込み中のところすみませんが……」

と、誰かの声がしました。

母親は鬼の形相のまま振り返りました。

そこには、良く知った顔がありました。
向う隣の奥さんです。

母親は急に柔らかい表情になり

「あ~ら奥様、どうなさいました~」

と、猫なで声を上げました。

向う隣の奥さんは、恐る恐る
手に持った小さな袋を差し出しました。

「あのぉ、道端でこれを拾ったのですが、
 奥さんがこれと同じ物を持っていたと記憶していたので、
 もしかしてと思いまして……」

差し出された小袋を見て、
母親は一瞬で自分のものだと分かりました。

父親も息子もすぐに分かりました。

それが母親の財布だということを。

母親は何食わぬ顔で

「あ~ら嫌だわ、あたしったら、そそっかしくて、
 届けて下さってありがとうございますね~」

と、小袋を受け取り、深々と頭を下げました。

向う隣の奥さんは、小袋を渡すと、
そそくさと去って行きました。

玄関に向かって頭を下げている母に、
父と息子は厳しい表情を向けました。

ふり返った母親は、二人の顔を見てから、

「良かったじゃない、こうやって戻って来たんですから」

と、言いました。

そんなことを言われたところで、
散々罵倒された父と息子が許すはずがありません。

抗議の表情を続けていると、根負けした母親は、

「分かりました、分かりましたよ、
 そんなに睨まないでおくれよ。悪かったよ、言いすぎたよ~」

と言ったあと、小袋と軽く持ち上げて、

「お詫びに、これで何か食べに行こうかっ」

「やったー!!!」

父親と息子は両手を上げて喜び、

「ボクうどんがイイ」

「オレはそばだな」

と、楽しげに話し出しました。

「あんまり、高い物はダメよ、
 そもそもあんたは小判を落としてんだから」

「それは言いっこなしよ、お互いに」

と皆で笑いながら、火の元、戸締りを確認して、
親子三人仲良く食事に出かけました。


おしまい。



今回のもとのお話はコチラ

福娘童話集『 バカ息子 』
http://hukumusume.com/douwa/pc/kobanashi/09/05.htm



━━━ お話はここまで ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



☆ちょこっとHappy♪☆


人は自分に甘く、他人には厳しいという傾向があるそうです。

自分の失敗などには、いろいろな理由づけや言い訳をして、
なんとか「しょうがない」という方向に持っていこうとします。

でも、他人の失敗に対しては、
必要以上に厳しく責めてしまったりするんですよね。

今回のお話のお母さんなんて、旦那さんと息子さんには
鬼の形相を向けていたのに、自分は笑ってごまかそうと
してましたもんね。

本来なら、自分の失敗に対して理由や言い訳があって
「しょうがない」で済ますことができるのなら、同じ理由で、
他人の失敗も「しょうがない」と済ませられるハズです。

でも、これがなかなかできないのが、人なんでしょうね。

「失敗とはそのやり方は正しくないという発見だ」

そんな感じの言葉を言ってるのが発明王エジソンです。

他人の失敗を咎めるよりも、起きてしまったことは
「しょうがない」として、対応策を考えたりして、
プラスに転じることに力を入れる方が、よっぽど建設的です。

今回のお話のお母さんのように、自分の否はすぐに認めて、
みんなで美味しい物を食べに行った方が楽しいですしね。

逆に、自分の失敗で人に迷惑をかけてしまったときなどは
「しょうがない」と言い訳を考える前に、対応策を考えた方がイイ。

上司に報告するのなら

「その失敗により、こういうことが起きる(起きた)から、
 こうしたいと思います」

と言えるぐらい考えてから行動できれば、レベルアップチャンスです!

まっ、理想ですけどね(^^;


今日のHappyポイント♪

『 失敗は成功のマザー by 長嶋茂雄 』
(↑彼が言ったと言われてますが、定かではありませんm(_ _)m)


ご意見ご感想、お待ちしています(^0^)/


2017年8月5日土曜日

井戸に落ちたキツネ

とても暑い日、キツネはうだうだと歩いていました。

ふと、井戸が目に入りました。

ちょうど喉が渇いていたので水を飲もうと井戸に近づきました。

そして井戸を覗きこもうとしたとき、うっかり足を滑らせてしまい、
井戸の中に落ちてしましました。

“バシャーン!!”

派手に水しぶきを上げたキツネは大慌て、
水の中で足をバタつかせました。

足をバタバタさせると、井戸は案外浅く、
すぐに立ち上がることができました。

「フーッ、ビックリした~」

とりあえず落ち着いたのはいいのですが、周りを見ると石の壁。

見上げると、井戸の丸い縁があり、
そこから、うだるような真っ青な空が見えました。

井戸の入口は、飛び上れば届くか届かないかくらいの高さでした。

試しに、何度か飛び上ってみましたが、
あとちょっとのところで前足が届きませんでした。

全身に水を浴びて、少し涼しくなったのはいいのですが、
井戸から出れないのは困りました。

「どうしよ……」

キツネは水を一口飲み、途方にくれました。

しばらくすると、キツネの上の方から声が聞こえてきました。

「キツネさん、井戸の水は美味しいですか?」

キツネが見上げると、シカが覗きこんでいました。

シカの顔を見たとたん、キツネはいいアイディアを思いつきました。

そして、

「冷たくてとても美味しいよ、シカさんも降りて飲むといいよ」

キツネにそう言われ、シカは井戸の中に飛び込んできました。

“バシャーン”

「冷たーい! 気持ちいい!」

シカは喜んで、水を一口飲みました。

「美味しい!」

と、笑顔でキツネの顔を見てから、ゴクゴクを水を飲み、

「教えてくれてありがとう」

と言いました。

そしてバシャバシャと、しばらく水の冷たさを楽しんだシカは
キツネに尋ねました。

「ところでキツネさん、ここからどうやって出ましょうか?」

その声を聞いて、キツネの目は“キラーン”と怪しく光りました。

「そんなのは簡単だよ。キミが前足を高く上げ井戸の壁にかけて、
 梯子のようにしてくれれば、ボクが井戸の外に出れるから、
 そしたらキミを引っ張り上げるよ」

「こうぉ?」

早速、シカは言われた通りに壁に前足をかけました。

「うまい、うまい」

と、キツネは言いながら、シカの背中をスルスルっと通り、
井戸の外に出ました。

「フーっ、やっと出れた」

キツネはひと息つきました。

「キツネさーん、引っ張り上げてくださーい」

井戸の中から、シカの声がします。

キツネは井戸の中を、今度は落ちないように
慎重に覗きこみながら言いました。

「ボク一人で、キミを引っ張り上げるなんて無理だよ」

「えーっ、じゃぁ、私はどうやってここから出ればいいんですか!」

「そんなのは知らないよ、飛び込む前に考えなかったキミが悪い」

「そんなーっ」

シカはシュンとなりました。

「ま、そんな訳だから、じゃぁね」

と、キツネは捨て台詞を吐いてその場を立ち去りました。

(やれやれ大変な目に合った)

と、井戸から離れて、しばらく歩いたキツネでしたが、
この暑さで井戸に閉じ込められているのは
さすがに可哀想だと思いました。

シカが来る前まで自分が味わっていたのですから辛さが分かります。

(仕方ない)

キツネは人間に助けを求めようと街に向かいました。

街に入り、近くの人間に声をかけました。

すると、

「あ、キツネめ、しっ、しっ、こっちくんな」

と、追い払われてしまいました。

違う人に声をかけると、

「コラッ、キツネ! 今度いたずらしたら、こいつで殴るよ!」

と、ホウキを高く上げられました。

キツネは普段から悪さばかりしているので、
人間たちにとても嫌われていました。

「ぶたないで!!」

と、キツネは叫んでから、

「ボクはただ、井戸に落ちてる者がいるから知らせにきたんだ!」

「またウソついて! 誰が井戸に落ちてるっていうんだい!!」

「シカさんだよ!!!!!」

キツネは叫びました。

「なんだって! シカだって!!!」

人間が驚きました。

すると「シカがどうした」と、言いながら、
あちこちから人間が集まって来ました。

「シカが井戸に落ちてるって、キツネが言うんだよ」

「何? キツネが? まぁいい、
 ウソでもそれは行って確かめてみないと」

「そうだそうだ、どうせキツネのウソだとしても、
 万が一、本当だったらシカが心配だ」

と、人間たちは口々に言いながら、井戸に向かいました。

キツネは、とっても複雑な思いになりながら、
人間たちについて行きました。

人間たちは井戸に着くと、協力しあってすぐさまシカを助けました。

キツネはそれを遠くから眺めていました。

助け出されたシカは、キョロキョロと辺りを眺めると、
遠くで見ているキツネに気づいたようで、走り寄ってきました。

キツネは怒られると思って身をかがめました。

「キツネさん!」

「はっ、ハイ」

「ありがとうございます!」

「ハヒィ~?」

怒られると思っていたキツネは驚いて、変な声を出してしまいました。

シカは続けます、

「キツネさんが人間たちに知らせてくれたんですね。
 おかげで、助かりました!!」

シカは何度も何度もキツネに感謝の言葉をかけました。

「いや、あ、あ、ど、ども~……」

何度も感謝されたキツネは、恥ずかしいやら、
シカを騙して後ろめたいやら、愛想笑いを浮かべ、
ただただ時が過ぎ去るのを待っていました。

「ハヒィ」


おしまい。



今回のもとのお話はコチラ

福娘童話集『 キツネとヤギ 』
http://hukumusume.com/douwa/pc/aesop/08/25.htm



━━━ お話はここまで ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



☆ちょこっとHappy♪☆


もとお話の教訓は

「何かをする前には、まず後の事を考えないといけない」

です。

確かに、何も考えずに飛び込んだシカは注意が足りませんでした。
でも、キツネのことを全く疑わず行動するシカは、
なんとなく魅力的な印象を受けてしまいます。

物語の後半は、キツネのことは嫌っている人間が、
シカのことになると皆が心配して助けに行きます。

キツネの話は信用しないのに、シカは心配だ、
と思わせてしまうほど、シカは人から好かれていたのでしょう。

世知辛い世の中、ついつい人を疑ってしまいますが、
シカのように時には『素直になる』ということも
大切なのかもしれませんね。


今日のHappyポイント♪

『無邪気は人を和ませる』


あなたの意見をお聞かせくださ~い(^-^)


2017年8月2日水曜日

アリとキリギリス

どこまでも高く突き抜けそうな夏の青空のもと、
アリたちは自分たちの巣へ、せっせと餌を運んでいました。

ときには自分の何倍もあるような虫なども、
みんなで力を合わせて運びました。

汗だくで働いているアリたちを木陰でのんびり眺めていたキリギリスは、
木に寄りかかりながらアリたちに言いました。

「こんなに暑い日に、そんなに働いていたら体を壊しちゃいますよ」

アリは歩みを止めずに、キリギリスの方へ顔だけを向けて言いました。

「夏の間に餌をたくさん巣に入れておかないと、
 冬に食べるものが無くなっちゃうからね」

キリギリスは立ち上がり、歩みを止めないアリの横を歩きながら、

「なるほど、そうだね。君たちは大家族だから、
 食べ物がいっぱいなくちゃお腹空いちゃうもんね」

「そうなんです。だからこうやって、一生懸命働いてるんです」

「なるほどなるほど。では、私は、あなたたちを応援いたします」

とキリギリスは言って、静かな声で歌いだしました♪

アリたちは働きながら、素敵なキリギリスの歌声に耳を傾けました。

とても透きとおった歌声は、森を静かに流れる風のような
涼しさが感じられました。

おかげでアリたちは、少し暑さを忘れることができ、
いつもより頑張ることができました。

こうして夏の間中、アリはせっせと餌を運び、
キリギリスは横で素敵な歌を歌い続けました。

夏の終わりにアリたちは、素敵な歌で応援してくれたキリギリスに、
餌を少し分けてあげることにしました。

「キリギリスさん、感謝を込めて、この餌を差し上げます」

「ありがとう、アリさん。私はそんなつもりで歌った訳では
 無かったけど、頂けるというのであれば遠慮なくいただきます。
 でも、こんなにいっぱい、食べきれるかなぁ」

1人で暮らしているキリギリスでは、
何年かけても食べ切れないような量でした。

「私たちの気持ちですから、どうぞ遠慮なさらずに」

「分かりました、喜んでいただきます」

そして、アリとキリギリスはお互い辛い冬を乗り越えて、
また来年の夏に会えることを祈って別れました。

やがて秋が来ました。

キリギリスは自分の家で、アリからもらった大量の餌を食べながら
のんびり暮らしていました。

ここ何日かは、ずっと雨の日が続いていました。

あちこちで、水があふれ出し、地面は川のようになっています。

キリギリスの家は雨が凌げる木の枝にありました。

「おや、あれは……」

キリギリスの家がある木に、
何匹ものアリが昇ってくるのが見えました。

「おやおやアリさん、どうなされたのですか?」

「あ、キリギリスさん。こんなところで会えるなんて」

アリはキリギリスとの再会に少し驚きました。

しかし、すぐに悲しい声で自分たちの悲惨な状態を話しました。

「この雨で、巣が水浸しになってしまい、
 命かながら、この木に逃げてきたのです」

「それはそれは、大変な目に遭いましたね」

「はい、家族もだいぶ流されてしまいました……」

アリたちは川のようになって流れる茶色い水を眺めながら、
ガッカリとうなだれていました。

少し間を置いて、キリギリスは提案しました。

「もしよかったら、しばらくここで暮らしませんか?」

「よろしいのですか?」

「もちろんです。ここならアリさんたちからいただいた、
 たくさんの餌があります。しばらくは皆で暮らせるでしょう」

「ありがとうございます!」

アリたちはとても喜びました。

「困ったときはお互い様です」

と、キリギリスは言ってから、

「それでは、私から慰めの歌を贈らせてください」

と、歌い出しました。

静かに奏でられるキリギリスの歌を聞いたアリたちは、
ひとりでに涙があふれてきて、あるアリは泣き崩れ、
あるアリは涙をこらえながら、じっくりと聞いていたり、
それぞれがそれぞれの思いで悲しみと向き合いました。

アリたちは、ひとしきり泣きました。

そして落ち着いた後も、キリギリスはいろんな歌を歌いながら、
しばらくの間、アリとキリギリスは仲良く暮らしました。


おしまい。



今回のもとのお話はコチラ

福娘童話集『 アリとキリギリス 』
http://hukumusume.com/douwa/pc/aesop/03/31.htm



━━━ お話はここまで ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



☆ちょこっとHappy♪☆


遊んでいて辛い思いをするのは当然の報いかもしれません。
でも、遊んでいて生活できるならこんなにいいことはありません。

童話でHappy♪のキリギリスは、歌を歌うことが大好きです。

しかも、アリたちを涼しくさせたり、
感情を高ぶらせたりするほどの上手さです。

歌うことでキリギリスはアリたちから感謝されて、
餌をもらうことができました。

キリギリスは、ただアリたちを応援したいと思い
好きな歌を歌っていただけなのにです。

歌うことはキリギリスにとって、
遊んでいることと同じ感覚でしょう。

それで、何年経っても食べつくせない程の餌をもらえたのです。

プロスポーツ選手はそのスポーツが好きでやっていただけで、
生活できるようになりました。

テレビに出ているタレントも、ユーチューバーも、
自分がやりたいことをやって、生活することができています。

自分にとって、遊んでいるような楽しいことやって、
生活できるようになる例は、実はたくさんあるようです。

あなたの、遊び感覚でできる楽しいことはなんですか?


今日のHappyポイント♪

『 やりたいことをやれ by 本田宗一郎 』


あなたの意見をお聞かせくださ~い(^-^)